補助金・助成金・支援金の勘定科目とは?仕訳例や会計処理の注意点を紹介

補助金・助成金・支援金は、事業運営において非常に役立つ一方で、会計処理が複雑に感じる方は多いのではないでしょうか。

本記事では、補助金の勘定科目に関する疑問を解消するために、基本的な知識から具体的な仕訳例、さらに注意点まで詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてください。

経理の担当経験が浅い方向けの「虎の巻」

経理担当に役立つエクセルの関数・ショートカット集と、多用される勘定科目の一覧を収録しています。ChatGPTで活用できるプロンプト集も付録。

補助金・助成金・支援金の勘定科目とは?仕訳例や会計処理の注意点を紹介

補助金・助成金・支援金とは?

補助金・助成金・支援金とは、国や自治体が事業者を支援する目的で給付する資金です。補助金を利用するには、定められた申請要件を満たす必要があります。したがって、申請が条件に合っているかなどを確認する審査が行われるのが一般的です。

申請内容に虚偽があったなどの不正な場合を除き、受け取った資金は原則として返還する必要がありません。返還不要という性質により、事業者は資金繰りの負担なく事業への投資などに補助金を活用できます。

補助金・助成金・支援金の仕訳に使える勘定科目

返還不要な補助金・助成金・支援金は「雑収入」や「未収入金」の勘定科目を使用するのが一般的です。それぞれの勘定科目をどのような場合に使うのかを解説します。

収入として計上する場合は「雑収入」

補助金や助成金を収入として計上する際は、基本的に「雑収入」の勘定科目を使用します。雑収入とは、企業の主な営業活動から得られる売上以外の収益で、他の特定の勘定科目に分類されないものを計上する勘定科目です。

支給決定から入金までタイムラグがある場合は「未収入金」

補助金の支給が決定されたものの、実際に資金が入金されるまでに期間が空く場合は「未収入金」の勘定科目を用います。未収入金とは、企業の営業活動以外から生じる、まだ回収していない債権を指す勘定科目です。

補助金・助成金・支援金の仕訳例

補助金・助成金・支援金を会計処理する上で、仕訳を行うタイミングの判断は重要なポイントです。収益をどの時点で帳簿に記録するかによって、仕訳方法が変わるためタイミングをしっかり把握しましょう。

主なタイミングとしては、以下の2つの基準が考えられます。

  • 実際に資金が企業の口座へ振り込まれた日
  • 支給が正式に決定した通知を受け取った日

どちらのタイミングを採用するかは、企業の会計方針や受け取る補助金の性質を考慮して選択しましょう。タイミングの選択は、企業の利益計算や納税額にも影響を与える場合があります。

ここからは、主要なタイミングに基づいた具体的な仕訳を、3つのケースに分けて紹介します。

入金日に収入として計上する場合の仕訳例

補助金などが入金された日付で、収入として計上する場合の仕訳例は以下のとおりです。

借方貸方
預金2,000,000円雑収入2,000,000円

支払決定通知書を受け取り、未収計上する場合の仕訳例

支払決定通知書を受け取った時点で、収益を計上する仕訳例は以下のとおりです。

借方貸方
未収入金500,000円雑収入500,000円

未収計上の分が振り込まれた場合の仕訳例

事前に「未収入金」として計上していた補助金が、後日実際に入金された際の仕訳は以下のように行います。

借方貸方
預金500,000円未収入金500,000円

圧縮記帳とは?

圧縮記帳とは、企業が補助金を使って固定資産を取得した場合に、課税される所得を将来に繰り延べることができる会計処理の制度です。

圧縮記帳を適用すると、補助金相当額を「圧縮損」として費用計上し、固定資産の取得価額を減額(圧縮)できます。圧縮記帳の対象となるのは、以下の3種類です。

  • 国庫補助金等
  • 工事負担金
  • 保険差益

国庫補助金等とは、国や地方公共団体から、特定の設備投資などを目的として交付される補助金や助成金です。工事負担金は、電気・ガス・水道などの事業者が、施設設置の際に利用者から受け取る負担金などを指します。

保険差益とは、火災や自然災害などで所有する固定資産が損害を受け、受け取った保険金がその資産の帳簿価額を超えた場合の差額です。

圧縮記帳を活用すると、資金繰りを安定させる効果が期待できます。具体的な仕訳方法は、以下の記事をご参照ください。

関連記事:圧縮記帳とは?効果や適用要件、仕訳の方式をわかりやすく解説

補助金・助成金・支援金を会計処理する時の注意点

補助金・助成金・支援金は、事業の助けとなる一方で、会計処理を行う際には注意が必要です。ここからは、補助金を会計処理する上で、特に注意すべき点を3つに絞って解説します。

法人税の課税対象になる

受け取った補助金・助成金・支援金は、原則として法人税の課税対象となります。補助金などは事業活動に関連して得られる収益であり、税法上は「益金」として扱われるためです。

したがって、補助金を受け取った事業年度においては、その金額分だけ課税所得が増え、納付すべき法人税額も増加する場合があります。

消費税の課税対象にはならない

法人税とは異なり、補助金・助成金・支援金は消費税の課税対象にはなりません。なぜなら、補助金や助成金などは支給されるものであり、何かを提供した見返りとして受け取るものではないためです。

会計処理上は「不課税取引」として扱われます。補助金を受け取っても、企業の消費税納税額が増えることはありませんので、申告の際に誤って課税売上に含めないよう注意しましょう。

補助金・助成金の入金までにはタイムラグがある

補助金や助成金は申請してから、実際に入金されるまでに数カ月以上かかります。補助金を活用して設備投資などを行う場合、支払いを自己資金で行い、後日補助金で補填するのが一般的です。

タイムラグがあると、一時的な資金不足に陥るリスクも考えられます。補助金の活用を計画する際は、タイムラグを考慮した余裕のある資金計画が不可欠です。

まとめ

補助金・助成金・支援金の適切な会計処理は、企業の財務状況を把握し税務申告を行うために欠かせません。特に大切なポイントは、補助金を計上するタイミングを判断し「雑収入」と「未収入金」の勘定科目を正しく使い分けることです。

さらに、補助金などは法人税の課税対象となるものの、消費税はかからないという税務上の違いや、申請から入金までに時間がかかる点も考慮しておきましょう。

圧縮記帳のような税負担を計画的に軽減する制度の活用も視野に入れ、補助金制度を最大限に活用してください。正確な知識をもとに、補助金を事業成長の追い風としていきましょう。