準委任契約とは?他の契約形態との違いやメリット・デメリットを解説

「準委任契約」という言葉は知っていても、請負契約との違いが曖昧だったり、自社の業務委託に適しているか判断に迷ったりするケースは少なくないでしょう。

本記事では、準委任契約の基本的な定義から、報酬体系による2つの種類、他の契約形態との明確な違いなどについてわかりやすく解説します。準委任契約の全体像を正しく理解し、トラブルなく契約を進めるために、ぜひ参考にしてください。

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準委任契約とは?他の契約形態との違いやメリット・デメリットを解説

準委任契約とは

準委任契約は、専門的な知識やスキルを活かした「業務プロセス」そのものを委託する際に用いられる契約です。民法で定められた「委任」の一種であり、法律行為以外の事務を委託する際に適用されます。

具体例として、コンサルティングやシステムの運用・保守といった業務が挙げられます。準委任契約は、受任者が業務の完成を保証しない点が大きな特徴です。ただし、受任者は業務を遂行する上で「善管注意義務(善良な管理者の注意義務)」を負います。

善管注意義務とは、受任者の職業や専門家としての立場から見て、一般的に期待される水準の注意を払って業務にあたる義務のことです。善管注意義務に違反して委託者に損害を与えた場合、受任者は損害を賠償する責任を負う可能性があります。

また、委託者には指揮命令権がなく、業務の具体的な進め方を受任者の裁量に委ねる点も特徴です。準委任契約は、業務の遂行自体に価値を置き、業務プロセスを委託する契約といえるでしょう。

参考:e-GOV法令検索「民法第六百五十六条(準委任)

準委任契約の種類

準委任契約は2種類あり、報酬の支払い方が異なります。

  • 成果完成型
  • 履行割合型

本章では、それぞれの特徴を解説します。

成果完成型

成果完成型は、業務の遂行によってもたらされた成果物に対して報酬が支払われる契約です。

本契約では、納品された成果が委託者の求める水準に達している場合に報酬が発生します。業務のプロセスではなく、最終的な「成果」が報酬の基準となる点が特徴といえるでしょう。

ただし、成果物が完成しなかった場合でも、委託者の都合で契約が終了した際は、すでになされた履行の割合に応じて報酬を請求できるケースもあります。

参考:e-GOV法令検索「民法第第六百四十八条(受任者の報酬)

履行割合型

履行割合型は、業務を遂行した時間や工数といったプロセスに応じて報酬が支払われる契約形態です。

本契約では、成果物の完成を問わず、業務の履行割合に応じて報酬が確定する仕組みです。委託者は、受任者が業務に費やした時間や労力に基づいて報酬を支払います。

契約期間中に委託者の都合で契約を解除する場合、委託者はすでに遂行された業務の割合に応じた報酬を支払う義務を負います。履行割合型は、業務の過程そのものに価値がある場合に適した契約といえるでしょう。

他の契約形態と準委任契約の違い

準委任契約への理解を深めるには、他の契約形態との違いを知ることが不可欠です。特に請負契約・委任契約・労働者派遣契約とは混同されやすいため、注意が必要です。

それぞれの契約がもつ目的や特徴を比較しながら解説します。

請負契約

請負契約と準委任契約の最も大きな違いは、契約の目的が「仕事の完成」にあるか「業務の遂行」にあるかという点です。それぞれの特徴は以下の表のとおりです。

項目

請負契約

準委任契約

契約の目的

仕事の完成

業務の遂行

負う責任・義務

契約不適合責任

善管注意義務

報酬の対象

完成した成果物

業務の遂行プロセス

請負契約は、建物の建築やソフトウェアの納品といった、特定の成果物を完成させて引き渡すことを約束する契約です。そのため、受託者は成果物に対する契約不適合責任を負います。

一方、準委任契約は、業務のプロセス自体を委託するものであり、成果物の完成は保証しません。目的の違いから、報酬は完成した成果物に対して支払われるか、業務の遂行そのものに支払われるかという点で異なります。

委任契約

委任契約と準委任契約は、委託する業務内容によって区別されます。ポイントは委託する業務が「法律行為」であるか否かという点です。

委任契約は、弁護士への訴訟代理の依頼や、司法書士への登記申請の依頼といった、法律に関わる行為を委託する際に用いる契約です。一方、準委任契約は、コンサルティングやシステム開発など、法律行為以外の業務を委託する場合に適用されます。

ただし、善管注意義務を負う点など、契約の基本的な性質は共通しています。

労働者派遣契約

労働者派遣契約と準委任契約の決定的な違いは、委託者側に「指揮命令権」があるか否かです。

労働者派遣契約では、派遣先企業は派遣スタッフに対して、業務の進め方について具体的な指示を出せます。一方、準委任契約では、委託者と受任者は対等な事業者間の関係です。そのため、委託者に指揮命令権はなく、業務の進め方は受任者の裁量に委ねられます。

準委任契約にもかかわらず、委託者が受任者に細かく指示を出すと「偽装請負」とみなされ、法的な問題に発展する可能性があるため注意が必要です。

また、契約当事者の関係性にも違いがあります。労働者派遣が派遣先・派遣元・労働者の三者間で成り立つ一方、準委任は二者間の契約である点も大きな相違点といえるでしょう。

SES契約

SES契約(システムエンジニアリングサービス契約)は、準委任契約の一種とされています。SES契約はIT業界特有の契約形態で、クライアントのオフィスなどにエンジニアが常駐し、特定の業務に対して技術力を提供する場合に用いられるものです。

SES契約の目的は、システムの開発や運用といった業務を遂行することにあります。また、エンジニアの労働力やスキルを提供するという点は、準委任契約の内容と合致しているといえるでしょう。

報酬はエンジニアが業務に従事した時間に基づいて計算されるケースが多く、履行割合型の準委任契約に該当します。

業務委託契約に関して詳しくは、以下の記事をご参照ください。

関連記事:業務委託契約とは?関連する法律や他の契約との違い・注意すべきケースを紹介

準委任契約のメリット

準委任契約には、企業にとって多くの利点があります。主なメリットとして、以下の3点が挙げられます。

  • 継続的に依頼ができる
  • 専門性の高い人材に依頼できる
  • 業務内容を柔軟に決められる

それぞれ詳しく解説します。

継続的に依頼ができる

成果物の完成によって契約が終了する請負契約とは異なり、準委任契約は、継続的な業務依頼に適した契約形態です。

具体的には、システムの保守・運用やWebサイトの定期更新など、期間を定めずに継続して発生する業務に適しています。また双方の合意があれば、必要な期間中は安定した関係を築ける点も大きなメリットです。

専門性の高い人材に依頼できる

専門知識や高度なスキルをもつ人材へ業務を依頼できる点も、準委任契約のメリットです。特定の分野に精通した人材を社内で育成するには、多大な時間とコストを要します。

準委任契約を活用すれば、コンサルタントや特定の技術をもつエンジニアなど、必要なスキルをもつ専門家へ即座に業務を委託できます。自社に不足しているノウハウを外部から取り入れることで、事業の質や生産性を高められるでしょう。

業務内容を柔軟に決められる

仕様が厳密に定められた成果物に縛られる請負契約とは性質が異なり、業務内容を状況に応じて柔軟に調整しやすいのも、準委任契約の利点です。

プロジェクトの進捗や市場の変化に合わせて、委託者と受任者が協議しながら業務の範囲や進め方を柔軟に変更可能です。予期せぬ事態にも対応しながら、最適な形で業務を進められます。

準委任契約のデメリット

準委任契約はメリットが多い一方、注意すべきデメリットも存在します。契約後に後悔しないためにも、事前にリスクを把握しておくことが不可欠です。主なデメリットについて、以下で解説します。

委任者に指揮命令権がない

準委任契約では、委託者に指揮命令権がない点がデメリットになる場合があります。準委任契約は、労働者派遣契約と異なり、業務の進め方について細かく指示を出したり、作業時間や場所を指定したりできません。

業務の遂行方法は、基本的に専門家である受任者の裁量に委ねられ、自社のやり方と異なる進め方になっても直接的な修正指示は出せない契約です。委託者に指揮命令権がないことを事前に理解しておく必要があるでしょう。

期待した成果が出ないこともある

期待していた成果が得られない可能性がある点も、準委任契約のデメリットです。準委任契約は「業務の遂行」を目的としており、請負契約のように「成果物の完成」を保証するものではありません。

そのため、受任者が善管注意義務を果たして業務にあたった場合、たとえ期待どおりの結果に至らなくても、委託者は報酬を支払う義務を負います。

プロセスに対して報酬が発生する履行割合型はもちろん、成果完成型であっても、成果が出ないリスクを認識しておくべきでしょう。

社内にナレッジがたまらない

外部の専門家に業務を委託するため、社内にノウハウが蓄積されにくい点もデメリットです。

業務は受任者の知識やスキルによって遂行されるため、契約が終了すると、ナレッジやノウハウは社内に残りません。同様の業務が再度発生した際に、また外部に依存せざるをえない状況に陥る可能性があります。

長期的な視点で見れば、社員のスキルアップや自社の技術力向上の機会を失うことにもつながりかねません。

準委任契約を締結する流れ

準委任契約を円滑に締結するには、段階を踏んで慎重に進める必要があります。トラブルを避けるため、以下の流れで進めるのが一般的です。

  1. 業務内容を明確にする
  2. 報酬などの条件面で合意をとる
  3. 契約書を作成し締結する

委託する業務の範囲や目的を具体的に定め、双方の認識を一致させることが重要です。内容が不明確なままだと「期待していた業務と違う」といったズレが生じる可能性があります。

次に、報酬体系・金額・支払い条件など、金銭面に関する取り決めが不可欠です。経費の負担についても事前に定めておくことで、金銭トラブルの防止につながります。

最後に、合意したすべての内容を契約書に落とし込みます。契約書は法的な効力をもつ文書であるため、必要に応じて弁護士など専門家へ内容の確認を依頼するとより確実です。

契約期間や秘密保持義務なども含めて明記し、双方が署名・捺印すると正式に契約が成立します。

準委任契約を締結する際のポイント

準委任契約を締結する際は、後々のトラブルを避けるために押さえておきたいポイントがいくつかあります。事前の確認を怠ると、法的なリスクを負う可能性があるため注意しましょう。

安心して契約を進めるために、詳しく解説します。

偽装請負に該当しないか注意する

準委任契約を結ぶ際は、偽装請負とみなされないよう注意を払いましょう。偽装請負とは、契約上は業務委託でありながら、実態として労働者派遣と同様の指揮命令関係がある状態を指します。

たとえば、委託者が受任者に対して作業の進め方を細かく指示したり、勤務時間や場所を管理したりすると、実質的な雇用関係にあると判断されかねません。準委任契約における指揮命令は法律で禁じられています。

準委任契約では、受任者の裁量を尊重し、対等な事業者としての関係を保つことが不可欠です。

業務内容・報酬などを契約書に明記する

当事者間のトラブルを未然に防ぐためには、契約書に業務内容や条件を具体的に明記する必要があります。書面で詳細な条件を定めておけば、双方の権利と義務が明確になるでしょう。契約書に記載する一般的な項目は、以下のとおりです。

  • 委託業務の具体的な内容・範囲
  • 報酬額
  • 報酬の計算方法(成果完成型・履行割合型)
  • 報酬の支払条件
  • 契約期間
  • 善管注意義務
  • 秘密保持義務
  • 知的財産権の帰属
  • 契約解除の条件

上記の項目を漏れなく記載し、双方の合意内容を正確に反映させた契約書を作成しましょう。

印紙が必要か確認する

準委任契約書に収入印紙が必要か否かも、事前に確認すべきポイントです。

印紙税法上、準委任契約書(法律行為を含まない事務の委託)は、基本的に課税対象外の「不課税文書」とされているため、原則として収入印紙は不要です。しかし、契約書の内容によっては課税文書に該当するケースがあります。

たとえば、契約期間が3カ月を超え、かつ更新の定めがあるコンサルティング契約や保守契約などは「継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)」に該当します。そのため、4,000円の収入印紙を貼付しなければなりません。

また、一つの契約書に準委任契約と請負契約の要素が混在している場合、契約書は「請負に関する契約書(第2号文書)」として扱われ、契約金額に応じた印紙税が課されます。

契約書を作成する際は、契約内容が課税文書に該当するか慎重に判断しましょう。

収入印紙の必要性や金額については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:収入印紙とは?必要性や金額、購入方法、貼り方などを徹底解説

社員の勤怠管理は「バクラク勤怠」がおすすめ

準委任契約は、専門性の高い業務を外部に委託し、事業を柔軟に進めるための有効な手段といえます。外部リソースの活用と並行して、社内の業務効率も高めることで、組織全体の生産性向上が期待できるでしょう。

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