有給休暇のリセットはいつ?消滅日数の考え方や繰り越しルールを解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-04-04
- この記事の3つのポイント
- 有給休暇は、付与日を起算日とした2年後にリセットされる
- 有給休暇は次年度に1回のみ繰り越し可能で、最大15日分の繰り越しと35日分の保有ができる
- 消滅日の短縮や会社都合での消化、取得義務の怠慢は労働基準法違反で罰則の対象となる
有給休暇は労働者がもつ権利の一つですが、永久的な保有は原則できません。請求権を行使しないまま時効を迎えると、消滅するため注意が必要です。
本記事では、有給休暇がリセットされるタイミングや繰り越しルール、注意点などを詳しく解説します。有給消化の具体的な方法も紹介しますので、今後の業務にお役立てください。
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有給休暇のリセットはいつ?消滅日数の考え方や繰り越しルールを解説
有給休暇がリセットされるのは付与されてから2年
有給休暇がリセットされるのは、付与日を起算日とした2年後です。労働基準法第115条に、請求権を2年間行使しなかった場合は時効によって消滅する旨が記載されています。
つまり、付与されてから2年の間に消化しなかった有給休暇は、取得の権利を失うということです。
参考:e-Gov法令検索「労働基準法第115条」
有給休暇の消滅日数の考え方
初年度は入社6カ月、次年度以降は毎年4月1日に有給休暇を付与する会社を例として、消滅日数の考え方を見ていきましょう。
2024年6月1日にフルタイム労働者として入社した場合、有給休暇が付与されるタイミングは以下のとおりです。
- 入社から6カ月後の2024年12月1日に、有給休暇が10日付与される
- 2025年4月1日に11日、2026年4月1日に12日がそれぞれ付与される
初年度に付与された10日の消滅日は、2年後の2026年12月1日です。2回目に付与された11日は2027年4月1日、3回目の12日は2028年4月1日に消滅します。
有給休暇の買い取りは企業による
有給休暇の買い取りは、労働者の権利を奪うとみなされることから原則違法です。ただし、以下のいずれかに該当する場合は買い取りが認められます。
- 有給休暇が消滅時効を迎えた場合
- 退職時に未消化の有給休暇がある場合
- 労働基準法で定められた日数以上の有給休暇を付与している場合
有給休暇の買い取りについては、従業員とのトラブルを回避するために運用ルールを明示することが重要です。買い取り条件や金額を記載した書面を作成し、従業員の同意を得た上で手続きを進めましょう。
有給休暇の繰り越しルール
年度内に消化できなかった有給休暇は、次年度に繰り越しできます。本章では、有給休暇の繰り越しルールを詳しく解説します。
有給休暇の繰り越しは1回のみ
未消化の有給休暇は、次年度に1回のみ繰り越しが可能です。たとえば、2024年12月1日に付与された有給休暇が5日残った場合は、2025年12月1日に付与される11日と合わせて16日の有給休暇を保有できます。
一般的には消滅期限が近いものから消化されますが、優先順位は法律で定められていません。新規付与分から消化される会社もあるため、就業規則などを事前に確認しましょう。
繰り越し可能な最大日数
有給休暇の付与日数が10日以上の従業員には、年5日以上の取得が義務付けられています。有給休暇の最大付与日数は20日のため、繰り越せるのは最大15日です。
次年度も最大日数の20日が付与された場合は、繰り越し分と新規付与分の合計で最大保有日数の35日を保有できます。
時間単位年休の有給も繰り越し可能
時間単位年休とは、年間5日分までの有給休暇を時間単位で取得できる制度のことです。時間単位年休も繰り越せますが、取得上限は繰り越し分を含む5日以内である点に注意が必要です。
たとえば所定労働時間が8時間の会社において、従業員が有給休暇1日と時間単位年休4時間分を繰り越したとします。次年度に20日の有給休暇が付与された場合、当該従業員の保有日数は21日と4時間です。
ただし、当該従業員が次年度に取得できる時間単位年休は5日分(40時間)のみです。繰り越した4時間分との合計(44時間)ではない点に注意しましょう。
有給休暇が付与されるタイミング
有給休暇は、雇入年月日(入社日)の6カ月後を基準日として、法定の日数が毎年付与されます。
基準日や付与日は、前倒しであれば変更しても問題ありません。基準日を統一すると、会社側は有給休暇の取得進捗を管理しやすくなります。
有給休暇の付与タイミングや付与日の統一について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
有給休暇のリセットにおける罰則
有給休暇の取り扱いを誤ると、労働基準法違反で罰則を受ける可能性があります。どのようなケースが罰則対象に該当するか、詳しく見ていきましょう。
付与されてから2年以内にリセットした場合
有給休暇は、付与から2年間保有できることが労働基準法で定められています。そのため、会社側の独断による2年以内への短縮は認められません。雇用契約書や就業規則などに記載しても、無効となるため注意が必要です。
ただし、会社独自のルールで時効を2年以上に設定することは問題ありません。労働基準法の定めは最低基準であり、労働者が有利になる条件への変更は原則として認められます。
正当な理由なく企業都合で有給消化をさせた場合
正当な理由なく、会社都合で従業員に有給消化をさせてはなりません。たとえば以下のような日に有給休暇を取得させると、労働基準法違反に該当する可能性があります。
- 設備機器の不具合による休業日
- 閑散期などで来客減少が見込まれる日
有給休暇は、従業員の自由な意思に基づいて取得するものです。会社都合の働きかけで労働者の権利を侵害しないように、くれぐれも注意しましょう。
年5日の取得義務を怠った場合
有給休暇は、付与日数が10日以上のすべての従業員に年5日以上の取得義務があります。5日以上取得できなかった場合は、違反者1人につき30万円以下の罰金が科せられます。
有給休暇の取得義務や保有日数について認識のない従業員がいる可能性も踏まえて、会社側は全従業員の取得進捗を適切に管理しましょう。期限間際の無理な取得は事業運営に影響しうることから、計画的な有給消化も求められます。
有給休暇の取得義務化については、以下の記事で解説しています。
従業員に有給休暇を消化してもらう方法
有給休暇に関する法律違反や従業員とのトラブルを避けるには、社内の環境を整えて取得しやすい雰囲気をつくることが重要です。
本章では、従業員の有給休暇取得を促す5つの方法を紹介します。大切なポイントを理解して、自社の運営に取り入れましょう。
計画年休や時季指定を取り入れる
有給を消化してもらう方法の一つに、計画年休や時季指定の活用があります。計画年休は会社側が有給休暇の取得日をあらかじめ指定できる制度で、導入には労使協定の締結と就業規則による定めが必要です。
計画年休には、以下のような方式があります。
- 事業内容などに応じて全従業員に同一の日を指定する方式
- 班・グループごとに異なる日を指定する方式
- 従業員ごとに個別で指定する方式
計画年休の導入によって会社側は効率的に管理でき、年5日の取得義務を果たしやすくなります。会社側から指定されることで、従業員側にも気軽に有給休暇を取得できるメリットがあるでしょう。
なお、計画年休に指定できるのは取得義務分を除いた日数のみです。従業員が自由な意思で取得できるように、5日分は留保しなければなりません。その点を踏まえて、従業員の意向を確認しつつ計画的な付与を行いましょう。
従業員に合わせて柔軟な取得方法を検討する
周囲への配慮から、有給休暇の取得を躊躇する従業員もいるでしょう。従業員が気兼ねなく休暇をとるには、半日または時間単位での取得を促すのが効果的です。
時間単位での取得は、労使協定の締結と就業規則による定めがあれば、年間5日まで認められます。たとえば消化義務のある5日分の有給休暇を、半日単位で10回取得しても問題ありません。
「午前中のみ」「4時間のみ」など、柔軟に取得できることで、従業員は仕事とプライベートを両立しやすくなるでしょう。
積立有給休暇を導入する
積立有給休暇とは、本来2年で消滅する有給休暇を積み立てる制度のことです。
積立有給休暇の導入に法的な決まりはなく、労働基準法の範囲内で会社独自のルールを設定できます。取得日数や理由を制限する会社もあるため、就業規則などを事前に確認しましょう。
積立有給休暇の導入メリットは、従業員の権利を守ることで定着率の向上が見込める点です。福利厚生の一環として社外へアピールすれば、会社のイメージアップや求職者への訴求力向上にもつながるでしょう。
属人化をなくし取りやすい環境を整える
業務が属人化していると、従業員が有給休暇を取得しにくくなります。従業員と定期的に面談を行い、業務量や休暇取得時の代理担当者などを確認することが重要です。
日頃から個人ではなく部署全体で業務の遂行や情報共有を行い、社内の協力体制を整えて休みやすい環境をつくりましょう。
個別に有給取得進捗を管理する
会社側は、従業員ごとに有給取得進捗を確認・管理する必要があります。
正確な状況把握を行うには、専用システムの導入が効果的です。システムごとに機能性が異なり、有給休暇の残日数管理機能や、残日数などを通知するアラート機能が搭載されたものもあります。
有給休暇の取得に関する自社の課題を洗い出し、必要な機能が搭載されたシステムを導入しましょう。
有給休暇を使いきれるよう管理したいなら「バクラク勤怠」
有給休暇は労働者に与えられる権利の一つですが、付与から2年でリセットされるため注意が必要です。会社側には、取得義務の年5日を最低ラインとした適切な働きかけが求められます。
有給休暇の管理を効率化するには、専用システムの導入がおすすめです。勤怠管理システムのバクラク勤怠は、各従業員の有給休暇取得義務日数を一目で確認できます。
チャットツールのSlackと連携すれば、打刻や勤怠承認、打刻漏れアラートなど、複数の機能を一つのツールに集約できる点も強みです。
法令を遵守しつつ従業員に有給休暇のスムーズな取得を促したい方は、バクラク勤怠の導入をぜひご検討ください。詳しいサービス内容は、以下のページからご覧いただけます。