月平均所定労働時間とは?計算方法や上限を解説

月の平均労働時間は、給与計算や残業代計算の基礎となるだけでなく、従業員の健康管理、企業の生産性にも大きく関わる重要な要素です。しかし労働時間の計算は複雑で、法律の知識も必要となるため、正しく理解するのは難しいでしょう。

そこで本記事では、月の平均労働時間の計算方法から、過剰な労働時間を抑えるための具体的な対策まで、わかりやすく解説します。ぜひ最後までお読みください。

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月平均所定労働時間とは?計算方法や上限を解説

月平均所定労働時間とは

月平均所定労働時間とは、1カ月あたりの労働時間の平均をいいます。月平均の所定労働時間を超えて働いた時間が残業代となるため、正しく理解し算出することが重要です。

月平均所定労働時間を把握していなければ、何時間からが残業にあたるのかがわからず、正確な残業代を計算できません。

基礎賃金を求める際に労働日数を使用しない理由は、月によって労働日数が変動するためです。月平均所定労働時間を用いれば、月ごとの労働日数の違いに左右されずに、従業員の労働の対価を適切に評価できます。

月平均所定労働時間を計算する方法

月平均所定労働時間の計算方法を解説しましょう。年間休日数を365日(うるう年は366日)から引き、1日の所定労働時間をかけて算出した年間所定労働時間数を12カ月で割ると、月平均所定労働時間が計算されます。

たとえば1日の所定労働時間が8時間、年間休日が120日の企業の場合、月平均所定労働時間は163.3時間と計算できます。計算方法は、以下のとおりです。

所定労働時間年間休日数年間所定労働時間月平均所定労働時間
8時間120日(365-120)×8=19601960÷12=163.3

残業時間と残業代の計算方法

残業時間とは、法定労働時間(1日8時間、週40時間)または、所定労働時間を超えて労働した時間です。残業代は、残業時間に対して通常の賃金に加えて、割増賃金を支払う必要があります。残業代の計算方法は、以下のとおりです。

1時間あたりの賃金×残業時間×割増率

1時間あたりの賃金の計算方法は、月給÷月平均所定労働時間で、この金額に残業時間をかけ、さらに割増率をかけて残業代を算出します。割増率は、月の残業時間や休日、深夜労働の種類によって、細かく定められています。

時間外労働について詳しくは、以下の記事を参考にしてください。

 

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過労死につながる労働時間

長時間労働は従業員の心身に大きな負担をかけ、最悪の場合、過労死につながる可能性があります。過労死とは、長時間の過重労働によって脳や心臓に疾患を発症し、死亡に至ることです。

厚生労働省は過労死のラインとして、時間外や休日の労働時間に以下の基準を示しています。

  • 発症前1カ月間におおむね100時間
  • 発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって、1カ月あたりおおむね80時間

また、脳・心臓疾患に関する労災認定基準では、長時間の労働が発症に影響を与える重要な要因とされています。企業は労働時間を適切に管理し、過労死を未然に防ぐ対策を講じる必要があります。

参考:厚生労働省「過労死等防止啓発パンフレット」

労働時間を検討するときのポイント

従業員の労働時間を検討する際には、法定労働時間や残業時間の上限、36協定の締結など、いくつかの重要なポイントを理解しておきましょう。この章では、具体的なポイントについて解説します。

月の所定労働時間の上限は約160時間

月の所定労働時間の上限は、法定労働時間の上限までとされています。1日8時間、週40時間という法定労働時間が定められていますが、1カ月の法定労働時間については明確な定めがありません。

1カ月の法定労働時間は、週40時間を基に計算するのが一般的です。具体的には「月の日数 ÷7日×40時間」という計算式で算出します。

たとえば31日の月であれば、約177時間が上限ですが、多くの企業では土日祝日や年末年始休暇などを考慮し、月の所定労働時間を約160時間程度に設定しています。

労働基準法による労働時間について、以下の記事で詳しく解説していますのでご確認ください。

関連記事:労働基準法による労働時間は8時間!例外事業者やルールも解説

残業を取り入れるには36協定の締結が必須

法定労働時間を超える労働は、原則として認められていません。しかし36協定を締結・届出することで、企業は従業員に時間外労働(月45時間、年360時間まで)をさせることが可能になります。

ただし、所定労働時間を超えても法定労働時間内に収まる場合は、36協定は不要です。企業は36協定で定めた範囲内でのみ時間外労働させることができ、超えると罰則の対象となる可能性があります。また時間外労働には、25%以上の割増賃金の支払いが必要です。

残業時間は月45時間・年360時間まで

労働基準法では原則として、残業時間の上限は月45時間、年360時間までと定められています。ただしこれはあくまで原則であり、毎月上限の45時間まで残業できるわけではありません。

なぜなら特別な事情がない限り、年間の残業時間は360時間までと定められているからです。毎月45時間残業を続けると、年間で540時間(45時間×12カ月)となり上限を超えてしまいます。

したがって月45時間の残業は、あくまで臨時的な措置として考える必要があるでしょう。

特別な事情がある場合でも時間外労働は年720時間以内まで

臨時的な特別な事情がある場合は「特別条項付き36協定」を締結することで、年360時間を超える残業が可能になります。しかしこの場合でも、時間外労働は年720時間以内にする必要があり、さらに特別条項付き36協定には、以下のような制限があるので確認しましょう。

  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 2〜6カ月の時間外労働が月平均で80時間以内
  • 月45時間を超えられるのは年6カ月まで

これらの制限は、労働者の健康を守るために設けられています。特別条項を適用する場合でも、これらの制限を厳守し過度な長時間労働にならないよう注意が必要です。

参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

法定労働時間を超えて労働させると罰則対象になる

法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて労働させたり、36協定で定めた上限時間を超えて時間外労働させたりすることは、労働基準法違反となり罰則の対象となります。

違反した場合の罰則は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金があり、罰則の対象となるのは原則として使用者(経営者や事業主など)です。場合によっては、労働時間管理を担当する管理職も対象となることがあるので注意してください。

また、労働基準監督署の調査によって違反が発覚した場合、是正勧告や指導が行われます。

過剰な労働時間を抑える方法

労働時間を適切に管理し、過剰な残業を抑制するための具体的な方法を5つ紹介します。これらの方法を参考に、より働きやすい環境づくりを目指しましょう。

業務進捗の把握とフローの構築をする

過剰な労働時間を抑制するためには、各従業員の業務内容と進捗状況を正確に把握することが重要です。その上で、業務量が適切になるように調整します。

さらに、業務を効率的に進めるためのフローを構築することも大切です。たとえばタスク管理ツールを導入して、業務の見える化もよいでしょう。誰が、いつまでに、何をするのかが明確になり、無駄な作業や手戻りを減らすことにつながります。

残業を事前申請にする

過剰な労働時間を抑制するには、残業の必要性を事前に上司が確認する体制を整えましょう。具体的には「時間外労働申請書」などの提出を義務付け、上司が残業の必要性を判断し承認する仕組みを導入します。

制度を導入することで、部署ごとに残業の実態を把握できるようになります。また、残業の必要性を毎回検討できるでしょう。本当に必要な残業と、そうでない残業を区別できるようになります。業務改善や人員配置の見直しなど、より効果的な対策にも役立ててください。

ノー残業デーをつくる

過剰な労働時間を減らすためには、週に1回、または月に数回「ノー残業デー」を設定するのも効果的です。ノー残業デーを設けることで従業員は定時退社を意識し、業務の効率化を図るようになります。

仕事とプライベートのメリハリがつき、心身ともにリフレッシュできるため仕事のモチベーション向上につながるでしょう。さらに企業全体で取り組むことで、長時間労働を是正する意識改革を促進する効果も期待できます。

評価制度を見直す

長時間労働を抑制するためには、人事評価制度の見直しも検討しましょう。従来の制度では「残業時間が多い=頑張っている」と評価される傾向がありました。しかし、このような評価制度は長時間労働を助長する可能性があります。

評価制度を見直し「時間内に成果を出すこと」を重視しましょう。具体的には、業務の効率性や生産性、成果の質などを評価項目に加えることを検討してください。

勤怠管理システムを導入する

過剰な労働時間を抑制するには、勤怠管理システムの導入が有効です。システムを導入すれば従業員の出退勤時間、休憩時間、残業時間などを正確に記録・集計できます。手作業での集計ミスや、不正な打刻を防ぎ労働時間の「見える化」を実現できるのがメリットです。

多くの勤怠管理システムには、残業時間の上限超過を警告するアラート機能があります。管理者が事前に従業員の勤務状況を把握し、適切な対策を講じることも可能です。

労働時間の管理をするなら「バクラク勤怠」

月の労働時間の管理は、従業員の健康を守り、企業の生産性を向上させる上で不可欠です。

しかし手作業での集計や、複雑な法規制への対応など、担当者の負担が大きいのも事実です。そこでおすすめしたいのが、バクラク勤怠です。

バクラク勤怠の強みは、単なる記録・集計にとどまりません。残業の見込み時間を、管理者だけでなく従業員自身も確認できる機能を備えています。バクラク勤怠を活用して、労働時間管理の効率化と、より働きやすい職場環境の実現を目指しましょう。

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