
卸売業者がインボイス制度に対応する際のポイントや卸売市場特例について紹介
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-06-25
- この記事の3つのポイント
- 適格請求書発行時業者になるためには、所轄税務署に申請書を出し、認められる必要がある
- 免税事業者と課税事業者の双方がいる場合、経理作業の煩雑化に注意が必要である
- 卸売市場特例とは、一定の条件を満たす場合にインボイスの交付が免除されるものである
2023年10月に始まったインボイス制度は、卸売業者にも対応が求められる制度です。
本記事では、卸売業者が知っておくべき基本情報から、例外的にインボイス発行が免除される卸売市場特例、事務作業を効率化するツールまでわかりやすく解説します。
インボイス制度の概要を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:インボイス制度とは?意味や概要、対象となる事業者への影響を図解でわかりやすく解説
卸売業者がインボイス制度に対応する際のポイントや卸売市場特例について紹介
インボイス制度とは?
インボイス制度とは、2023年10月からスタートした新たな消費税の仕入税額控除の方式です。正式には「適格請求書等保存方式」と呼ばれます。軽減税率の導入により、消費税率が8%と10%で混在する中、正確な納税計算を行うために導入されました。
この制度では、取引の際に「適格請求書(インボイス)」を発行・保存することが求められます。適格請求書には税率ごとの消費税額や登録番号など、一定の記載項目が必要です。
仕入税額控除を受けるには「適格請求書発行事業者」からの仕入であることと、そのインボイスを保存することが前提となります。特に、課税事業者にとっては、正確なインボイス対応が今後の経理・税務に直結する重要なポイントです。
関連記事:インボイス制度とは?意味や概要、対象となる事業者への影響を図解でわかりやすく解説
卸売業者が適格請求書発行事業者になるためには?
卸売業者がインボイス制度に対応するためには「適格請求書発行事業者」としての登録が必要です。この登録は、所轄税務署に申請書を提出し、審査を経て認められた事業者のみが適格請求書を発行できます。
登録が完了すると税務署から登録番号が通知され、請求書などへの記載により、仕入先が仕入税額控除を受けられるようになります。
また、免税事業者が適格請求書発行事業者になる場合は、課税事業者に切り替わるため、消費税の申告・納税義務が発生する点には注意が必要です。売上や取引先との関係を踏まえ、制度導入による影響を事前に理解しましょう。
適格請求書発行事業者について詳しくは以下の記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
卸売業者がインボイス制度に対応すべき理由
卸売業者がインボイス制度に対応すべき最大の理由は、適格請求書を発行できないと、取引先である卸売先(買手側)が消費税の仕入税額控除を受けられなくなるためです。
仕入税額控除ができないと買手側の納税額が増えるので、コスト増を避けるために仕入先の見直しを検討する可能性が高まります。
実際に「適格請求書を発行できる業者と取引したい」と考える買手側の意向が強くなりつつあり、インボイス未対応の業者は取引継続のリスクを抱えることになります。
免税事業者でも一定期間は経過措置が適用されますが、長期的に見れば適格請求書発行事業者として対応をしておくことが、安定した取引の維持につながるでしょう。
卸売業者がインボイス制度で注意したいポイント
インボイス制度への対応にあたり、卸売業者はさまざまな実務面での変化に注意しなければなりません。特に、取引先が免税事業者である場合の対応や、複数の税区分にまたがる経理処理など、仕入税額控除に直結する業務が発生します。
ここからは、卸売業者が特に気をつけたい2つのポイントを解説します。
売手が免税事業者の取引の場合、仕入税額控除が使えない
インボイス制度の開始により、売手が免税事業者である場合、買手である卸売業者は原則として仕入税額控除ができません。制度導入前と同じ価格で仕入れると消費税分の控除が受けられず、その分のコストが上乗せされてしまいます。
経過措置として2026年9月までは80%、2029年9月までは50%の控除が認められますが、あくまで一時的な対応です。取引先が免税事業者である場合は、将来的な負担増も見据えて契約内容を見直す必要があります。
特に、利益率が低い商品を扱う卸売業では、わずかなコスト増でも経営に与える影響は小さくありません。取引先の登録状況を確認し、必要に応じて交渉や契約変更を進めることが求められます。
免税事業者と課税事業者の取引先がいる場合、経理事務作業が煩雑化する
免税事業者と課税事業者の両方と取引がある場合、インボイス制度によって経理処理が煩雑になる点も、注意しなければなりません。適格請求書とそうでない請求書を分けて管理し、それぞれに応じた会計処理を行う必要があるため、作業負担が増加します。
さらに、請求書に記載漏れや誤りがあれば、売手への修正依頼の対応も発生し、経理部門の手間と時間が増える要因になります。特に、中小規模の卸売業者では、人手不足の中でこれらの対応が重荷になることも少なくないでしょう。
適格請求書の内容確認や保存要件の管理に対応するためには、会計ソフトの見直しや業務フローの再構築など、制度に対応した経理体制の整備が不可欠です。導入初期には特に慎重な対応が求められます。
卸売市場特例とは?
インボイス制度では、生鮮食品や加工食品などの取引が多い卸売市場において、一定の条件を満たす場合にインボイスの交付が免除される「卸売市場特例」が設けられています。
卸売市場特例とは、インボイス発行が困難な取引実態を考慮し、卸売市場や農協が発行する書類の保存によって仕入税額控除を認める制度です。
対象となるのは、卸売市場で行われる以下の取引です。
- 生鮮食料品
- 花き
- 野菜の苗など
卸売市場特例は、出荷者が免税事業者であっても不利益にならないよう配慮されています。特例の対象市場は、農林水産省のホームページで事前に確認しましょう。
卸売市場特例の適用される範囲は限定される
卸売市場特例は便利な制度ではありますが、誰でも利用できるわけではありません。適用されるのは、国や自治体から認定を受けた一部の卸売市場に限られており、次のような条件を満たす市場をとおして生鮮食料品や加工食品などを販売する場合のみです。
- 農林水産大臣の認定を受けた中央卸売市場
- 都道府県知事の認定を受けた地方卸売市場
- 農林水産大臣の確認を受けた、上記に準ずるその他の卸売市場
これらの市場では、売手が免税事業者であってもインボイス発行が免除され、卸売市場や農協が作成する書類を保存すれば、買手は仕入税額控除を受けられます。
対象市場は農林水産省の公式サイトで確認できるため、事前に確認しておきましょう。それ以外の市場での取引や、認定を受けていないケースにおいて特例は適用されません。
多くの卸売業者にとっては、通常どおりインボイス制度への対応が求められるため、取引先の市場が対象かどうかをしっかり確認した上で判断することが重要です。
税区分選択の手間を減らし、請求書の処理業務を効率化するなら「バクラク請求書受取」
インボイス制度の導入により、卸売業者には適格請求書の発行・保存や税区分の確認といった対応が求められるようになりました。特に、免税事業者との取引や請求書の仕訳作業など、経理業務の煩雑化が課題になるでしょう。
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