地方自治体の業務でクレジットカード決済は可能?実際の事例も紹介

地方自治体におけるクレジットカード支出の話題では、公共料金や住民税のクレジットカード納付など、住民側のメリットが注目されがちです。しかし、自治体職員の業務においても同様にクレジットカードの導入で大きなメリットがあります。

この記事では、地方自治体がクレジットカードを導入した事例と、支出管理に使用するためのポイント、導入時のメリット・デメリットを紹介します。

地方自治体でもクレジットカードなど幅広い支出方法に対応

日常生活でキャッシュレス決済の利用が進む中、全国の地方自治体でもクレジットカード決済をはじめとしたキャッシュレス納付の導入が広がっています。2000年代半ばからは、地方自治体が地方自治法に基づく裁量を活かし、住民税や公共料金の納付などにクレジットカードを利用できる制度を順次整備してきました。

こうしたキャッシュレス化の流れは、行政内部の経費処理や旅費精算のあり方にも影響を及ぼしています。たとえば、2025年4月から施行された国家公務員向けの旅費制度改正では、これまでの定額支給方式を見直し、出張旅費を原則「実費精算」へ移行することとなりました。この背景には、電子マネーやクレジットカード、IC乗車券などを活用した交通費精算の透明化・効率化が進んだことがあります。

今後は、自治体職員や企業の経理部門においても、キャッシュレス手段を活用した支出管理や経費精算のデジタル化が一層求められていくと考えられます。地方自治体がクレジットカードを決済手段として導入することで、支出の迅速で正確な処理において有効であり、業務の効率化に伴って行政サービスの品質向上にも期待できるでしょう。

バクラクビジネスカードを導入した地方自治体の事例

当社が提供している「バクラクビジネスカード」は、利用明細の即時反映やカード単位での利用制限機能などを備えており、地方自治体でのご活用事例も豊富です。

三重県桑名市さまの導入事例

三重県桑名市さまは、生成AIなど最新テクノロジーの活用や、業務改善に向けた取り組みをしているスマート推進課で「バクラクビジネスカード」を導入頂いています。

三重県桑名市が「バクラクビジネスカード」を導入。利用通知機能と利用制限機能で、不正利用防止と会計事務のDXを推進

当初は海外のツール導入を検討していたものの、決済手段がクレジットカードに限定されていることが多く、導入したくてもできない状況があったとのことです。バクラクビジネスカードの決め手になったのは、「年会費が無料で導入ハードルが低い」点や「管理画面で細かいところまで設定することができる点」などを挙げて頂いています。

千葉県白子町さまの導入事例

千葉県白子町さまでは、公金の透明性と適正管理の観点からこれまでクレジットカードの導入が難しく、DXが進まないという課題をお持ちでした。また、「資金前渡」による事務負担や現金紛失リスクも指摘されており、安全かつ業務効率化の図れる決済手段の確立も重要視されています。

千葉県白子町が「バクラクビジネスカード」を導入。自治体独自のカード利用制約をクリアしDX推進ツール導入を実現、精算・管理業務も最適化。

バクラクビジネスカードであれば、指定した決済先のみで決済を行える制限機能や、決済状況をリアルタイムで可視化できる点などで安全性を担保できることから、導入を決定いただきました。

クレジットカードは地方自治体が使ってもいい?

地方自治体が諸経費の支払にクレジットカードを利用するのは、地方自治法および関係法令の規定に抵触しません。

総務省の通達では、利用するクレジットカードサービスや利用させる職員への権限委任、会計管理者における支出負担行為などが留意事項として示されています。以下で詳しく解説するので参考にしてください。

参考:地方公共団体の支出について職員をしてクレジットカードを利用させることによる場合の留意事項について(通知)|総務省

法人カードの活用を推奨

地方自治体の支出手続きでクレジットカードを使用するケースとしては、物品の購入や役務の提供を受けたときが挙げられます。その際、総務省の通達では、個人カードではなく法人カードの使用が推奨されています。実際にクレジットカードを利用する職員に対しては、その職員が名義人となる法人カードを使わせるのが適切です。

法人カードの利用に関する職員の権限とルール

クレジットカードを使用する行為は、法的にいうと契約の締結および支出負担行為と捉えられるため、使用させる職員に対しては事前に権限が委任されている必要があります。ただし、資金の前渡しを受けた職員については、その範囲内で権限委任は不要です。

物品の納入権限は会計管理者とされ、会計管理者からクレジットカードを利用する職員に権限が委譲される必要があります。クレジットカードを利用する職員自身が出納員や会計職員の場合、納入権限の委任は不要です。

職員がクレジットカードを使う際は、透明性と適正性の確保が求められます。具体的には所属長の了承を得ること、利用額や使途の制限も設けること、利用後に報告することなどです。

クレジットカード利用時の手続きと注意事項

地方自治体の職員がクレジットカードを利用する場合、購入した物品の支払処理は、店舗がクレジットカード事業者に委任する形で行わなければなりません。クレジットカード事業者の規約によっては、購入者が支払を完了するまで、商品などの所有権がクレジットカード事業者に留保されることがあります。その場合は、商品の保管と使用に注意が必要です。

支出の決定・命令と適正管理

地方自治体では、支出を決定する役割(支出負担行為)は長の担当ですが、実際の支払は会計管理者が担当します。両者が分離しているため、互いにチェックし合うことで、適切な支出が行われる仕組みになっています。

実際にクレジットカードを使う職員に対しては、支出命令や検査の権限を持たせない方がよいでしょう。万一、職員がクレジットカードを個人的なことに使い、地方自治体に損害を与えた場合は、当該職員に対して賠償を求める必要があります。なお、クレジットカードの支出は、購入した年度の予算で処理してください。

会計管理者による支出確認と管理の手順

クレジットカードでの支出命令を受けた場合、会計管理者は支出が法令や予算に違反していないか、支出に関する債務が確定しているかどうかを確認しなければなりません。加えてクレジットカード事業者から請求書が届いた際、個々の支出がどの職員によるものなのか確認が必要です。具体的な金額や利用日などを特定できるよう、事前に必要な措置を講じておきましょう。

スマホ決済サービスの利用と事務処理の透明性確保

基本的には、スマートフォンアプリでの決済サービスも法律に違反しないと考えられます。利用するかどうかは、各決済サービスの内容などに応じて適切に判断する必要があるでしょう。利用を決定した手続きについては規則を設けて明確にし、事務処理の透明性と公平性を保つことが重要です。

地方自治体でクレジットカードを活用できる具体的な場面

活用場面1:公務員の出張旅費の実費精算と「資金前渡」制度の見直し

従来、国家公務員が出張に出る際には、「資金前渡」として出張旅費を現金で前払いし、帰庁後に精算する方式が一般的でした。しかし、実務上の負担や不透明性の課題から、2025年4月に施行された国家公務員の旅費制度改正では、原則として出張旅費の実費精算が導入されました。

これらの動向に地方も追従するのであれば、地方自治体においてもクレジットカードの利用が広がっていくでしょう。交通費・宿泊費の支払いと、領収書に基づく正確な精算処理を期待してできるためです。


活用場面2:災害対応や緊急物品購入における即時対応

災害対応や緊急業務においては、従来の契約手続きや請求払い方式では対応が間に合わないケースが発生します。そのため、自治体ではあらかじめ「庁用クレジットカード(購入カード)」を整備し、緊急時の物品購入に活用する体制を整えるのは効果的だと考えられます。

このような場合、会計管理者の承認のもと、予算の範囲内でクレジットカード決済を行い、後日明細と領収書を添付して精算処理を行います。必要に応じて、随意契約や緊急契約の手続きを並行して行うことで、法的な整合性も確保されます。


活用場面3:オンライン研修・クラウドサービスの利用料支払い

外部の研修費用やSaaS型のクラウドサービス利用料など、クレジットカード決済のみ対応しているサービスに対しては、庁内クレジットカードを使って支払うケースが増えています。職員の個人カードによる立替払いが必要となる場合もありますが、自治体の多くでは立替金の管理や禁止を定めた内部規程との整合性が求められるため、注意が必要です。


活用場面4:少額・単発の消耗品購入

文房具や衛生用品など、定期契約に含まれない少額物品については、クレジットカードを使ってオンラインで購入することで業務の効率化が図れます。使用対象や上限金額を定めた「少額購入ガイドライン」や「庁用カード管理要綱」などを設け、内部統制と利便性を両立させると良いでしょう。

地方自治体がクレジットカードで支出を管理するメリット

クレジットカードで支出を管理する大きなメリットは、現金を数えたり受け渡したりする手間がなくなることです。業務で現金のやり取りが多くなると管理が煩雑になるものの、クレジットカードが使えれば現金を管理する手間は減るでしょう。現金を紛失するリスクも抑えられます。

クレジットカードで支出を管理すれば、請求を一元化することも可能です。継続して発生する経費に関してはチェックの効率化が図れ、会計フローがスムーズになります。クレジットカードの導入で経費精算の自動化が進めば、手動での管理に比べてごまかしが効かなくなり、不正防止にも効果的です。

地方自治体がクレジットカードで支出を管理するデメリット

法人カードを利用するためには、カードを利用する職員に、支出負担行為や契約締結の権限を委任する必要があります。そのための手続きが煩雑になるのはデメリットの1つでしょう。現金などで長年管理をしてきた人にとっては、複雑だと感じる可能性もあります。

法人カードを持たせた職員が、個人的な目的でクレジットカードを不正に利用するケースも考えられます。会計責任者は支出が法令や予算に適合しているかどうか、確認しなければなりません。支出の透明性を確保するための追加手続きも必要になり、その分の業務は負担になります。

クレジットカード業者との契約条件によっては、購入した物品の所有権について、一時的とはいえカード会社に保留される場合があるのもデメリットです。物品管理に制約が生じれば、業務に支障をきたす恐れもあります。

地方自治体の支出改革に効果的なパーチェシングカード

パーチェシングカードは法人カードのなかでも、BtoB決済に利用できる購買専用のクレジットカードです。カード本体を発行しないカードレスに対応しているため、管理の手間がかかりません。任意の名義に対応しており、地方自治体での導入では、部局やプロジェクト単位で名義を決めて支払を一本化できます。

支払う用途の制限が可能であることから、不正利用の防止にも効果的です。支払先を事前に登録する必要があるものの、継続的な支払があるサービスの利用では、支払漏れを防止するのにも役立ちます。

パーチェシングカードとは?コーポレートカードとの違いも解説

 

まとめ

地方自治体がクレジットカードを利用することは、地方自治法や関係法令の規定に抵触しません。適正な管理や透明性の確保などが必要ですが、手間を省いて会計フローをスムーズにしたり、不正利用の防止につながったりするなど、クレジットカードで支出を管理するメリットがあります。

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