経費精算規定(ルール)が必要な理由とは?作成のポイントや注意点を解説

経費精算規定を定めることで、経費精算に関するトラブルやミスが軽減され、業務効率化につながります。さらに規定により、無駄な経費の削減や、不正受給・法的リスクの回避、節税対策にも役立ちます。

しかし経費精算規定にあたっては、何を盛り込むべきか、どのように運用すればよいのかと悩むケースも少なくありません。特に交際費や出張費、交通費に関しては規定を定める際は、注意が必要です。

本記事では、経費精算規定(ルール)に記載すべき項目や作成時のポイントも解説します。

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経費精算規定(ルール)が必要な理由とは?作成のポイントや注意点を解説

経費精算規定(ルール)とは

経費精算規定(ルール)とは、経費精算に関する取り決めを明文化してまとめたものです。経費精算の対象となる費用は、交際費、交通費、出張費など幅広くなっています。そのため、経費精算はすべての従業員に関わるものです。

ルールが決まっていない場合、各従業員が手続きを誤り、さまざまな問題につながる恐れがあるでしょう。しかし、経費精算規定(ルール)があれば、経費精算に関するトラブルの防止が可能です。また、手続きのミスも減り、業務効率化につながります。

経費精算規定(ルール)を用意すべき理由とは

経費精算規定(ルール)を用意すべき理由は、さまざまあります。ここでは、その理由について解説します。

経理担当者の負担が軽減される

経費精算規定(ルール)を設ければ、従業員はそれを確認してから経費精算を行えます。その結果、内容に誤りのある申請や書類の不備などが少なくなります。差し戻しの件数が減るため、経理担当者の無駄な作業も減らすことが可能です。

どうしても差し戻しが必要な場合も、経費精算規定(ルール)の該当箇所を示せば、明確な理由を説明できます。経費精算規定(ルール)があると、各従業員や経理担当者の負担を軽減でき、業務効率化にもつながるでしょう。

無駄な経費の削減につながる

本来は事業に関係ない費用が経費精算で申請され、承認されてしまった場合、必要以上に利益が減少する要因になります。明確な経費精算規定(ルール)があれば、従業員は経費に該当するものだけを正しく申請できるようになるでしょう。不適切な申請があった場合も経理担当者が明確な基準に則り指摘でき、事業に関係ない経費の承認を防止できます。

経費の無駄づかいや過剰な使用を抑止するには、経費精算規定(ルール)を用意することが大切です。

不正受給や法的リスクを回避できる

経費精算規定(ルール)の周知は、経費の水増しや架空請求などの不正対策にもなります。たとえ従業員に悪気がなかったとしても、不適切な経費を支給した場合、企業は管理責任を問われるため注意が必要です。場合によっては追加課税や重加算税の対象にもなります。

不正受給やそれに伴う法的リスクを回避するためには、明確な経費精算規定(ルール)の設定により、従業員の不正を防ぐ必要があります。

従業員に不公平感を与えずにすむ

経費精算に関する取り決めが曖昧だと、承認者や経理担当者の裁量によって、経費として認められる内容が変わる可能性があります。たとえば、同僚とまったく同じ内容を申請しても、自分は承認されないというケースが発生する恐れがあります。その場合、承認されなかった従業員は不公平感をもつでしょう。

経費精算規定(ルール)を根拠に経費精算を行えば、経費として認められる内容も一律になります。従業員に不公平感を与えずにすみ、適切な経費のみを正しく承認することが可能です。

節税対策につながる

交際費や出張費の日当などについては、経費精算規定(ルール)があると節税の効果も期待できます。交際費は基本的に課税対象になりますが、飲食にかかる費用の一部については非課税です。交際費規定を設けて飲食にかかる費用が正確に分かるように申請してもらえば、節税につながります。

また、日当とは、出張の食費などを補助するために支給されるものです。出張費規定を設けると、実際にかかった金額ではなく定額を一律で精算できます。

経費精算規定(ルール)に記載すべき8つの項目

経費精算規定(ルール)には、何を記載すればよいのでしょうか。ここでは、必要な8つの項目について解説します。

目的や適用範囲

経費精算規定の冒頭には、誰がこの規定の対象となるか、どのような経費が対象となるかを明確に記載します。規定の対象範囲は正社員のみなのか、アルバイトや契約社員等も含むのかを明確にします。また経費範囲は企業ごとに範囲が異なるため、自社で業務上必要と認める範囲を定めましょう。

経費の基準

経費の基準を設け、経費精算で請求できる内容を制限する必要があります。基準を設ければ、私的な支出を経費として申請されるリスクを下げることが可能です。経費として認める内容の範囲か、経費から除外される内容について明確に記載しましょう。

経費の上限

経費の上限を定めておくと、経費の水増し請求を防げます。たとえば、外出や出張の際に発生した電車代については、区間の最安値を上限にすると不当な請求を阻止できるでしょう。また上限金額を超える場合は、事前に稟議を通すルールを設けましょう。

自己決裁の禁止

自己決裁とは、経費精算をする本人が自ら申請を承認することです。申請を他者がチェックできなくなるため、経費の不正使用を誘発する恐れがあります。経費精算規定(ルール)には、自己決裁を禁止する文言を記載しましょう。

経費申請の期限

経費精算については、申請の期限をあらかじめ定めておく必要があります。経費精算が遅れると経費の情報が経営成績や財務状態に反映される時期も遅れ、自社の状況を正確に判断できなくなるからです。また、確定申告で適切な書類を提出できない恐れもあります。申請期限だけでなく、申請期限を超過した後の対応についても明確にしておきましょう。

領収書がないときの対策

経費精算では架空の経費精算を防ぐため、領収書やレシートなどの提出を必須とするケースが多いです。しかし、そもそも領収書が発行されなかったり、誤って紛失してしまったりする状況も考えられます。

そのような場合に備え、領収書やレシートなどを提出できないときの対策についても明記しましょう。たとえば、申請時に使用日時、目的、移動区間、金額などの詳細を記入して提出させる方法があります。

例外の禁止

経費精算の例外を認めると、ほかの従業員が不公平に感じます。一度例外を認めた場合、ほかの従業員から同じ内容の精算があれば、再び認めざるを得なくなるでしょう。経費精算規定(ルール)では、あらかじめ例外を禁止しておく必要があります。

フォーマットの用意

経費精算規定(ルール)では、フォーマットについても定めましょう。フォーマットがあれば申請者が申請しやすいだけでなく、承認者も確認しやすくなります。使いやすいフォーマットなら、不備やミスの防止にもつながる点もメリットです。

交際費規定を作成するときのポイント

ここでは、交際費規定の作成時のポイントを解説します。

金額の上限を設定する

交際費は、他の経費よりも上限を意識する必要があるため、交際費規定であらかじめ金額の上限を設定しましょう。これは、交際費は費用対効果が見えにくく、税法上の取り扱いにおいて原則課税対象になるからです。また、特例で接待費のうち飲食にかかる費用は経費計上できますが、企業規模に応じて年間の上限が決まっています。役職や部署ごとに1人あたりの月間や年間の上限金額を決めておけば、無駄な交際費の発生を防ぐことができます。

詳細の報告を義務化する

交際費については、詳細の報告を義務化しましょう。飲食費かどうか、金額はいくらかによって、課税対象になるかどうかが決まるためです。飲食費に関しては、1人10,000円(※)以下の支出であれば全額非課税になります。飲食費にあたる交際費を経費として計上するには、飲食費であることを明確にするための情報が必要になります。領収書の提出に加えて、以下の必要事項を報告することを交際費規定に明記しておくとよいでしょう。

  • 飲食をした年月日
  • 参加した得意先・仕入先の氏名または名称と関係
  • 参加した人数
  • 飲食に要した費用の額
  • 飲食店の名前と所在地
  • その他飲食費であることを明らかにするために必要な情報

※令和6年度税制改正において、5,000円から10,000円に引き上げ。

出張費規定を作成するときのポイント

出張費規定を作成する際も、さまざまなポイントがあります。以下で詳しく解説します。

「出張」の定義を明確にする

出張費規定では、日常的な外出と出張の違いを明確にしましょう。たとえば、日帰り、短期、長期など、期間ごとに説明すると分かりやすくなります。明確な基準を示すことが大切です。

日当・宿泊費の金額を決定する

日当・宿泊費は定額支給ができます。そのためには、出張費規定で金額を定めておく必要があります。同業種や同規模の企業の事例を参考にし、役職ごとに妥当な金額を設定しましょう。

▼日当などの相場に関しては、こちらで詳しく触れています。

「出張に伴う交通費とは?出張費と旅費交通費の違いや費用の目安についても解説」

食事代の扱いについて決める

日当に出張中の食事代を含むのかについても、出張費規定で明示しましょう。食事代について個別の申請を求める場合は、その旨を出張費規定で示す必要があります。

仮払い規定があると便利

出張費は高額になる場合が多いため、仮払いできる規定を設けて事前の支払いができるようにすると、従業員の負担を軽減できます。仮払い規定では、仮払いした金額と実際にかかった金額の精算方法についても定めましょう。

出張手続きの規定を設ける

出張手続きに関する規定も明確にしましょう。事前に申請書を提出して承認を受ける流れが一般的です。また、従業員が出張から戻った際には、旅費精算書を提出してもらうパターンが多いです。

▼出張旅費精算に関しては、こちらで詳しく触れています。

「出張旅費精算とは?混同しやすい経費や精算の流れ・ポイントを解説」

出張時のトラブルについて明記する

出張規定では、出張先で病気や災害などのトラブルが発生した際の対応についても、記載しておくと安心です。あわせて、出張先の残業や休日出勤が必要になった場合の対応についても明記しましょう。

【移動手段別】交通費規定を作成するときのポイント

交通費規定を作成するときは、移動手段別の注意点もあります。ここでは、移動手段別のポイントを解説します。

移動手段1:電車・バス

電車やバスを利用しても基本的には領収書が発行されません。そのため、利用した駅やバス停の情報をもとに経費精算を行います。しかし従業員のなかには、最安値となる経路ではなく、自分が利用した経路の運賃や、定期区間が含まれていたのに全額を申請してしまうため、不正受給のリスクがあります。

よって、電車やバスの交通費については、最安値となる経路の運賃を支給することや、定期区間は除外して支給することを交通費規定に明記しましょう。

移動手段2:特急・飛行機・船舶

特急・飛行機・船舶で移動する場合、費用が高額になる可能性が高いため、経費の条件を詳しく記載する必要があります。また、マイルを利用して飛行機に乗ると、領収書が発行されない点についても注意が必要です。

移動手段3:タクシー

タクシーについては、使用を認める条件を決めましょう。たとえば、最寄り駅から目的地までの距離を定めておけば、無駄なタクシーの利用を防ぐことが可能です。なお、取引先の送迎のためにタクシーを使用した場合は、交際費として計上する必要があります。

移動手段4:車

自家用車や社用車などについては、移動距離に基づいて支給する金額を決めましょう。交通費規定には、1kmあたりの金額を具体的に記載するのがおすすめです。

まとめ

経費精算を適切に進めるには、経費精算規定(ルール)の策定が必要不可欠です。なお規定したルールは、就業規則のように社内全員が閲覧可能な状態で管理し、周知しなければなりません。せっかくルールを規定しても、周知されなければ不備やミスが増え、経費精算業務の効率は下がってしまいます。

また、経費精算システム上に規定したルールを登録しておくと、より効率的な運用が実現できます。

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