
諭旨解雇とは?似た言葉との違いや要件・手続きの流れをわかりやすく紹介
- 記事公開日:
- 最終更新日:2026-02-13
- この記事の3つのポイント
- 諭旨解雇は、従業員に納得してもらったうえで退職届の提出を求め、解雇する処分方法である
- 類似の「懲戒解雇」と比較すると、諭旨解雇の方が処分が軽く、退職金を支払うケースも多い
- 諭旨解雇を行うには就業規則への記載が前提で、正当な懲戒事由であると判断される必要がある
諭旨解雇とは?似た言葉との違いや要件・手続きの流れをわかりやすく紹介
従業員を解雇する方法の一つに「諭旨解雇」があります。また、似ている言葉に諭旨退職や懲戒解雇があり、それぞれの違いについて不明瞭な方もいるでしょう。 本記事では、諭旨解雇と他の処分との違い、諭旨解雇の事例や流れについてわかりやすく解説します。 諭旨解雇後の従業員への影響についても触れていますので、解雇処分について理解を深めるのにお役立てください。
1.諭旨解雇とは?
諭旨解雇(ゆしかいこ)とは、企業が従業員の重大な規律違反などを理由に、解雇処分の一環として退職届の提出を促す措置です。従業員本人の意思を汲みつつ、企業側が事前に解雇理由を伝えたうえで合意退職を求めるため、比較的穏便な対応とされています。
基本的に、退職金は全額または一部支給されます。ただし、従業員が応じなければ懲戒解雇へと移行する流れが一般的です。
諭旨解雇は法律で定められておらず、各企業の就業規則に基づいて判断されるため、企業によって実施の判断基準やルールが異なります。
ただし、従業員への弁明機会や関係者からの聞き取りを怠ると懲戒権の濫用とみなされ、法的リスクを負う可能性がある点に留意しましょう。
2.諭旨解雇と似ている言葉との違い
諭旨解雇に類似している言葉として、諭旨退職(免職)・懲戒解雇・退職勧奨・自己都合退職・依頼退職が挙げられます。
それぞれの意味を解説しますので、違いを理解しておきましょう。
2-1.諭旨退職・諭旨免職との違い
諭旨退職とは、企業が従業員に退職届の提出を促し、あくまで自主的な形で職を離れさせる処分を指します。一方で諭旨解雇は、従業員に退職届の提出を促しつつも、形式上は「解雇」として扱われるため、解雇予告手当の支給対象となる点が異なります。
いずれも懲戒処分の一環ですが、処分の重さは諭旨解雇よりも諭旨退職の方が軽いです。なお、公務員に対しては諭旨免職が用いられます。内容は基本的に諭旨解雇と同様ですが、公務員制度において「解雇」という言葉は使用されないため「免職」とされています。
2-2.懲戒解雇との違い
懲戒解雇とは、従業員が重大な規律違反や背信行為を行った際に科される、最も厳しい解雇処分です。従業員本人の同意を得ず、企業が一方的に労働契約を打ち切るため、該当従業員の社会的信用や再就職に大きな影響を及ぼします。
諭旨解雇は、企業が理由を告げたうえで従業員に退職届の提出を勧める方法です。従業員が応じれば退職金の一部が支給される場合もあり、懲戒解雇と比べて比較的寛大な措置といえます。
2-3.退職勧奨との違い
退職勧奨とは、業績不振や人員整理、M&Aなどを理由に、企業が従業員へ自主的な退職を促す手続きです。強制的な処分ではなく、あくまで本人の意思に基づいて受け入れる点が特徴で、退職金の上乗せや失業給付の優遇といった条件が提示される場合もあります。
一方、諭旨解雇は懲戒処分の一種であり、企業秩序に反した行為を理由に退職届の提出を勧めるものです。つまり、退職勧奨は経営上の事情を背景に行われる合意型の措置であるのに対し、諭旨解雇は規律違反に対する制裁的処分である点が大きな違いです。
2-4.自己都合退職・依頼退職との違い
自己都合退職(依頼退職)は、転職や家庭の事情、健康上の理由など、従業員自身の判断によって退職届を提出し離職することを指します。企業の懲戒処分として行われる諭旨解雇とは異なり、あくまで従業員側の主体的な意思による点が特徴です。
3.懲戒処分の種類
諭旨解雇は懲戒処分の一種で、懲戒解雇の次に重い処分です。本章では、懲戒処分の種類を段階別に紹介します。
3-1.戒告
戒告とは、従業員が職務上の過失や不適切な行動を取った際に科される処分の一つです。内容としては比較的軽度であり、将来的に同じ過ちを繰り返さないよう注意を与えることが目的です。
多くの場合、上司からの口頭での指導や反省の表明を求められる形で行われ、解雇や減給といった重い処分には直結しません。会社の秩序維持と従業員の改善を促すための警告的措置といえるでしょう。
3-2.譴責
譴責(けんせき)は、戒告と同様に将来の改善を促すのが目的ですが、単なる口頭注意にとどまらず、本人に始末書の提出を求める点が特徴です。始末書を書くことで、自らの行動を振り返り反省を明文化させ、再発防止が期待できます。
懲戒処分のなかでは比較的軽い部類に位置づけられますが、記録を残す点で軽視できない措置です。
3-3.減給
減給とは、従業員に本来支払われるべき賃金から一定額を差し引く処分を指します。勤務態度の不良や規則違反といった行為に対して科され、金銭面での不利益を与える重い処分です。
ただし、労働基準法第91条により上限が定められており、1回の減額は平均賃金1日分の半額を超えず、かつ賃金支払期の総額の10分の1を超えてはならないと規制されています。経済的打撃を与えるものの、給与が全額失われるわけではありません。
参考:e-GOV法令検索「労働基準法(第九十一条)」
3-4.出勤停止
出勤停止とは、従業員に対し一定期間(一般的に7〜10日程度)の就労を禁じる処分です。「懲戒休職」や「停職」とも呼ばれ、就業規則に基づいて実施されます。
期間中は労務提供がないため賃金は支払われず、減給より重い処分として経済的・社会的にも大きな影響を与える措置です。
3-5.降格
降格とは、従業員の役職や等級を引き下げる処分で、役職手当の減額や基本給の低下を伴う可能性が高い措置です。努力して築いた地位を失うことは精神的な打撃が大きく、特に管理職や昇進経験のある従業員にとっては強い制裁効果をもつ処分といえます。
3-6.諭旨解雇
諭旨解雇は、企業秩序を大きく乱す行為をした従業員に対し、会社が理由を説明したうえで退職届の提出を求める処分です。
本人が応じれば退職金が支給される場合もあるものの、拒否や期限内の不提出があれば退職金も支給されず、強制的な解雇である懲戒解雇に移行する場合もあります。
3-7.懲戒解雇
懲戒解雇とは、極めて重大な違反行為をした従業員に科される、最終的かつ最も重い懲戒処分です。窃盗や横領、度重なる無断欠勤などが典型例で、基本的に予告なく即時に労働契約が終了します。
退職金が支給されない場合も多く、今後の転職や社会的評価にも深刻な影響を及ぼす厳格な措置です。
4.諭旨解雇以外の解雇
企業が行う解雇は諭旨解雇だけでなく、複数の種類があります。以下で詳しく解説します。
4-1.普通解雇
普通解雇とは、従業員の勤務態度の不良や能力不足、経歴詐称などを理由に会社が労働契約を終了させる措置です。懲戒解雇のように制裁的性質をもたず、比較的穏やかな解雇と位置づけられます。
ただし、労働基準法第20条により、解雇する場合は30日前の予告が義務づけられています。予告しなかった場合は、30日分以上の平均賃金を支払うか、30日経過してから解雇を行わなくてはなりません。
退職金については、就業規則に基づいて支給されるのが一般的で、公平性や合理性が重視される解雇形態です。
参考:e-GOV法令検索「労働基準法(第二十条)」
4-2.整理解雇
整理解雇とは、企業の経営悪化や事業再編を理由として、人員を削減するために行われる解雇を示します。会社の都合で行われる点が大きな特徴です。
ただし、人員削減の必要性を明らかにし、配置転換や採用抑制などの解雇回避努力を行うことが求められます。また、公平な手続きと対象者の選定を行ったうえで、従業員への十分な説明や協議を尽くすことも不可欠です。
整理解雇での退職は会社都合であるため、退職金に上乗せが行われる場合もあります。
4-3.懲戒解雇
懲戒解雇とは、横領や重大な規律違反など、企業に深刻な損害を与えた従業員に科される最も重い解雇処分です。即時解雇が可能で、退職金が支給されない場合もあり、解雇された従業員の職歴や今度の社会生活にも大きな影響を及ぼします。
5.諭旨解雇となる事例
諭旨解雇に該当する主な具体例として、以下の事例が挙げられます。
- セクハラやパワハラなどのハラスメント行為
- 会社命令の無視
- 業務上の不正
- 経歴詐称
- 長期にわたる無断欠勤
本来であれば懲戒解雇に該当する内容であるものの、反省の意思や情状を考慮して処分を軽くし諭旨解雇処分とするケースがあります。
6.諭旨解雇をするための要件
諭旨解雇は、企業側の都合で一方的に実施できるものではありません。以下複数の要件を満たす必要があります。
6-1.就業規則に明記されている
諭旨解雇を有効に行うためには、まず就業規則に処分の種類と対象となる事由が明記されていなければなりません。労働基準法第89条では、懲戒の種別や理由を規定する義務が定められており、従業員が理解できるよう詳細な記載が求められます。
さらに、規則を定めるだけでなく、従業員への周知も欠かせません。労働基準法第106条に基づき、規則は常時閲覧可能な形で提示・交付する必要があり、周知されていない場合は処分自体が無効になります。
参考:e-GOV法令検索「労働基準法(第八十九条)」
参考:e-GOV法令検索「労働基準法(第百六条)」
6-2.懲戒事由に該当する
諭旨解雇をするためには、従業員の行為が就業規則に定められた懲戒事由に該当していることも求められます。犯罪や不正など具体的に規定された違反はもちろん、素行不良による秩序や風紀の乱れといった抽象的な事由であっても、基本的に問題ありません。
ただし、企業は合理的かつ社会的に適切な判断をすることが求められます。
6-3.懲戒権・解雇権の濫用に該当しない
諭旨解雇は懲戒のなかでも重く、運用を誤ると「懲戒権の濫用」や「解雇権の濫用」と判断され無効となり得ます。労働契約法第15条・16条では、処分理由の客観的合理性と社会通念上の相当性が定められており、遵守することが必須要件です。
具体的には、就業規則に基づいて明確な根拠を示せる状態にしたり、過去事例や裁判例を参考に判断したりして、客観的な説明ができるようにしなくてはいけません。
正当性に欠けると、不当解雇として重大なトラブルに発展するリスクも高まるため、慎重に判断する必要があります。
参考:e-GOV法令検索「労働契約法(第十五条・第十六条)」
7.諭旨解雇を行う流れ
諭旨解雇を行うには、具体的にどのようなステップで進めていけばよいでしょうか。本章では、処分を進める手順を解説します。
7-1.問題行動の調査・証拠の確保
諭旨解雇を検討する際には、就業規則の規定を確認したうえで、従業員の違反行為を正確に把握するための調査が欠かせません。事実誤認に基づく処分は懲戒権の濫用とされ無効になる可能性があります。
本人への聞き取りや関係者からの証言収集、過去事例など関連資料の確認を丁寧に行い、確実な証拠を整えておきましょう。調査の手順と結論までの流れを説明できる状態にしておくことも重要です。
7-2.弁明の機会を設ける
該当従業員に対して人事担当者との面談などを通じて弁明の機会を与えることも不可欠です。弁明の機会を省略すると懲戒権の濫用と判断され、処分自体が無効となる恐れがあります。
面談では本人の主張を十分に聞き、内容を記録することが重要です。不合理な弁明であれば処分の正当性を補強する根拠となり、合理的な反論であれば事実関係を再検討するために追加調査が必要かどうか判断できます。
7-3.改善指導を行う
諭旨解雇は重い処分であるため、重大な不祥事や著しい規律違反といった一部の例外を除き、いきなり適用するのは妥当ではありません。
基本的には、上司からの注意指導や戒告といった軽い処分を行い、改善の余地を与えることが必要です。改善指導後も問題が続く場合には、譴責・減給・出勤停止・降格と段階を踏んで処分を下し、最終的に諭旨解雇に至るのが望ましいといえます。
改善の機会を与えずに重い処分を下すと、懲戒権の濫用と判断される危険性があり、処分の合理性が疑われかねません。
7-4.懲戒処分通知書を交付する
諭旨解雇の実施を決定したら、労働基準法第20条に沿って解雇日の30日前までに懲戒処分通知書を本人へ交付します。法令期間を守らずに交付すると、従業員が訴訟を起こした際に企業側が不利な立場に陥る可能性があります。
通知書には、退職届の提出期限や、提出がされなかった場合に懲戒解雇へ移行する旨を明記することが望ましいです。口頭での伝達だけではトラブルの発生リスクが高まるため、書面で記録を取っておきましょう。
参考:e-GOV法令検索「労働基準法(第二十条)」
7-5.拒否された場合は懲戒解雇に移行する
諭旨解雇の通知を受けた従業員が期限までに退職届を提出しなかった場合、懲戒解雇の手続きへ移行することが可能です。ただし、就業規則に基づく明確な根拠や改善指導の経緯を示し、処分の合理性を担保することが必須です。
懲戒解雇を下すと、従業員から不当解雇と主張されて争いになる可能性が高いため、証拠や記録を整備し、法的に有効と認められる体制を十分に整えておきましょう。
8.諭旨解雇にした社員への影響
諭旨解雇を実施した場合、解雇した従業員に生じる影響は以下のとおりです。
8-1.退職金
諭旨解雇でも退職金を支給することは可能です。ただし、満額支払うか減額するかは企業の退職金規程に依存します。自己都合退職時と同水準として支給する場合もあります。
8-2.有給休暇
諭旨解雇で退職する際、有給休暇の権利は失われません。退職日までに従業員が申請した場合、企業は取得を拒否できません。
8-3.失業保険
雇用保険の失業給付を受けることも可能です。ただし、会社都合退職とは扱いが異なり、自己の責めに帰すべき重大な理由による退職とみなされるため、自己都合退職と同様の条件が適用されます。
具体的には、失業認定日から7日間の待期期間が設けられる他、3カ月間の給付制限が課されます。実際に手当が支給されるまでに一定の時間を要するため、従業員の生活に大きな影響を及ぼすと言えるでしょう。
8-4.転職活動
諭旨解雇となった場合、転職活動で必ずしも履歴書や面接時に解雇の事実を申告する義務はありません。ただし、刑事事件に関わる違反が原因で解雇された場合には、履歴書の賞罰欄に記載しなければ虚偽申告とみなされる可能性があります。
また、面接で事実と異なる説明をした場合や、退職証明書に諭旨解雇と記載されていることが採用後に発覚した場合には、信用を失い内定や採用が取り消される可能性があります。
したがって、解雇された従業員は解雇の原因に応じて適切に事実を告知しなくてはいけません。
9.勤怠管理の効率化なら「バクラク勤怠」がおすすめ
諭旨解雇は、企業が行う解雇処分のなかでも重大な処分の一つです。客観的で合理性のある根拠を基に慎重に判断しなくてはいけません。また、すぐに解雇を決めるのではなく、軽い処分から段階的に改善を試みることも重要です。
従業員による不正などトラブルが起こりやすい環境に陥っている場合には、勤務環境を根本から見直すことも検討しましょう。
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