勘定科目「広告宣伝費」とは?該当費用・類似科目との違い・仕訳例
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-03-07
- この記事の3つのポイント
- 広告宣伝費は、商品・サービスの宣伝費用の総称で、不特定多数を対象にした支出に限られる
- 広告宣伝費には、新聞やテレビへの広告費やグッズ制作などの広報費、プロモーション費が含まれる
- 広告宣伝費と混同しやすい勘定科目として、販売促進費、交際費、外注費、寄付金がある
広告宣伝費とは、自社の商品やサービスを不特定多数の人へ向けて宣伝するために支払った費用です。広告宣伝費は経費として計上でき、含まれる費用も多岐にわたります。ただし、なかには経費として認められないケースもあるため、注意が必要です。
本記事では、広告宣伝費の概要に触れたうえで、広告宣伝費に含まれる支出や類似する勘定科目、仕訳例、仕訳時の注意点を解説します。
勘定科目「広告宣伝費」とは?該当費用・類似科目との違い・仕訳例
広告宣伝費とは?
広告宣伝費とは、商品やサービスなど自社の宣伝目的で使われた経費を指します。省略して「広宣費」とも呼ばれています。
広告宣伝費は、企業にとって欠かせない支出の一つです。また、商品やサービスの宣伝以外にも、会社のイメージ向上を目的とした広報活動費や、決算公告にかかる費用も広告宣伝費として認められます。
ただし、広告宣伝費として計上できるのは、不特定多数の人を対象とした宣伝活動に関する費用だけです。特定企業との関係維持・向上のための費用や、宣伝活動に関連しない協賛金などは計上できません。
広告宣伝費ではないものを誤って計上した場合には、税務調査で否認される可能性もあるため注意が必要です。
広告宣伝費に含まれる3つの費用
宣伝広告には、3つの費用が含まれます。以下でそれぞれ解説します。
媒体への広告掲載にかかる費用
まず、雑誌・新聞・テレビ・ラジオといった媒体の利用料やインターネット広告料、広告制作にかかった費用などが挙げられるでしょう。また、看板や交通機関の車内広告なども広告掲載費に該当するため、広告宣伝費として認められます。
会社の広報にかかる費用
会社の商品やサービスの販売促進のみならず、会社そのものの認知度向上のために負担した費用も広告宣伝費になります。
たとえば、社名入りのグッズや商品の見本品・試供品などを作成するためにかかった費用は、広告宣伝費として計上することが可能です。
プロモーションにかかる費用
プロモーションにかけた費用も、広告宣伝費として計上できます。たとえば、以下が該当します。
- チラシやパンフレットの制作費
- カタログの制作費
- ポスターの制作費
- POP類の制作費
- ノベルティの制作費
- キャンペーンサイトの制作・運用費
- 試作品の制作費
- イベントへの出展料
- イベントのブース制作費
ただし、販売促進費に該当するものも一部あるため、それぞれを分けて計上しましょう。
混同しやすい勘定科目と使い分け
広告宣伝費と混同しやすい勘定科目を理解して、正しく使い分けができるよう、違いを把握しておきましょう。
販売促進費との違い
販売促進費とは、会社の商品やサービスの販売業務をスムーズに進めるための費用です。
広告宣伝費と販売促進費は、どちらも損益計算書の「販売費及び一般管理費」に分類されています。
両者の違いは費用を支払う目的です。販売促進費は商品やサービスの販売促進、広告宣伝費は広告や宣伝活動を目的として支出を行います。
販売促進費の具体例については、以下の記事をご確認ください。
関連記事:勘定科目「販売促進費」とは?具体例・広告宣伝費との違い、仕訳方法
交際費との違い
交際費は、事業のために行う接待や贈答、慰安にかかる費用のことです。広告宣伝費が不特定多数を対象にした支出であるのに対し、交際費は取引先や顧客など特定の相手を対象としている点が違います。
交際費の詳細は以下の記事で解説していますので、あわせてお読みください。
関連記事:接待交際費とはどんな費用?経費にできる範囲(上限金額・内容)や仕訳を解説
外注費との違い
外注費は、業務を外部の業者や事業主へ委託した際に支払う報酬費用です。
CMやポスター、チラシなどの広告制作を外部に依頼する際、依頼企業が制作に関わっている場合には広告宣伝費、関与していない場合には外注費として計上するのが一般的です。
具体的には、デザインの指示出しやデザイン案の取捨選択を行う場合は広告宣伝費となります。
外注費の定義については、以下の記事で解説しています。
関連記事:外注費の定義とは?仕訳例や間違いがちな勘定科目・経理処理をわかりやすく解説
寄付金との違い
寄付金・協賛金は、費用の対価を求めない支出です。ただし、協賛金や寄付金の名目であっても、支出先から物品を受け取ったり、宣伝効果があったりする場合は広告宣伝費となるため注意しましょう。
協賛金の仕訳については、以下の記事をご確認ください。
広告宣伝費の仕訳例
企業で用いられる場合が多い内容について、広告宣伝費の仕訳例を紹介します。
名刺の作成費用
名刺を作成するためにかかる費用は、基本的に消耗品費として計上します。しかし、名刺で商品やサービスを紹介する場合は広告に該当するため、広告宣伝費としての計上が可能です。
参考として、名刺作成費用8,000円を現金で支払った場合の仕訳例を見てみましょう。
借方 | 貸方 | ||
広告宣伝費 | 8,000円 | 現金 | 8,000円 |
チラシの印刷費用
自社商品やサービスを宣伝するためにチラシやパンフレットを作成した場合、広告宣伝費に計上できます。ただし、余りを未使用のまま保管する場合、貯蔵品として計上しなければなりません。
チラシ印刷代35,000円を普通預金口座から振り込み、配布せずに残った7,000円分のチラシを貯蔵品として計上する場合の仕訳例を紹介します。
<チラシ作成時>
借方 | 貸方 | ||
広告宣伝費 | 35,000円 | 普通預金 | 35,000円 |
<配布後の保管時(期末に処理)>
借方 | 貸方 | ||
貯蔵品 | 7,000円 | 広告宣伝費 | 7,000円 |
貯蔵品として計上する方法は二つあります。一つは、購入時に貯蔵品として計上し使用分のみ広告宣伝費とする方法です。もう一つは、購入時に広告宣伝費として計上し、未使用分を期末に貯蔵品へ振り替える方法です。どちらを採用しても問題はありません。
ホームページの作成費用
自社のホームページの作成にかかる費用も、広告宣伝費としての計上が可能です。
ただし、ECサイトのように多数のコンテンツを含むホームページはプログラムの一種とみなされるため、無形固定資産として計上する必要があります。作成にかかった費用や内容に合わせ、税務上の法定耐用年数で減価償却してください。
無形固定資産の対象とはならないホームページを9万円(口座振込)で作成した場合の仕訳例を確認しましょう。
借方 | 貸方 | ||
広告宣伝費 | 90,000円 | 普通預金 | 90,000円 |
新聞広告の掲載費
自社の商品やサービスを宣伝するために新聞広告を利用した場合、かかった費用は広告宣伝費に該当します。ただし、協賛金を募る会社との関係の維持向上のために支出したときは、交際費で計上する必要があります。
新聞広告にて自社製品の宣伝を行った場合の、仕訳例を見てみましょう。新聞掲載費85,000円を普通預金口座から振り込んだ場合は、以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
広告宣伝費 | 85,000円 | 普通預金 | 85,000円 |
広告宣伝費を活用して節税するメリット
広告宣伝費を活用して節税すると、節税以外にも以下のようなメリットが得られます。
一括で計上しやすい
節税を意識して高額な商品を購入した場合、資産として減価償却する必要があります。一括計上はできず、年度の途中で購入した商品の減価償却は月割りです。たとえば、期末に購入すると1カ月分しか計上できません。
しかし、広告宣伝費であれば一括計上が可能です。期末に合わせた節税対策として活用できます。
投資にもなる
他の経費と異なり、広告宣伝費は将来にわたって成果が残ります。適切に活用すれば、持続的な収益につながる可能性があり「投資」としての効果も得られるでしょう。
ただし、実際の効果は企画や内容のクオリティによって変動します。広告宣伝費を使っても必ずしも成果が残るとは限らないため、綿密な計画に基づいて取り組む必要があります。
広告宣伝費を仕訳する際の注意点
広告宣伝費の仕訳では注意点が複数あります。特に意識すべき点について把握しておきましょう。
摘要欄に情報を記載しておく必要がある
勘定科目として広告宣伝費を使用する際は、摘要欄に支出の概要を記入しましょう。
摘要欄とは、取引に関する詳細を記入できる欄です。たとえば、Webサイトに広告を出した場合、摘要欄に「Webサイト○○ 広告料 ○月分」のように具体的な内容を記載します。摘要欄に記入すべき内容としては、以下のとおりです。
- 時期
- 科目
- 金額
- 取引相手
- 取引の事由
費用の使い方や計上の仕方が適切か判断できるよう、必ず摘要欄に詳細を記しておきましょう。
広告宣伝費は課税対象となる
広告宣伝費には消費税が課されます。そのため、仕訳の際は課税仕入の扱いで処理する必要があります。ただし、国外の取引については日本の消費税が課されません。外国の会社に対して広告宣伝費を支払った場合は非課税となります。
取引金額が10万円を超える場合は「固定資産」で計上する
広告宣伝費を仕訳する際には、取引金額の確認が必要です。看板の設置など広告や宣伝のために支出した費用が10万円に満たなければ、広告宣伝費による仕訳が可能です。
ただし、取引金額が10万円を超える場合は、固定資産として計上する必要があります。
ケースによっては広告宣伝費としての計上が認められない
不特定多数に向けた宣伝ではない場合、広告宣伝費として計上できない可能性があります。特定の相手に対するプロモーションや接待行為のための支出は広告宣伝費として計上できないため、注意しましょう。
商標登録は計上できない
商標登録をすると商品やサービスを差別化できるため、社名、商品名、ロゴマークなどを商標登録するケースはよくあります。ただし、商標登録にかかった費用は広告宣伝費には該当しません。商標登録したものは無形固定資産に分類されるため、減価償却が必要です。
簡単で正確な経費精算を実現する「バクラク経費精算」
自社の商品やサービスを不特定多数に周知するためにかかった費用は、広告宣伝費として計上できます。ただし、取引金額や内容によっては広告宣伝費に該当しない場合もあるため、適切な勘定科目で仕訳をしましょう。
経費精算の仕訳に不安がある場合は、バクラク経費精算の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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