扶養控除申告書の書き方と令和8年の扶養要件変更|記入例と確認ポイント

※本記事は2026年9月7日時点の情報です。最新の法令・様式は国税庁のサイトでご確認ください。個別の判定については税理士・社会保険労務士にご確認ください。

扶養控除等(異動)申告書(いわゆるマル扶)は、年末調整でもっとも回収・確認に工数がかかる書類です。とくに令和8年分は、扶養親族等の所得要件が緩和され、記載欄の名称も変わるため、例年と同じ案内では差し戻しが増えます。この記事では、担当者が知っておくべき記載ルールと、今年特有の確認ポイントを整理します。

扶養控除申告書の書き方と令和8年の扶養要件変更|記入例と確認ポイント

扶養控除等(異動)申告書とは

何のために提出する書類か

扶養控除等(異動)申告書は、従業員が扶養控除や障害者控除などの適用を受けるために、勤務先を経由して提出する申告書です。この申告書を提出している人は源泉徴収税額表の「甲欄」、提出していない人は「乙欄」が適用され、乙欄のほうが毎月の源泉徴収税額は高くなります。年末調整はこの申告書の提出が前提になるため、回収期限の3営業日前に未提出者の一覧を出力し、個別に催促してください。

提出タイミングは年末と年初の2回

申告書自体の提出期限は、その年の最初の給与の支払を受ける日の前日までです。年末調整の時期に翌年分を回収するのは、この期限に間に合わせるための実務上の運用です。

実務では、年末調整の際に翌年分をあわせて回収するのが一般的です。すなわち令和8年の年末調整では、令和8年分の記載内容の確認(異動の有無)と、令和9年分の新規提出を同時に扱います。従業員が混乱しやすいポイントなので、案内文で「どの年分の申告書なのか」を必ず明記します。

異動があったときはそのたびに提出

結婚・出産・家族の収入変動・死亡などで扶養の状況が変わった場合は、そのたびに異動内容を申告してもらいます。年末にまとめて発見すると、月次の源泉徴収をさかのぼって検証する手間が発生します。

異動がない場合は「簡易な申告書」も使える

令和7年分以後は、前年に提出した申告書の記載事項から異動がない場合、氏名・住所又は居所・個人番号を記載し、余白等に「異動がない」旨を記載した申告書(簡易な申告書)を提出することができます。

ただし令和8年分は所得要件の改正があるため、次のケースは「異動あり」として通常の記載が必要です。回収案内にチェックリストとして盛り込んでください。

  1. 所得要件の緩和で新たに扶養親族等に該当することになった家族がいる
  2. 特定親族の所得の見積額が62万円以下となり、特定扶養親族に該当することになった
  3. 扶養親族等の所得の見積額が要件を超えた、または年齢の変動で控除の区分が変わった
  4. 国外居住親族について扶養控除の適用要件の区分が変わった

令和8年分の変更点

扶養親族等の所得要件が62万円以下に緩和

基礎控除の引上げに伴い、扶養控除等の対象となる親族の所得要件が引き上げられました。令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用されます。

区分改正後(令和8・9年分)改正前(令和7年分)
扶養親族・同一生計配偶者・ひとり親の生計を一にする子62万円以下(給与収入136万円以下)58万円以下(給与収入123万円以下)
特定親族62万円超123万円以下(給与収入136万円超197万円以下)58万円超123万円以下(給与収入123万円超188万円以下)
配偶者特別控除の対象となる配偶者62万円超133万円以下(給与収入136万円超207万円以下)58万円超133万円以下(給与収入123万円超201万5,999円以下)
勤労学生89万円以下(給与収入163万円以下)85万円以下(給与収入150万円以下)

控除額自体(一般の控除対象扶養親族38万円、特定扶養親族63万円など)に変更はありません。変わるのは「控除を受けられる対象者の範囲」です。

ただし、この改正が源泉徴収事務に反映されるのは令和8年12月1日以後に支払う給与等からです。令和8年11月30日以前に支払う給与については、源泉徴収税額表の「扶養親族等の数」を改正前の基準(所得58万円以下=給与収入123万円以下)で数えます。年内の月次計算と12月の年末調整で判定基準が切り替わることが、今年の最大の注意点です。

参考リンク:国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」

記載欄が「源泉控除対象親族」に変更

令和8年分の扶養控除等(異動)申告書では、記載欄が「控除対象扶養親族」から「源泉控除対象親族」に変更されています。源泉控除対象親族とは、次の①②のいずれかに該当する人です。

  1. 控除対象扶養親族(16歳以上の扶養親族)
  2. 特定親族(19歳以上23歳未満)のうち、その年中の所得の見積額が100万円以下の人

ここに記載された特定親族は各月の給与の源泉徴収に反映されます。令和7年分までは年末調整でのみ適用されていたため、令和8年分以後は申告書の記載内容が月次給与計算にも影響する点が大きな違いです。ただし、申告書の裏面に印刷されている定義の金額と、12月の年末調整で使う基準は一致しません。

令和8年分の様式(裏面の定義欄)は改正前の金額で印刷されています

  • 【⑧特定親族】所得の見積額が58万円超123万円以下(給与の収入金額が123万円超188万円以下)
  • 【⑨源泉控除対象親族】控除対象扶養親族又は特定親族のうち所得の見積額が100万円以下(給与の収入金額が165万円以下)

一方で、扶養親族等の所得要件の改正は令和8年12月1日以後に支払う給与等から適用されます。そのため年末調整では、特定親族の下限は62万円超(給与収入136万円超)、上限の給与収入換算は197万円以下、源泉控除対象親族の100万円は給与収入174万円以下に読み替えます。


参考リンク:国税庁「令和8年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」

 

この切り替わりによって、所得の見積額が58万円超62万円以下の子は、改正により特定親族ではなく特定扶養親族(扶養控除63万円)に該当することになります。この場合は扶養控除の対象になるため、異動があった旨を記載した扶養控除等申告書の提出が必要です。

なお、所得の見積額が100万円超123万円以下の特定親族は源泉控除対象親族に該当しないため、この欄には記載しません。月次でも考慮されず、年末調整で「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を令和8年の最後の給与の支払を受ける日の前日までに提出して適用を受けます。

新たに対象になる家族は「令和8年12月1日 改正」と記載

所得要件の緩和により新たに扶養控除等の対象となった親族を記載する際は、「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと記載します。なお令和8年11月30日以前に支払う給与については、源泉徴収税額表を使用する際の「扶養親族等の数」に、この改正により新たに対象となった親族を含めないよう注意が必要です。

令和8年分の申告書の「記載事項」自体は変わらない

国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」の問2-1では、令和8年分の扶養控除等申告書に記載する事項に変更はないと示されています。すでに提出済みの申告書を従業員に返却して確認させる運用はこれまでと同じでよく、加えて「所得要件の緩和で新たに対象になる家族がいないか」を確認させるのが今年のポイントです。

参考リンク:国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」

扶養控除等(異動)申告書の書き方

本人に関する記載欄

勤務先の名称・法人番号・所在地は企業側で埋めて配布するのが一般的です。従業員には氏名・マイナンバー・住所・生年月日・世帯主との関係などを記入してもらいます。マイナンバーについては、一定の要件を満たす帳簿を備えている場合に記載を省略できる取扱いがあるため、自社の運用を決めてから案内します。

源泉控除対象配偶者の欄

本人の合計所得金額の見積額が900万円以下で、かつ配偶者の合計所得金額の見積額が95万円以下の場合に記載します。この95万円は今回の改正の対象外で、令和7年分から変わっていません。ただし給与収入に換算した金額は、給与所得控除の最低保障額の引上げによって年収169万円以下に変わります(改正前の換算では年収160万円以下)。解説記事や前年の案内文の多くが160万円のままになっているので、流用する際は注意してください。

配偶者控除・配偶者特別控除そのものの適用は、年末調整時に提出する「給与所得者の基礎控除申告書」「給与所得者の配偶者控除等申告書」で判定するため、二つの申告書の役割の違いを案内文で説明しておくと問い合わせが減ります。

源泉控除対象親族の欄

氏名・続柄・生年月日・合計所得金額の見積額・同居の区分などを記入します。判定の基準日はその年の12月31日現在で、年齢もこの日で判定します。扶養親族の区分と控除額の目安は次のとおりです。

区分対象控除額
一般の控除対象扶養親族16歳以上38万円
特定扶養親族19歳以上23歳未満63万円
老人扶養親族70歳以上48万円
同居老親等70歳以上の父母等で同居58万円

16歳未満の親族は扶養控除の対象外ですが、住民税の判定に使うため「住民税に関する事項」欄の「16歳未満の扶養親族」への記載が必要です。この欄の記載漏れは回収後の差し戻し原因になりやすいため、確認チェックリストに項目として入れてください。

また「住民税に関する事項」欄には、退職手当等(源泉徴収されるものに限ります)の支払を受ける配偶者(所得の見積額が133万円以下の人)・扶養親族・特定親族がいる場合も記載します。住民税では扶養親族等の要件となる所得に退職所得を含めないため、所得税では控除対象外でも住民税では控除される場合があるからです。

障害者・ひとり親・勤労学生の欄

該当する場合にチェックし、障害者控除は障害の程度や手帳の種類を記載します。障害者控除は扶養控除の対象にならない16歳未満の扶養親族でも適用されるため、16歳未満の子が障害者に該当する場合はこの欄の記載が必要です。

勤労学生の所得要件は、改正後は89万円以下(給与収入163万円以下)です。ここも申告書の裏面の説明は改正前の85万円以下(給与収入150万円以下)で印刷されているため、12月の年末調整では改正後の金額で判定します。

他の所得者が控除を受ける扶養親族等の欄

共働きで子をどちらの扶養に入れるかを調整する欄です。同一の親族を夫婦双方で重複して扶養に入れることはできないため、年内に扶養を入れ替えたケースはとくに確認が必要です。

異動月日及び事由の欄

年の途中で扶養の状況が変わった場合に、日付と事由を記載します。前述のとおり、今年は所得要件緩和によって新たに対象になった親族について「令和8年12月1日 改正」と記載します。

回収・確認でミスが起きやすいポイント

所得見積額の「収入」と「所得」の混同

従業員が最も間違えるのが、収入金額と所得金額の混同です。申告書に記載するのは合計所得金額の見積額で、給与のみなら収入から給与所得控除を引いた後の金額です。案内文では「年収136万円以下なら所得62万円以下」という対応関係を図で示すのが効果的です。

年収123万〜136万円レンジの家族

今年の最大の確認ポイントです。前年は扶養対象外として提出されていない家族が、今年は対象になる可能性があります。担当者側からの声がけなしでは漏れやすいので、案内文に明示します。

19歳以上23歳未満の子の判定

特定扶養親族(扶養控除63万円)なのか、特定親族特別控除なのかは、合計所得金額の区分で分かれます。改正後の令和8年分は次のとおりです。

子の合計所得金額(給与収入)適用される控除控除額月次の源泉への反映
62万円以下(136万円以下)扶養控除(特定扶養親族)63万円反映される
62万円超85万円以下(136万円超159万円以下)特定親族特別控除63万円反映される
85万円超100万円以下(159万円超174万円以下)特定親族特別控除61万円〜41万円反映される
100万円超123万円以下(174万円超197万円以下)特定親族特別控除31万円〜3万円反映されない

控除額は、62万円以下(扶養控除)と62万円超85万円以下(特定親族特別控除)のいずれも同額の63万円です。実際に控除額が下がるのは子の所得が85万円(給与収入159万円)を超えてからなので、従業員への説明ではこの点を伝えると安心されます。

対象者リストは、月次に反映される範囲(所得100万円以下)と、年末調整でのみ対応する範囲(100万円超123万円以下)に分けて作成してください。後者は扶養控除等申告書の源泉控除対象親族欄には記載せず、年末調整の特定親族特別控除申告書で申告します。

参考リンク:国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」「(参考)改正後の配偶者特別控除額及び特定親族特別控除額の表」

別居の親を扶養に入れているケース

生計を一にしていることが要件で、別居でも仕送り等の実態があれば認められます。実態の確認方法や必要な資料を社内ルールとして決めておくと、年々の判断のゆれを防げます。

マイナンバーの収集と管理

扶養親族分を含むマイナンバーの収集は、収集・保管・廃棄までの安全管理措置が必要になります。紙で集めてキャビネット保管する運用は、人数が増えるほどリスクと工数が上がります。

従業員への案内に入れたい三つの一文

  1. 今年は扶養の所得要件が緩和されているので、昨年は扶養に入れていない家族も対象になる可能性があります
  2. 記載するのは年収ではなく「合計所得金額の見積額」です(給与のみなら年収136万円→所得62万円)
  3. 15歳以下の子も「16歳未満の扶養親族」欄に記載が必要です

システムで自動化できる範囲と、人が確認すべき範囲

申告書の回収をシステム化すると、前年情報の初期表示、入力項目の必須チェック、未提出者の抽出、マイナンバーの収集とアクセス制限をシステム側で処理できます。

一方で、次の4点は人が判断します。

  1. 扶養親族の合計所得金額の見積額が実態と合っているか(給与収入123万〜136万円のレンジ)
  2. 19歳以上23歳未満の子の区分(月次反映分か、年末調整で対応する分か)
  3. 別居の親の生計を一にしている実態の確認
  4. 共働き家庭で同一の親族を重複して扶養に入れていないか

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よくある質問

Q.共働きで子の扶養を年の途中で入れ替えられますか

A.入れ替えはできますが、同一の親族を夫婦双方で重複して扶養に入れることはできません。すでに月次の源泉徴収に反映している場合は、異動の申告を受けてから変更してください。

Q.扶養親族の所得見積額が年末に変わった場合はどうしますか

A.判定は12月31日の現況で行うため、確定した金額で年末調整を行います。提出済みの申告書と差異がある場合は、異動内容を記載した申告書を再提出してもらいます。

Q.海外に住む親族を扶養に入れられますか

A.非居住者である親族は「国外居住親族」として、親族関係書類と送金関係書類の提出が必要です。30歳以上70歳未満の親族には留学等の要件があるため、判断が分かれる場合は税理士に確認してください。

Q.乙欄で処理していた従業員が年末に申告書を提出した場合はどうなりますか

年末調整を行う日までに提出があれば、甲欄として年末調整の対象になります(本来の提出期限はその年の最初の給与の支払を受ける日の前日までです)。提出がない場合は年末調整を行えず、本人が確定申告を行います。

まとめ

令和8年分の扶養控除等(異動)申告書は、記載事項自体に変更はない一方で、所得要件の緩和と「源泉控除対象親族」への欄の変更によって確認の観点が増えています。

次にとる行動は1つです。前年の申告書と源泉徴収簿から、扶養親族の所得見積額が給与収入123万〜136万円のレンジにあたる従業員と、19歳以上23歳未満の子がいる従業員を抽出し、重点確認リストを作成してください。

参考・出典

本記事は、国税庁が公表する一次情報にもとづいて作成しています。各セクションには根拠となる出典を確認日とあわせて記載しています。以下は本記事全体の主な出典です。制度の個別の当てはめについては、税理士・社会保険労務士または所轄税務署にご確認ください。

改正内容の根拠

申告書の様式と記載事項

用語と控除の範囲

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