
年次有給休暇管理簿とは?対象者や保存期間、記載項目を詳しく解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-09-30
- この記事の3つのポイント
- 年次有給休暇管理簿とは、企業が従業員の有給休暇の取得状況を管理するために作成する書類のこと
- 年次有給休暇管理簿の保管対象は、年間10日以上の有給休暇が付与された全従業員
- 年次有給休暇管理簿の保存期間は5年間だが、2025年7月現在、3年間の経過措置がある
年次有給休暇は労働者にとって重要な権利であり、企業には有給休暇の付与や取得状況を正しく管理する義務があります。
2019年4月の労働基準法改正により、年5日の有給休暇取得義務が課せられ、2020年からは年次有給休暇管理簿の保存期間延長も施行されました。
年次有給休暇管理簿の正確な作成・保存は、従業員の勤怠や健康を適切に管理するために重要な書類です。しかし、比較的新しい規定のため、年次有給休暇管理簿の取扱いについて、詳しく理解できていない方も少なくありません。
本記事では、年次有給休暇管理簿について解説します。対象者や保存期間、記載項目も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
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年次有給休暇管理簿とは?対象者や保存期間、記載項目を詳しく解説
年次有給休暇管理簿とは
「年次有給休暇管理簿」とは、企業が従業員の年次有給休暇の取得状況を管理するために作成・保管する書類のことです。
2019年の働き方改革関連法の施行によって「年5日の年次有給休暇取得」が義務化されたことから、企業は従業員ごとの有給休暇の取得状況を記録・管理する必要があります。
ここでは、年次有給休暇管理簿の記載・保管方法について詳しく解説します。
対象者
年次有給休暇管理簿は、年間10日以上の有給休暇が付与された全従業員が対象です。正社員だけでなく、パートやアルバイトも含まれます。
付与日数は、週の所定労働日数や年間所定労働日数、継続勤務年数によって異なります。以下の表は、所定労働日数と継続勤務年数に応じた付与日数の目安です。
週所定 労働日数 | 年間所定労働日数 | 継続勤務年数 | |||||||
6カ月 | 1年 6カ月 | 2年 6カ月 | 3年 6カ月 | 4年 6カ月 | 5年 6カ月 | 6年 6カ月 | |||
付与 日数 | 5日 以上 | 217日以上 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 | |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 | |
出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」
上記に該当する従業員が所属する企業は、必ず管理簿を作成し、付与日数や取得日数を記録しなければいけません。
保存期間
年次有給休暇管理簿は、作成後3年間の保存義務があります。2020年4月1日に施行された労働基準法改正により、保存期間は5年間に延長されていますが、当面は経過措置として3年間です。
ただし、3年間はあくまでも経過措置中の期間です。確実に保存期間を遵守するためにも、5年間保管していきましょう。保存方法に関する明確な規定はなく、紙媒体・電子データいずれでもよいため、自社で管理しやすい方を選択して問題ありません。
※掲載している情報は2025年7月時点のものです。情報は変更される可能性があるのでご注意ください。
年次有給休暇管理簿に記載する項目
年次有給休暇管理簿の様式は決まっていませんが、以下の3項目は必ず記載しなければいけません。
- 基準日
- 取得日数
- 取得時季
以下で各項目について見ていきましょう。
基準日
「基準日」とは、従業員に年次有給休暇を付与した日のことです。通常は入社日を基準に設定され、継続勤務6カ月を経過した時点で初めて有給休暇が付与されます。
その後は1年ごとに新たな基準日が設定されます。企業によっては、全従業員の基準日を4月1日などに統一して管理する場合もあるため、確認しましょう。
基準日を明確にしておくことで、次回の付与日や取得義務の管理が容易になり、有給休暇の付与漏れや管理ミスなどの防止につながります。
取得日数
「取得日数」とは、従業員が基準日から1年間で、実際に取得した年次有給休暇の合計日数です。年5日以上の有給休暇取得が義務付けられているため、取得日数を正確に記録することが重要です。
たとえば、有給休暇を10日付与され、そのうち5日取得した場合は「取得日数5日」と記録します。取得日数を管理することで、法令遵守の確認だけでなく、休暇取得状況を把握しやすくなり、未取得者への取得促進や計画的な人員配置にも活用できます。
取得時季
「取得時季」とは、従業員が実際に有給休暇を取得した具体的な日付のことです。年次有給休暇管理簿には、各取得日を1日ごとに正確に記載する必要があります。
取得時季を記録することで、年5日の取得義務を満たしているかどうかを確認できるほか、休暇の取得状況の把握も容易です。また、特定の時季に取得が偏っていないか、繁忙期に業務へ支障が出ていないかなどの管理や、労働基準監督署の調査対応にも有効です。
年次有給休暇管理簿のフォーマット
年次有給休暇管理簿のフォーマットや記載例は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
以下のリンクから公的サイトに移動できるので、年次有給休暇管理簿のフォーマットを希望する方は、ぜひダウンロードして活用してみてください。
参考:厚生労働省「年次有給休暇管理シート」
参考:厚生労働省「年次有給休暇取得管理台帳」
有給休暇に関するルール
有給休暇は、原則雇用形態を問わず、以下の条件を満たす従業員に対して付与されます。
- 入社から6カ月経過時点で、継続して雇用されている
- 所定労働日数の8割以上出勤している
入社6カ月を迎えたものの、半年のうち2カ月の欠勤があった場合は、所定労働日数の8割を下回るため、有給休暇の支給の対象にはなりません。
有給休暇の日数は、継続勤務年数と所定労働日数によって変動します。また、所定労働日数が少ないアルバイトやパートなどの場合は、雇用契約で定められた所定労働日数によって、有給休暇の付与日数が決まります。
有給休暇に関するルールには、年5日の取得義務や時季指定権などもあるため、適切に管理することが重要です。
年次有給休暇に関する罰則
ここでは、年次有給休暇に関する罰則について解説します。
年次有給休暇管理簿の作成・管理をしなかった場合
年次有給休暇管理簿には作成・保存の義務があるため、怠った場合は労働基準監督署から是正勧告を受ける場合があります。
罰金などの直接的な罰則は設けられていませんが、管理簿がなく、有給休暇の付与・取得状況を把握できない場合は、労働基準監督署から指摘される可能性が高いです。
管理簿がないと、年5日の有給取得義務を果たした証明ができません。他の労働基準法違反に波及する恐れもあるため注意が必要です。
1年間に5日の年次有給休暇を取得させなかった場合
労働基準法第39条では、使用者は労働者に基準日から1年間で5日以上の有給休暇を取得させる義務があります。違反した場合は、30万円以下の罰金が科されます。
罰則の対象となるのは「取得を促さず放置した結果、年5日未満の取得者が多数いた」といったケースです。労働者単位で判断されるため、複数の未取得者がいる場合、企業のリスクも大きくなります。
就業規則に時季指定を記載していなかった場合
企業が年5日の有給休暇取得義務を果たすために時季指定を行う場合は、その旨を就業規則に明記しなければなりません。記載がないと労働基準法第89条違反となり、30万円以下の罰金が科されます。
たとえば「就業規則に時季指定のルールがなく、実際の指定方法も定まっていない」といったケースでは、制度自体が不備と判断される可能性があるため注意が必要です。
希望した時季に年次休暇を取得させなかった場合
労働者が希望した時季に有給休暇を取得できない状況をつくると、労働基準法第39条違反に該当する恐れがあります。使用者には「時季変更権」がありますが、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。
「繁忙期だから」という理由だけで希望日をすべて拒否するのは、法令違反に該当する可能性があるため注意しなければいけません。30万円以下の罰金が科されるリスクがあるため、時季変更権は正当な理由のある場合のみ行使する必要があります。
年次有給休暇管理簿の作成方法
ここでは、年次有給休暇管理簿の作成方法を紹介します。
紙で作成する方法
年次有給休暇管理簿は紙で作成できます。コストがかからず、すぐに始められるというメリットがあります。インターネット上のテンプレートを活用すれば、比較的簡単に作成できるでしょう。
また、Excelなどで作成した有給休暇管理簿の表を印刷し、手書きで取得や付与の履歴を書き足していく方法でも問題ありません。
ただし、手作業での作成は、記載漏れや計算ミスが起きやすく、人数が多い企業では管理が煩雑になりがちです。自社に適した方法か否かを慎重に検討することが大切です。
Excelで作成する方法
Excelを用いることで、紙に手書きするよりも、効率的に年次有給休暇管理簿を作成できます。関数を活用して有給取得日数を自動集計したり、あらかじめ作成しておいたフォーマットで、付与日数や取得残数を簡単に把握したりできるでしょう。
ただし、.Excelで作成する方法は、関数設定やシートの更新作業が必要で手作業による手間も生じます。企業規模によっては適さない場合もあるため注意が必要です。
勤怠管理システムで作成する方法
勤怠管理システムを導入すれば、労働時間・休暇管理を一元化し、取得状況や残日数の自動集計ができます。記載漏れ防止や自動アラート機能があるため、年5日の取得義務も促せるでしょう。
たとえば、繁忙期でも取得義務未達の従業員へ自動で通知できるなど、人事担当者の負担軽減につながります。従業員が多い企業の場合でも、年次有給休暇管理簿の作成や管理が容易です。
年次有給休暇を効率的に管理する方法や注意点
ここでは、年次有給休暇を効率的に管理する方法と注意点を紹介します。
基準日を統一する
全社員の基準日を統一することで、有給休暇の付与日や取得義務の管理を簡略化できます。
たとえば、4月1日を全社員共通の基準日に設定すれば、付与日数や取得状況を一括で確認でき、付与漏れや二重管理の防止につながるでしょう。
入社日ごとに基準日が異なると、管理簿の更新や集計作業が煩雑になるため、基準日を統一する方法がおすすめです。ただし、基準日を統一する場合でも、法律で定められた有給休暇付与日数を下回ることはできないため、注意してください。
労働者名簿や賃金台帳を一緒に作成する
年次有給休暇管理簿を労働者名簿や賃金台帳と合わせて作成すると、従業員の情報を一元管理できるほか、情報の更新作業にかかる手間も軽減されます。
労働者名簿とは、従業員の氏名や住所、雇用開始日等の情報を記載した書類のことです。賃金台帳は、従業員への給与の支払い状況や勤務日数等を記載した帳簿を指します。
両者の書類と年次有給休暇管理簿を同時に作成しておくことで、基準日や付与日数の記載漏れを防げます。
記載・計算ミスに気を付ける
年次有給休暇を効率的に管理するためには、記載や計算ミスに気を付けることも重要です。
付与日数の誤りや取得日数の記載漏れがあると、年5日の取得義務の達成状況を正しく判断できないほか、法令違反として罰則を受ける可能性があるため、注意しなければいけません。
定期的に管理簿をチェックし、複数人でのダブルチェック体制を整えることが重要です。管理体制の見直しやシステム導入などを行い、適切に対応しましょう。
勤怠管理システムを導入する
年次有給休暇の管理を効率化したい場合は、勤怠管理システムを導入するのがおすすめです。有給休暇の取得義務や残日数を容易に把握できるだけでなく、担当者の負担の大幅な軽減も期待できるでしょう。
勤怠管理システムの中には、有給の取得義務未達の従業員に自動で通知したり、繁忙期でも計画的に取得を促せる機能を備えたりするものもあります。
自社の要望に沿ったシステムを選ぶとよいでしょう。
有給休暇の管理を効率的にするなら「バクラク勤怠」
年5日の年次有給休暇の取得義務が施行され、年次有給休暇管理簿の作成および保存が義務付けられています。従業員の有給管理を適切に行うことで、モチベーションや生産性の向上にもつながります。
一方、従業員1人ひとりの有給休暇日数を把握するのは容易ではありません。手作業やExcelによる有給管理は煩雑になりやすく、記載や計算ミスのリスクがあるため注意が必要です。
有給休暇の管理を効率化したい方には「バクラク勤怠」の導入がおすすめです。年5日の有給休暇取得義務の履行状況を自動でアラートできるほか、残日数や付与日もリアルタイムで確認できます。
また、取得義務の履行期間が重複する「ダブルトラック」への対応や、時間外労働の予測機能も備えています。フレックスタイム制や固定時間労働制、裁量労働制、管理監督者など幅広い勤務形態に対応しているため、企業規模を問わず導入しやすい点も魅力です。
さらに、紙やExcelでの管理と比べて記載漏れや計算ミスを防止でき、労基署対応時の証跡としても活用できます。煩雑な勤怠・有給管理業務を効率化したい企業は、ぜひ「バクラク勤怠」の導入をご検討ください。
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