時短勤務の給与計算方法と具体例、減額の補填となる給付金について

時短勤務は、仕事と育児や介護を両立するための重要な制度ですが「給与がどれくらい減るのか」と不安に感じる方も多いでしょう。また、企業の労務担当者にとっても、正しい給与計算は頭を悩ませるポイントの一つです。

本記事では、時短勤務における給与の計算方法を、基本給・割増賃金・賞与に分けて具体例を交えながら解説します。さらに、2025年度に開始の支援制度「育児時短就業給付金」についても紹介します。

インボイス制度の概要を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

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時短勤務の給与計算方法と具体例、減額の補填となる給付金について

時短勤務とは?

時短勤務とは、育児・介護休業法に基づき、3歳未満の子どもを養育する労働者や、要介護状態の家族を介護する労働者が、1日の所定労働時間を原則6時間に短縮できる制度です。時短勤務制度の目的は、従業員が仕事と育児や介護を両立できるよう支援することにあります。

また、業務の性質上、労働時間の短縮が難しい従業員に対しては、企業は代替措置を講じなくてはなりません。代替措置には、始業・終業時刻を柔軟に調整できるフレックスタイム制の導入や、事業所内保育施設の設置などが含まれます。

時短勤務は法律で定められた労働者の権利であり、企業側は適切に対応する義務を負います。

所定労働時間については、以下の記事で詳しく解説しました。ぜひご参照ください。

関連記事:月平均所定労働時間とは?計算方法や上限を解説

時短勤務の給与の計算方法と具体例

時短勤務を適用した場合、給与は労働時間の短縮に応じて減額されるのが一般的です。

時短勤務中の従業員の給与を正しく計算するには、仕組みを正確に理解しておく必要があります。具体的な計算方法を解説します。

基本給の計算方法

時短勤務における基本給は、短縮された労働時間に応じて減額されます。これは、労働契約で定められた所定労働時間に対して、実際に勤務した時間の割合分のみ給与を支払うという考え方に基づいているためです。

時短勤務の給与計算式は「基本給 ×(実労働時間 ÷ 所定労働時間)」を用いるのが一般的です。

たとえば、月給20万円で所定労働時間が8時間の従業員が、6時間勤務になった場合は「20万円 ×(6時間 ÷ 8時間)」となり、基本給は15万円に減ります。この場合、労働時間が25%短縮されたことに伴い、給与減額率も25%になります。

給与計算の方法については、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:給料計算のやり方とは?手順やポイント・注意点をわかりやすく解説

割増賃金が発生する場合の計算方法

時短勤務の従業員であっても、所定の労働時間を超えて働いた場合は割増賃金が発生します。法律で定められた時間外労働・深夜労働・休日労働の規定は、時短勤務者にも同じように適用される点に留意しましょう。

たとえば、短縮後の所定労働時間(6時間など)を超えて、法定労働時間(8時間)の範囲内で働いた分は、通常の賃金で残業代が支払われます。

法定労働時間を超えた分や、深夜、法定休日に労働した際は、定められた割増率に基づき手当が支給されます。時短勤務であっても各種割増賃金のルールは変わりません。

休日労働、深夜労働の手当を計算する方法は、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:休日出勤手当とは?発生するケースと計算方法を解説

関連記事:深夜手当の計算方法を解説!残業・休日出勤がある場合はどうなる?

賞与の計算方法

賞与についても、時短勤務による労働時間の短縮に伴って減額されるのが一般的です。多くの企業では、賞与の算定基礎に基本給や勤務評価を用いています。時短勤務によって基本給が減額されたり、総労働時間が減少したりすると、賞与額にも影響が出ます。

賞与の計算式は「通常の賞与額 ×(実労働時間 ÷ 所定労働時間)」が一般的です。たとえば、通常の賞与が40万円で、所定労働時間8時間に対し6時間の勤務だった場合「40万円 ×(6時間 ÷ 8時間)」となり、支給される賞与は30万円です。

以下は賞与計算の方法について解説した記事です。ぜひ参考にしてください。

関連記事:賞与計算のやり方とは?社会保険料や所得税の計算方法も解説

時短勤務でも給与が減額の対象とならないケース

時短勤務は原則として給与減額の対象となりますが、下記の制度を導入している企業では、時短勤務を選択しても給与水準が維持される場合があります。

  • 裁量労働制
  • 成果主義

それぞれのケースについて詳しく解説します。

裁量労働制

裁量労働制が適用されている従業員は、時短勤務でも給与が減額されないのが原則です。裁量労働制とは、実際の労働時間に関わらず、あらかじめ労使間で定めた「みなし労働時間」に基づいて給与を支払う制度であるためです。

裁量労働制は、業務の遂行方法や時間配分を労働者の裁量に委ねる専門職や企画職などで導入されるケースが多くあります。

たとえば、みなし労働時間を1日8時間と定めている場合、実労働時間が6時間であっても8時間働いたものとして給与が計算されます。そのため、労働時間の短縮が直接的な給与の減額には結びつきません。

ただし、時短勤務の適用にあたり別途合意が必要な場合もあるため、就業規則の確認を忘れずに行いましょう。

成果主義

成果主義の賃金制度を導入している場合は、時短勤務であっても給与が減額されない可能性があります。成果主義とは、労働時間の長さではなく、従業員が達成した業績や成果を評価し、給与を決定する考え方です。

つまり、評価の基準は「どれだけ働いたか」ではなく「どのような価値を生み出したか」に置かれます。たとえば、同じ目標を達成した場合、フルタイム勤務者と時短勤務者で給与に差を設けない、といった運用が成果主義にあたります。

したがって、時短勤務者も成果を出すことで給与を維持できる場合があるでしょう。ただし、評価基準や目標設定が時短勤務の実態に合うかどうかは企業により異なるため、あらかじめ自社の賃金規定を確認しておくのが大切です。

時短勤務に関するポイントと注意点

時短勤務を運用する上で、給与計算以外にも知っておくべきポイントと注意点があります。企業担当者は、制度を正しく理解し、適切な対応をとらなくてはなりません。ここからは、特に留意すべき2つの点について解説します。

社会保険料の減額措置が受けられる

育児を理由に時短勤務へ移行した従業員は、社会保険料の減額措置の対象です。この制度は、給与低下による手取り額の減少を緩和し、将来の年金額が不利にならないよう従業員を保護する目的で設けられました。

具体的には、時短勤務によって固定賃金が下がった場合、社会保険料の計算基礎である「標準報酬月額」を実態に合わせて見直す手続きを実施します。結果として、毎月の保険料負担は軽減されます。

将来の年金額は時短勤務前の高い報酬月額で計算されるため、従業員にとって有利な仕組みが維持されるでしょう。従業員が安心して働けるよう、企業はこの手続きを確実に実施しなくてはなりません。

詳しい社会保険料の計算方法は、以下の記事で解説しています。

関連記事:社会保険料の計算方法を解説!毎月の給与と賞与に分けて算出

関連記事:育児休業制度とは?育児休暇との違い、取得条件・期間・給付金を解説

給与の減額を就業規則に明記する必要がある

時短勤務による給与減額を適用するには、根拠を就業規則に明記しておくことが求められます。

給与は労働契約の根幹をなす条件であり、減額に関するルールが曖昧では、労使間のトラブルに発展しかねません。就業規則には、労働基準法の「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、短縮した時間に応じて給与を減額する旨を記載します。

なお、具体的に給与減額の計算方法を明記しておきましょう。単に「減額する」と記載するだけでなく、誰が計算しても同じ結果になる計算式まで明記しておくと、誤解を避けられます。

就業規則に明記することで、従業員は減額について事前に納得し、安心して制度を利用できるようになるでしょう。円滑な制度運用のために、就業規則の整備は必須です。

2025年4月から始まった「育児時短就業給付金」について

2025年4月1日から、時短勤務による収入減少を補う「育児時短就業給付金」という新しい制度が始まりました。育児時短就業給付金制度の目的は、時短勤務を選択した従業員の手取り額の減少を緩和し、仕事と育児の両立を経済面から支援することにあります。

対象となるのは、2歳未満の子どもを養育するために時短勤務で働く被保険者です。給付額は、時短勤務中に支払われる賃金額の10%相当額となります。たとえば、時短勤務で賃金が15万円になった場合、10%である1万5千円が追加で給付されるでしょう。

従業員が時短勤務を選択しやすくなるため、企業は多様な働き方を許容する体制を整えることが不可欠です。

参考:厚生労働省「2025年4月から「育児時短就業給付金」を創設します

「バクラク勤怠」で時短勤務の管理を効率化

時短勤務は、労働時間の短縮に応じて給与が減額されるのが原則ですが、社会保険料の特例や新たな給付金など、従業員を支える制度も整備されています。

時短勤務の複雑な給与計算や制度運用を適切に進めるには、日々の正確な勤怠記録が不可欠です。しかし、時短勤務をはじめ多様な働き方が増える中で、勤怠管理業務は煩雑化する傾向にあります。

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多様な働き方を支える体制づくりの第一歩として、ぜひバクラク勤怠の導入をご検討ください。

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