切手は経費にできる?勘定科目と仕訳の例・消費税の扱い方を解説

業務に使用する目的で郵便切手を購入した場合、切手の扱い方や現場の状況によって適切な仕訳が異なります。この記事では、切手の勘定科目・仕訳方法などを解説します。切手に関する税制上の注意点や、簡易書留における仕訳方法なども解説するので、参考にしてください。

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切手は経費にできる?勘定科目と仕訳の例・消費税の扱い方を解説

【ケース別】切手を経費にする際の勘定科目

切手代を経費として計上する際には、ケースに合わせて仕訳する勘定科目が検討されます。以下は、代表的なケースと勘定科目の組み合わせです。

ケース 勘定科目
切手を購入し、顧客や取引先へ書類(封筒やはがき等)を送るのに使用する場合 通信費
切手を購入し、顧客や取引先へ荷物(定形外郵便など)を送るのに使用する場合 荷造運賃
将来的に郵便物を送ることに備え、切手を購入し所有する場合 貯蔵品

どの勘定科目を使うかの大きなポイントは、その切手を「使用する」のか「所有する」のかです。それぞれの科目の使い分けについて、さらに詳しく見ていきましょう。

通信費

購入して保管していた状態の切手、もしくは新しく購入した切手を業務上の郵便物に使うなら、多くのケースで「通信費」に仕訳されます。基本的に、切手は所有しているだけでは通信費とはならず、経費として計上することは不可能です。そのため、購入した時点では後述の「貯蔵品」の勘定科目で資産計上するのが原則です。

▶︎「通信費」とは?|勘定科目の概要や仕訳方法、注意点など具体的に解説!

荷造運賃

前述の通信費と同様、切手代の仕訳先の候補として考えられるのは「荷造運賃」です。通信費と荷造運賃は「少額な発送と高額な発送で分けている」「はがきと宅配物で分けている」…など、企業によって科目の使い分けは様々ですが、税法上の明確なルールや線引きはありません。

そのため、「切手を貼って、書類以外の個包などを送る」などのケースに、通信費と科目を分けて対応したいのであれば荷造運賃への仕訳を検討しましょう。

貯蔵品

購入時、ならびに未使用で所有している切手の扱いは「貯蔵品」です。貯蔵品は、貸借対照表では「資産」へ計上される勘定科目です。切手は金銭と同等の価値があるとみなされ、資産扱いとなるので経費として扱えないからです。

しかし、「毎月、切手を貼って郵便物を送る」といった継続使用を前提とした切手の購入は、はじめから「通信費」に仕訳することも可能です。このパターンの仕訳については、次の章で詳しく解説します。

切手代の仕訳で用いられる2つの処理方法と消費税の考え方

世間一般的に企業で用いられている、郵便切手の経理処理を説明します。

1.【原則的な方法】切手を購入したら資産計上し、使用したら経費として処理する

切手の会計処理における原則的な方法は、実際に郵便などで使用したタイミングで経費として処理することです。まず、切手を購入した際に「貯蔵品」の勘定科目に振り分けて処理します。この際、その後、切手を使用したら、勘定科目が「通信費」の経費とします。

仕訳の例は以下のとおりです。

<①切手を買った際の仕訳(120円切手30枚を購入)>

 借方貸方
切手購入時貯蔵品
3,600円現金3,600円

<②切手を使用した際の仕訳(120円切手30枚を使用)>

 借方貸方
切手使用時通信費(課税仕入)3,600円貯蔵品3,600円

しかし、この方法は切手を使用する度に勘定科目が貯蔵品から通信費に変わり、経理処理に手間がかかるため、実務で用いられることは少ない印象です。

2.【簡便法】初めから切手代を経費として処理する

実際の経理の実務として用いられるケースが多いのがこの処理方法です。切手の使用を前提としつつ継続的に購入している場合は、初めから切手代を「通信費」として経費扱いしておく、という簡便方法が認められています。

郵便切手類又は物品切手等(自ら引換給付を受けるものに限る。)を購入した事業者が、継続して当該郵便切手類又は物品切手等の対価を支払った日の属する課税期間の課税仕入れとしているときは、これを認める。

<切手を購入した際の仕訳(120円切手30枚を購入)>

 借方貸方
切手購入時通信費(課税仕入)3,600円現金3,600円

ただし、この処理はあくまで「切手を使用する」ことを前提条件としています。条件に沿わず、使用しない切手を大量に課税仕入で処理していると、後述する税務上のリスクが高まるケースもあるので要注意です。

なぜ切手の消費税は非課税で扱われる?

日本の税法では、切手は公共的なサービスである郵便サービスの一部として位置づけられ、消費税の対象外とされています。通常、消費税は商品やサービスの提供(役務の提供)に対して課税されますが、切手は事前に郵便サービスの利用権を得るための支払いとして機能します。

そのため、切手の購入時には消費税がかからないのは、購入と使用の二重課税を防ぐためです。例えば、レターパックの購入代金には元々配達料に対する消費税が含まれていますが、購入時にもさらに消費税を課すことは「二重課税」となります。

ただし、切手代が非課税となるのは後述のように、郵便局などの所定の購入場所のみなので注意が必要です。

切手の経理処理に関する注意点

企業が切手を取り扱う場合、いくつか注意するべき点があります。具体的な注意点とそれぞれの詳細は、次のとおりです。

切手が非課税で販売されるのは「郵便局」や「郵便切手販売所(所定のコンビニ等)」のみ

切手は、消費税における13項目の非課税取引の1つに含まれています。しかし、切手が非課税で販売されている場所は郵便局や、「郵便切手販売所」の承認を受けている小売店のみです。この承認を受けていない金券ショップやチケット販売所などでも切手を購入できますが、販売時点で消費税が課税されているため注意しましょう。

切手の使われ方で勘定科目が変わる

切手は多くの場合、勘定科目を「通信費」に仕訳します。一方で、その用途によっては、「広告宣伝費」や「販売促進費」に仕訳されることもあります。

例えば、ダイレクトメールによる広告は、情報の伝達よりも販売促進を主な目的としています。そのため、使った分の切手が経費として扱われることに変わりはありませんが、通信費ではなく広告宣伝費として計上しましょう。

切手を大量に購入すると税務調査で疑われやすい

大量に購入すると税務調査で不正を疑われやすいことが、切手に関する注意点として挙げられます。購入した切手をあらかじめ通信費として計上し、使わなかった分を期末に貯蔵品として資産に振り替える方法は国税庁にも認められています。実務をスムーズにするため、多くの企業で取られている方法です。

しかし、使わなかった分の切手を期末に貯蔵品として資産にしないと、見かけ上は経費が多くなり税金の額も変わります。大量に切手を購入すると、この手段を用いた粉飾決算がしやすくなるため、税務調査で疑われるというリスクもあるでしょう。

切手代が脱税に使われる可能性がある

切手が脱税に使われる可能性も、注意すべきポイントです。例えば、郵便局から10万円分の切手を購入した後に、金券ショップなどにそのまま売って、約10万円の現金を得たとします。その後、切手を10万円分購入したとして通信費に計上しつつ、仕訳の体制を整えれば、約10万円の現金を着服することが可能です。見かけ上の経費が増えるため、税金の額を減らせます。

このような不正が税務調査で発見されると、罰則金の支払いや懲役刑が課されるなどのペナルティを受けるため、このような不正を阻止すべく、日頃から従業員への周知や徹底した管理を心がけましょう。

収入印紙と切手代の仕訳の違い

切手と扱いが混同されがちなものとして、収入印紙が挙げられます。収入印紙は、経済的な取引をする文書に課税される、印紙税を収めるために必要です。印紙税は国に支払う税金のため、勘定科目は「租税公課」に計上します。

一方の切手代は通信手段にかかる費用として主に「通信費」に仕訳され、勘定科目に租税公課が使われるケースはほぼありません。

▶︎収入印紙の経費計上方法は?勘定科目や購入・ストック・決算など仕訳例を解説

簡易書留の仕訳方法

重要な書類や商品などを送る際は、簡易書留を利用する場合もあります。簡易書留は、切手と同じく状況によって勘定科目が変わるため、適切な対応が必要です。

ここでは、簡易書留の利用方法や状況ごとに、使うべき勘定科目や仕訳方法について解説します。

書類などを送る場合

書類を簡易書留で送る場合、勘定科目は「通信費」を使うことが一般的です。なお、金額は切手の料金と簡易書留の料金を合計した額になります。仕訳については、状況によって貸方勘定科目が変わります。貯蔵品扱いで購入していた郵便切手を使ったら、貸方勘定科目は「貯蔵品」です。郵便局の窓口で料金を現金払いした場合、貸方勘定科目は「現金」に該当します。

商品などを送る場合

簡易書留を使って商品を送る際は、勘定科目が「荷造運賃」となります。金額に関しては、書類を送る場合と同じく、切手の料金と簡易書留の料金を合計した額です。

仕訳についても、基本的に書類を送ったときと同じ対応をします。貯蔵品扱いで購入していた郵便切手を使った場合、貸方勘定科目は「貯蔵品」です。郵便局の窓口で料金を現金払いしたら、貸方勘定科目は「現金」になります。

まとめ

切手を経費にできるかどうかのほか、切手の勘定項目や仕訳方法、切手に関する注意点や簡易書留の仕訳方法などを解説してきました。切手は扱われ方が特殊であり、使用方法が変わると勘定項目も変わります。また、不正をしやすい部分でもあるため、税務調査で疑われないように適切な処理や対応が必要です。

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