
フリーランスが加入できる社会保険とは?種類や保険料の計算方法を解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-06-06
- この記事の3つのポイント
- 日本の社会保険制度は5つの種類に分類され、役割や加入条件などが異なる
- フリーランスが加入できる社会保険もあるが、種類が限定されるため、個人的な備えも重要
- 社会保険料の計算方法は自治体によって異なり、保険料が安い地域もある
日本は社会保険制度が充実した国であり、5つに分類された社会保険にはそれぞれ異なる役割や加入条件があります。会社員とフリーランスでは加入できる社会保険が異なるため、違いを理解しておくことが大切です。
会社員からフリーランスになると、社会保険の変更に関する手続きを行わなければいけません。保険料も大きく変わるため、あらかじめ計算し、計画的に納付していく必要があります。
本記事では、フリーランスが加入できる社会保険について紹介します。社会保険の種類や役割、保険料の計算方法も解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
フリーランスが加入できる社会保険とは?種類や保険料の計算方法を解説
社会保険の種類
日本には、会社員が加入できる健康保険をはじめ、5つの種類の社会保険制度が存在します。それぞれ加入条件や役割が異なるため、正しく理解しておくことが大切です。
健康保険
健康保険とは、病気や怪我、出産などに備えられる社会保険の一つです。健康保険の加入者は医療機関を受診する際の自己負担が3割で済み、検査や治療、通院にかかる医療費を抑えられます。
また、働けなくなった際に医療給付や手当を受けられることで、休業期間でも生活が困窮する心配が少なくなります。
健康保険は5つの種類があり、内容は以下のとおりです。
- 健康保険組合
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)
- 共済組合
- 国民健康保険制度
- 後期高齢者医療制度
健康保険組合および全国健康保険協会(協会けんぽ)は、企業に雇用される従業員が加入できます。前者は従業員規模が700名以上の企業、後者は中小企業に勤める従業員が対象です。
共済組合は教職員を含む公務員、後期高齢者医療制度は75歳以上または65歳以上75歳未満で一定の障がいをもち、認定を受けた方が加入できる健康保険です。一方、いずれにも該当しない方は、国民健康保険に加入する必要があります。
年金保険
年金保険は、老後の生活や万が一の障害に備えるための保険です。加入後、要件を満たすことで、老齢年金のほか、障害を負った際には障害年金の支給を受けられます。
また、加入する年金保険によって支給額は異なるものの、亡くなった場合に家族が遺族年金を受け取ることもできます。
年金保険は2つ存在し、内容や加入条件は以下のとおりです。
年金の種類 | 国民年金 | 厚生年金 |
加入条件 | 日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての方 | 会社などに勤務している方 |
保険料 | 一律 | 定率(額は収入によって変動) |
年金支給額 | 月額69,308 円 | 現役時代の収入によって変動 |
参考:厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
年金保険は国民年金と厚生年金の2階建てになっており、前者は1階、後者は2階に相当します。厚生年金の保険料は企業と従業員が折半で納付します。
※掲載している情報は、2025年4月時点のものです。情報は変更される可能性があるのでご注意ください。
介護保険
介護保険は、介護が必要な方や当事者家族の負担軽減を目的とする保険制度です。介護保険の加入条件は40歳以上であり、加入手続き等はなく、自動的に加入します。
さらに介護保険の加入者は、以下のように年齢ごとで2つに区分されます。
種類 | 第1号被保険者 | 第2号被保険者 |
対象年齢 | 65歳以上 | 40歳以上64歳以下 |
支給要件 | 要支援・要介護状態になったとき | 末期がんや関節リウマチなど老化による病気が原因で要支援・要介護状態になったとき |
支給対象と認められた場合の介護にかかる費用の自己負担は、1〜3割負担です。介護保険は高齢化が進む日本国内において、なくてはならない存在です。
参考:厚生労働省老健局「介護保険制度の概要」
労災保険
社会保険制度には、労働者が業務中や通勤中に怪我をした場合に必要な給付を受けられるよう、労災保険が設けられています。
本来、労災保険は会社員や公務員が対象の制度です。しかし、法改正によって2024年11月1日より特別加入できる対象範囲が拡大され、フリーランスも労災保険に加入できるようになりました。
労災保険に特別加入できるフリーランスの対象者は、以下のとおりです。
- 企業などから業務委託を受けて事業を行っている
- 企業等からの業務委託を受け、かつ当該業務と同種の事業について消費者から委託を受けている
特別加入を希望する場合は、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体に申し込みを行い、加入手続きを依頼しましょう。
参考:厚生労働省「令和6年11月1日から「フリーランス」が労災保険の「特別加入」の対象となりました」
雇用保険
雇用保険は、労働者が失業した場合に備えるための保険です。雇用保険に加入していると、失業した際に必要な給付を受けられます。
企業は以下を満たす従業員を雇用保険に加入させなければいけません。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがあること
副業でフリーランスとして活動している場合でも、雇用保険は原則会社員として勤める企業で加入します。雇用保険は二重加入ができないため、会社員とフリーランスの両方で加入することはできません。
その場合、フリーランスを失業しても失業保険の支給対象にはなりません。
参考:厚生労働省「雇用保険に加入していますか~労働者の皆様へ~」
フリーランスと会社員の社会保険の違い
フリーランスと会社員では、社会保険に関して以下のような違いがあります。
- フリーランスが加入する国民健康保険には傷病手当金・出産手当金がない
- 国民健康保険には扶養制度が存在しない
- 国民健康保険・国民年金の保険料は被保険者が全額負担する
- 国民年金の年金額は一律であり厚生年金による上乗せがない
国民健康保険には、傷病手当金や出産手当金、扶養制度などがありません。そのため、フリーランスになったあとに病気や怪我をしたり、出産によって一定期間働けなかったりする場合も給付の対象外です。
保険料に関しては、会社員が会社と折半となる一方、国民健康保険は被保険者が全額自己負担で支払います。
また、国民年金では老後に受け取る年金額が定額になるため、厚生年金に加入している会社員よりも年金受給額が少なくなります。
会社員からフリーランスになる場合は、万が一に備えて、加入できる保険制度について理解しておくことが大切です。
フリーランスが加入できる社会保険の種類
フリーランスでも加入できる社会保険は、存在します。種類と制度について理解し、病気や怪我などに備えましょう。
健康保険
フリーランスが加入できる社会保険で代表的なのが、自治体が運営する「国民健康保険」です。業種によっては国民健康保険組合に加入できたり、会社員を辞める場合は任意継続制度によって元勤務先の健康保険を利用できたりする場合もあります。
- 国民健康保険
- 国民健康保険組合
- 任意継続制度
以下では、フリーランスが加入できる健康保険を3つ紹介します。
国民健康保険
国民健康保険は、自治体が運営する健康保険制度です。日本国内に住み、ほかの健康保険に加入していない20歳以上60歳未満の方が加入します。加入後の医療費の自己負担額は3割であり、会社員の社会保険と同じです。
会社員を辞めて、転職先が見つかっていない・フリーランスになるという場合は、原則14日以内に自治体窓口にて国民健康保険の加入手続きを行わなければいけません。
国民健康保険の保険料は、計算する際の利率が自治体によって異なります。そのため、住む地域によって保険料が異なり、場合によっては金額を抑えられるケースもあります。
国民健康保険組合
国民健康保険組合は、特定の職域に従事する者で組織される公法人です。特定の職業に従事していたり、組合地域に居住していたりする場合に加入できます。
令和6年4月現在、全国で158の国民健康保険組合が存在し、全国国民健康保険組合協会には132組合が加入しています。
ただし、国民健康保険組合は加入条件を満たしていても、加入できないこともあります。加入の際には各組合の審査があるため、事前に各組合のWebサイトを確認しておく必要があります。
参考:国民健康保険組合「国民健康保険組合とは」
※掲載している情報は、2025年4月時点のものです。情報は変更される可能性があるのでご注意ください。
任意継続制度
任意継続制度とは、退職した後も一定期間、元勤務先の健康保険に入り続けることができる制度です。以下の要件を満たせば、最大2年間の任意継続が可能です。
- 資格喪失日の前日までに健康保険の被保険者期間が継続して2カ月以上あること
- 資格喪失日の前日から20日以内に任意継続被保険者資格取得申出書を提出すること
国民健康保険には扶養制度がありませんが、任意継続であれば引き続き家族を扶養に入れられます。家族分の保険料はかかりません。
ただし、任意継続にすると、社会保険料の会社折半がなくなるため、全額を自己負担する必要があります。保険料が大幅に増える可能性があるため、メリット・デメリットを理解したうえで利用を検討することが大切です。
年金保険
フリーランスが加入する公的年金制度は「国民年金」です。一方、国民年金基金・付加年金・iDeCo(個人型確定拠出年金)などが任意で加入できる年金制度として挙げられます。
それぞれ加入手続きや期限などが異なるため、以下で詳しく解説します。
国民年金
国民年金は、日本にある公的年金制度のうち、20歳以上60歳未満のすべての方が加入する年金制度です。国民年金はさらに3つに区分されており、それぞれ職業や加入手続き、保険料の納付方法が異なります。
年金の種類 | 第1号被保険者 | 第2号被保険者 | 第3号被保険者 |
加入者の職業 | フリーランス・ 個人事業主・学生など | 会社員・公務員 | 第2号被保険者に扶養されている配偶者 |
加入手続き | 加入者が行う | 勤務先が行う | 扶養者の勤務先が行う |
日本の年金制度は2階建てとなっており、国民年金は1階部分にあたります。フリーランスは1階部分のみの加入であり、保険料や年金支給額は原則一律です。
令和7年度は保険料が月額17,510円、年金支給額が69,308円です。
参考:日本年金機構「国民年金保険料」
参考:日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
※掲載している情報は、2025年4月時点のものです。情報は変更される可能性があるのでご注意ください。
国民年金基金
フリーランスが加入できる年金保険の一つに「国民年金基金」も挙げられます。国民年金基金は、フリーランスをはじめ以下に該当する方が加入できる制度です。
- 国民年金の第1号被保険者の方(フリーランス等)
- 60歳以上65歳未満または海外居住者で国民年金に任意加入している方
国民年金に加えて国民年金基金に加入し、保険料を納めれば、将来受け取れる年金額を増やすことができます。
国民年金基金の掛金タイプは複数あり、各自が組み合わせて加入します。たとえば、30歳で「終身タイプA型、課税所得年間200万円」の条件で加入した場合、月額12,110円の保険料を納付することで、65歳から年間24万円の年金を受け取れます。
参考:国民年金基金「年金額シミュレーション」
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金を拠出して運用し、老後に年金として受け取る私的年金制度です。公的年金制度とは異なり、加入は任意かつ掛金額も自分で設定し、運用します。将来受け取る年金額を増やせると、近年注目を集めています。
加入手続きを行うのは、自治体窓口ではなく運営管理機関(金融機関等)です。運営管理機関ごとで運用商品や手数料が異なるため、自分に合った商品や機関を選ぶことが大切です。
なお、iDeCoはフリーランスや個人事業主などの20歳以上60歳未満の国民年金第1号被保険者も加入できますが、掛金には上限があります。第1号被保険者の上限額は月額68,000円です。
参考:iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等」
フリーランスが支払う社会保険料はいくら?
フリーランスが支払う社会保険料について紹介します。それぞれの計算方法も解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
健康保険料の計算方法
国民健康保険料の計算方法には、一般的に均等割と所得割があります。それぞれの違いは以下のとおりです。
- 均等割:所得額に関係なく均等に課される方式
- 所得割:前年の所得額をもとに計算する方式
フリーランスが国民健康保険に加入する場合は所得割が適用されます。会社員からフリーランスになり、前年よりも収入額が減ってしまった場合は、保険料負担が大きくなるため、計画的に納付しなければいけません。
ただし、国民健康保険料を計算する際の料率は自治体によって異なる場合があります。自治体サイトで健康保険料の目安や早見表を公開している自治体もあるため、各自確認が必要です。
年金保険料の計算方法
年金保険料において複雑な計算はありません。日本年金機構より、保険料・年金支給額の月額が公表されています。令和7年度の保険料は月額17,510円、年金支給額は69,308円です。
なお、国民年金の保険料は、一定期間分をまとめて納付することで割引が適用されます。資金にある程度の余裕があり、保険料を抑えたいと考える方は検討してみてください。
参考:日本年金機構「国民年金保険料」
参考:日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
※掲載している情報は2025年4月時点のものです。保険料や支給額は毎年見直しが行われるため注意してください。
社会保険料を抑えるためのポイント
フリーランスが社会保険料を抑えるためのポイントを紹介します。それぞれ詳しくみていきましょう。
保険料を抑えられる自治体に引っ越す
フリーランスが加入できる社会保険は、自治体ごとで保険料が異なるケースがあります。そのため、保険料を抑えたい、かつ居住地にこだわりがない場合は、保険料負担が少ない自治体に引っ越しするのも一つの手です。
配偶者の扶養に入る
配偶者が勤務先の社会保険に加入している場合は、配偶者の扶養に入ることで保険料を抑えられます。健康保険料は被保険者(本人)を対象とするもののため、扶養に入っても保険料は変わりません。
収入が年間130万円に満たない場合は、フリーランスとして活動しながら、配偶者の扶養に加入できます。ただし、年間130万円を超えると扶養に入れなくなるため、家庭内で相談しておくことが大切です。
※掲載している情報は、2025年4月時点のものです。情報は変更される可能性があるのでご注意ください。
会社で加入していた健康保険を任意継続する
会社を退職してフリーランスになる場合は、任意継続することで引き続き退職先の健康保険に加入できます。保険料は全額自己負担ですが、扶養者が多い場合は任意継続のほうが納付額を抑えられる可能性があります。
ただし、任意継続で納付する保険料は、一般的に会社員時代の2倍です。どの制度を利用するのが最適かは個人ごとで異なるため、納付額を比較し検討してみてください。
まとめ
「フリーランスは社会保障が薄い」という印象を抱く方は少なくありません。
実際に、フリーランスは会社員と比べて加入できる社会保険に制限があります。国民健康保険には傷病手当金・出産手当金がないほか、厚生年金に加入できないことで十分な年金額を確保するのは難しいのが現状です。
そのため、フリーランスは公的制度だけでなく、私的制度も活用して、万が一に備えることが大切です。備えがあれば、安心してフリーランスとして活躍できるでしょう。
保険料が不安な場合は、自治体サイトを確認し、負担額を抑えられる方法を検討するのがおすすめです。