定年の年齢は何歳が多い?65歳までの雇用確保義務化についても解説

定年の年齢は何歳が多い?65歳までの雇用確保義務化についても解説

かつての日本では「60歳定年」が主流だったものの、近年は60歳以降も働ける職場や環境が整備されつつあります。労働人口の減少や年金支給年齢の引き上げなどを背景として、高齢の従業員の雇用延長を求める声が高まっているのが現状です。 本記事では、定年制度の導入割合の実態を紹介します。65歳までの雇用確保義務化についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

1.定年の年齢は何歳が多い?

ここでは、厚生労働省のデータをもとに、定年・再雇用の導入割合と年齢分布を紹介します。

1-1.企業規模別にみた定年の年齢と定年制の導入割合

厚生労働省が実施した調査によると、定年制を設けている企業は全体の94.4%を占めています。企業規模別の定年制導入割合は以下のとおりです。

企業規模

割合

1,000人以上

99.3%

300~999人

98.6%

100~299人

97.3%

30~99人

93.0%

参考:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査 定年制等

いずれも高水準ではあるものの、企業規模が大きいほど定年制を採用している割合が高い傾向にあります。大企業ほど人事制度が整備されていることや、退職金・年金制度との整合性を重視していることが背景にあると考えられます。

一方、定年年齢に注目すると「一律定年制」を定めている企業のうち、60歳を定年とする企業が72.3%と、最も多い結果となりました。しかし、65歳以上を定年年齢とする企業は24.5%と増加傾向にあり、高年齢者の就業機会が広がっていることがわかります。

大企業は60歳定年後に再雇用制度などで対応している一方、中小企業では人材確保の観点から定年を延長するケースが多いです。日本企業では「60歳定年」が主流でありながらも「65歳定年」や「定年廃止」を進める動きが広がっているといえるでしょう。

1-2.再雇用制度の導入割合は63.9%、勤務延長が10.5%

令和4年の調査によると、定年制を一律に定めている企業のうち「退職後の雇用継続措置」を講じている企業の割合は94.2%に上ります。

うち「勤務延長制度のみ」を導入している企業は10.5%「再雇用制度のみ」が63.9%、さらに「両制度併用」が19.8%です。

「一旦退職とし、その後再雇用という形で継続雇用する方式」を採用する企業が多く、定年延長や定年引上げで継続雇用とする企業は少ない傾向にあります。

参考:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査 定年制等

2. 2025年4月から開始した「65歳までの雇用確保義務化」とは?

「高年齢者雇用安定法」とは、高齢者が希望すれば65歳まで働けるようにすることを企業に義務付けた法律です。2025年4月より、すべての企業に対して、定年の引上げや継続雇用制度の導入などによる「65歳までの雇用確保」が求められています。

参考:厚生労働省「65歳までの「高年齢者雇用確保措置」

具体的な内容は、ここから詳しく説明していきます。

2-1.65歳までの定年引上げ

「65歳までの定年引上げ」とは、企業が就業規則などを改定し、従業員が65歳まで働けるよう定年年齢を延長する措置です。高年齢者雇用安定法に基づいた「雇用を継続するための方法」であり、雇用契約や待遇をそのまま維持できます。

参考:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~

2-2.継続雇用制度の導入

「継続雇用制度」とは、定年を迎えた従業員を一旦退職扱いとしたうえで、引き続き同じ企業や関連会社で雇用する再雇用制度の一つです。「高年齢者雇用安定法」に基づき、企業は希望する労働者を65歳まで継続して雇用する仕組みを整える義務があります。

多くの企業で「再雇用制度」という形で導入され、定年前と比べて勤務日数や給与水準を調整します。本人の希望や企業の状況に応じた柔軟な働き方が可能です。

継続雇用制度は、高齢者の経験を活かしつつ人手不足に対応する手段として注目されており、働く側・企業側の双方にメリットがある仕組みといえます。

参考:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~

2-3.定年制の廃止

「定年制の廃止」とは、年齢による退職制度をなくし、働く意欲と能力に応じて就労を続けられるようにする制度です。「高年齢者雇用安定法」で認められている雇用確保措置の一つであり、年齢問わず多様な働き方を実現できる柔軟な仕組みです。

参考:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~

3.65歳までの雇用確保が必要とされる背景

定年・再雇用に関する問題は、近年特に注目されています。ここでは、65歳までの雇用確保が必要とされる背景を解説します。

3-1.労働力不足

日本は少子高齢化が進み、労働力人口の減少が顕著です。労働力人口とは、就業者と完全失業者を合計した人口のことを指します。総務省の統計によると、労働力人口は、2025年8月時点で約6,835万人と、長期的には減少傾向にあります。

労働力人口の減少によって、多くの企業で人手不足が深刻化しており、高齢者の就業促進が重要な課題です。65歳までの雇用確保は、こうした労働力不足を補い、経験豊富な人材の活用を図るための有効な手段といえるでしょう。

参考:総務省「労働力調査(基本集計) 2025年(令和7年)8月分結果

3-2.高齢者の勤続意欲の上昇

労働力不足の背景には、高齢者自身の「働き続けたい」という意欲の高まりも挙げられます。健康寿命の延伸や生活の安定、社会とのつながりを保ちたいという意識から、定年後も就労を希望する人が増加しているのが現状です。

実際、60歳以上で「働けるうちは働きたい」と答える割合は上昇しており、高齢者の労働参加は今後も進むと予想されます。こうした意欲を受け、企業も多様な働き方や再雇用制度を整備する動きが広がっています。

参考:内閣府「令和7年版高齢社会白書

3-3.年金支給年齢の引き上げ

現在の年金制度で老齢年金が支給されるのは、原則65歳からです。しかし、平均寿命の延伸に伴う年金財政の悪化や、労働力不足の解消といった背景から「原則65歳」という支給開始年齢の引き上げが議論されています。

支給開始年齢が引き上げられると、高齢期の生活設計や収入源の確保がより難しくなるでしょう。その結果、繰り上げ受給の選択肢や、繰り下げ受給の増額率の変更なども含めて、制度全体の柔軟性が検討されています。

参考:厚生労働省「50~60代の皆さんへ | いっしょに検証!公的年金

4.定年年齢を引き上げるメリット

定年年齢の引き上げは、企業側・従業員側の双方にメリットがあります。ここでは、定年年齢を引き上げるメリットを紹介します。

4-1.企業側のメリット

定年年齢を引き上げることで、企業が得られるメリットは以下のとおりです。

  • 人手不足への対応
  • 熟練したスキル・ノウハウの活用
  • 採用・教育コストの削減

労働人口が減少するなか、若手人材だけでなく、働く意欲が高い高齢者の雇用は、人手不足の問題を解消するうえで重要なポイントです。

定年年齢を引き上げることで、長年の勤務を通じて企業文化や業務プロセスに精通したベテラン従業員を、継続して雇用できるようになります。

新たな人材を募集・教育するための採用コストや研修コストを削減しつつ、即戦力となる安定した労働力の確保が可能です。

また、ベテランの社員がもつ高度な専門知識や豊富な経験は、若手社員への技術やノウハウの円滑な継承にもつながります。企業全体の生産性や業務品質の維持・向上に大きく貢献できるでしょう。

4-2.従業員側のメリット

定年年齢の引き上げにより、従業員側も大きなメリットを得られます。主に公的年金の支給開始年齢(原則65歳)までの収入の空白期間を解消し、生活基盤の安定を図れる点が魅力です。

従来の60歳定年では、年金受給開始までの5年間は無収入になるリスクがありました。しかし、定年延長で継続して収入を得られることで、経済的な不安を軽減できます。

また、自身の意思と能力に応じて「長く働く」という選択肢を得られることで、生きがいを感じやすくなったり、社会との繋がりを確保できたりします。

5.企業側の定年年齢引き上げのデメリット

定年年齢引き上げによって懸念される、企業側のデメリットは以下のとおりです。

  • 人件費の増加
  • 組織の高齢化
  • 人材活用の硬直化

年功序列型の賃金制度を採用している場合は、勤続年数が長くなるほど賃金が高くなり、企業全体の人件費が増加する可能性があります。また、定年後も働き続ける従業員が多くを占めるほど、組織の高齢化も懸念されます。

さらに、定年年齢の引き上げ後に制度を元に戻すのは難しい点にも注意が必要です。従業員の健康面に懸念が生じても、雇用継続の必要があったり、柔軟な人員配置が困難になったりするケースにも注意しなければいけません。

6.定年年齢を引き上げる際の注意点

ここでは、定年年齢を引き上げる際の注意点を紹介します。

6-1.就業規則を変更する

定年年齢の引き上げは、労働者の労働条件のなかでも重要な絶対的必要記載事項にあたります。そのため、定年年齢の引き上げに際して、企業は必ず就業規則を変更しなければいけません。

なお、就業規則を変更する場合は、意見書を添えて労働基準監督署に届け出が必要です。従業員の過半数を代表する者、もしくは労働組合の意見を取り入れ、意見書を作成しましょう。

適切な手続きを行わなければ、定年延長自体が無効になる可能性があるため注意が必要です。

6-2.賃金制度を見直す

定年年齢を引き上げる際には、賃金制度の見直しも必要です。従来の年功序列型の賃金体系をそのまま採用すると、高齢の従業員の賃金が高止まりし、人件費負担が大幅に増加する可能性があります。

人件費の増加を抑え、若手社員の昇給原資を確保するためには、賃金制度の見直しが欠かせません。定年延長を期に、職務や役割に基づく賃金体系に移行したり、賃金カーブを調整したりする必要があります。

7.65歳までの雇用義務化で利用できる助成金の種類

65歳までの雇用義務化に伴い、企業向けの助成金制度が整備されています。ここでは、65歳までの雇用義務化で利用できる助成金を3つ紹介します。

補助金・助成金・支援金の会計処理、勘定科目について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。仕訳例や会計処理の注意点も紹介しています。

関連記事:補助金・助成金・支援金の勘定科目とは?仕訳例や会計処理の注意点を紹介

7-1.65歳超継続雇用促進コース

「65歳超継続雇用促進コース」は、高齢者が意欲と能力に応じて65歳以降も働き続けられるよう、企業の雇用環境整備を支援するために設けられた助成金制度です。

65歳以上への定年引上げ・定年の廃止・高年齢者向けの継続雇用制度の導入・対象年齢の引き上げといった措置を講じた企業に支給されます。

企業の経済的負担を軽減しつつ、高齢期の安定した雇用機会の創出を促進し、労働力人口の維持と高年齢者の活躍を後押しするという目的を担っています。

参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構「65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)

7-2.高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」は、高齢者がもつ経験やスキルを活かし、意欲を持って働けるように、雇用管理制度の整備に取り組む企業を支援する制度です。

能力や成果に基づいた人事評価制度、職務内容・働き方に応じた賃金制度の見直しなど、高年齢者の特性を踏まえた雇用管理制度を導入・実施した場合に支給されます。

参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構「65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)

7-3.高年齢者無期雇用転換コース

「高年齢者無期雇用転換コース」は、企業が雇用する50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を、無期雇用の正社員等へ転換させた場合に補助金が支給される制度です。

高年齢の有期契約社員に対して長期的な雇用を提供し、企業内で経験やスキルを安定的に活用できるよう支援するという目的を担っています。

無期転換は、高年齢労働者の雇用安定と意欲向上を図ります。加えて、企業側にとっても優秀な人材の定着を促進し、戦力として継続的に活用できる点がメリットです。

参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構「65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)

8.個々の働き方に合わせた勤怠管理を行いたいならバクラク勤怠

高齢化社会の深刻化にともない、60歳・65歳以降も雇用を延長する企業が増えています。定年の延長は、従業員の雇用・収入の安定化だけでなく、企業側にも人材確保・ノウハウの蓄積といったメリットがあります。

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