育児休業制度とは?育児休暇との違い、取得条件・期間・給付金を解説
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- 最終更新日:2025-06-12
- この記事の3つのポイント
- 育児休業制度は、1歳未満の子どもを養育する際に休業できる制度である
- 従業員から育児休業の申し出があった場合、事業者は申し出を拒否することはできない
- 育児休業の改正に伴い、新設された制度や延長制度に対して適切に対応しなければいけない
子育てと仕事の両立を実現するため、国は「育児休業に関する制度」の見直しを都度行っています。2025年4月1日には「育児・介護休業法」が改正されたことで、新制度も設立されました。
育児休業は日雇いを除くすべての従業員が対象であり、事業者は申し出を拒否することはできず、適切に対応する必要があります。
本記事では、育児休業制度について詳しく解説します。育児休暇との違いや取得条件、企業に求められる手続き・対応も紹介しますので、ぜひお読みください。
インボイス制度の概要を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:インボイス制度とは?意味や概要、対象となる事業者への影響を図解でわかりやすく解説
育児休業制度とは?育児休暇との違い、取得条件・期間・給付金を解説
育児休業制度とは?
育児休業制度とは、原則として1歳未満の子どもを養育するために設けられている制度です。事業者は従業員の申請に応じて育児休業を取得させる義務があります。
育児休業制度は「育児・介護休業法」で定められている制度であり、たとえ就業規則に記載がない場合でも、従業員の休業申請を拒むことはできません。
近年増加が見られる共働き世帯にとって、育児休業制度はなくてはならない存在です。また事業者にとっても、育児休業に対する適切な対応は、離職率の低下や企業イメージのアップといったメリットがあります。
育児休暇との違い
育児休業と混同しやすい制度に「育児休暇」があります。いずれも「子どもを養育するために仕事を休むこと」という点で同じですが、両者は異なる制度です。
育児休業と育児休暇の主な違いは、以下のとおりです。
制度 | 育児休業 | 育児休暇 |
規定 | 育児・介護休業法にて規定 | 企業独自に規定される |
法的保証 | 法的保証あり | 法的保証なし |
対象年齢 | 1歳未満 | 就学前 |
給付金の有無 | 育児休業給付金の給付あり | 給付なし |
社会保険料免除の有無 | 被保険者負担分及び事業主負担分が免除 | 免除なし |
育児休業が法律で定められた制度なのに対し、育児休暇は会社ごとに設けられています。育児休暇の設置は努力義務にとどまり、企業独自の制度であるため法的保証はありません。
育児休業は、給与の支払いはないものの、雇用保険から育児休業給付金が支給されるほか、社会保険料が免除されます。一方、育児休暇は給与や給付金の支給がないだけでなく、自身で社会保険料を納めなければいけません。
育児休業の取得率
育児休業の取得率は近年増加傾向にあるものの、男女比で見ると大きな差があります。厚生労働省の令和5年度調査によると、育児休業の取得率は女性が84.1%なのに対し、男性は30.1%にとどまります。
男性の育休取得率は前年より大幅に増加しているものの、女性と比べて低いのが現状です。
参考:厚生労働省「令和5年度育児休業取得率の調査結果公表、改正育児・介護休業法等の概要について」
育児休業を取得できる期間と延長制度
原則、育児休業を取得できる期間は子どもが1歳になるまでです。ただし、職場復帰をするために必要な保育園への入所ができなかったなど、一定の例外に該当する場合は、最長で子どもが2歳になるまで延長できます。
また、2022年10月1日には、男性の育児への参加促進、女性の社会復帰支援などを背景として「産後パパ育休」や「パパ・ママ育休プラス」の制度が新設されました。以下では、新設された制度について解説します。
産後パパ育休
産後パパ育休とは、産後8週間以内に4週間(28日)を限度として、2回に分けて休業を取得できる制度です。正式名称は「出生時育児休業」で、1歳までの育児休業とは別に取得できます。
産後パパ育休の取得内容は以下のとおりです。
条件 | 内容 |
取得可能期間 | 子どもの出生後8週間以内 |
取得日数 | 最大4週間(28日) |
取得回数 | 2回に分割して取得可能 |
就業条件 | 日雇い労働者を除く従業員 |
申出期限 | 原則休業の2週間前まで |
備考 | 労使協定を締結している場合のみ、労働者が合意した範囲で休業中の就業が可能 |
参考:厚生労働省「育児休業制度 特設サイト」
産後パパ育休は、原則休業の2週間前までに申し出を行うことで取得できます。
日雇い労働者を除く従業員が対象であり、有期雇用であっても産後パパ育休の取得が可能です。ただし、子どもが1歳6カ月に達する日までに労働契約の期間が満了した場合、または更新されないことで終了が明らかでない場合に限ります。
パパ・ママ育休プラス
パパ・ママ育休プラスは、両親がともに育児休業を取得する場合、子どもが1歳2カ月に達するまで休業期間を延長できる制度です。パパ・ママ育休プラスの取得により、父もしくは母の休業期間を、本来の休業期間に2カ月分プラスできます。
パパ・ママ育休プラスの取得要件は、以下のとおりです。
- 両親ともに子どもが1歳に達するまでに育児休業を取得していること
- 本人の育児休業開始予定日が子どもの1歳の誕生日以前であること
- 本人の育児休業開始予定日が配偶者がしている育児休業の初日以降であること
参考:厚生労働省「両親で育児休業を取得しましょう!」
ただし、父母いずれも育児休業の期間は、原則子どもの出生から1年間に変わりはないため注意が必要です。
残業時間の概要や計算方法は、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:時間外労働とは?定義や法改正された上限規制内容、計算方法を解説

出典:厚生労働省「パパ・ママ育休プラス」
たとえば、育児休業の取得期間が「母は産後1年間、父は産後3カ月目から子どもが1歳2カ月になるまで」であれば問題ありません。
一方、パパ・ママ育休プラスで1歳を超えて期間を延長できるのは、後から育児休業を取得した父または母です。先に育児休業を開始した親は、1年以降にパパ・ママ育休プラスを利用できないため注意が必要です。
育児休業中の給与と給付金
育児休業中は法律上給与の支払い義務がないため、支給されないのが一般的です。ただし、給与の支払いがない代わりに、雇用保険より「育児休業給付金」が支給されます。
育児休業給付金の支給要件は、以下のとおりです。
- 原則1歳に満たない子どもの養育のために育児休業をする雇用保険の被保険者
- 育児休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12カ月以上ある
- 育児休業中に休業開始前の1カ月当たりの8割以上の賃金が支払われていない
- 育休取得後、職場復帰を予定している
給付額は、以下の計算方法を用いて算出します。
期間 | 給付額の計算方法 |
育児休業開始後6カ月まで | 休業開始時賃金日額×支給日数×67% |
育児休業開始後6カ月以降 | 休業開始時賃金日額×支給日数×50% |
参考:厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続」
育児休業中は非課税、かつ社会保険料や雇用保険料の支払いが免除されるため、手取り額を比べると、休業前の最大8割程が支給されることになります。
ただし、育児休業中に10日かつ80時間を超えて就業する場合は育児休業給付金が支給されません。同様に、休業開始前の1カ月当たりの賃金の8割以上が支給されている場合も給付対象外となるため注意が必要です。
育児休業の対象者と取得条件
育児休業の対象者と取得条件を、以下にまとめました。
対象者 | 日雇い労働者を除く従業員 |
取得条件 | 1歳未満の子どもを養育していること |
子の適用範囲 |
|
育児休業の対象となるのは、企業に雇用されている従業員です。個人事業主やフリーランスは企業に雇用されていないため、育児休業の対象にはなりません。
なお、2022年10月1日より、有期労働者に関する育児休業取得要件の「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること」という条文が撤廃されています。
そのため正社員のほか、1歳未満の子どもを養育しており、かつ1歳6カ月になる日までに雇用契約がある従業員であれば、有期雇用であっても育児休業を取得できます。
ただし「雇用から1年未満の場合は育児休業を認めない」という旨の労使協定を結んでいる場合は、育児休業制度を利用できないため注意が必要です。
育児休業を申請する際に必要な手続き
従業員が育児休業を申請する際は、書面による各種手続きが必要です。必要な書類と手続き方法について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
必要書類
育児休業の申請に必要な書類と提出先は以下のとおりです。
必要書類 | 提出先 | |
休業前 |
| ハローワーク |
| 日本年金機構 | |
休業後 |
| 日本年金機構 |
休業後に必要な書類に関しては、育児休業申請時の予定日に休業を終了する場合や、復帰後も給与の変更がない場合は不要です。
「育児休業等取得者終了届」は予定より早く育児休業を終了する場合のみ提出します。「育児休業等終了時報酬月額変更届」は、時短勤務等で給与が低下し標準報酬月額の改定がある場合のみ提出が必要です。
手続きの方法と流れ
従業員から育児休業の申し出があった場合は、以下の流れで手続きを行います。
- 必要書類を用意する
- 添付書類をまとめる
- 所轄のハローワークまたは日本年金機構へ提出する
育児休業給付金を受給するためには、受給資格確認手続きを行わなければいけません。手続きに必要な用紙は、厚生労働省のWebサイト、もしくはハローワークの窓口で受け取れます。
参考:厚生労働省「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金/出生後休業支援給付金支給申請書」
参考:東京ハローワーク「雇用保険関係」
用紙の記入後、添付書類をまとめます。必要な添付書類は以下のとおりです。
- 母子手帳のコピー
- 支給申請期間の賃金台帳及び出勤簿
- 育児休業申出書
書類の準備が完了したら、所轄のハローワークに提出しましょう。
なお、社会保険料等の免除に関する手続きは日本年金機構が管轄しています。「育児休業等取得者申出書」を記入し、育児休業の期間中に提出しましょう。添付書類はありません。
参考:日本年金機構「6-4:育児休業等を取得し、保険料の免除を受けようとするとき」
育児・介護休業法の改正点について
2025年4月1日より「育児・介護休業法」が改正されました。今回の改正点における主なポイントは以下のとおりです。
改正点 | 概要 | |
子の看護休暇の見直し |
| |
所定外労働の制限の 対象拡大 |
| |
短時間勤務(3歳未満)の 代替措置にテレワーク追加 |
| |
育児中のテレワーク導入 |
| |
育児休業取得状況の 公表義務適用拡大 |
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介護休暇を取得できる 労働者の要件緩和 |
| |
介護離職防止のための 雇用環境整備 |
| |
介護離職防止のための個別の周知・意向確認等 |
| |
介護中のテレワーク導入 |
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なお、2025年10月1日から施行されるものもあります。一例は以下のとおりです。
- 柔軟な働き方を実現するための措置等
- 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
参考:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
育児休業制度で企業が取るべき対応と注意点
育児休業制度において、企業が取るべき対応と注意点を解説します。労務トラブルを防ぐためにも、従業員への適切な対応を行いましょう。
育児休業取得の推進とサポート
2025年4月1日より、事業者には「育児休業を取得しやすい雇用環境の整備」と「妊娠・出産を申し出た従業員への個別の周知・意向確認の措置」が義務付けられています。
以下のうち、いずれかの措置を講じる必要があります。
- 育休制度に関する研修の実施
- 育休制度に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
- 育休制度の取得事例の収集・提供
- 育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
参考:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
従業員の休業に対する意向を確認するほか、以下のような個別周知も必要です。
- 育児休業に関する制度
- 育休に関する申し出先
- 育児休業給付に関すること
「育児・介護休業法」は都度改正が行われています。こまめに確認し、適切に対応することが大切です。
不利益取扱いとハラスメントの防止
従業員の育児休業取得にあたり、事業者には不利益取扱いとハラスメントの防止措置を講じることが義務付けられています。育児休業を取得する従業員が不当な扱いやハラスメントを受けないよう、注意しなければいけません。
具体的には、以下のような措置が求められています。
- ハラスメントに関する内容や該当例の周知
- 事業主の方針の明確化及びその周知や啓発
- 相談窓口をあらかじめ定めること
- 育児休業等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
- 事業主や妊娠等した労働者その他の労働者の実情に応じ、必要な措置を講ずること
参考:厚生労働省「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!」
また、育児休業を取得する従業員に対して、解雇や雇止め、不利益な評価や配置変更を行うことは禁止されています。事業者として、従業員が働きやすい職場環境を整備しましょう。
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