
約束手形の廃止はいつから?でんさいなど代わりの決済手段も解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2026-03-18
- この記事の3つのポイント
- 政府は2027年3月末までに紙の約束手形の利用廃止を目指す方針のため、代替手段の導入が必要
- 約束手形の代替案には、でんさい・銀行振込・クレジットカード・ファクタリングなどがある
- 企業は、約束手形廃止に向けて自社の状況を把握し、新たな決済手段の導入や社内周知を行う
約束手形の廃止はいつから?でんさいなど代わりの決済手段も解説
約束手形は、支払い慣行の見直しにより段階的な廃止が進んでいます。
本記事では、約束手形の廃止時期を整理したうえで、廃止が進む理由や電子記録債権(でんさい)などの代替決済手段、企業が備えるべき実務対応について解説します。ぜひ今後の実務にお役立てください。
約束手形はいつから廃止?
現在、約束手形は段階的な廃止が進んでおり、政府は2026年度末(2027年3月末)までに紙の約束手形の利用廃止を目指す方針を示しています。
2024年11月以降、下請法上の運用が見直され、手形等のサイト(交付から満期日までの期間)が60日を超える約束手形や電子記録債権、一括決済方式による支払は行政指導の対象となりました。
取引の締日から支払期日までの期間(支払サイト)の変更に伴い、多くの金融機関も紙の手形や小切手の取扱終了を予定しています。
紙の手形自体を直ちに禁止する直接的な罰則があるわけではありません。ただし、下請法違反となる場合は行政指導や勧告、公表の対象となり得ます。加えて、金融機関側でも紙の手形・小切手の取扱終了が進むため、従来どおり紙の手形を使い続けることは難しくなっています。
期限を待つのではなく、早めに代替となる決済手段を導入し、取引先との調整や社内フローの見直しを進めることが重要です。
約束手形について、小切手との違いなど基礎的な内容を知りたい方は、以下の記事に詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。
関連記事:約束手形とは?小切手との違い・仕訳と26年の廃止予定についてわかりやすく解説
約束手形が廃止になる理由
約束手形が廃止になる背景には、資金繰りや業務効率の面での課題に加え、現代の商取引環境にそぐわなくなってきたという事情があります。特に、支払いを受ける側の負担が大きい点が問題視されています。
本章では、約束手形が廃止になる理由を詳しく見ていきましょう。
支払いを受ける側にデメリットがある
約束手形は、支払いを受ける側にとって不利になりやすい決済手段です。
従来は、支払期日を受領から2〜4カ月後とするのが一般的でした。なかでも120日サイト(取引の締日から支払期日までの期間が120日)といった慣習は、中小企業の資金繰りを圧迫する大きな要因でした。
売上が立っていても現金が入らない期間が続くと、仕入れ代金や人件費の支払いに支障が出る可能性があります。また、突発的な設備投資や売上減少といった事態に対応しにくく、経営の柔軟性が損なわれやすくなるでしょう。
さらに、約束手形には不渡りのリスクが常に伴います。支払期日に決済されなければ、代金を回収できないだけでなく、連鎖倒産につながる恐れもあります。上記のようなリスクが、受領側にとって大きな負担となっているでしょう。
事務作業が煩雑で紛失・盗難リスクもある
紙の約束手形は、発行・保管・取立ての各段階で多くの事務作業が必要です。発行側は印刷や押印、郵送などの手続きを行い、受領側も期日管理や保管業務に手間がかかります。経理担当者の負担が増え、業務効率の低下につながります。
また、物理的な書類である以上、紛失や盗難、汚損といったリスクを避けることはできません。管理面・安全面の問題も、廃止が進む理由の一つです。
現代の商取引に向かない
約束手形は、オンライン化・デジタル化が進む現代の商取引と相性が良いとはいえません。海外では電子決済が主流となっており、紙の手形を広く利用している国は限られています。
日本独自の手形文化は、海外企業との取引において理解されにくく、契約条件として受け入れられないケースもあります。紙の約束手形が国際取引の障壁となり、日本企業の競争力低下につながる可能性があるでしょう。
上記のような背景からも、国際的に通用する決済手段への移行が求められています。
約束手形廃止のメリット
約束手形が廃止されることで、資金繰りや業務効率の面で多くの改善が期待できます。特に中小企業にとっては、取引の不安要素が減り、健全な経営環境につながる点が大きなメリットです。
本章では、約束手形廃止のメリットについて詳しく見ていきましょう。
支払いを受ける側は資金繰りが安定
約束手形の廃止により、支払いを受ける側は代金をより早く回収できるようになります。従来の手形では、支払期日まで数カ月待たなければ現金化できず、資金繰りに大きな負担がかかっていました。
今後は、銀行振込や電子記録債権(でんさい)などへの移行が進み、売上発生から短期間で資金が手元に入るケースが増えていきます。仕入れや人件費の支払い、借入金の返済といった日常的な資金管理がしやすくなり、経営の安定につながるでしょう。
また、支払条件が透明化されることで、立場の弱い企業が不利な条件を押し付けられにくくなり、公正な取引環境の形成も期待できます。
業務負担の軽減・コスト削減
紙の約束手形がなくなることで、事務作業は大幅に効率化されます。従来は必要だった印刷・押印・郵送・保管といった作業が不要になるため、経理・総務部門の負担が軽減されるでしょう。
併せて印紙税や郵送費、管理にかかる人件費などのコスト削減も可能です。紙の保管スペースや管理台帳が不要になるため、文書管理のデジタル化も進めやすくなり、業務全体の生産性向上にもつながります。
紛失・盗難リスクの回避
約束手形が電子化されることで、紙特有の紛失や盗難といったリスクを回避できます。手形の保管や持ち運びが不要になるため、管理上の不安が減り、支払期日の失念といったミスも起こりにくくなるでしょう。
自動入金などの仕組みを活用すると、より安全で確実な決済が可能です。
約束手形廃止のデメリット
約束手形の廃止は多くのメリットがある一方で、支払う側を中心に新たな課題も生じます。特に、資金繰りや業界慣行への影響については、事前の対応が欠かせません。
本章では、約束手形廃止のデメリットについて見ていきましょう。
支払うまでの期間が短くなる
約束手形は、将来の支払いを約束することで、現金が手元になくても取引を進められる仕組みでした。特に、120日サイトのような長期手形は、実質的な資金調達手段として活用されてきた側面があります。
しかし、廃止後は支払いサイトが原則60日以内に短縮されるため、支払う側は資金を早めに用意する必要があります。
従来は手形に頼って資金繰りを調整していた企業ほど、運転資金の確保やキャッシュフロー管理の見直しが求められ、資金調達の負担が増す可能性があるため、注意しましょう。
支払いが遅れる可能性がある
約束手形には6カ月以内に2回不渡りを出すと銀行取引停止処分となるなど、厳しい信用上の制裁があるため、支払いの履行に対する強い抑止力が働いていました。一方、銀行振込や電子決済では直接的な制裁が弱まるため、期日どおりに支払いが行われないリスクが高まる可能性があります。
特に、新しい決済方法に慣れていない取引先との間では、支払い管理のミスや認識のズレから遅延が発生することも考えられます。契約条件の明確化や事前のルール設定が、より重要になるといえるでしょう。
製造業・建設業への影響が大きい
製造業や建設業など、長年にわたり約束手形を前提とした商慣習が根付いている業界では、廃止の影響が特に大きくなります。支払いサイトの長期化を前提に資金繰りを行ってきた企業では、取引条件の見直しや社内体制の再設計が必要です。
また、取引先との調整が進みにくいケースも多く、業界全体での対応が求められます。経理システムの変更や運用ルールの整備など、移行には一定の時間と負担がかかるため、注意が必要です。
約束手形に代わる決済手段
約束手形の廃止に伴い、企業には新たな決済手段への切り替えが求められます。従来の取引慣行を踏まえつつ、自社の資金繰りや業務体制に合った方法を選ぶことが重要です。
本章では、約束手形に代わる決済手段を紹介します。
電子記録債権(でんさい)
電子記録債権(でんさい)は、紙の約束手形に代わる決済手段として政府が推奨している仕組みです。紙の手形を電子化したもので、企業間の支払約束をオンライン上で記録・管理できます。
でんさいは、一般社団法人全銀電子債権ネットワークが運営する電子債権システムを通じて利用され、発行や譲渡、決済までをすべて電子的に完結できる点が特徴です。支払期日になると自動的に決済されるため、銀行への持ち込みや取立てといった手間も不要になります。
でんさいは、約束手形と同様に期日の設定や譲渡が可能で、取引慣行を大きく変えずに移行しやすい点もメリットです。印紙税や紙代が不要になるなどコスト面でも有利ですが、利用には金融機関を通じた登録が必要で、取引先も同じ仕組みを利用している必要があります。
銀行振込
銀行振込は、企業間取引で最も広く利用されている決済手段です。取引先の口座へ直接送金する仕組みで、即時性と確実性に優れています。
支払期日をあらかじめ定めて振込予約を行えば、手形に頼らず支払い管理が可能です。受取側は現金化を待つ必要がなく、資金繰りの安定にもつながります。
一方、振込手数料が発生する場合があるため、取引量が多い企業ではコスト管理が必要です。また、支払条件を契約で明確にしておくことも重要です。
クレジットカード
法人向けクレジットカードを活用した決済も、代替手段の一つとして注目されています。カード会社が一時的に支払いを立て替えるため、実質的に支払猶予を確保できる点が特徴です。
オンライン決済や定期支払いにも対応しやすく、経費管理や利用明細の可視化にも役立ちます。ただし、高額取引では利用限度額に達しやすく、すべての取引に適しているわけではありません。導入には加盟店契約などの手続きが必要です。
オンライン決済
クラウド型の会計・請求管理サービスと連動したオンライン決済も、代替の決済手段として普及しています。請求書発行と同時に支払い依頼ができ、銀行振込の自動化や入金状況の一元管理が可能です。
オンライン決済はリアルタイムでの決済確認ができるため、業務効率の向上が期待できます。サービスごとに機能や費用が異なるため、自社と取引先の対応状況を踏まえた選定が必要です。
ファクタリング
ファクタリングは、売掛金を第三者に売却して支払期日前に現金化する資金調達手段です。従来は手形割引を利用していた企業にとって、有力な代替手段といえるでしょう。
売掛金が確定していることで比較的スピーディーに資金を確保でき、回収リスクを移転できる点が特徴です。一方、手数料が発生し、契約形態によっては取引先への通知が必要になる場合もあります。導入前は、仕組みやコストを十分に確認することが重要です。
請求書買取サービスについて詳しくは、以下の記事で解説しています。併せてご確認ください。
関連記事:請求書買取サービスとは?メリット・デメリット、利用時の注意点を解説
約束手形廃止に対して企業が対応すること
約束手形の廃止に備えるには、資金繰りや業務フローを含めた全社的な対応が欠かせません。早期に準備を進めることで、移行時の混乱や取引トラブルを防げます。
本章では、約束手形廃止に向けて企業が対応することを見ていきましょう。
取引状況を把握し資金繰りを見直す
まず、自社における約束手形の利用状況を正確に把握しましょう。取引先ごとに手形取引の金額・頻度を洗い出し、自社が発行側なのか受領側なのかを整理しましょう。
立場によって影響は異なりますが、発行側(買い手)の場合は支払いサイト短縮に備え、運転資金の確保が重要です。資金繰り表を作成し直し、入出金のタイミングに無理が生じないかを確認しましょう。
不足が見込まれる場合は、融資やファクタリングなどの資金調達手段も含めた検討が必要です。売上回収の早期化や在庫管理の見直しなど、資金効率を高める施策も併せて進めていきましょう。
新しい決済手段の導入を進める
次に、自社の取引形態に合った決済手段を選定します。電子記録債権・銀行振込・クレジットカード決済・ファクタリング・オンライン決済など、決済手段によってそれぞれの特徴が異なります。業務フローや取引先の事情を踏まえて比較検討することが重要です。
でんさいを導入する場合は、取引銀行を通じた申し込みやシステム登録が必要です。すべての取引を一度に切り替えるのではなく、特定の取引から段階的に導入することで、社内負担を抑えながら確実に移行できます。
取引先の合意を得る
新しい決済手段を導入する際には、取引先との合意形成が欠かせません。決済方法の変更内容や背景を丁寧に説明し、双方が納得できる形で進めることが重要です。
取引先によっては新しい仕組みに不安を感じる場合もあるため、政府方針や制度の流れを共有しながら、支払条件や運用ルールについて話し合いを重ねましょう。必要に応じて契約書の見直しを行い、支払いサイトも60日以内を目安に調整していくことが望まれます。
社内への周知や体制の見直しを行う
決済手段の変更後は、社内の業務フローや体制も見直す必要があります。経理システムや請求書発行ツール、承認プロセスが新しい決済方法に対応できているかを確認し、必要に応じて設定変更を行いましょう。
また、業務マニュアルの作成・更新や社員への研修を実施し、変更内容を十分に周知することも大切です。現場での混乱を防ぐため、問い合わせ対応の体制を整備することも検討し、準備を進めていきましょう。
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約束手形の廃止は、決済手段の一つがなくなるだけでなく、銀行振込へ切り替えることで、支払い業務が増える転換点でもあります。振込が増えると、請求書の処理件数や支払予定額の管理が煩雑になり、経理担当者の負担はさらに大きくなるでしょう。
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