
勤怠修正は違法?違法になるケースや罰則について解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-09-29
- この記事の3つのポイント
- 勤怠修正自体は違法ではないが、意図的に勤怠情報を改ざんした場合は違法となる
- 人件費削減や時間外労働の上限を守るため、管理職の評価維持などの理由で改ざんすると違法となる
- 違法な勤怠修正が発覚すると罰金が科される他、社会的信用の損失や人材の流出などを招く
企業は、従業員の日々の勤怠状況を正しく把握し、管理しなくてはなりません。しかし、なかには打刻時間より長く働いているのに修正できていないケースや、残業や休憩を打刻していないケースがあります。
ミスや不正を修正しない場合、企業側は罰則を科せられる可能性もあるでしょう。
本記事では、違法となる勤怠修正の例や罰則、正確な管理のための対策について解説します。従業員が不正な改ざんを行っていた時の対応も載せていますので、実務にお役立てください。
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勤怠修正は違法?違法になるケースや罰則について解説
勤怠修正の定義とは?
勤怠修正とは、従業員の出退勤時刻や労働時間、遅刻や早退時間などの誤った勤怠記録を訂正することです。
適切な手順に従い、正当な理由と客観的な記録を残す限り、勤怠修正を行うこと自体は違法にはなりません。正確な勤怠情報が記録されていない場合には、修正が求められます。
しかし、事実に基づかない虚偽の修正は、違法行為となるため注意が必要です。
勤怠改ざんは違法行為
勤怠改ざんとは、実際の労働時間を意図的に異なる時間で記録・修正する違法行為です。
労働基準法によって、企業は従業員の労働時間を正しく記録し、適正な賃金を支払うことが定められています。企業側が勤怠改ざんを行った場合は罰則が科せられます。
また、従業員による不正は、懲戒処分の対象となるため注意が必要です。
企業における勤怠改ざんの具体例
企業における勤怠改ざんは、人件費削減だけでなく、時間外労働の上限を超過しないための対策、管理職の保身のためなどさまざまな目的で行われます。
よくある改ざんの例としては以下が挙げられるでしょう。
- 打刻させずサービス残業を強要
- 残業申請の不正修正や不許可
- 実際より短く(長く)タイムカードを改ざん
- 休憩時間の不正計上
- 業務に必要な学習時間の未記録
- 変形労働時間制を用いた残業隠蔽
- 偽装出向・転籍
- 管理職から部下への残業過少申告指示
- 上司による残業の黙認 など
また、社内の勤怠システムを操作して自動で定時に打刻される仕組みを導入し、正確な記録をつくれないようにするケースもあります。
これらの改ざんは、企業側にとっては利益と感じられるかもしれませんが、いずれも違法行為です。
勤怠改ざんが見つかる主なケース
勤怠改ざんが発覚するケースは以下のとおりです。
- 労働基準監督署の立入調査(勤怠記録・PCログなど)
- (元)従業員からの内部告発
- 勤怠記録とPC利用履歴での矛盾
- 入退館記録やメール・チャットログ、防犯カメラとの照合
特に従業員からの内部告発では、社内記録の他に従業員自身が証拠となる情報を記録しているケースがあり、労働基準監督署による調査で厳しく追及されます。
勤怠改ざんによって起こり得る企業の損失
勤怠改ざんを行うと、企業は法的罰則を受けるだけでなく、複数の損失を被ります。具体的な罰則や損失について確認しておきましょう。
罰則を受ける
勤怠改ざんを行うと、労働基準法違反に該当し、賃金台帳の虚偽記載では30万円以下の罰金、残業代の未払いに関しては6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
タイムカードを不正に改ざんする行為は、私文書偽造罪により、5年以下の懲役または10万円以下の罰金です。クラウド上で勤怠データを改ざんした場合は、電磁的記録不正作出罪が適用され、最大5年の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
また、これらの犯罪には公訴時効があり、告訴がなければ法的手続きを進めることができません。企業は法的リスクを回避するためにも、勤怠管理を適切に行う必要があります。
参考:e-GOV法令検索「労働基準法(第119条第120条)」
参考:e-GOV法令検索「刑法(第159条)」
参考:e-GOV法令検索「刑法(第161条の2)」
企業の社会的信用を失う
勤怠改ざんが発覚すると、労働基準監督署からの立入調査が入り「是正勧告」を受けます。企業は勧告に従って、違反を改善したうえで結果を報告しなくてはなりません。多大な時間や人的リソースが消耗されるといえます。
しかし、勧告を無視すると刑事事件に発展するリスクが高まり、企業は労働基準監督署の重点監視の対象になります。監視対象にあることが公になれば、企業の社会的信用は大きく損なわれ、取引先や顧客からの信頼も失うでしょう。
人材が流出する可能性がある
勤怠改ざんが頻繁に行われている企業では、従業員からの信頼が失われて優秀な人材が離職し、職場のモチベーションや生産性が低下します。企業の要となる知識やノウハウを蓄積していくことが難しくなります。
人材流出の連鎖による採用や教育コストが増すことで、非効率な経営となり競争力の低下を招く恐れがあるでしょう。
金銭的損失を受ける
勤怠改ざんが発覚すると、企業は未払い残業代の支払いを強いられ、深刻な金銭的損失を被ります。
労働基準法では、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働に対し、25%以上の割増賃金を支払う義務が課せられています。勤怠記録の改ざんで正確な労働時間がわからず、法定の残業代が未払いとなれば、資金繰りにも大きく影響を及ぼすでしょう。
なお、未払い残業代は過去5年分の遡及請求が可能で、悪質な場合には労働基準法第114条によって、未払い額と同額の「付加金」を支払うよう命じられます。たとえば、未払い残業代が300万円であれば、付加金を加えた合計600万円を支払わなくてはなりません。
参考:e-GOV法令検索「労働基準法(第114条)」
従業員における勤怠改ざんが発生したときの対処方法
従業員が意図的に勤怠不正を働いた際の対処法を解説します。
不正の事実確認をする
不正が発覚した場合、最初に行うべきは事実確認です。そのためには確かな「証拠」が必要です。
たとえ改ざんが明らかであっても、不正を行った本人が認めなければ問題が大きくなるかもしれません。証拠なしで事実確認を行うと、言い訳や言い逃れをされる可能性も否定できません。
客観的な証拠としては、防犯カメラ映像やパソコンのログイン記録、タイムカードの代理打刻などが有効です。信頼できる証拠を確保した上で、本人に事実確認を行いましょう。
懲戒処分を行う
従業員による勤怠の不正が発覚した場合、通常は懲戒処分が行われますが、中でも最も重い処分は「懲戒解雇」です。特にタイムカードの改ざんや残業時間の不正申請など、企業秩序を乱す行為は懲戒解雇に相当します。
しかし、懲戒解雇は必ずしも実施するものではありません。不正の回数や目的、従業員のこれまでの勤務態度や立場などを総合的に見て手順を踏むことが重要です。
たとえば、最初は「戒告」や「減給」など軽い制裁を行って従業員に改善の機会を与えます。処分を行っても改善が見られない場合は、段階的にさらに厳しい処分を検討します。
残業代の返還要請を行う
残業代の水増しやタイムカードの改ざんが行われた際は、従業員に対して返還請求を行うことが可能です。返還請求をしないと、他の従業員が「不正を働けばお金を得られる」と誤解し、さらなる不正を招く恐れがあります。
また、不正行為に対して適切な処罰を行うことは、企業の信頼性を守り、不正の予防にもつながるため返還請求は必ず行いましょう。
特に長期間にわたる改ざんが発覚した場合、その金額は高額になるため、企業は適切な対応を早期に行うことが重要です。
勤怠の記録は5年間の保存が必要
企業は勤怠記録を正確に管理し、最低5年間保管しなくてはなりません。賃金台帳などの重要な記録を紛失すると、法的問題の発生にもつながります。
記録には修正も含まれるため、修正理由を客観的に証明できるものを残すことで、企業の法的リスク回避に役立ちます。
一方で適切に勤怠管理が行われていないと、労働基準監督署の調査で違法残業や意図的な改ざんの疑いをかけられるかもしれません。
適正な管理をするためには、勤怠管理システムを導入したり、事前に管理ルールを整備したりするのがよいでしょう。
打刻修正の際は勤怠管理システムを利用すべき理由
勤怠改ざんは違法となるものの、従業員によって打刻ミスがあった際には正確な記録になるよう打刻修正する必要があります。打刻修正とは、従業員の出勤・退勤時刻の修正を示すもので、勤怠修正の一つです。
正確な打刻修正を行うにあたって推奨されているのが、勤怠管理システムの導入です。ここでは、勤怠管理システムを利用すべき理由について解説します。
給与計算を正確に行うため
勤怠修正が適切に行われないと、従業員への給与が不足し、トラブルを招きかねません。
たとえば、残業が発生した後に勤怠修正がされていない場合、残業代が給与に反映されず、従業員から後で残業代を請求されます。未払いの残業代が発生すれば、法的問題に発展する可能性があります。
そのため、二重打刻や打刻漏れがあった場合には、すぐに修正した労働時間を記録し、正確な給与計算を維持できるシステムが必要です。
不正をなくし公正な労働環境を維持するため
企業の勤怠管理が不適切だと、不正な打刻や虚偽申告が発生しやすくなります。
たとえば、同僚が代理で打刻したり、実際より多くの残業時間を申告したりするケースが考えられるでしょう。
不正行為が明らかになると、従業員に懲戒解雇を下すことがありますが、事実確認や解雇手続きには手間がかかり、業務に多大な支障をもたらす可能性も否定できません。
また、企業の管理体制に問題があると、懲戒解雇の正当性が認められない場合もあります。そのため、まずはシステムを導入して勤怠管理の体制を見直し、再発防止に向けた適切な対応をすることが重要です。
正しい労働時間を把握し適正な勤怠管理を行うため
勤怠修正が正確に行われていると、企業は従業員の労働状況を把握でき、気づかないところで発生する問題を防げます。
特に近年は働き方改革により、従業員の正確な労働時間を把握する義務が強化されているため、管理体制を整えることは重要です。
また、労働時間の管理を通じて業務の効率化や残業削減、人件費の節約も期待できます。長時間労働や過労を未然に防ぐことで、従業員の健康を守ることにもつながります。
打刻修正が必要な具体例
ここからは、打刻修正を行うべき具体的なケースを確認しておきましょう。
打刻をし忘れた
出退勤の打刻を忘れた場合がまず当てはまります。たとえば、正常に出退勤していたのに打刻漏れで欠勤や遅刻扱いとなるケースが挙げられるでしょう。打刻忘れは「ついうっかり」のミスや、出張中などで物理的に打刻が難しかったなどの理由で発生します。
後々のトラブルを防ぐためにも、打刻忘れを放置せず、すぐに修正できる体制を整えておくことが重要です。
管理システムによっては、従業員自身で修正できる場合もありますが、上司や人事担当者への報告を求めるのも対策の一つです。また、タイムレコーダーの設置を見直す方法もあります。
二重に打刻した
二重打刻が発生した場合も打刻修正が必要です。二重打刻とは、出退勤を一度打刻した後に再度打刻してしまうことです。
打刻を忘れた場合や、印字が不正確だったために再度打刻した場合などに発生します。他にも、無意識に2回打刻したり、誤って他人のタイムカードに打刻したりすることもあるでしょう。
一方で、遅刻や早退を隠すために故意に行う場合もあり得ます。
2つの記録のうち、どちらの記録が正しいのかわからなくなるため、事実確認をしっかりと行い、正しい勤怠情報に修正しましょう。
退勤の打刻後、残業をした
業務の状況によっては、定時で退勤打刻後に急遽残業が必要となり、打刻修正が求められるケースもあります。
具体的には、定時に打刻されている退勤時刻を、実際の残業終了時刻に修正しなくてはなりません。たとえば、17時に退勤打刻をした後に2時間残業した場合には、退勤時刻を19時に修正します。
打刻ミスを減らす対策とは
打刻ミスが発生すると、正確な勤怠管理が行えません。ここでは打刻ミスを減らすための対策を紹介します。
勤怠管理システムを導入する
勤怠管理を効率的に進めるためには、勤怠管理システムの導入が効果的です。特にテレワークが増えている昨今では、クラウド型システムを活用するとオンラインで管理でき、場所に関係なく打刻できます。
多くのシステムには、打刻忘れを通知する機能がついており、不正打刻や虚偽申告の予防に役立ちます。他にも、給与計算やシフト管理など他の人事業務と連携できるシステムもあり、人事担当者の負担軽減やコスト削減も期待できるでしょう。
クラウド型システムであれば、リアルタイムでの労働時間や有給状況の確認ができ、法令違反のリスクも減らせます。
勤怠管理ルールを決め共有する
従業員に勤怠管理ルールを明確に伝えることで、修正ミスやトラブルを未然に防げます。
テレワークでオンラインツールを使った勤怠管理をするのであれば「打刻修正の手順」や「打刻のタイミング」などを事前に従業員と共有することが望ましいです。
たとえば、定時にアラームを設定したり、始業・終業時にメールやチャットで報告したりする方法が考えられます。タイムレコーダーを用いた管理であれば、タイムカードの確認や打刻場所の見直しが有効です。
また、経営層によるコンプライアンス遵守の意思表示や、勤怠管理ルールの周知徹底が全従業員の意識向上と不正防止、人事担当者の負担軽減につながります。
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勤怠修正は意図的に改ざんした場合に違法とみなされ、罰則に科せられます。
企業側・従業員側の双方で不正が起こりにくい環境を構築し、適正な勤怠管理を行うことが大切です。ミスや不正を防ぐための方法として、勤怠管理システムの導入をおすすめします。
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