貸倒引当金とは?仕訳方法や計算方法を具体例とともに解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2026-08-10
- この記事の3つのポイント
- 貸倒引当金とは、将来の貸し倒れリスクを予測し、計上しておく資産のマイナス項目のこと
- 貸倒引当金は債権の損失リスクを可視化できる一方、税務上で損金算入ができるのは一部の企業のみ
- 貸倒引当金は、債権の回収リスクに応じ「一括評価」か「個別評価」で金額を算出する
貸倒引当金は、将来発生する可能性のある貸し倒れに備えて、事前に計上する資産の控除科目です。ただし、貸倒引当金に関連する勘定科目は複数あるため、仕訳方法に迷う方もいるでしょう。
本記事では、貸倒引当金の仕訳方法について詳しく解説します。貸倒引当金の計算方法や、具体的な仕訳例にも触れますので、ぜひ参考にしてください。
貸倒引当金とは?仕訳方法や計算方法を具体例とともに解説
貸倒引当金とは
貸倒引当金とは、将来的な貸し倒れリスクを予想し、あらかじめ帳簿へ記載しておく資産の控除科目を指します。債権の一部が回収不能になるリスクを見込んで設定するのが一般的です。
貸倒引当金の計上により、回収の見込みが薄い資金を資産に含まず、実質的な資産評価を反映した財務諸表を作成できます。
貸倒引当金の対象になる債権
貸倒引当金の対象となる主な債権は、以下のとおりです。
- 売掛金
- 受取手形
- 貸付金
- 未収入金 など
上記の債権に共通しているのは、将来回収不能になるリスクがあることです。「回収不能のリスクがある債権に関して、引当金を設定することでリスクに備える」と考えるとよいでしょう。
企業は債権の回収見込みを評価し、適切な引当金を計上することで、財務状況の健全性を保つ必要があります。
貸倒引当金の対象にならない債権
貸倒引当金の対象にならない債権には、以下があります。
- 保証金
- 敷金
- 手付金
- 預金の未収入金
- 未収配当金
- 前渡金 など
保証金・敷金・手付金・預金の未収入金は、金銭債権に該当しない、もしくは返還や充当を前提とした債権のため、貸倒引当金の設定対象外です。
また、未収配当金や前渡金も、通常であれば回収が確実であり、リスク評価を行わなくて良いものです。したがって、貸倒引当金の設定は行いません。
貸倒引当金と貸倒損失の違い
貸倒引当金は、将来の貸し倒れに備えるために設定される資産の控除科目です。一方で貸倒損失は、実際に貸し倒れが発生した際に計上される費用を指します。
貸倒引当金は将来の貸し倒れリスクを合理的に見積もって予測した損失であるのに対し、貸倒損失は実際に発生した損失である点を理解しておきましょう。
また、貸倒引当金はあらかじめ損失額を想定した上で計上される一方で、貸倒損失は、貸倒引当金でカバーされなかった分を補うために計上されます。
貸倒損失の概要や仕訳方法、貸倒引当金と異なる点については、以下の記事でご確認ください。
貸倒引当金のメリット
貸倒引当金の計上には、以下の2点のメリットがあります。
- 債権の損失見込額を可視化できる
- 税務上で損金算入ができる
将来的に回収不能となるリスクを合理的に見積もって数値化するため、実態に即したきめ細やかな財務状況の把握が可能です。
また、会計上で費用計上した繰入額は、法人税法が定める限度額の範囲内であれば税務上の経費(損金)として認められます。将来の損失リスクに対して事前に課税所得を圧縮できるため、企業のキャッシュフロー改善や節税につながるでしょう。
なお損金算入できる対象企業は、すべてではありません。資本金1億円以下の中小法人や、一定の金融機関など、限定されている点には留意しましょう。
損金の概要や、経費との違いに関しては、以下の記事をご参照ください。
貸倒引当金の計算方法
貸倒引当金を計算するには「一括評価」と「個別評価」の2つの方法があります。本章でそれぞれ詳しくみていきましょう。
一括評価
一括評価は「会計上」と「税務上(法人税法)」で基盤となる債権の捉え方や計算式が一部異なります。
一般債権は、個別にリスクを見積もるのではなく、期末の債権残高に一定の割合を掛け合わせて貸倒引当金を計算します。計算式は以下のとおりです。
【会計上の計算式】
一般債権の貸倒引当金=期末の一般債権の残高×貸倒実績率 |
|---|
税務上の計算方法では、直近3年間の貸倒損失額に基づく「実績繰入率」または業種ごとに定められた「法定繰入率」のいずれかを選択して計算します。それぞれの計算式は以下のとおりです。
【税務上(法人税法)の計算式・実績繰入率】
貸倒引当金=期末の一括評価債権の額×実績繰入率 |
|---|
【税務上(法人税法)の計算式・法定繰入率】
貸倒引当金=(期末一括評価債権の額-実質的に債権とみられない金額)×法定繰入率 |
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なお、法定繰入率は、資本金1億円以下の中小法人などのうち、法令で定めている一定の要件を満たした法人のみが選択できる制度です。同一取引先への買掛金など「実質的に債権とみられない金額」を差し引いて計算しましょう。
税務上の計算式は会計上の計算式と似ていますが、過去3年間の貸倒損失や繰入・戻入額などを反映させ、小数点以下4位未満を切り上げるなど、より厳密な式で算出します。
個別評価
個別評価は、回収不能リスクが高い特定の債権に対し、相手方の状況に応じて個別に引当金額を見積もる手法です。会計上は、経営破綻状態の「破産更生債権等」や、深刻な問題を抱える「貸倒懸念債権」などが該当します。
個別評価の際は、主に「財務内容評価法」と「キャッシュフロー見積法」の2つの方法で計算します。財務内容評価法の計算式は以下のとおりです。
【財務内容評価法(会計上)】
貸倒引当金=債権の額-担保の処分見込額・保証による回収見込額-債務者の支払能力を考慮した回収見込額 |
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なお、税務上(法人税法)は、更生手続開始の申立てや手形交換所の取引停止処分など一定の事由が生じた場合に、(債権額-担保等による取立て見込額等)×50%を繰入限度額とする形式基準が設けられています。
債務超過の状態が相当期間継続し事業好転の見通しがない場合などは、取立て等の見込みがないと認められる金額まで繰り入れが可能です。
キャッシュフロー見積法では、将来得られる見込みのキャッシュフローを現在の価値に直して計算してください。計算式は以下のとおりです。
【キャッシュフロー見積法】
貸倒引当金=貸倒懸念債権の残高-将来キャッシュフローの割引現在価値の合計 |
|---|
貸倒引当金の勘定科目
貸倒引当金に関連する勘定科目は3種類あります。それぞれ状況により使い分ける必要があるため、違いを把握しておきましょう。
貸倒引当金繰入
貸倒引当金繰入は、将来の貸し倒れに備えて見積もった貸倒金を、実際に引当金として計上し、一部を当期の費用として繰り入れる勘定科目です。貸倒引当金繰入は決算整理の際に使用されており「貸倒引当金繰入額」とも呼ばれています。
売掛金など営業に関する債権は「販売費および一般管理費」、それ以外の債権は「営業外費用」、臨時的で前期損益修正などの重要性が高い債権は「特別損失」に計上するのが一般的です。
貸倒引当金戻入
貸倒引当金戻入は、貸し倒れのリスクが減少し、設定した貸倒引当金が不要になった際に使用する勘定科目です。債務者の経営状況が改善したなどの理由で、債権が貸し倒れしなかった場合は、残った引当金を戻す必要があります。
決算時に前期の引当金が残っている場合に用いる仕訳の方法が「洗替法」または「差額補充法」です。具体的な仕訳方法については、次章で解説します。
貸倒損失
貸倒損失は、予期せぬ債権の回収不能が確定したときに用いる勘定科目です。取引先の財政悪化や倒産により、売掛金や貸付金が回収不能になった場合「貸倒損失」として処理します。
ただし、税法上の損金計上には「金銭債権が法的に消滅している」や「担保物を処分しても全額回収できない」などの要件が必要です。正確な状況を確認し、条件を満たしている場合のみ、貸倒損失を用いて損失を計上しましょう。
貸倒引当金の仕訳方法
貸倒引当金の仕訳方法は、2種類あります。それぞれ解説します。
差額補充法
差額補充法は、期末ごとに貸倒引当金残高の差額を調整する方法です。
たとえば、前期末に計上した引当金が8,000円で、今期末に計上すべき引当金が10,000円の場合、差額2,000円を追加で「貸倒引当金繰入」として計上します。これにより、今期末の貸倒引当金を10,000円へと調整できます。
洗替法
洗替法(あらいがえほう)は、前期末の引当金を一旦ゼロに戻し、今期の引当金を新たに計上する方法です。
たとえば、前期末に計上した引当金が8,000円で、今期末に計上すべき引当金が10,000円の場合、まず8,000円を戻入し、10,000円を新たに計上します。
貸倒引当金の仕訳例
貸倒引当金を実際に仕訳する際のやり方を、具体的な仕訳例を交えて解説します。
貸倒引当金繰入の仕訳例(差額補充法)
前期末での貸倒引当金の残高が50,000円あり、当期では80,000円を貸倒引当金として設定するケースで考えてみましょう。
「貸倒引当金繰入」のみで仕訳を行う場合、差額となる30,000円を当期の費用として繰り入れる必要があります。仕訳方法は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
貸倒引当金繰入 | 30,000円 | 貸倒引当金 | 30,000円 |
上記の仕訳により、追加の貸倒引当金が設定され、損益計算書に費用として計上されます。
また、前期に計上した50,000円の貸倒引当金は計上されたままとなるため、合計で80,000円が計上される計算です。
貸倒引当金戻入の仕訳例(洗替法)
前項と同じく、前期末の貸倒引当金の残高が50,000円、当期では80,000円を設定するケースで考えます。
「貸倒引当金戻入」の仕訳を使用し一度全額を戻入してから、新たに「貸倒引当金繰入」の仕訳を使い、80,000円の貸倒引当金を設定します。仕訳方法は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
貸倒引当金 | 50,000円 | 貸倒引当金戻入 | 50,000円 |
貸倒引当金繰入 | 80,000円 | 貸倒引当金 | 80,000円 |
上記の流れで仕訳を行うことで、まず前期末の50,000円を収益に戻し、その後、当期の80,000円を新たに貸倒引当金として計上することができます。
実際に貸し倒れが発生したときの仕訳例
実際に貸倒損失が発生した場合は「貸倒損失」の仕訳で損失分を計上します。
本章では、取引先の倒産により売掛金120,000円が全額回収不能となった場合を考えてみましょう。
前期末に設定した貸倒引当金が80,000円あり、当期に入って前期以前に発生した売掛金120,000円が取引先の倒産により全額回収不能となった場合をみてみましょう。
この場合は、貸倒引当金80,000円と実際の損失120,000円の差額である40,000円を「貸倒損失」として処理します。仕訳方法は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
貸倒引当金 | 80,000円 | 売掛金 | 120,000円 |
貸倒損失 | 40,000円 | ||
上記の仕訳により、貸倒引当金から回収不能な金額を充当し、残りの40,000円を貸倒損失として計上することができます。
なお、当期に発生した売掛金が当期中に貸し倒れた場合は、貸倒引当金を取り崩さず、全額を貸倒損失として処理します。
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貸倒引当金のメリットは、債権の損失見込額を可視化でき、税務上で損金算入ができる点です。
貸倒引当金の仕訳では、繰り入れるとき、引当金を戻し入れるとき、また貸倒引当金以上に損失が出てしまったときでそれぞれ別の勘定科目を使います。仕訳を行う際の状況に合わせ、的確な勘定科目を選択するよう留意しましょう。
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