前受金の仕訳方法は?借方・貸方の例と間違えやすい勘定科目との違いなどを解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-11-26
商品やサービスを提供する前に受け取った代金は、その段階で売上計上できません。商品などを受け渡す前に受け取った代金は前受金として仕訳して、商品を渡した後に他の勘定科目に移します。
本記事では、前受金の概要や前受金の仕訳例などを解説します。前受金かどうかを考えるポイントなども解説するため、参考にしてください。
前受金の仕訳方法は?借方・貸方の例と間違えやすい勘定科目との違いなどを解説
前受金とは?
前受金とは、商品やサービスを提供する前に、報酬を受け取った場合に用いられる勘定科目です。代金の一部を受け取ったとき、もしくは代金の全額を商品・サービスの提供よりも先に受け取った場合にも前受金が用いられます。
売主が前受金を受け取ることで、買主に対して商品やサービスを引き渡す義務が発生します。たとえば、商品の発売前に予約を受けてお金を受け取ったというケースです。この場合、商品発売後に商品を買主に受け渡さなければいけません。
商品を引き渡せない場合には、前受金の返金する必要があるため注意しましょう。また、契約上、前受金は預り金としての性質があります。
前受金については、下記の記事も参照ください。
前受金の仕訳例
前受金はどのように仕訳すればよいのでしょうか。ここでは、前受金の仕訳例を解説します。
代金の全額を前払いで受け取るケース
50,000円の商品を受注し、商品やサービスの代金を全額、前受金で受領した場合の仕訳方法は以下のとおりです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
普通預金 | 50,000円 | 前受金 | 50,000円 |
前述したように前受金は負債として扱うため、借方に記載しましょう。商品やサービスの提供した後の仕訳方法は以下のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
前受金 | 50,000円 | 売上 | 50,000円 |
下記の記事でも同じケースでの仕訳例を紹介しています。
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先に代金を一部受け取ったケース
商品やサービスの代金の一部を前受金で受領した場合の仕訳方法は、以下のとおりです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
普通預金 | 10,000円 | 前受金 | 10,000円 |
たとえば、商品代金50,000円のうち10,000円を前受金として受領し、商品を提供して残りの代金を受け取った場合には以下のように仕訳しましょう。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
前受金 | 10,000円 | 売上 | 50,000円 |
売掛金 | 40,000円 |
下記の記事でも同じケースでの仕訳例を紹介しています。
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代金を受け取ったが返金したケース
始めに一般的な前受金の受領時と同様の仕訳を行います。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
普通預金 | 50,000円 | 前受金 | 50,000円 |
途中でキャンセルされた場合は、以下のように仕訳をしましょう。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
前受金 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 |
この際、理由もあわせて記載しておくとわかりやすくなります。
下記の記事でも同じケースでの仕訳例を紹介しています。
前受金と間違えやすい勘定科目
勘定科目にはさまざまな項目があり、前受金と間違えやすい勘定科目もあります。ここでは、前受金と混同しやすい勘定科目を解説します。
前受収益との違い
前受収益とは、未経過の期間における収益を計上する際に用いる勘定科目です。継続的にサービスを提供し時間の経過によって収益が得られるもの、たとえば家賃や受取利息、提供が完了していない商品の受取手数料などが挙げられます。
仮受金との違い
仮受金とは、目的は決まっていないがお金を受け取った際に用いられる勘定科目です。一方、前受金はどの商品やサービスに対するお金かがはっきりしています。商品などの提供前に受け取る点は同じですが、目的が明確かどうかという違いがあります。
預り金との違い
預り金とは、会社が一時的に従業員や取引先からお金を預かった際に使われる勘定科目です。給料から差し引いて、税務署に納付する源泉徴収や住民税などが預り金にあたります。前受金は最終的に売上になりますが、預り金は会社には残りません。
売掛金との違い
売掛金とは、商品を提供して後日代金を受け取る際に用いる勘定科目です。一方、前受金は商品提供の前に代金の一部もしくは全部を受け取ります。
売掛金は、商品提供の後に代金を受け取る場合の勘定科目です。たとえば、売却代金や運賃、サービス料、請負代金などの未収分が売掛金にあたります。
前受金かどうかの見分け方
前受金として処理すべきかどうかわからないという人に向けて、前受金かどうかの判断ポイントを解説します。
資産か負債か考える
まずは、資産科目なのか負債科目なのかを考えましょう。資産科目は権利で、負債科目は義務です。貸借対照表においては、仕訳で借方処理するものは資産、貸方処理するものは負債となります。
前受金は、後から商品などを提供しなければいけないという義務があることから、負債として扱います。
損益との関連性から判断する
次に、将来的に損益に関係してくるかを判断材料にしましょう。
前受金は受け取った際には負債として処理しますが、商品やサービスの提供後に売上高に振り替えることになります。「商品やサービスの提供後に売上高に振り替える=収益に影響する」といえるでしょう。
このように、判断に困った場合は損益に影響するかどうかを確認します。
マトリックス図で整理する
マトリックス図で整理するのもよい方法です。マトリックス図とは、縦軸と横軸を用いて項目を配置し、各要素の関係の有無や関連度合いを表すために使います。
資産か負債か、損益に対する影響の項目を軸としたマトリックス図を作成することで、前受金かどうかの判断に役立ちます。また、その他にも前受収益や仮受金などの前受金と、間違えやすい勘定科目をマトリックス図に配置することで、各勘定科目の役割がわかりやすくなります。
前受金処理のポイント
前受金を処理する際には、3つのポイントを押さえましょう。ここでは、前受金処理の各ポイントを詳しく解説します。
適切なタイミングで売上計上する
前受金はそのままにせずに、適切なタイミングで売上計上しなければいけません。前受金を売上計上するタイミングは、商品を提供した段階です。商品やサービスの提供前に代金を受け取っても、売上金として処理できないため注意しましょう。
しかし、代金を受け取った事実があり処理が必要になるため、前受金として処理しておきます。
消費税の対象とならないため注意する
前受金は消費税の対象にはなりません。消費税とは商品やサービスが提供される時点で課される税金です。前受金は商品などを提供する前に受け取る代金であり、代金受領時には商品が提供されていないため、消費税の対象外です。
先に受け取った代金に含まれる消費税については、仮受消費税として仕訳しましょう。決算時には、仮受消費税と仮払消費税を相殺処理します。消費税率が異なるものを取り扱っている、課税対象にならない取引を行ったという場合は、個別に計算する必要があります。
流動負債・固定負債か判断する
事業年度末日の翌日から1年以内に支払期日が到来する場合、流動負債に区分され、未払金としての計上が認められます。一方、支払期日の到来が1年超の場合は固定負債として区分され、長期未払金として計上されます。
一般的に、前受金は流動負債にあたります。前受金は「商品の用意ができた段階で商品を引き渡す義務がある=負債がある」と考えられるため、基本的には流動負債として処理されます。ただし、商品提供に1年以上かかる場合には固定負債に分類されます。
前受金に関連する帳票
前受金に関連する帳票はさまざまです。そのため、どのような帳票があるかを把握しておくとよいでしょう。前受金に関する帳票は、以下のとおりです。
- 前受金元帳:前受金が生じた際や売上高へ振り替えた際に取引先ごとに記録する帳簿
- 債権元帳:債権の発生や回収状況を記録する帳簿
- 前受残高一覧表:取引先ごとに繰越残高や貸方、借方、差引残高を記録するための帳簿
- 入金予定一覧表:取引先ごとに入金に関する情報を記録する帳簿
まとめ
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