インボイス導入で下請法に要注意!取引停止や「消費税を支払わない」等の違反ケース
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-08-11
2023年10月1日からインボイス制度が始まりました。インボイス制度は多くの事業者に影響を与えますが、下請法においては特に慎重な対応が求められます。インボイス制度への対応を急ぐあまり、下請法違反を犯さないように注意してください。この記事では、インボイス制度で注意すべき下請法や、違反とみなされる可能性の高い内容を解説します。ぜひ参考にしてください。
インボイス導入で下請法に要注意!取引停止や「消費税を支払わない」等の違反ケース
下請法とは?
インボイス制度に対応する際に注意すべき下請法について、独占禁止法との違いも踏まえつつ解説します。
下請法の意味
下請法は、下請事業者(受注者)に対する、親事業者(商品やサービスの発注者)からの合理的根拠のない要求を禁止するために制定された法律です。下請法で守られる対象は、個人事業主または資本金が一定金額以下の法人です。
下請法の正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」で、下請法は独占禁止法を補完する位置付けとして機能します。
独占禁止法との違い
独占禁止法の正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」です。独占禁止法は、公正で自由な経済活動を促進する目的で、事業者・事業者団体の反競争的な行為を規制しています。
独占禁止法は、市場全体の公正な競争を確保するための法律です。一方、下請法は、特に親事業者(発注者)と下請事業者(受注者)の取引関係に焦点を当て、下請事業者の利益を保護することを目的としています。
下請法による義務・禁止事項
下請法では、親事業者に対して4つの義務・11の禁止行為を定めています。親事業者の義務・禁止事項の詳細を解説します。
親事業者の義務
下請法で定められた親事業者の義務は、以下のとおりです。
- 書面の交付
- 書類の作成・保存
- 下請代金の支払期日の設定
- 遅延利息の支払
取引条件を明確にした書面の交付や書類の作成・保存により、取引の透明性が確保されます。また、下請代金の支払期日の設定や遅延利息の支払は、下請事業者の不利益を軽減しつつ資金繰りを守ります。
親事業者の禁止事項
下請法で定められた親事業者の禁止事項は、以下のとおりです。
- 受領拒否
- 下請代金の支払遅延
- 下請代金の減額
- 返品
- 買いたたき
- 購入・利用強制
- 報復措置
- 有償支給原材料等の対価の早期決済
- 割引困難な手形交付
- 不当な経済上の利益の提供要請
- 不当な給付内容の変更・やり直し
上記禁止事項を遵守すると、親事業者は下請事業者との公正な取引関係を維持でき、健全なビジネス環境を構築できます。
インボイス制度で注意すべき下請法違反
課税事業者が免税事業者と取引する場合、インボイス(適格請求書)の発行がないため仕入税額控除を受けられません。その結果、課税事業者の税負担は増加します。
親事業者が課税事業者で、下請事業者が免税事業者の場合、親事業者が以下のような行動をする可能性があります。
- 値下げの要請や取引打ち切りの示唆
- 受注者にインボイス発行事業者になるよう登録を要請
しかし、インボイス発行事業者でないことを理由とした、取引条件の高圧的な変更は認められません。上記のような親事業者の行動は、下請法違反に該当する可能性があります。
インボイス制度で下請法違反となるケース
インボイス制度で下請法違反となる具体的なケースを解説します。詳細を理解し、下請事業者に対する不適切な行為を回避しましょう。
増額税額分の報酬減額を強制する
親事業者が下請事業者の消費税相当額を報酬から減額することは、禁止事項の「下請代金の減額」に該当する下請法違反です。取引条件の変更は双方の協議が必要で、親事業者の優位な立場を利用した減額は認められません。
減額に応じない下請けからの商品を受け取り拒否する
親事業者が下請事業者に消費税相当額の減額を要求し、応じない場合に商品の受領拒否や返品をすることは、下請法の禁止事項である「受領拒否」や「返品」に抵触します。下請事業者側に契約不履行などの正当な理由がない限り、合理的根拠のない受領拒否や返品は避けるべきです。
消費税増額した分を協賛金や役務で負担させる
親事業者は免税事業者である下請事業者に対し、消費税相当額の協賛金支払や無償の役務提供を強要してはいけません。強要は、下請法の禁止事項である「不当な経済上の利益の提供要請」に該当する可能性があります。
消費税増額した分の商品購入を強制する
親事業者が免税事業者である下請事業者に対し、消費税相当額に相当する商品を強制的に購入させる行為は、下請法の禁止事項である「購入・利用強制」に該当します。
取引の一方的な停止をする
インボイス制度の導入を理由に、親事業者は、免税事業者である下請事業者との取引を一方的に停止してはいけません。なかば強制的な取引停止は、下請法の禁止事項である「不当な給付内容の変更」や「報復措置」に該当する可能性があります。
課税事業者への登録を強制する
受注者が免税事業者に対し、課税事業者になることを強制する行為は独占禁止法違反です。また、下請事業者が課税事業者に変わった後、値上げ交渉に応じず親事業者が一方的に価格を据え置く行為は、下請法の禁止事項である「買いたたき」とみなされる恐れがあります。
下請法に違反した場合に科される措置
インボイス制度に関連して下請法違反を犯した親事業者は、まず公正取引委員会から是正勧告を受けます。勧告に従わない場合、会社名と違反事実の概要が公表され、社会的信用を大きく損ないかねません。
違反行為が悪質な場合、最高50万円の罰金が科される可能性があります。さらに、下請事業者から損害賠償請求などの民事訴訟を起こされるリスクも存在します。
これらの措置は、親事業者の財務や評判に深刻な影響を与えるでしょう。法令を遵守し、下請事業者との公正な取引関係の維持に努めることが重要です。
インボイス制度で下請法違反を防ぐには?
インボイス制度で下請法違反を防ぐには、双方の適切な交渉がポイントとなります。下請法違反を防ぐ方法を解説します。
一方的・強引な要求をしない
インボイス制度下で下請法違反を防ぐには、下請事業者に対する強引な要求を避けましょう。課税事業者への転換依頼や価格引き下げの交渉自体は、下請法にて禁止されてはいません。しかし、親事業者の優位な立場を利用した一方的な要求や強制は問題となります。
交渉をしっかり行う
インボイス制度下での下請法違反を防ぐには、双方の適切な交渉が不可欠です。一方的な要求ではなく、双方の立場を考慮しながら丁寧にすり合わせを行いましょう。十分な協議を重ね、お互いが納得できる解決策を見出せると、下請法違反のリスクを軽減できます。
まとめ
インボイス制度への対応時には、下請法違反を避けるための注意が必要です。親事業者は下請事業者に対して、課税事業者への転換や価格引き下げを一方的に強制してはいけません。双方が十分な協議を行うことが、下請法違反を防ぐポイントとなります。
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