就業時間とは?労働時間や実働時間との違いや計算方法について解説
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- 最終更新日:2025-05-16
- この記事の3つのポイント
- 就業時間は会社が定める始業から終業時間であり、労働基準法により休憩時間をとる必要がある
- 実働時間は実際に働いた時間、残業時間は法定労働時間を超えた時間である
- 就業規則には就業時間の記載が必須であり、始業・終業時刻と所定労働時間も同時に記載する
就業時間は、会社で働く上で基本となるルールです。しかし、所定労働時間や実働時間、残業時間など似たような言葉が多く、違いがよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、就業時間の定義や、関連する用語との違い、就業規則への記載方法、具体的な計算方法まで、わかりやすく解説します。就業時間に関するよくある質問にもお答えしますので、ぜひ最後までお読みいただき、理解を深めてください。
インボイス制度の概要を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:インボイス制度とは?意味や概要、対象となる事業者への影響を図解でわかりやすく解説
就業時間とは?労働時間や実働時間との違いや計算方法について解説
就業時間とは
就業時間とは、会社が従業員に働くことを義務付けた時間です。具体的には、会社が定めた始業時刻から終業時刻までを指します。
たとえば、始業時刻が9時、終業時刻が18時の場合、就業時間は9時間です。就業時間と似た言葉に「就労時間」や「勤務時間」がありますが、就業時間と同じ意味です。
また、労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩を、従業員に与えなければならないと定められています。従業員の健康を守り、労働災害を防止するためのルールです。
参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
以下の記事では賃金と給与の違いについて詳しく述べているので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:賃金と給与の違いや支払期限、未払時の罰則について解説
労働時間や実働時間、時間外労働との違い
就業時間と混同しやすい言葉に労働時間・実働時間・時間外労働があります。ここからは、それぞれの違いを解説します。
就業時間と所定労働時間・法定労働時間の違い
所定労働時間とは、会社が定めた労働時間のことです。就業時間から休憩時間を除いた時間を指します。
法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間の上限です。原則として1日8時間、週40時間と定められています。
所定労働時間は、法定労働時間の範囲内で会社が自由に設定可能です。所定労働時間が7時間の会社や、36協定を結び8時間を超える所定労働時間を設定している会社もあります。
法定労働時間を超える場合の事例や、ルールについては以下の記事を参照してください。関連記事:労働基準法による労働時間は1日8時間・週40時間が原則!例外事業者やルールも解説
就業時間と実働時間の違い
実働時間とは、就業時間から休憩時間を除いた時間を指します。たとえば、就業時間が9時から18時で休憩1時間をはさみ、さらに1時間残業した場合、実働時間は9時間です。
就業時間と違い、実働時間は実際に働いた時間を把握する際に使われます。
就業時間と残業時間の違い
残業時間とは、所定労働時間を超えて労働した時間です。なお残業時間には法定内残業時間と法定外残業時間の2種類があります。
法定内残業時間とは、所定労働時間を超えているものの法定労働時間である1日8時間・週40時間内に収まる残業時間です。
また法定外残業時間とは、法定労働時間を超えた残業時間です。たとえば、所定労働時間が7時間の会社で1時間残業した場合は法定内残業となり、所定労働時間が8時間の会社で1時間残業した場合は法定外残業となります。
関連記事:時間外労働とは?定義や法改正された上限規制内容、計算方法を解説
就業規則に就業時間を記載する方法
就業規則には必ず記載するべき「絶対的必要記載事項」と企業ごとで定めを記す「相対的必要記載事項」の2種類があります。絶対的必要記載事項として記載すべき項目は、以下の4つです。
- 始業時刻と終業時刻
- 休憩時間
- 休日
- 休暇交代制勤務の場合の就業時間に関する事項(該当する場合)
始業・終業時刻を記載する際は、所定労働時間の記載も必要です。
たとえば始業時刻1時間遅刻し、その分終業時刻を1時間ずらして勤務した場合、所定労働時間の明記がないと、時間外労働として割増賃金が発生することにもなりかねません。
具体的な記載方法は、以下の厚生労働省のモデル就業規則を参考にしてください。
参考:厚生労働省「モデル就業規則について」
就業時間の計算方法
ここからは、いくつかの例を挙げて具体的な就業時間の計算方法を解説します。
9時~18時:所定労働時間8時間の場合
始業時刻が9時、終業時刻が18時で、休憩時間が1時間の場合、就業時間は9時間です。このうち、休憩1時間を除いた8時間が実働時間となります。計算式は以下のとおりです。
18時-9時=9時間(就業時間)
9時間‐1時間(休憩時間)=8時間(実働時間)
所定労働時間を8時間と定めている企業の場合、割増賃金は発生しません。
8時~17時:所定労働時間6時間の場合
始業時刻が8時、終業時刻が17時で休憩時間が1時間の場合、就業時間は9時間です。休憩時間を除いた8時間が実働時間となります。以下が計算式です。
17時-8時=9時間(就業時間)
9時間-1時間(休憩時間)=8時間(実働時間)
企業が定めた所定労働時間が6時間の場合、2時間残業した計算になります。しかし、一日8時間の法定労働時間に収まっているため、割増賃金は発生しません。
9時~20時:所定労働時間8時間の場合
始業時刻が9時、終業時刻が20時で、休憩時間が1時間の場合、就業時間は11時間です。休憩時間を除いた10時間が実働時間となります。計算式は以下のとおりです。
20時-9時=11時間(就業時間)
11時間-1時間(休憩時間)=10時間(実働時間)
所定労働時間である8時間を超えるため、超過分の2時間は残業時間です。法定労働時間(8時間)を超える残業には25%の割増賃金が支払われます。
21時~6時:所定労働時間8時間の場合
始業時刻が21時、終業時刻が翌朝6時で、休憩時間が1時間の場合、就業時間は9時間です。このうち、休憩時間を除いた8時間が実働時間となります。計算式は以下のとおりです。
21時-6時=9時間(就業時間)
9時間-1時間(休憩時間)=8時間(実働時間)
22時から翌朝5時までが深夜労働となるため、7時間の労働に対して25%の割増賃金が発生します。ただし、22時から翌朝5時の間に1時間の休憩を取った場合は、割増料金が発生するのは6時間分です。
就業時間が変動する制度もある
企業によっては、就業時間が異なる制度を採用している場合があります。主な制度は以下のとおりです。
- フレックスタイム制
- 変形労働時間制
- 裁量労働制
- 事業場外みなし労働時間制
制度を導入する際は、就業規則への記載や労使協定の締結など、適切な手続きが必要です。
フレックスタイム制のメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひお読みください。
関連記事:フレックスタイム制とは?仕組みやメリット・デメリットを解説
就業時間に関するよくある質問
ここからは、就業時間に関するよくある質問について解説します。就業時間の考え方は、判断が難しいケースも存在します。疑問点を解消し、正しく理解しましょう。
制服に着替える時間は就業時間に含まれる?
制服や作業着への着替えが会社から義務付けられている場合は、就業時間に含まれることがあります。会社の指揮命令下にあると判断されるためです。しかし、一般的に着替えの時間が就業時間に含まれないケースがほとんどです。
一方、着替えが義務ではなく、従業員の自由な判断に委ねられている場合は、就業時間に含まれません。
手待ちの時間は就業時間に含まれる?
手待ち時間とは業務の指示待ちで、すぐに業務に取り掛かれる状態の時間を指します。
手待ち時間は、会社の指揮命令下にあるため原則として就業時間に含まれます。休憩時間とは異なり、自由に過ごせる時間ではないので注意してください。
10分前出社は就業時間に含まれる?
10分前の出社が会社の指示によるものであれば、就業時間に含まれます。たとえば、朝礼への参加が義務付けられている場合などです。
従業員の自主的な判断による早めの出社は、就業時間に含まれません。多くの企業では10分前の出社を準備時間と捉え、労働時間としてカウントしない慣習が見られます。
早出に関する扱いはトラブル防止のため、就業規則等で明確に規定しておくことが望ましいでしょう。
移動時間は就業時間に含まれる?
移動時間については、状況によって判断が異なります。たとえば、就業時間に含まれるのは、会社が義務付けた研修場所への移動や、顧客先への直行直帰などです。
一方、就業時間に含まれない移動には、通常の通勤時間や出張先での自由時間内の移動があります。判断のポイントは、会社の指揮命令下にあるかどうかです。
就業時間は変更できる?
就業時間は原則として、従業員の同意なく会社が一方的に変更することはできません。就業時間は、労働契約における重要な要素のためです。
就業時間を変更する場合は、従業員との合意形成や、就業規則の変更手続きが必要となります。ただし就業規則に、就業時間を変更する可能性がある旨が記載されていれば、変更が可能です。
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就業時間とは、会社が就業規則などで定めた、始業時刻から終業時刻までの時間です。実際に業務を行っている時間だけでなく、休憩時間も含みます。就業時間を把握し、労働時間、実働時間、残業時間の違いを理解し、適切に管理することは、労働者の権利を守るだけでなく、法令順守にもつながるでしょう。
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