出張手当(日当)の相場はいくら?支給額を決めるポイントやメリット・デメリット
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-05-15
- この記事の3つのポイント
- 出張手当の平均相場は、令和5年調査で国内出張2,621円、海外出張5,441円の支給額である
- 出張手当を導入するには、企業における出張業務の運用基準となる出張旅費規程の作成が必要である
- 出張手当は原則非課税で、企業にとって節税効果があるが、範囲内を超えると課税対象も考えられる
経営者や経理担当者のなかには「出張手当の相場はいくらなのか」「そもそも出張手当とは何なのか」といった疑問をもっている方は、多いのではないでしょうか。
本記事では出張手当の相場を財務省の調査結果に基づいて国内・海外別に詳しく説明し、さらに出張手当の定義や、税務上の注意点まで幅広く解説します。本記事を参考に、自社に最適な出張手当制度を構築・運用してください。
出張手当(日当)の相場はいくら?支給額を決めるポイントやメリット・デメリット
出張手当の相場
出張手当の相場は、国内出張と海外出張で異なります。この章では、財務省の令和5年(2023年)「民間企業における出張旅費規程等に関するアンケート」を基に、国内出張・海外出張の相場を解説します。
参考:財務省「民間企業における出張旅費規程等に関するアンケート 報告書」
国内出張の場合
国内出張の日当は、企業によって判断基準が異なるのがポイントです。「往復行程(距離)により判断している」が49.4%と最も多く「宿泊の有無により判断している」が44.8%と続きます。一方「日当は支給しない」という企業も11.6%存在します。
国内出張の日当平均は2,621円です。この金額はあくまで平均であり、最低額1,780円〜最高額3,786円と幅があります。
食事代については、手当として支給しない企業が9割に達し、出張手当には食事代が含まれないといえるでしょう。宿泊料は役職によって異なりますが、実費支給の場合の平均は11,304円です。
海外出張の場合
海外出張の場合、日当の支給方法は「定額支給」が81.5%と、国内出張と比べて大きな差があります。「支給しない」企業も11.3%存在するのは国内出張と同様です。
出張手当の平均は5,441円ですが、最低額4,256円〜最高額7,041円と幅があります。さらに、地域によって相場が異なり、たとえばアジアは5,811円、北米は7,111円と、1,300円もの差が生じているのも事実です。
海外出張においても食事代は「支給しない」が81.1%と多数を占めます。食事代の「定額支給」は6.4%「上限付き実費支給」は0.9%です。宿泊料は、役職や場所によって異なりますが、実費支給の場合の平均は17,634円となっています。
海外出張の経費精算方法については、以下の記事を参考にしてください。
そもそも出張手当とは
出張手当とは、従業員が出張する際に通常の給与とは別に支給する手当のことです。出張中の食費や、移動にかかる諸経費、さらには慣れない環境での業務負担に対して支給されます。
出張手当は、労働基準法などの法律で定められたものではなく、企業が任意で支給するものです。そのため、支給の有無や金額、支給条件は企業によって大きく異なります。出張手当の金額や支給条件は、企業の規模や業種、出張の頻度などによって変わるのが一般的です。
領収書・レシートの保存要件や方法について詳しく知りたい方は、以下の関連記事を参考にしてください。
関連記事:領収書・レシートはスキャン保存で問題ない?保存要件・方法を解説
出張手当導入には出張旅費規程が必要
出張手当を導入するには、出張旅費規程の作成が不可欠です。出張旅費規程とは、出張に関するルールを明文化したもので、企業における出張業務の運用基準となります。
具体的には、出張手当の金額や支給条件、出張の申請方法、経費の精算方法、宿泊先の規定、緊急時の連絡体制などを詳細に定める必要があります。
明確なルールを設定すれば従業員との認識のずれや、経費精算時のトラブルを防ぎ公平かつ円滑な出張業務の遂行をサポートできるでしょう。
関連記事:出張旅費規程の作成方法は?メリットや手当の相場、ルールの注意点を解説
出張手当の支給額を決めるポイント
出張手当の支給額は、何を目的として支給するかによって金額や計算方法が変わります。ここからは、出張手当の支給額を決めるポイントである「食事代」と「移動時間」の視点から解説していきます。
食事代の補填を目的とする場合
出張の際、宿泊先で食事の提供がない場合、従業員は別途食事代を負担しなければなりません。
通常、個人的な食事代は経費として計上できませんが、出張手当として補填することで、従業員の経済的な負担を軽減できます。出張という特殊な状況下での出費に対する、企業からのサポートといえるでしょう。
食事代を目的とした出張手当は、出張の期間や宿泊先のプランによって決めるのが一般的です。ただし、前述の「出張手当の相場」の調査結果にもあるように、食事代として手当を支給している企業は、全体の1割程度にとどまっているのが現状です。
移動時間などの拘束時間に対して支給する場合
出張では、移動距離が長くなればなるほど、従業員の拘束時間も長くなります。国内出張においては、移動距離に合わせて出張手当の金額を決めている企業が49.4%と、約半数を占めており、移動距離が出張手当の金額を左右する重要な要素の一つです。
企業によっては移動時間も勤務時間とみなし、通常の勤務時間を超える場合は、時間外労働として計算し、割増賃金を支給する場合もあります。拘束時間に対して適切に出張手当を支給すれば、結果的に業務の生産性向上にもつながるでしょう。
出張手当は原則非課税
出張手当は、従業員の出張に伴う費用を補填する目的で支給されるため、給与所得と区別され原則として非課税で支給できます。
しかし、非課税となるのはあくまで「通常必要とされる範囲内」の金額であり、この金額を超える場合は課税対象となる可能性があります。
国税庁の基本通達9-3では、非課税となる旅費の範囲について、詳細な規定が設けられていて、具体的には金額が「通常必要とされる範囲内」であるかがポイントです。
出張手当を非課税とするには、役職による手当額の差を設けすぎないのが重要です。同業種・同規模の企業と比較して、同じくらいの額に設定する必要があるでしょう。適切な金額設定により、税務上のリスクを回避できます。
参考:国税庁「通達目次/所得税基本通達」
出張手当のメリット
出張手当の導入は、従業員と企業双方にとってメリットがあります。ここからは、それぞれのメリットについて解説しましょう。
従業員側
出張中は、普段の生活とは異なり、食事代・交通費・宿泊費・その他雑費など、何かと出費がかさむものです。自費で出張費を立て替えているケースでは、一時的に大きな金額が必要となり、経済的な不安を感じるでしょう。
原則非課税である出張手当は、実質的な手取りが増えることになり、従業員にとって大きなメリットです。出張中の経済的な負担を軽減でき、費用を気にすることなく安心して業務に集中できます。
出張手当の支給は、慣れない環境下での業務遂行をする従業員の負担に対する対価として、役割を果たします。会社からの配慮が感じられ、出張に対するモチベーションを高め会社への帰属意識の向上やエンゲージメント強化につながるでしょう。
企業側
原則非課税の出張手当は、企業に節税効果をもたらします。出張手当として支給した金額は、法人税の計算上、損金として計上できるため、課税対象となる利益を減らせるからです。実質的に出張経費の一部を税金で賄えることになり、企業全体のコスト削減に貢献するでしょう。
また、出張旅費規程を整備し、出張手当の支給基準や精算方法を明確化することで、出張に関する経費精算業務を効率化できます。
業務の効率化が進めば経理担当者の負担を軽減し、人的ミスの防止にもつながるでしょう。なお、出張者自身も規程に基づいてスムーズに精算手続きができるため、双方にとってメリットがあります。
出張手当の導入は、優秀な人材確保を後押しする施策です。出張が多い企業では、手当の有無や金額が入社の決め手となることも珍しくありません。
企業側が知っておくべき出張手当導入のデメリット
出張手当の導入には、メリットだけでなくデメリットも存在し注意が必要です。
出張手当を導入するには出張旅費規程の作成や、運用体制の整備が必要となり、管理コストが発生します。規程の作成には、専門知識が必要となる場合もあり、外部の専門家へ依頼するのもよいでしょう。
また出張手当の金額設定を誤ると、従業員の不満を招いたり、税務調査で指摘を受けたりするリスクがあります。さらに出張手当の支給基準が曖昧だと、不正受給が発生する可能性も否定できません。
当然ながら出張手当を支給することで、企業の経費負担は増加するでしょう。出張手当を導入する際はデメリットも十分に理解し、適切な対策を講じてください。定期的な規程の見直しや、従業員への周知徹底、出張手当の予算管理などが重要なポイントです。
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出張手当は企業によって異なりますが、適正な金額を設定し規程を整備することが重要です。手当の計算や出張申請を効率化するには、経費精算システムの導入が役立ちます。
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