インボイスの美容室やサロンへの影響は?個人美容師も知っておくべき課税のポイント
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-08-11
2023年10月1日から施行されたインボイス制度は、さまざまな業界に影響を与えています。美容業界も少なからず影響を受けているため、インボイス制度の対策を知りたいと考えている人もいるでしょう。
本記事では、インボイス制度が美容室にどのような影響を与えるのかを解説します。事務負担の軽減につながる簡易課税制度の情報もまとめているため、ぜひ参考にしてください。
インボイスの美容室やサロンへの影響は?個人美容師も知っておくべき課税のポイント
インボイス制度と美容室の関わり
インボイス制度はさまざまな業界に影響があり、美容室もその1つです。ここでは、インボイス制度と美容室の関わりを解説します。
インボイス制度による変更点
インボイス制度の施行により、課税事業者は免税事業者との取引では仕入税額控除を受けられなくなりました。美容師との間で業務委託契約を締結している場合、美容師が免税事業者ならインボイス発行はできないため、美容室は仕入税額控除を受けられません。
仕入税額控除とは、外部に支払った仕入れや経費にかかる消費税額を、売上にかかる消費税額から差し引ける仕組みです。そのため、今まで通り美容師と業務委託契約を結んでいると、美容室が支払う消費税額の負担は増えてしまいます。ただし、6年間は仕入税額控除の経過措置があります。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
インボイス制度、やらないとどうなる?課税・免税事業者の2つのケースで解説!
インボイス制度によって起こり得る事態
課税事業者である美容室は、仕入税額控除が受けられない場合に消費税の納税額が増えてしまいます。仕入税額控除を適用するには、適格請求書を仕入先から発行してもらうルールです。
たとえば、業務で使用する消耗品や備品などの課税仕入れとなる部分は、適格請求書を受け取らなければ仕入税額控除を受けられません。結果的に、美容室の所得が少なくなるため、免税事業者の仕入先には課税事業者になってもらうか、仕入先の変更を検討する必要があります。
売上高1,000万円以下の美容室への影響
年間の売上高が1,000万円以下の事業者は、免税事業者となります。消費税の納税が免除されるため、消費税を納付しなくて済みます。また、美容室の顧客の多くは個人のため、インボイスの発行は必要ありません。
インボイス登録しない場合
インボイス登録をせずに免税事業者のまま事業を行う場合、消費税負担は増えません。ただし、免税事業者だとインボイス交付ができず、取引先の税負担が増えてしまいます。
取引先は仕入税額控除を受けられないため、結果として契約の見直しや仕入れ条件の変更などにつながり、仕入れ条件が不利になったり、契約が打ち切りになったりする可能性もあるでしょう。周辺の課税事業者が優遇され、美容室同士の競争で不利になる懸念もあります。
インボイス登録する場合
課税事業者へ転換すると、消費税を納税する必要が出てくるため消費税負担が増えます。規模の小さい美容室の場合には納税が大きな負担となるのはもちろん、消費税額の分だけ収益は減少してしまいます。
また、美容師と業務委託契約を結んでいた場合、免税事業者の美容師からインボイス交付は受けられません。税負担が増えてしまうため、美容師と交渉して課税事業者になってもらうか、契約の見直しなどを検討する必要があります。ただし、契約する美容師が少なくなると店舗が回らなくなるリスクもあるので、契約の見直しは慎重に行いましょう。
売上高1,000万円超えの美容室への影響
年間の売上が1,000万円を超えている場合には、課税事業者に該当します。すでに消費税の納税を行っているため、インボイス登録しても税負担が増えることはありません。インボイスを発行できるように早めに登録しましょう。
免税事業者と取引する場合
免税事業者との取引においては、インボイス交付を受けられません。そのため、仕入税額控除が受けられないため税負担は増えてしまいます。税負担を軽くするためには、課税事業者との取引へとシフトする、仕入れ先に課税事業者への転換を促すなどの方法があります。取引先との関係なども考慮しながら、検討するとよいでしょう。
インボイス制度の美容師への影響
インボイス制度は、美容師にとっても影響のある制度です。ここでは、インボイス制度が美容師に与える影響を解説します。
収入が変わらないケース
美容室と雇用契約を結んでいる場合には、インボイス制度施行後も収入は変わりません。美容室と雇用契約を締結している場合は、会社員と同じ扱いになります。そのため、インボイスを交付する機会もなく、インボイス制度への対策は不要です。ただし、副業で消費税を伴う取引をしている場合、条件次第ではインボイス制度の影響を受けます。
収入が下がるケース
美容室と業務委託契約を結んで働いている場合には、収入が下がる可能性があります。課税事業者の美容室から免税事業者の美容師に報酬を支払う場合、仕入税額控除を受けられません。そのため、美容室から取引の見直しや条件の変更などを提案される可能性があります。
美容師が課税事業者になってインボイス登録を行う選択肢もありますが、その際は消費税を納めなければなりません。業務委託契約のままでは、どちらにしても税負担は増えてしまい、収入が下がる可能性が高いです。
簡易課税制度を選択するという方法も
美容師と業務委託契約を結んでいる場合は、簡易課税制度を利用する方法もあります。簡易課税制度では、シャンプーやトリートメントなどの仕入れ、ハサミやコームなどの道具類の支払にかかる消費税額を簡易計算できるため、事務処理の負担軽減につながります。
簡易課税制度とは、課税売上高の税額に「みなし仕入率」をかけて仕入税額控除を計算する特例制度です。基準期間である前々事業年度(※個人事業主である場合前々年)の課税売上高が5,000万円以下である場合のみ、選択可能です。
売上げにかかる消費税額に、事業の種類の区分(事業区分)に応じて定められたみなし仕入率を乗じて算出した金額を仕入れにかかる消費税額として、売上げにかかる消費税額から控除することになります。この場合、売上げにかかる消費税額を出すことが出来れば、仕入控除税額を算出することが可能であるために「簡易」という名称がつけられています。
簡易課税の基準を満たしている、かつ適用を受けたいと考える事業者は、その課税期間の初日の前日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署長に必ず提出せねばなりません。簡易課税適用時の消費税の計算式は次の通りです。
仕入控除税額=売上げにかかる消費税額×みなし仕入率
まとめ
インボイス制度は、美容室にも大きな影響を与えます。免税事業者から課税事業者へ転換する場合には、消費税の納税が必要になるため消費税額の分だけ収益は減少します。また、取引先が免税事業者の場合はインボイス交付が受けられないため、仕入税額控除を受けらず税負担が重くなる可能性もあるでしょう。
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