有給休暇とは?法律上の最大付与日数やタイミング・ルールについて解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-04-03
- この記事の3つのポイント
- 有給休暇とは賃金が支払われる休暇のことで、一定期間勤務した労働者に付与される
- 付与日数が10日以上の従業員には、基準日から1年以内に5日以上の取得が義務付けられている
- 有給休暇の消化を促すには、会社側が社内環境を整えて取得しやすい雰囲気づくりを行うことが重要
有給休暇の取得は労働者の正当な権利であり、会社には年5日の確実な取得に向けた働きかけが求められます。
本記事では、法律に基づく有給休暇の最大付与日数や付与のタイミング、取得時のルールなどを詳しく解説します。有給休暇について理解を深めたい方は、本記事をぜひ参考にしてください。
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有給休暇とは?法律上の最大付与日数やタイミング・ルールについて解説
有給休暇とは?
有給休暇(年次有給休暇)とは、一定期間勤務した労働者に対して、ゆとりある生活を保障する目的で付与される休暇のことです。有給休暇は労働基準法で定められており、休暇をとっても賃金が支払われます。
参考:e-Gov法令検索「労働基準法第39条」
有給休暇の付与要件
有給休暇の付与要件は、以下の2点です。
- 雇用から6カ月が経過している
- 全労働日の8割以上出勤している
有給休暇は、雇入年月日(入社日)の6カ月後を基準日として毎年付与されます。
全労働日とは、算定期間の総暦日数から会社が定める休日を除いた日数のことです。ただしアルバイトなどのパートタイム労働者は、全労働日ではなく、雇用契約書や就業規則で定められた所定労働日数によって付与の有無を判定します。
雇用形態によって異なる有給休暇の付与日数
有給休暇の付与日数は、雇用形態によって異なります。最大付与日数は20日で、原則として継続勤務年数が6年6カ月以上かつ週所定労働日数が5日以上の場合に付与されます。
ただし、労働基準法で定められているのは最低基準の付与日数です。会社が法定日数を超える有給休暇の付与を独自に定めている場合は、基準を超えた日数が付与されるケースもあります。
本章では労働基準法に基づく、雇用形態ごとの具体的な付与日数を詳しく解説します。
正社員や契約社員などのフルタイム労働者
正社員や契約社員などのフルタイム労働者は、雇用から6カ月が経過した時点で10日の有給休暇が付与されます。その後は最大日数を20日とし、継続勤務年数に応じて1年ごとに付与日数が増える仕組みです。
フルタイム労働者における付与日数の増え方は、下表をご覧ください。
継続勤務年数 | 6カ月 | 1年6カ月 | 2年6カ月 | 3年6カ月 | 4年6カ月 | 5年6カ月 | 6年6カ月以上 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
継続勤務とは会社の在籍期間のことで、勤務実態をもとに判定します。たとえば定年退職後に嘱託社員として再雇用した労働者は、継続勤務とみなす必要があります。
アルバイトなどのパートタイム労働者
アルバイトなどのパートタイム労働者は、週所定労働日数と継続勤務年数に応じて1年ごとに有給休暇が付与されます。
付与日数の増え方は、下表をご覧ください。
週所定 労働日数 | 年間所定労働日数 | 継続勤務年数 | |||||||
6カ月 | 1年 6カ月 | 2年 6カ月 | 3年 6カ月 | 4年 6カ月 | 5年 6カ月 | 6年 6カ月 | |||
付与 日数 | 5日 以上 | 217日以上 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 | |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
たとえば、週所定労働日数が3日のパートタイム労働者は、継続勤務年数が6カ月を超えると5日の有給休暇が付与されます。
週所定労働日数が5日以上の場合は、パートタイム労働者でも正社員と同様の日数が付与される点に留意しましょう。
時短労働者
時短労働者は有給休暇を取得できないと考える方もいるかもしれませんが、付与要件を満たしていれば法定の日数が付与されます。
たとえば、週所定労働日数が5日の時短労働者に付与される有給休暇は、原則として正社員と同様の日数です。週所定労働日数が4日かつ週所定労働時間が30時間未満の場合は、パートタイム労働者と同様の日数が付与されます。
育児休業中・介護休業取得中の労働者
有給休暇は、育児休業や介護休業を取得中の労働者にも付与されます。出勤実績がなくとも、有給休暇の判定では全日出勤しているとみなされるためです。
たとえば、継続勤務年数6年6カ月の社員が育児休業を終えて復帰した場合は、20日間の有給休暇が付与されます。
ただし、病気やケガによる休職では、例外のケースもあるため注意が必要です。業務上の事由または通勤時の傷病など(労災)で休職した場合は、出勤扱いとなり有給休暇が付与されます。自己都合の場合は会社ごとに判定が異なるため、就業規則などを確認しましょう。
有給休暇の付与タイミング
労働基準法で定められた有給休暇の付与タイミングは、あくまで最低基準です。労働者が有利な扱いを受けられる場合は、会社ごとに付与日を設定しても問題ありません。
本章では、労働基準法における有給休暇の付与タイミングや、認められる付与日について詳しく解説します。
入社から半年後に付与の義務がある
労働基準法では、雇入年月日から6カ月が経過した日を基準日とします。基準日を迎えた労働者には、有給休暇を付与する義務が発生します。
たとえば、10月1日に入社した従業員の基準日は翌年の4月1日です。当該従業員には、毎年4月1日に、継続勤務年数に応じた有給休暇が新たに付与されます。
入社半年以内でも付与できる
労働基準法では基準日の前倒しが認められており、労働者が不利にならなければ入社から半年以内でも有給休暇の付与が可能です。
また有給休暇は、分割付与も認められています。たとえば正社員として雇用した従業員に対して、入社日に5日、6カ月経過後に残日数の5日を付与しても問題ありません。
ただしこの場合、当該従業員の基準日は初回の有給休暇が付与された日です。そのため、次回の有給休暇は翌年の入社日に付与されます。
有給付与日の統一もできる
中途採用の社員や多くのアルバイトを採用する会社では、入社時期が従業員ごとに異なります。労働基準法に則って各従業員に有給休暇を付与すると、基準日の管理が煩雑化して担当者の負担となるでしょう。
労働者が不利にならない条件であれば、有給休暇の付与日を統一しても問題ありません。「斉一的取扱い」として、労働基準法でも認められています。
有給休暇の付与日を統一する具体的な方法は、以下の2つです。
- 基準日は変更せず、全従業員の2回目以降の有給休暇を年度初めの4月1日に統一する
- 一定期間に入社した従業員の基準日を変更・統一する
たとえば6月1日に入社した従業員の場合、基準日は6カ月後の12月1日です。その日に初回の有給休暇を付与し、次回の付与日を翌年の4月1日に設定する方法があります。
また、4月1日~9月30日に入社した従業員の基準日を、10月1日に統一するのもひとつの方法です。この場合、基準日を前倒しで変更しているため問題ありません。
有給休暇の管理を効率化したい場合は、付与日の統一を検討するとよいでしょう。
有給休暇の有効期限は2年
有給休暇の有効期限は労働基準法で2年と定められており、未消化分は翌年度への繰り越しが可能です。新たに有給休暇を付与する際、会社側は未消化分の加算を忘れず行いましょう。
なお、繰り越し分と新規付与分のいずれを優先して消化すべきかは、労働基準法で定められていません。繰り越し分から消化する会社が多いですが、就業規則などで新規付与分からの消化が定められていることもあるため事前に確認しましょう。
有給休暇の付与における注意点
従業員の出勤状況が以下のいずれかに該当しても、有給休暇の判定には影響しません。
- 所定労働日数が8割に満たない場合
- 遅刻・早退があった場合
算定期間の所定労働日数が8割に満たない場合、有給休暇は0日となり新たな付与は行われません。しかし継続勤務年数は加算され、次年度に8割を満たすと法定の日数が付与されます。
また、遅刻・早退により実労働時間が減少した場合も、有給休暇の判定には影響しません。所定労働日数が8割を超えていれば、法定の日数が付与されます。
有給休暇取得時のルール
有給休暇の取得には、いくつかルールがあります。法律違反や従業員とのトラブルを避けるために、重要なポイントを理解しておきましょう。
基本的には従業員の好きなタイミングで取得できる
有給休暇を取得するタイミングは、原則として従業員が決められます。従業員の申し出を会社が拒否することは、労働基準法違反となるため注意してください。
ただし、有給休暇の取得が事業の正常な運営を妨げると判断した場合、会社側は時季変更権を行使できます。客観的に評価される根拠があれば、従業員が希望する取得日を変更できる権利です。
従業員とのトラブルを避けるためにも、時季変更権の行使条件や適用範囲などを就業規則に明記しておきましょう。
有給休暇の取得理由を聞いてはいけない
有給休暇の取得理由を会社側へ説明するか否かは、従業員の任意です。そのため、申請書に取得理由の記載を義務付けることなどは認められません。
コミュニケーションの一環として尋ねるのは問題ありませんが、過剰な聴取は避けましょう。
年5日以上の取得義務がある
有給休暇の付与日数が10日以上の従業員には、雇用形態に関わらず年5日以上の取得が義務付けられています。従業員の意向を確認した上で取得時季を指定し、基準日から1年以内の取得が必要です。
会社が必要な措置をとらず、年5日以上の取得ができなかった場合は罰則が生じます。違反者1人につき最大30万円の罰金が発生することを踏まえ、適切な管理を行いましょう。
なお、取得時季の確認方法に決まりはありません。面談やメールのほか、年次有給休暇取得計画表や専用システムを活用して意見を聴取する方法などがあります。
参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説」
事後取得はできない
有給休暇は事後取得ができません。申請の漏れや忘れが発覚した場合は、原則として欠勤扱いになります。また従業員の欠勤日を、会社が後日無断で有給休暇に振り替えることも認められません。
ただし、会社によっては事後取得が可能なケースもあります。従業員から後日申し出があり、会社側が承諾した場合は欠勤日を有給休暇日に振り替えられます。事後取得のルールは会社ごとに異なるため、就業規則などをあらかじめ確認しましょう。
有給休暇の消化を促す方法
有給休暇の消化を促すには、会社から従業員への積極的な働きかけが必要です。また、すべての従業員に取得してもらうべく、計画性も求められます。
具体的な促進方法を4つ紹介しますので、今後の業務にお役立てください。
半日や時間単位で有給休暇の消化をできるようにする
まず挙げられるのが、半日または時間単位で有給休暇を消化できるようにすることです。
有給休暇は原則として、1日単位で付与されます。しかし労使協定を締結し、就業規則へ記載することで、時間単位の取得が年間5日まで可能となります。このとき、所轄の労働基準監督署への届出は必要ありません。
たとえば3日分の有給休暇を半日単位で消化する場合、6回の取得が可能です。通院や家族の介護、子どもの授業参観などに利用でき、従業員のワークライフバランスの充実化にもつながるでしょう。
時季指定で有給休暇を取得させる
年5日以上に達していない、または過去の取得率が著しく低い従業員には、会社側が時季指定をして有給休暇の取得を促すのが効果的です。
ただし、会社側の独断で時季指定をすることは認められません。従業員から聴取した意見を考慮しつつ、適切な取得時季を決定しましょう。
計画年休を取り入れる
計画年休とは、会社が事前に有給休暇の日程を指定する方法のことです。労使協定の締結と就業規則への記載があれば導入でき、付与日数から5日を除いた日数が対象です。
計画年休の取り入れ方には、以下の3つのパターンがあります。
- 一斉付与方式:社内のカレンダーに則り、全従業員に同日付与する方式
- 交代制付与方式:従業員を班分けし、それぞれに異なる日程で付与する方式
- 個別付与方式:年次有給休暇付与計画表に基づき、個別に付与する方式
計画年休を取り入れることで、有給休暇の管理を効率化できます。有給休暇日をあらかじめ割り振ることができ、気兼ねなく有給休暇を取得できるという従業員側のメリットもあるでしょう。
有給の申請忘れがないよう管理する
有給休暇の消化を促すには、会社が社内環境を整えて取得しやすい雰囲気づくりを行う必要があります。取得義務があることや有給休暇の日数を把握していない従業員に向けて、日頃から有給休暇に関する情報発信を行うことも重要です。
専用システムを導入すれば、個別の有給消化状況を容易に把握できるほか、申請忘れの防止にもつながるでしょう。
個別に有給休暇の取得進捗を管理するならバクラク勤怠
有給休暇とは賃金が支払われる休暇のことで、一定期間勤務した労働者に付与されます。付与日数が10日以上の従業員には、基準日から1年以内に5日以上の有給休暇を取得してもらわなければなりません。
有給休暇の取得進捗を管理するには、専用システムの導入が効果的です。勤怠管理システムのバクラク勤怠は、各従業員の有給取得義務日数を出勤簿から一目で確認できます。
また、チャットツールのSlackと連携できる点も特徴です。Slack上での打刻や勤怠承認、項目に合わせた一括通知を行う機能などが搭載されています。
バクラク勤怠のサービスについて詳しく知りたい方は、以下のページをご参照ください。