インボイス制度が古物商に及ぼす影響は?税額控除できる質屋特例の要件や注意点
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-08-13
2023年10月1日からインボイス制度が始まりました。古物商は個人と取引する場合が多いため、インボイス制度にどう対応すればよいか気になっている人もいるでしょう。インボイス制度下では、古物商特有の事情に配慮した特例が定められています。この記事では、インボイス制度における古物商の特例について解説します。
インボイス制度が古物商に及ぼす影響は?税額控除できる質屋特例の要件や注意点
古物商の定義
そもそも古物商とは、どのようなものでしょうか。ここでは、古物商の定義について解説します。
古物商とは
古物商とは、一度使用されたものを販売する商売です。古物商売の具体的な定義については、古物営業法第2条第1項第1号および第2条第3項で示されています。また、古物営業法第3条の定めにより、古物商として古物を販売するには都道府県公安委員会の許可が必要です。
近年はオンラインで古物を売買するケースも増えました。インターネットを介してやり取りする場合、古物商の許可がある事実を示す必要があります。具体的には、許可証番号、氏名または名称、公安委員会名の公表が求められています。
古物商許可が不要な場合
一度使用されたものを売るとしても、古物商許可が必要ないパターンもあります。たとえば、自分自身が使用していて不要になったものを売る場合です。また、自分で使用するつもりで買ったものの、使用しなかったものを売却する際も古物商許可は必要ありません。
過去に売却したものを買い戻したり、買い戻したものを改めて販売したりするケースも同様です。さらに、無償または処分料のみの受け取りにより引き取ったものを売却するときも、許可は不要とされています。
古物の分類
古物営業法施行規則第2条では、古物が13品目に分類されています。具体的には以下の通りです。
- 美術品類
- 衣類
- 時計・宝飾品類
- 自動車
- 自動二輪車および原動機付自転車
- 自転車類
- 写真機類
- 事務機器類
- 機械工具類
- 道具類
- 皮革・ゴム製品類
- 書籍
- 金券類
古物商許可の申請をする際は、自分が扱うメインの品目を選択する必要があります。事前にそれぞれの品目の内容を把握し、どれに当てはまるか確認しておきましょう。
インボイス制度による古物商への影響
インボイス制度では、基本的にインボイスがないと仕入税額控除を受けられません。リサイクルショップをはじめとする古物商は、個人から古物を仕入れるパターンが多いです。その個人はインボイス発行事業者でない場合がほとんどであり、インボイスを発行できません。
このように、古物商はインボイスの保存が難しいため、特例が設けられています。特例が適用されると適格請求書の保存が免除され、帳簿の保存により仕入税額控除を受けられます。
インボイス制度の古物商特例の要件
インボイス制度で古物商特例の適用を受けるには、要件があります。以下で詳しく解説します。
古物商許可を取得している
古物商特例の適用を受けるには、古物商許可の取得が前提です。古物商許可を得るには、申請書と必要書類を提出する必要があります。所轄の警察署に書類を提出すると、都道府県公安委員会へ申請できます。申請が認められれば許可証の受け取りが可能です。なお、許可が通らない欠格事由も定められているため、注意しましょう。
仕入先がインボイス発行事業者でない
インボイス制度における古物商特例は、古物商がインボイス発行事業者以外の相手から仕入れた場合に適用されます。基本的に個人から不用品を買い取るなら、インボイス発行事業者ではない可能性が高いです。ただし、絶対にそうだとは言い切れないため、客観的な判断が求められます。仕入れの際は書面で確認を取り、正しく処理しましょう。
品物が棚卸資産である
古物商特例は、古物商が棚卸資産として仕入れたものに適用されます。棚卸資産とは、販売する目的で仕入れ、一時的に保管する商品のことです。いわゆる在庫が該当します。事業に関係するものでも販売する目的以外で仕入れた場合、特例は適用されません。たとえば、古物商の業務に取り組むために必要な消耗品は棚卸資産に該当せず、特例の対象外です。
帳簿を保存している
すでに触れたとおり、古物商特例の適用を受けるには帳簿の保存が必須です。帳簿には以下の内容を記載する必要があります。
- 取引先の氏名・住所(名称・所在地)
- 取引年月日・内容・対価額
- 古物商特例の対象となる旨
古物台帳に記載すべき取引の場合、消費税法上の帳簿にも取引先の氏名・住所(名称・所在地)の記載が求められます。
インボイス制度の古物商特例の注意点
古物商は仕入れの際にインボイスを受け取れないことが多いため、インボイス制度の古物商特例をうまく活用しましょう。特例を適用できれば、個人との取引が多くても不利にはなりません。ただし、特例を受けるには気をつけたいこともあります。ここでは、インボイス制度における古物商特例の注意点を解説します。
自社用品物には適用されない
自社で使用する目的で購入したものについては、古物商特例が適用されません。特例を受けるには、対象となるものが棚卸資産である必要があるからです。たとえば、インボイス発行事業者以外を利用し、自社で使用するコピー用紙や封筒を購入した場合が該当します。
よって、自社で使用する物品の購入は注意が必要です。特別な理由がなければ、自社で使用する物品はインボイス発行事業者から購入し、インボイスを受け取るのがよいでしょう。
取引先確認で工夫しよう
インボイス発行事業者以外との取引のみ古物商特例が適用されるため、仕入れの際は相手がインボイス発行事業者かどうか必ず確認しましょう。インボイス発行事業者からの仕入れには特例が適用されず、インボイスを発行してもらわないと仕入税額控除を受けられなくなります。
取引先がインボイス発行事業者かどうか確認するには、たとえば申込用紙にチェック欄を設ける方法があります。
まとめ
古物商は、インボイス発行事業者でない個人から仕入れをするケースが多いため、特例が設けられています。ただし、特例の適用を受けるには要件を満たす必要があります。具体的には、必要な情報を記した帳簿の保存が必要です。
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