印鑑不要(押印廃止)とは?政府や行政の動きやメリット、取り組み方を解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-09-06
令和2年に内閣府では、民間から行政への手続きの99.4%について、押印を廃止または廃止する方向で検討することを決定しました。押印廃止が進んでいない企業もあるものの、この印鑑不要の流れは商取引にも波及していくと予想されます。
そこで本記事では、政府や行政が進める押印廃止の概要、企業側のメリット、脱ハンコに向けた取り組みなどを解説します。
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印鑑不要(押印廃止)とは?政府や行政の動きやメリット、取り組み方を解説
印鑑不要(押印廃止)の概要
ここでは、国が進める印鑑不要(押印廃止)の内容や、民間企業の動きなどを解説します。
押印廃止とは
押印廃止とは、日本のハンコ文化を脱却し、行政手続き、商取引における契約書、請求書の発行といった手続きで押印を減らしていこうとする取り組みです。「脱ハンコ」と呼ばれることもあります。
押印廃止の進め方としては、信頼性が低い印鑑登録なしのハンコを使い、形式的な押印を廃止していこうとする方法が1つです。もう1つのアプローチとしては、文書を電子化したうえで、電子印鑑や電子署名に代替していく方法が挙げられます。
政府・地方公共団体の動き
政府・地方公共団体は、書面主義・押印原則・対面主義からの決別を課題と位置付け、印鑑を不要とする動きを推進しようとしています。背景には、ハンコ文化がデジタル化時代にそぐわなくなっている現状と、新型コロナウイルス感染症の拡大防止があげられます。
令和2年12月には、民間から行政への手続きの99.4%を廃止または廃止の方向とし、認印は全て廃止される見込みとした、「地方公共団体における押印見直しマニュアル」を公表しました。また令和3年9月にはデジタル庁が発足し、デジタル社会形成の一貫として脱ハンコに取り組んでいます。
民間企業における押印見直しの動き
押印廃止への働きかけは行政手続きが中心です。国は民間企業における押印慣行の見直しまでは言及しておらず、テレワーク推進のための自律的な見直しと取り組みを促しています。
しかし、契約書に関して「押印についてのQ&A」を公表するなど、脱ハンコに取り組みやすい状況になっており、商取引にも印鑑不要の流れが波及していく見込みです。
※参考:押印についてのQ&A|法務省
企業で使用する印鑑の種類
企業が使用する印鑑の種類は複数あり、用途や重要度が違います。ここでは、5種類の代表的な印鑑を紹介します。
代表者印
代表者印は、法人登記の際に登録する印鑑です。会社実印や法人実印、丸印などとも呼ばれます。代表者印は法的な効力を持つ印鑑として、行政手続きや重要な契約の際に用いられるのが一般的です。
法人銀行印
法人銀行印とは、その名のとおり銀行口座を開設する際に使用する印鑑です。法人銀行印と実印、同じ印鑑を使うことも可能ですが、紛失のリスクや摩耗による消耗などのリスクを軽減させるために、法人銀行印と実印を分けるケースが多いでしょう。
会社角印
会社角印とは、その名のとおり四角の印影になる印鑑のことです。会社角印には、会社名や屋号などが彫られており、請求書や見積書などの書類に押印されるケースの多い印鑑です。会社角印が押されていることで、その会社が発行した書類であると証明できます。
会社認印
会社認印は、会社角印よりも幅広い用途で利用する印鑑です。たとえば、郵便物の受け取りや、重要度の高くない社内文書の押印などに使用されます。会社認印は役職者が管理し、使用されるのが一般的です。
ゴム印
ゴム印とは、会社名、所在地、電話番号など企業の情報を載せた印鑑です。主に、手書きの手間を省くために使用することから、重要度が最も低い部類の印鑑といえるでしょう。そのため、役職者以外の従業員も日常業務でゴム印を使用しているのが一般的です。
印鑑不要(押印廃止)によるメリット
押印廃止は企業にとって一定のハードルがありますが、メリットが多いのも確かです。ここでは代表的なメリットを5つ解説します。
業務が効率化する
紙の契約書や請求書などを発行・送付する場合、一連の作業から相手先からの返送までに数日かかるケースも珍しくありません。しかし、電子契約はオンラインで完結するため、スピーディーに処理できます。
また、電子文書では管理業務も効率化され、生産性が上がります。書類を探す際は検索で簡単に絞り込めるうえに、ページの差し替えやファイリング、破棄などの業務もありません。テレワークで作業する場合も、クラウド上にある文書を閲覧・編集が可能です。
コストが削減できる
印鑑不要によって文書をデジタル化すると、コピー代やインク代、封筒費、切手代などのコストを削減できます。また、保管スペースの削減によってオフィスの賃料を抑えることも可能です。
その他、押印や文書郵送などに伴う人件費、押印のための出社、出張による交通費、宿泊費の削減も見込めます。
柔軟な働き方が実現できる
印鑑を廃止すれば押印のために出社する必要がなくなり、テレワークによる柔軟な働き方を推進しやすくなります。たとえば、稟議書や契約書などの承認業務も在宅勤務で可能となるでしょう。
近年は多様な働き方を望む人が増えているため、離職率の低下や優秀な人材確保にも効果的です。
情報漏洩や改ざんを防げる
紙文書の場合、機密情報が外部に持ち出される可能性があり、紛失や処理漏れのリスクも少なくありません。一方、セキュリティ対策の万全な専用サーバーに電子文書で管理すれば、アクセス履歴や修正履歴が残るため、コンプライアンスの徹底につながり、予期せぬ破棄や情報漏洩、改ざんも防げます。
環境への取り組みを社内外にアピールできる
ペーパーレス化が進むことで、書類の廃棄や配送に伴うCO2排出量やコストが削減できます。投資家や消費者は企業のCSR活動の取り組みに注目しているため、企業のイメージアップにつながります。
印鑑不要(押印廃止)を実現させるための取り組み
印鑑不要を実現していくには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。流れに沿って解説します。
印鑑不要な業務と必要な業務を精査する
最初に、印鑑不要な業務と必要な業務を把握します。まずはビジネスで支障が出ないように、法律面も考慮し、脱ハンコの範囲を見極めたうえで電子化できる書類を絞り込みましょう。
まずは社内で「脱ハンコ」を始めてみる
脱ハンコを推進するには、企業文化を根本から改める必要があります。急激な変化による弊害を避けるには、社内で完結する申請書、稟議書などから印鑑を不要としていくのもよい方法です。業務効率化やコスト削減などの効果は取り組んだ分だけ出ます。
また、脱ハンコと並行して必要になる業務フローの見直しやインフラ整備も、段階的に進めていきます。
電子契約システムを活用する
社内で「脱ハンコ」を進め、経営陣の承諾を得たら、電子契約システム導入を進めるのが一般的です。
業者を選定する際は実績と希望のサービス、機能があるか調べます。また、取引先のデジタル化の状況や、ITリテラシーに合わせてシステムを選ぶ視点も必要です。これらについては後ほど解説します。
印鑑不要(押印廃止)におすすめの機能
ここでは印鑑不要(押印廃止)に役立つITシステムの機能について解説します。
電子契約システム
電子契約システムは、インターネットを介して電子ファイルをやり取りし、迅速に契約を締結できます。社内の申請・承認・決裁のデジタル化が可能です。信頼性の高い電子署名や電子印鑑を作成する機能や、情報漏洩や改ざんを防止する高度なセキュリティ機能が搭載されています。
ワークフローシステム
ワークフローシステムとは、電子書類ごとに承認ルートを設定でき、回覧作業や決済処理を自動化できるシステムです。物理的な回覧、郵送が不要で決済時間を短縮できます。また、クラウド型システムでは書類の起案や承認がテレワークで可能です。
さらに、事前に設定したアクセス権限によって改ざんリスクを低くでき、また誰が承認したかの履歴が残るため手続きの透明性も確保できます。
電子印鑑
電子印鑑とはデータ化された印鑑のことで、電子文書に対応するものです。電子化の方法としては、下記の方法があります。
- 実際に紙に押印したものをスキャンして画像にする
- 電子印鑑作成ツールで作成する
- イラスト作成ソフトやオフィスソフトの図形描画機能で作成する など
電子印鑑を使うと、手作業で押印していた工数を減らせたり、押印失敗による用紙の無駄が減ったりするのがメリットです。また、相手方が了承していれば請求書にも使用して業務を効率化できます。
ただし、電子印鑑は本人性と確実性を担保されているとは限りません。そのため、「電子署名及び認証業務に関する法律第2条の要件を満たすもの」として使う場合には注意が必要です。
※参考:電子署名及び認証業務に関する法律|e-Gov法令検索
電子署名
電子署名も紙文書での押印と同じ効力を持つものです。電子署名は、「電子署名及び認証業務に関する法律第2条の要件を満たすもの」を指します。電子署名を使う際は、会社・法人の本店または主たる事務所の所在地を管轄している登記所から、電子証明書を発行してもらうことが必要です。
電子署名が付いていると、取引の相手側は電子文書の作成者が本人であり、電子文書が改ざんされていないことを確認できます。
※参考:電子証明書取得のご案内|法務省
印鑑不要(押印廃止)を進めるときの注意点
印鑑不要(押印廃止)を進める際は、導入コストや業務フローの見直し、顧客への影響を考慮しておく必要があります。
電子契約システム導入へのコストを検討する
電子契約システムの導入には次のようなコストが発生します。
- システム導入費:電子契約サービス導入の際にかかる初期費用
- 利用費:電子契約サービス利用の際にかかる月額(年額)費用
- メンテナンス費:既存のシステムとの連携や、保守・運用にかかる費用
導入・運用のコストを見積もり、予算を確保しておく必要があります。
業務フローを見直す
電子契約システムを導入する際は業務フローの見直しも必要となります。たとえば、電子契約システムのワークフロー機能を使って電子文書で承認を得るなどです。
このため、マニュアルの作成・変更と、従業員への周知が必要です。現場が電子契約システムを使いこなすことで、業務効率化につなげられます。
電子契約システムを変更したことを顧客に連絡する
電子契約システムを変更したことを顧客に連絡する手続きも必要です。紙文書で契約書を交わしたいという顧客には、事前に連絡して承諾を得ておきましょう。
また、セキュリティの安全性や電子契約書の法的な効力など、顧客が疑問や不安を持つ事柄についても十分な説明をします。相手先に同一システムを導入してもらう場合は、電子契約システムの導入意図の説明や、運用に関するフォローなども必要です。
まとめ
印鑑の使用回数を減らし、電子印鑑や電子署名に移行する企業が増えてきています。脱ハンコを進めると、業務効率化やコスト削減などの多くのメリットも見込めます。
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