
【2026年】年末調整の変更点まとめ|基礎控除の引上げと12月精算の実務
- 記事公開日:
- 最終更新日:2026-09-09
- この記事でわかること / 3つのポイント
- 基礎控除は本則62万円、特例で最大104万円になる
- 扶養親族等の所得要件が合計所得62万円以下に緩和
- 改正分は令和8年12月の年末調整でまとめて精算する
※本記事は2026年9月7日時点の情報です。最新の法令・様式は国税庁のサイトでご確認ください。個別の判定については税理士・社会保険労務士にご確認ください。
2026年(令和8年)分の年末調整は、基礎控除と給与所得控除の引上げ、扶養親族等の所得要件の緩和が重なる大きな改正年です。しかも改正内容は毎月の源泉徴収には反映されず、12月の年末調整でまとめて精算するという特殊な適用のしかたになります。この記事では、人事労務・給与計算の担当者が押さえるべき変更点と、実務でやるべき準備を整理して解説します。
【2026年】年末調整の変更点まとめ|基礎控除の引上げと12月精算の実務
2026年(令和8年)分 年末調整の変更点は4つ
年末調整の実務に影響する変更は大きく次の4点です。①〜③は令和8年度税制改正によるもので、令和8年12月1日に施行され、令和8年分の所得税から適用されます。④は令和7年度税制改正で創設された子育て世帯向けの時限措置で、令和8年度税制改正により適用期限が令和9年分まで延長され、令和8年分・令和9年分の所得税に適用されます。
| 変更点 | 改正の内容 | 実務への影響 |
|---|---|---|
| ① 基礎控除の引上げ | 本則58万円→62万円。令和8年・9年分は特例加算が最大42万円上乗せされ、最大104万円 | 従業員本人の合計所得金額に応じた控除額の区分を改正後の金額で再計算する |
| ② 給与所得控除の最低保障額の引上げ | 65万円→74万円(本則69万円+特例5万円) | 令和8年分の改正後「給与所得控除後の給与等の金額の表」を使用する |
| ③ 扶養親族等の所得要件の緩和 | 扶養親族・同一生計配偶者などの所得要件が58万円以下→62万円以下(給与収入のみなら136万円以下) | 前年は対象外だった家族が扶養控除の対象になるため、再確認と申告書の追加提出が必要 |
| ④ 子育て世帯向け生命保険料控除の特例(令和8・9年分) | その年の12月31日時点で23歳未満の扶養親族がいる場合、新契約(平成24年1月1日以後締結)の一般生命保険料控除の上限が4万円→6万円(合計適用限度額12万円は変わらず) | 保険料控除申告書の確認時に、扶養親族の年齢と契約が新契約か旧契約かの確認が加わる |
制度ごとの施行日・適用日・年末調整での反映時期
令和8年分の改正は、「改正法の規定が効力を持つ日(施行日)」「どの年分の所得税から適用されるか(適用日)」「実務でいつ反映するか(年末調整での反映時期)」がずれている点が特徴です。制度ごとに整理すると次のとおりです。
| 変更点 | 施行日 | 適用日(適用対象) | 年末調整での反映時期 |
|---|---|---|---|
| ① 基礎控除の引上げ | 令和8年12月1日 | 令和8年分の所得税から(本則62万円は恒久、特例加算最大42万円は令和8年・9年分の時限措置) | 令和8年12月の年末調整。本則の差額4万円と特例加算(最大42万円)をまとめて精算 |
| ② 給与所得控除の最低保障額の引上げ | 令和8年12月1日 | 令和8年分の所得税から(本則69万円は恒久、特例5万円は令和8年・9年分) | 令和8年12月の年末調整。改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」で年税額を計算 |
| ③ 扶養親族等の所得要件の緩和 | 令和8年12月1日 | 令和8年分の所得税から | 令和8年12月の年末調整で判定。新たに対象となる親族は申告書の「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」と記載 |
| ④ 子育て世帯向け生命保険料控除の特例 | 令和7年度税制改正で創設(①〜③とは根拠となる改正年が異なります) | 令和8年分・令和9年分の所得税(令和8年度税制改正で適用期限が令和9年分まで延長。所得税のみで、住民税は対象外) | 令和8年12月の年末調整。保険料控除申告書の提出により適用(扶養親族がその年12月31日時点で23歳未満かどうかの判定と、新契約・旧契約の区分判定が必要) |
反映時期を読むときの注意点は次の3点です。
- 1月〜11月の毎月の給与(源泉徴収事務)には反映されない:令和8年分の源泉徴収税額表には令和8年度改正が織り込まれていません(国税庁資料では「改正前の『源泉徴収税額表』」と表記されています)。賞与も含めて従来どおりこの税額表で天引きします。
- 改正されたのは令和9年分以後の「源泉徴収税額表」:基礎控除額と給与所得控除の最低保障額の引上げに伴って改正されたのは令和9年分以後の源泉徴収税額表で、令和8年分以後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」はすでに改正されています。「令和8年12月の年末調整対応」と「令和9年1月以後の新税額表対応」は別のスケジュールとして給与システムの対応状況を確認します。
- 最後の給与の支払日が令和8年11月30日以前になる人には改正後の控除が適用されない:年末調整はその年最後に給与を支払う際に行うため、最後の給与を令和8年11月30日以前に支払った場合の年末調整では改正後の控除等は適用されません。この場合、改正後の控除の適用を受けるには本人の確定申告等が必要です(国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」Q1-3・Q7-1)。なお年の中途で退職した人はこれとは別の扱いになるため、後述の「「最後の給与の支払日」と「中途退職」は分けて考える」で確認してください。
① 基礎控除の引上げ(本則62万円・特例で最大104万円)
基礎控除は本則部分が58万円から62万円に引き上げられ、さらに令和8年・9年分は時限的な特例加算が上乗せされます。合計所得金額に応じた所得税の基礎控除額は次のとおりです。
| 合計所得金額 | 所得税の基礎控除額 |
|---|---|
| 489万円以下 | 104万円(本則62万円+特例42万円) |
| 489万円超〜655万円以下 | 67万円(本則62万円+特例5万円) |
| 655万円超〜2,350万円以下 | 62万円 |
| 2,350万円超〜2,400万円以下 | 48万円 |
| 2,400万円超〜2,450万円以下 | 32万円 |
| 2,450万円超〜2,500万円以下 | 16万円 |
| 2,500万円超 | 0円 |
参考リンク:
国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」
国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」Ⅰ 昨年と比べて変わった点
② 給与所得控除の最低保障額の引上げ(65万円→74万円)
給与所得控除の最低保障額は、本則が65万円から69万円に引き上げられ、令和8年・9年分は特例として5万円が加算されて74万円となります。基礎控除104万円と合わせると、給与収入ベースの所得税の課税最低限は178万円まで拡大します。いわゆる「160万円の壁」が「178万円の壁」に移動する、というのが従業員側から見た変化です。
年末調整の計算では「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」が改正されるため、必ず令和8年分の改正後の表を使用します。なお令和8年・9年分については、給与の収入金額が69万1,000円以上220万円未満である場合の給与所得の金額に特例が設けられており、国税庁が作成する令和8年分の表はこの特例を織り込んだものになっています。給与計算ソフトがこの令和8年分の表に更新されているかを確認してください。
参考リンク:国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」Q3-1
③ 扶養親族等の所得要件の緩和(62万円以下・給与収入136万円以下)
基礎控除の見直しに合わせて、扶養控除等の対象となる親族の所得要件も引き上げられました。
| 区分 | 令和8年分(改正後) | 令和7年分(改正前) |
|---|---|---|
| 扶養親族・同一生計配偶者・ひとり親の生計を一にする子 | 62万円以下(給与収入136万円以下) | 58万円以下(給与収入123万円以下) |
| 特定親族 | 62万円超123万円以下(給与収入136万円超197万円以下) | 58万円超123万円以下(給与収入123万円超188万円以下) |
| 配偶者特別控除の対象となる配偶者 | 62万円超133万円以下(給与収入136万円超207万円以下) | 58万円超133万円以下(給与収入123万円超201万5,999円以下) |
| 勤労学生 | 89万円以下(給与収入163万円以下) | 85万円以下(給与収入150万円以下) |
カッコ内の給与収入額は、家族の収入が給与だけの場合の目安です。給与以外の所得がある場合は収入金額ではなく合計所得金額で判定します。
参考リンク:
国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」
④ 子育て世帯向け生命保険料控除の特例
令和8年分・令和9年分は、その年の12月31日時点で23歳未満の扶養親族がいる場合、一般生命保険料控除の上限額が4万円から6万円に引き上げられます。ただし生命保険料控除全体の合計適用限度額は12万円のままです。対象かどうかで控除額の判定が変わるため、保険料控除申告書のチェック時に扶養親族の年齢を確認する手順を追加しておきます。
拡充されるのは「新契約」の一般生命保険料控除のみ
引上げの対象は、平成24年1月1日以後に締結した契約(新契約)に係る新生命保険料についての一般生命保険料控除です。次のものは対象外なので、申告書の確認時に取り違えないよう注意します。
| 区分 | 令和8年分の取扱い |
|---|---|
| 新契約の一般生命保険料控除 | その年の12月31日時点で23歳未満の扶養親族がいる場合は上限6万円(いない場合は4万円) |
| 旧契約(平成23年12月31日以前締結)のみの一般生命保険料控除 | 従来どおり上限5万円(拡充なし) |
| 新契約と旧契約の双方を支払っている場合(23歳未満の扶養親族がいるとき) | 令和8・9年分の一般生命保険料控除の適用限度額は6万円(改正前4万円) |
| 介護医療保険料控除・個人年金保険料控除 | 各4万円のまま(拡充なし) |
| 生命保険料控除の合計適用限度額 | 12万円のまま |
| 住民税の一般生命保険料控除 | 2.8万円のまま(拡充は所得税のみ) |
新契約か旧契約かの判定は、申込日や責任開始日ではなく契約日(保険期間の起算日)で行います。従業員から届く控除証明書には新旧の区分と種類(一般・介護医療・個人年金)が記載されているため、一般・新契約の欄の金額かどうかを確認します。
新契約と旧契約の双方に加入している場合
23歳未満の扶養親族がいる従業員が新旧双方の一般生命保険料を支払っている場合、国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」では、令和8・9年分の一般生命保険料控除の適用限度額は6万円(改正前4万円)と示されています。新契約分だけで計算する方法・旧契約分だけで計算する方法と有利な方を選べるため、旧契約を併せ持つ従業員は自動計算の結果をそのまま採用せず、確認対象に含めておくと安全です。
よく迷う2点は国税庁資料に答えがあります。共働き世帯で同じ子が夫婦双方の扶養親族に該当する場合は、扶養控除と違って夫婦の双方がこの特例の適用を受けられます(国税庁「令和8年分 年末調整Q&A」)。年齢の判定はその年12月31日の現況で行うため、年の途中で23歳になった子は対象外です(所得の見積額は保険料控除申告書を提出する日の現況で判定)。これ以外の個別判定は、社内案内を作る前に税理士・社会保険労務士に確認してください。
参考リンク:
国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」Ⅰ 昨年と比べて変わった点
国税庁「令和8年分 年末調整Q&A」
国税庁 法令解釈通達「第41条の15の5関係」
なぜ「12月の年末調整でまとめて精算」になるのか
令和8年分の改正でもっとも実務上ややこしいのが、適用タイミングです。ここを理解していないと、従業員への説明も社内の段取りもずれます。
11月までの給与計算(源泉徴収事務)は従来どおり
国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」では、令和8年11月までの給与等の源泉徴収事務に変更は生じないと示されています。令和8年分の源泉徴収税額表は令和7年度改正までを反映したもので、令和8年度改正で新設・拡充された基礎控除の特例加算は織り込まれていません。1月から11月の毎月の給与は、この税額表で計算した税額を天引きしている状態です。
国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」も、令和8年12月に行う年末調整では引上げ後の基礎控除額と令和8年分の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行うと明記しています。
参考リンク:
国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」
国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表」
12月の年末調整で「差額控除」を反映する
令和8年12月に行う年末調整では、改正後の基礎控除額と改正後の「給与所得控除後の給与等の金額の表」で1年間の税額を計算し、すでに源泉徴収した税額と精算します。12月の年末調整で反映されるのは、おおむね次の4点です。
- 基礎控除(本則)の差額:58万円→62万円
- 給与所得控除(最低保障額・本則)の差額:65万円→69万円
- 基礎控除の特例加算:最大42万円
- 給与所得控除(最低保障額)の特例加算:5万円
12月給与での還付額は例年と異なる
月次で控除しきれていない分を12月にまとめて精算するため、多くの従業員で還付が生じます。合計所得金額489万円以下の従業員では、基礎控除額が前年の58万円から104万円になり、46万円分の控除が12月にまとめて反映されます。
11月末までに、還付原資、預り金がマイナス残高になる場合の仕訳、12月給与への反映方法の3点を経理と確認してください。過納額は年末調整を行った月分の徴収税額から差し引いて還付し、それでも還付しきれないときは、その後に納付する徴収税額から順次差し引きます。
還付することとなった日の翌月から2か月を経過しても還付しきれないと見込まれる場合は、「源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」を所轄税務署に提出して還付を受けられます。今年は還付額が大きくなるため、この手続きが必要になる可能性を経理と共有しておいてください。処理の具体的な流れは「年末調整と給与計算の連携」の記事で解説します。
参考リンク:国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」Q3-1
「最後の給与の支払日」と「中途退職」は分けて考える
改正後の控除が適用されるのは、令和8年12月1日以後に支払う給与について年末調整を行う場合です。ここで混同しやすいのが「在職しているが最後の給与の支払日が早いケース」と「年の中途で退職したケース」です。この2つは精算のしかたが異なり、該当者全員が確定申告をしなければならないわけではありません。
ケース1:年の中途で年末調整を行う人(死亡退職者・海外転勤者など)
次のような人は、年の中途であっても一定の要件のもとで年末調整の対象になります。「年末調整を受けられない人」ではないため、一律に確定申告が必要と案内しないよう注意します。
- 死亡により退職した人
- 海外の支店等への転勤などにより非居住者となった人
- 著しい心身の障害のため退職し、本年中に再就職の見込みがない人
- 12月に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人
- いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が136万円以下の人(退職後、本年中に他の勤務先等から給与の支払を受けると見込まれる人を除きます)。この136万円は扶養親族等の所得要件の改正に合わせた令和8年分の金額です(令和7年分は123万円)
これらの人は退職・出国の時点で勤務先が年末調整を行い、改正後の控除を使えるかどうかは最後の給与の支払日で分かれます。
| 最後の給与の支払日 | 年末調整 | 改正後の控除 | 改正分の精算 |
|---|---|---|---|
| 令和8年12月1日以後 | 行う | 適用される | 年末調整で完結する(この点のための確定申告は不要) |
| 令和8年11月30日以前 | 行う | 適用されない(年末調整はその年最後の給与を支払う際に行うため、施行日前に行う年末調整では改正後の控除等は適用されない) | 改正分は本人の確定申告等で精算。出国の時までに準確定申告書を提出した場合は、令和8年12月1日〜令和13年12月1日までに更正の請求 |
つまり同じ海外転勤者でも、11月に出国して最後の給与が11月支払いなら改正後の控除は適用されず、12月に給与を支払うなら適用されます。死亡退職も同じ考え方で、退職の事由ではなく支払日を基準に判断します。支払日が11月30日以前になる人には、年末調整済みでも改正分について確定申告(死亡退職の場合は準確定申告等)で還付を受けられることを伝えておきます。国税庁Q&Aは、海外転勤により非居住者となった人・死亡により退職した人に加えて、休業や休職をして令和8年末までに復職していない人も、11月30日以前に最後の給与を受けて年末調整を受けた場合は確定申告が必要になると示しています。ただし源泉徴収税額がない人(源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄が0円の人など)は、確定申告をしても還付される税金はありません。
なお、11月30日以前に準確定申告書を提出した場合は、令和8年12月1日から令和13年12月1日までに更正の請求を行うことで改正後の控除の適用を受けられます(法定申告期限が到来していない場合は訂正申告でも可)。
参考リンク:国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」Q1-3・Q6-1・Q6-3・Q7-1
ケース2:ケース1に該当しない中途退職者
上記の要件に該当しない一般的な中途退職者(自己都合で年の中途に退職した人など)は、退職時には年末調整を行わず、その後の状況によって精算方法が変わります。
| 退職後の状況 | 精算のしかた |
|---|---|
| 年内に再就職した | 再就職先に前職の源泉徴収票を提出し、再就職先の令和8年12月の年末調整で前職分を合算して精算。改正後の控除も適用され、確定申告は不要 |
| 年内に再就職しなかった | 年末調整を受けられないため、本人が確定申告で精算(還付になるケースが多い) |
| 死亡退職・海外転勤(非居住者)・著しい心身の障害による退職など、年の中途で年末調整を行う要件に該当する | ケース1の扱い。退職・出国の時点で勤務先が年末調整を行い、改正後の控除の適用は最後の給与の支払日で判断する |
つまり、中途退職者のうち確定申告が必要になるのは「年内に再就職せず、どこでも年末調整を受けていない人」です(死亡退職者や海外転勤者のように年の中途で年末調整を行う人は含まれません)。退職者への案内では、源泉徴収票を速やかに交付し、再就職先で年末調整を受ければ確定申告は不要であることを明記すると、問い合わせを減らせます。
担当者の確認手順
- 対象者のうち、令和8年12月1日以後に給与の支払がある人を支払日ベースで一覧化する(休職者・海外赴任者を含む)
- 支払日が11月30日以前になる人(休業・休職のまま年末まで復職しない人を含む)は、年末調整を行ったうえで、改正後の控除は適用されず、その適用を受けるには本人の確定申告等が必要になることを案内する
- 退職者・出国者は、まず「年の中途で年末調整を行う要件(死亡退職・非居住者となる海外転勤など)に該当するか」を判定し、該当する人はその時点で年末調整を行う。該当しない人には源泉徴収票を交付する
- 年内に中途入社した人は、前職の源泉徴収票の回収状況を年末調整前に確認する
退職時に年末調整を行う要件の当てはめは判断が分かれやすいため、迷った場合は税理士に確認してください。対象者判定の詳細は「年末調整の対象者・対象外の判定」の記事で解説しています。
申告書・帳票の変更点
基礎控除申告書などの様式変更
「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」は、基礎控除額の引上げに合わせて「控除額の計算」の表や「判定」欄が改正後の金額に修正されます。保険料控除申告書には、23歳未満の扶養親族を有する場合の特例に対応した記載欄が追加されます。前年の様式を流用しないよう、配布前に必ず令和8年分の様式であることを確認します。
参考リンク:国税庁「変更を予定している年末調整関係書類(事前の情報提供)」
扶養控除等(異動)申告書と「源泉控除対象親族」
令和8年分の扶養控除等(異動)申告書では、記載欄が「控除対象扶養親族」から「源泉控除対象親族」に変更されています。源泉控除対象親族には、控除対象扶養親族のほか、19歳以上23歳未満で合計所得金額の見積額が58万円超100万円以下の特定親族も含まれます。ここに記載された特定親族は各月の給与の源泉徴収に反映されるため、申告書の記載内容が月次給与計算にも影響する点が令和7年分までとの違いです。なお合計所得金額が100万円超123万円以下の特定親族は月次では考慮されず、年末調整で特定親族特別控除申告書を提出して適用を受けます。
もう一点、今年だけ発生する論点があります。扶養控除等申告書に源泉控除対象親族として記載していた特定親族が、所得要件の改正により控除対象扶養親族(特定扶養親族)に該当することとなった場合、その親族は特定親族特別控除ではなく扶養控除の対象になります。合計所得金額が58万円超62万円以下のレンジがこれに当たります。この場合も、異動があった旨を記載した扶養控除等申告書の提出が必要です。
参考リンク:国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」Q2-4
「令和8年12月1日 改正」の記載が必要になるケース
所得要件の緩和により新たに扶養控除等の対象となる親族を申告書に記載する場合は、「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと記載します。従業員に返却して確認させる運用をしている場合は、この記載方法まで案内文に含めておくと差し戻しが減ります。
あわせて、国税庁Q&Aで確認できる実務上のポイントが3点あります。
- 令和8年分の扶養控除等申告書に記載する事項自体は変更されていません。ただし様式裏面の注意事項等が改正前の内容になっている場合があるため、従業員への案内時は本文の判定基準を優先します
- 12月1日から書類の提出を受けたのでは年末調整に間に合わない事態も想定されるため、施行日前から改正を反映した年末調整関係書類の提出を受けても差し支えありません。申告書自体は、原則として12月1日以後最初に給与の支払を受ける日の前日までに提出しますが、年末調整を行う時までに提出があればその申告に基づいて年末調整ができます
- 令和8年11月30日以前に支払う給与について源泉徴収税額表を使う際の「扶養親族等の数」には、改正により新たに対象となった親族を含めないよう注意します
参考リンク:国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」Q1-2・Q2-1
法定調書の様式変更とみなし提出特例
源泉徴収票そのものの改正はありませんが、国税システムの更改等に伴い、令和8年8月以降に提出する法定調書の書面様式が変更されています。提出時は国税庁の最新様式を使用してください。
もう一つ押さえておきたいのが「源泉徴収票のみなし提出の特例」です。令和5年度税制改正で創設された制度で、市区町村に給与支払報告書を提出した場合には、税務署長に源泉徴収票を提出したものとみなされます。ただし「給与支払報告書を提出すれば常に税務署への提出が不要になる」わけではなく、対象となる年分や源泉徴収票の範囲などの条件があります。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 適用時期・対象年分 | 令和9年1月1日以後に提出すべき令和8年分以後の源泉徴収票が対象。令和7年分以前の源泉徴収票や、令和7年分以前の内容を訂正する源泉徴収票は対象外で、従来どおり税務署に提出します |
| 支払報告書の記載内容 | 源泉徴収票に記載すべき一定の事項が記載された支払報告書を市区町村に提出することが前提です。記載事項に不足があれば、みなし提出の前提を満たしません |
| 提出方法 | eLTAX・光ディスク等・書面のいずれの方法で提出した場合も特例の対象です。ただしマイナポータル連携の対象になるのはeLTAXで提出した支払報告書だけで、eLTAXの「電子的提出の一元化機能」は令和8年9月末をもって終了します |
| 対象となる源泉徴収票の範囲 | 特例の創設に併せて、源泉徴収票の税務署への提出範囲が支払報告書に揃えられました。支払報告書を提出していない受給者について、みなし提出は働きません |
| 受給者への交付 | 不要になるのは税務署提出用の源泉徴収票だけです。すべての受給者への源泉徴収票の作成・交付は引き続き必要です |
| 合計表・他の法定調書 | 支払報告書を提出した場合は、給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表も税務署に提出する必要はありません。ただし報酬・料金等の支払調書など他の法定調書を税務署に提出する場合は、その調書について記載した合計表を併せて提出します |
あわせて、令和9年1月1日以後に提出する法定調書からは、電子的提出義務の判定基準が100枚以上から30枚以上に引き下げられます。自社の提出枚数と提出方法を早めに確認してください。個別の当てはめは国税庁の特設ページとQ&Aで確認し、判断に迷う場合は所轄税務署または税理士にご確認ください。
参考リンク:
国税庁「源泉徴収票のみなし提出の特例 特設ページ」
国税庁「源泉徴収票(給与所得・公的年金等)のみなし提出の特例に関するQ&A(令和8年4月)」
令和8年分は「控除の改正」「法定調書の様式変更」「みなし提出の特例」の3つを同時に確認する必要があります。
通勤手当・食事の非課税限度額の改正(令和8年4月1日以後)
令和8年分は控除の改正だけでなく、毎月の給与計算と年末調整で集計する課税給与総額に影響する改正もあります。
通勤手当の非課税限度額(駐車場等の料金相当額を加算)
交通用具(自動車など)で通勤する人に支給する通勤手当について、次の2点が変わりました。
- 通勤距離が片道65km以上の人の1か月当たりの非課税限度額が引き上げられた(65km以上75km未満45,700円/75km以上85km未満52,700円/85km以上95km未満59,600円/95km以上66,400円)
- 一定の要件を満たす駐車場等を利用してその料金を負担することを常例とする人は、通勤距離の区分に応じた非課税限度額に、1か月当たりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算した金額が非課税限度額になる(通勤距離が片道2km未満の人は対象外)
「一定の要件を満たす駐車場等」は、勤務する場所の周辺、または通勤に利用する駅・停留所などの施設の周辺にある駐車施設に限られます。自宅付近の駐車場は該当せず、自転車・バイクの駐輪場は含まれます。
この改正は令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当から適用されます。適用の判定は通勤手当の計算期間ではなく支給日(支給日が定められていない場合は支給を受けた日)で行うため、3月分を4月に支払うようなケースでは支給日で判断します。改正前の限度額で課税していた分がある場合は、年末調整で集計する課税給与総額が過大になっていないかを確認してください。個別の当てはめは国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正に関するQ&A」で確認し、迷う場合は所轄税務署にご確認ください。
参考リンク:国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正に関するQ&A(令和8年4月)」
食事の現物支給の非課税限度額(月額7,500円)
食事の現物支給に係る非課税限度額が月額3,500円から7,500円に引き上げられました。非課税となるのは、①従業員から実際に徴収している対価が食事の価額の50%相当額以上で、かつ②食事の価額から徴収額を差し引いた残額が月額7,500円以下の場合です。深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭も、1回650円以下(改正前300円以下)に引き上げられています。いずれも令和8年4月1日以後に支給する食事等から適用されます。
参考リンク:国税庁「食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて」
帳票・計算表は必ず令和8年分を使う
源泉徴収簿や各種申告書、年末調整の計算表は、控除額の改正に合わせて令和8年分の記載欄・金額に変わっています。前年の様式や前年の計算表を流用すると控除額の判定を誤るため、国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」に掲載された令和8年分の様式・計算表を使用してください。
年末調整の対象外・翌年以降になる改正
同じ令和8年度税制改正でも、令和8年分の年末調整では扱わないものがあります。従業員向け案内文に混ぜると混乱を招くため、社内では「今年やること」と切り分けて管理します。
| 改正 | 内容 | 適用時期 |
|---|---|---|
| 公的年金等の源泉徴収 | 源泉徴収税額の計算における基礎的控除額の引上げ | 令和9年1月1日以後に支払うべき公的年金等から。令和8年分は12月の年金支払時に年金支払者が精算し、還付は原則として支払者から行われる(給与の年末調整とは別。確定給付企業年金法に基づく年金等は対象外で、12月に年金の支払がない場合は精算されないため本人の確定申告で精算) |
| ひとり親控除 | 控除額が35万円→38万円 | 令和9年分以後の所得税 |
| 防衛特別所得税の創設 | 源泉徴収すべき所得税額の1%相当額を併せて徴収・納付。あわせて復興特別所得税の税率が2.1%→1.1%に引下げ、課税期間は令和29年12月31日まで延長 | 令和9年1月1日以後に生ずる所得に対する所得税 |
| 住宅借入金等特別控除 | 認定住宅等の借入限度額引上げ、子育て世帯への上乗せ措置の拡充、床面積要件の緩和、適用期限を令和12年12月31日まで延長 | 年末調整では、従業員が提出する「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」に記載された借入限度額・控除率で計算する |
| 家内労働者等の所得計算の特例 | 必要経費に算入する最低保障額が65万円→69万円 | 給与所得者の年末調整には通常影響しない |
| 企業型DCのマッチング拠出 | 加入者掛金が事業主掛金を超えられない制限が撤廃(厚生労働省の制度改正) | 2026年4月1日以後。給与控除項目の設定に影響 |
担当者が今すぐやるべき6つの準備
- 給与システムの改正対応スケジュールを確認する(令和8年12月の年末調整対応と、令和9年1月以後の新しい源泉徴収税額表への対応は別物です)
- 令和8年分の新様式で申告書を配布する準備をする
- 「昨年は扶養対象外だった家族がいる従業員」を洗い出し、重点確認リストを作る
- 従業員向け案内文に、今年は12月に精算されること・還付が増える可能性があることを明記する
- 12月給与への還付反映と仕訳処理を経理と事前に合意しておく
- 通勤手当・食事の現物支給の非課税限度額の設定が、令和8年4月1日以後の改正後の基準になっているかを確認する
段取りの全体像とチェックリストは「年末調整のスケジュールと進め方」の記事で詳しく整理しています。
例年より重点的に確認したい従業員
- 配偶者やアルバイトの子の年収が123万〜136万円のレンジにいる従業員
- 19歳以上23歳未満の子がいる従業員(特定親族・特定親族特別控除の判定)
- その年の12月31日時点で23歳未満の扶養親族がいて、生命保険に加入している従業員
- 年の中途で入社・退職した従業員、休業・休職者、海外赴任者(令和8年を通じて非居住者となる人は基礎控除の特例加算が適用されず、基礎控除は62万円のみです)
- 合計所得金額が489万円前後・655万円前後の従業員(特例加算の区分の境目)
判定の詳細は「年末調整の対象者・対象外の判定」「扶養控除申告書の書き方」の各記事で解説しています。
システムで自動化できる範囲と、人が確認すべき範囲
改正対応でシステムが担えるのは、控除額の計算と帳票への反映です。給与計算ソフトが令和8年分の改正に対応すれば、合計所得金額に応じた基礎控除額の区分判定、改正後の「給与所得控除後の給与等の金額の表」による年税額の計算、12月給与への還付額の反映を自動で処理できます。
一方で、次の4点は人が確認する必要があります。
- 扶養親族の合計所得金額の見積額(給与収入123万〜136万円のレンジ)
- 19歳以上23歳未満の子の区分(源泉控除対象親族か、特定親族特別控除の対象か)
- 中途入社者の前職源泉徴収票の合算
- 最後の給与の支払日が令和8年11月30日以前かどうか
従業員からの情報収集から給与計算・帳票作成までを一つの流れでつなげたい場合は、バクラク人事労務とバクラク給与をあわせてご検討ください。料金や対応範囲の詳細はお問い合わせください。
よくある質問
Q.11月までに天引きした税額をさかのぼって修正する必要はありますか
A.ありません。11月までの源泉徴収は令和8年分の源泉徴収税額表で計算したものが正しく、差額は12月の年末調整で精算します。
Q.令和8年中に支払う賞与の源泉徴収はどう扱いますか
A.令和8年中の賞与も改正前の税額表で源泉徴収し、12月の年末調整で年税額と精算します。
Q.従業員から「還付額が去年と違う」と聞かれたら何を説明しますか
A.控除額の改正分が11月までの給与に反映されておらず、12月の年末調整でまとめて精算されるためだと説明してください。案内文に「今年は12月に精算される」の1行を入れておくと、問い合わせ件数を減らせます。
Q.年末調整の後に扶養の判定が変わった場合はどうなりますか
A.扶養親族に該当するかどうかはその年12月31日の現況で判定します。年末調整が終わっていても、従業員から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらえば、翌年1月に「給与所得の源泉徴収票」を交付する時まで年末調整の再計算ができます(再計算によらず、本人が確定申告で還付を受けることもできます)。手順は「年末調整のミス・やり直し(再年調)と訂正方法」の記事で解説します。
まとめ
令和8年分の年末調整は、控除額の改正、申告書の様式変更、法定調書の様式変更が同時に重なります。11月までは従来どおりの源泉徴収、12月の年末調整で改正後の控除を精算するという適用タイミングが、例年との最大の違いです。
次にとる行動は1つです。9月中に給与システムの改正対応スケジュールを確認し、令和8年12月の年末調整対応と令和9年1月以後の源泉徴収税額表対応の適用日を、社内カレンダーに登録してください。
参考・出典
本記事は、国税庁が公表する一次情報にもとづいて作成しています。各セクションには根拠となる出典を確認日とあわせて記載しています。以下は本記事全体の主な出典です。制度の個別の当てはめについては、税理士・社会保険労務士または所轄税務署にご確認ください。
制度の根拠となる資料(国税庁)
年末調整の実務(国税庁)
- 「令和8年分 年末調整のしかた」
- 「令和8年分 年末調整のしかた」Ⅰ 昨年と比べて変わった点(基礎控除の引上げ等)
- 「令和8年分 年末調整Q&A」
- 「令和8年分 源泉徴収税額表」
- 「変更を予定している年末調整関係書類(事前の情報提供)」
個別の改正項目(国税庁・財務省)
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