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【建設・建築業】法定福利費の内訳が記載された見積書の義務化と書き方を解説

法定福利費とは、企業が負担する社会保険料のことです。建設業の場合、見積書にも法定福利費を記載する必要があります。法定福利費とは具体的に何の費用であり、どのように計算するのでしょうか。この記事では、建設業が法定福利費を見積書に記載する理由や具体的な記載方法などを解説します。法定福利費を含む見積書を作成する際の参考として役立ててください。

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【建設・建築業】法定福利費の内訳が記載された見積書の義務化と書き方を解説

建設業で法定福利費を見積書に記載する理由

建設業では、なぜ法定福利費を見積書に記載するのでしょうか。ここでは、その理由について解説します。

見積書の提出が義務化

建設業で見積書に法定福利費の記載が必要な理由は、平成25年に法定福利費を含む見積書の提出が義務化されたからです。建設業では、従来から労働環境に関するさまざまな課題が指摘されてきました。問題がある労働環境は、若い人材や優秀な人材が建設業から離れる大きな原因です。そのため、改善が急務となっていました。

見積書への法定福利費の記載は、適切な労働環境を整備するための取り組みの1つです。見積書で法定福利費の内容を明確に示せば、労働者が安心して働きやすくなります。

各種保険への未加入問題解消

そもそも建設業では、各種保険の未加入が問題になっています。特に下請けの企業は、社会保険に加入せず運営しているところも少なくありません。企業が社会保険に加入していない場合、従業員は必要なタイミングで公的保障を受けられない状況になります。たとえば、健康保険に未加入ならケガや病気をした際に保険が適用されず、治療費の満額を自己負担する必要があります。

各種保険へ加入していない企業が目立った結果、建設業全体に対して働きにくいイメージが定着しました。このような状況では、優秀な人材がなかなか集まりません。法定福利費の見積書への記載には、法定福利へ加入する建設業の企業を増やして職場環境を整える目的もあります。

請求書への法定福利費の記載方法と書き方の例

建設業の企業が工事を請け負う場合、見積書に法定福利費を記載して元請業者へ提出する必要があります。具体的な記載の仕方については、以下の通りです。

項目数量歩掛単価金額
A工事費材料費   A円
労務費   B円
経費(法定福利費を除く)   C円
小計   D円(A+B+C円)
法定福利費詳細は以下に記載E円
小計D円+E円
法定福利費事業主負担額対象金額料率金額
雇用保険料B円aB×a円
健康保険料B円bB×b円
介護保険料B円cB×c円

厚生年金保険料

(児童手当拠出金含む)

B円dB×d円
合計B円eE円(B×e円)

このように、法定福利費の詳細は、工事費や労務費などと分けて記載します。

なお、記載する法定福利費は企業の負担分だけです。企業の負担分以外も含める場合、その旨を記載したうえで該当金額を労務費から差し引く必要があります。

法定福利費とは

法定福利費とは、法律に基づいて企業が従業員に提供する保険の費用のことです。具体的には、健康保険や厚生年金保険などの保険料が該当します。法律で企業の負担が義務付けられているため、福利厚生費とは異なる法定福利費として区別されています。

法定福利費に含まれる5つの保険と1つの拠出金

法定福利費には、5つの保険と1つの拠出金が含まれています。それぞれについて解説します。

健康保険

健康保険は、従業員やその家族などがケガや病気で医療機関を受診した際、治療費の一部を負担する制度です。条件を満たせば、医療費が支給される可能性もあります。医療サービスは高額ですが、健康保険に加入すると自己負担の軽減が可能です。また、健康保険料は企業と従業員が労使折半で支払います。

厚生年金保険

厚生年金保険とは、老齢や死亡などに対し、基準に基づいた給付を行う制度です。要件に該当する場合、従業員本人だけでなく扶養配偶者も給付の対象になります。健康保険料と同じく、厚生年金保険料の負担は企業と従業員の労使折半です。なお、保険料率は保険組合がそれぞれ定めているため、企業によって負担すべき保険料が異なります。

介護保険

介護保険は、介護が必要な人が支払う費用の一部を負担する制度です。老化によるケガや病気などが対象になります。介護保険については、40歳以上の従業員について加入が義務付けられています。介護保険料についても、企業と従業員が労使折半で負担する決まりです。

雇用保険

雇用保険は、従業員が失業した際に給付金が支払われる制度です。雇用保険料は労使折半ではないものの、従業員本人と企業がそれぞれ負担します。失業した際に給付金が支払われるため、失業保険とよばれる場合も多いです。ただし、雇用保険には、教育訓練給付、育児休業給付、介護休業給付などの給付金もあります。それぞれを受け取るには、定められた条件を満たす必要があります。

労災保険

労災保険は、従業員が通勤や勤務をしている間にケガをした場合、給付金が支払われる制度です。ケガの治療費の支給だけでなく、社会復帰の支援も制度に含まれています。労災保険料は、企業が全額を負担します。従業員が1人でもいれば、雇用形態を問わず必ず労災保険への加入が必要です。

子ども・子育て拠出金

子ども・子育て拠出金とは、15歳未満の子どもがいる家庭が対象となる制度の資金です。たとえば、児童手当が該当します。また、子どもに関する事業にも使用されています。以前は、児童手当拠出金という名称でした。子ども・子育て拠出金は、従業員の数に応じて企業が全額負担します。

法定福利費と福利厚生費の違い

法定福利費は、法律によって企業の負担が義務付けられている保険の費用です。対象や支払の時期などについても、法律で具体的に定められています。それに対して福利厚生費は、企業が独自に従業員へ提供しているサービスにかかる費用です。福利厚生費の内容や規模は、企業の経済状況や従業員のニーズなどによっても変化します。

法定福利費の負担は法律による義務であり、条件を満たすすべての従業員が対象です。一方、福利厚生費はあくまでも企業が自発的に負担しているため、対象とする従業員の範囲も自由です。

法定福利費の計算方法

法定福利費は、どのように計算するのでしょうか。以下で具体的に解説します。

労務費を計算

まずは労務費を計算する必要があります。労務費とは、建設業における人件費のことです。建設業の見積書は工事ごとに作成するため、法定福利費も工事1件あたりの労務費を基準にそれぞれ計算しなければなりません。

一般的に、労務費は1日あたりの賃金と工事に必要な人数を掛け合わせて計算します。たとえば、1日あたりの賃金が1万2,000円、工事に必要な人数が15人なら、労務費は「1万2,000円×15人=18万円」です。

また、厚生労働省が定める労務費率をもとに労務費を算出する方法もあります。

法定福利費を計算

労務費を算出すれば、法定福利費も計算できます。法定福利費は、それぞれの保険料率と労務費を掛け合わせて計算します。労使折半の場合、企業の負担分は保険料の50%です。各保険料の算出方法をまとめると以下の通りです。

  • 健康保険料=標準報酬月額×健康保険料×50%
  • 厚生年金保険料=標準報酬月額×厚生年金保険料率×50%
  • 介護保険料=標準報酬月額×介護保険料率
  • 雇用保険料=賃金総額×雇用保険料×負担割合
  • 労災保険料=賃金総額×労災保険料率
  • 子ども・子育て拠出金=標準報酬月額×子ども・子育て拠出金率

実際の保険料率や拠出金率は、年度や企業が加入している保険組合などによって異なります。よって、法定福利費については、必ず最新の情報を確認したうえで計算しましょう。

まとめ

法定福利費は、企業の負担が義務付けられている保険料です。さまざまな保険や拠出金が含まれています。建設業で見積書を発行する際は、対象となるすべてを漏れなく含めて計算しなければなりません。今回解説した記載方法を参考にし、適切な見積書を作成しましょう。

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