賞与計算のやり方とは?社会保険料や所得税の計算方法も解説

賞与とは、毎月の給与とは別に、年1〜2回などのペースで臨時に支給される賃金です。

本記事では賞与計算のやり方や社会保険料、所得税の計算方法を解説します。賞与計算に関する注意点も複数提示しているので、ぜひ参考にしてください。

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賞与計算のやり方とは?社会保険料や所得税の計算方法も解説

賞与計算の基本的な考え方

賞与とは毎月の給与とは別に、年1~2回のペースで臨時に支給される賃金のことです。一般には「ボーナス」や「夏季・冬季手当」と呼ばれています。

賞与は給与と同じく年収に含まれる「賃金」ですが、法的な支払い義務がある給与とは異なり、企業が任意で支給する制度です。

たとえば給与は労働基準法により「毎月1回以上」など支払いのルールが義務づけられていますが、賞与についてはそのような規定はありません。支給の有無や金額、タイミングは企業ごとの判断に委ねられています。

ただし就業規則や労働契約に賞与支給の内容が明記されている場合、そのルールに従うことが必要です。給料計算についてのやり方は以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

関連記事:給料計算のやり方とは?手順やポイント・注意点をわかりやすく解説

賞与の種類

賞与には、支給基準や算出方法によっていくつかの種類があります。特に多くの企業で採用されているのが「給与連動型賞与」と「業績連動型賞与」で、どちらも一定のルールに基づいて支給されます。

ここからは、計算の考え方や目的が異なる賞与の種類について、それぞれの特徴を見ていきましょう。

給与連動型賞与

給与連動型賞与とは、毎月の基本給や役職手当、資格手当などの固定給に対して、あらかじめ決められた支給率を乗じて計算される賞与です。たとえば以下のように、給与額に応じて一定のルールで支払われます。

  • 基本給の2カ月分
  • 基本給+資格手当の1.5カ月分

給与連動型賞与は、就業規則などに「業績や勤務成績、社会情勢などにより支給額を変更、あるいは不支給とすることがある」といった条項を設けておくのが一般的です。

給与に連動していても、実際の支給額は業績評価などによって調整される場合があるため、企業にとっては人件費の見通しが立てやすく、従業員側も支給額の予測がしやすい点がメリットです。

業績連動型賞与

業績連動型賞与は、企業全体や部署、または個人の業績に応じて支給額が変動する賞与制度を指します。営業やプロジェクトチームなど、成果が明確に評価できる職種でよく用いられます。

たとえば部署の売上が目標を達成すれば賞与が増額され、未達成であれば減額されるなど、インセンティブの要素が強いのが特徴です。従業員ごとの業績に応じて差をつけられるため公平性を保ちやすく、成果主義の企業文化とも相性が良い制度といえます。

ただし企業全体の業績を基準にする場合、利益が大きければ社員全体に還元できる一方、好成績の部署に所属していても全社的な業績が悪ければ賞与が下がるというリスクもあります。

業績連動型賞与は、従業員のモチベーション向上と経営成果の連動を目指す制度です。

賞与の算定期間とは?

賞与の算定期間とは、支給される賞与が「どの期間の勤務実績に対応するか」を示す基準期間です。支給対象期間や算定対象期間とも呼ばれ、社会保険料や税額計算の根拠にもなります。

算定期間と混同されがちなのが「査定期間」です。査定期間は勤務態度や成果を評価して、賞与金額を決める期間を指します。

たとえば年2回賞与を支給する企業では以下のように、半年ごとに区切るケースが一般的です。

  • 夏季賞与:11月1日~翌年4月30日
  • 冬季賞与:5月1日~10月31日

年1回支給では「1月1日~12月31日」のように、1年分を算定期間とします。

算定期間中の出勤率を条件とする企業もあります。たとえば基本給30万円・支給月数2カ月のケースであっても、出勤率が90%であれば賞与は60万円から10%減の54万円になるといった計算です。

算定期間の設定と運用は企業の裁量に委ねられていますが、ルールを就業規則等に明記しておくことが重要といえます。

賞与の計算方法

賞与の計算は、まず支給額を決めて社会保険料や所得税を控除し、最終的な手取り額を算出します。計算は法令や就業規則に基づいて計算されるため、正確な知識が必要です。

ここからは、賞与の計算ステップを順に解説していきます。

支給額の決定

賞与計算の最初のステップは、支給額の決定です。就業規則や人事制度に基づいて計算されるため、基本となるルールを理解しておくことが大切です。

給与連動型賞与の場合、「基本給の2カ月分」など、固定給をベースに算出します。さらに個人の業績評価に応じて、S〜Dなどのランク別に0.6〜1.5倍の掛け率を乗じて支給額を調整するケースもあります。

一方で業績連動型賞与は、企業全体や部門、個人の業績に応じて金額が決まる成果報酬型の計算方法です。事前に設定された売上目標や評価指標に基づき、達成度に応じた比率で支給額が決定されます。

社会保険料の計算

賞与を支給する際には、給与と同様に社会保険料の控除が必要です。具体的には、以下の社会保険料が該当します。

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 介護保険料(対象者のみ)
  • 雇用保険料

各保険料の計算方法と具体例を見ていきましょう。

健康保険料

健康保険料は、賞与額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に、加入している保険の料率を掛けて算出します。たとえば、協会けんぽ(東京都)の場合、健康保険料率は2025年6月時点で11.45%(介護保険料込み)です。従業員と会社で折半負担します。

【計算例】
賞与支給額:412,860円

標準賞与額:412,000円

健康保険料(従業員負担分)=412,000円×11.45%÷2=23,587円

40歳以上の従業員は介護保険料が含まれているため、計算時に注意しなければなりません。保険料率は地域や保険組合によって異なるため、必ず最新情報を確認してください。

参考:全国健康保険協会 協会けんぽ「令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表

厚生年金保険料

厚生年金保険料も、賞与から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に対して料率を掛けて算出します。2025年6月時点において料率は18.3%で、労使と折半です。

【計算例】
賞与支給額:378,950円
標準賞与額:378,000円
厚生年金保険料(従業員負担分)=378,000円×18.3%÷2=34,587円

計算後の端数は通常50銭以下切り捨て、50銭超は切り上げとされています。高額賞与時は年間上限額(150万円×2回)にも注意が必要です。

参考:日本年金機構「厚生年金保険料額表

介護保険料

介護保険料は、40歳以上65歳未満の従業員が対象です。標準賞与額に対して介護保険料率を掛け、労使で折半します。2025年6月時点の介護保険料率は全国一律1.60%です。

【計算例】
賞与支給額:268,490円
標準賞与額:268,000円
介護保険料(従業員負担分)=268,000円×1.60%÷2=2,144円

介護保険料は、健康保険料と合算して天引きされることが一般的です。対象年齢や料率の改定時期を確認し、計算ミスのないよう注意しましょう。

参考:全国健康保険協会「令和7年度介護保険料率について

雇用保険料

雇用保険料は、標準賞与額ではなく支給総額に対して掛け算で算出されます。2025年度の従業員負担分(一般事業)は0.55%です。

【計算例】
賞与支給額:352,600円
雇用保険料=352,600円×0.55%=1,939.3円(端数切り捨てで1,939円)

事業主負担分(0.85%)も別途必要です。端数処理のルールは、50銭以下切り捨て、それ以上は切り上げを基本とします。

参考:厚生労働省「令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内

社会保険料の計算方法については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

関連記事:社会保険料の計算方法を解説!毎月の給与と賞与に分けて算出

所得税の計算

賞与にかかる所得税は、支給額から社会保険料を差し引いた「課税対象額」に、扶養人数と前月給与を基に算出した税率をかけて計算します。

たとえば扶養家族が1人いる従業員に賞与420,000円を支給し、社会保険料が62,000円、前月の社会保険控除後の給与が230,000円だった場合、税率表をもとに「3.063%」という源泉徴収税率が適用されます。

この場合の課税対象額は420,000円-62,000円=358,000円、そこに税率3.063%をかけて端数を切り捨て、所得税は約10,965円です。

なお扶養控除申告書の提出がない場合や、障害者などの控除対象がいる場合は別の計算方法になるため、税率表の備考欄まで確認しましょう。

参考:国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表

所得税の計算方法について詳しくは、以下の記事で解説しているのでぜひご覧ください。

関連記事:所得税の計算方法とは?税率や控除を具体例でわかりやすく解説

手取り額の算出

賞与の「手取り額」は、支給額から社会保険料と所得税を差し引いた金額で、実際に従業員が受け取る額です。たとえば賞与支給額が420,000円だった場合、以下のように控除額を積み上げて手取り額を算出します。

【仮定】
・社会保険料合計:62,000円(健康保険・厚生年金・介護・雇用含む)
・所得税:10,968円

【計算】
420,000円-62,000円-10,968円=347,032円(手取り額)

計算結果は給与明細にも明記されるため、従業員にとっての重要な指標です。処理のミスを防ぐためにも、各項目の算定基準を明確にしておきましょう。

賞与の平均支給額はどれくらい?

賞与額は企業ごとの制度や業績によって異なりますが、平均的な金額を知れば、自社の賞与水準が妥当かどうかを判断できます。ここでは厚生労働省の統計調査をもとに、年齢別と企業規模別の平均賞与額を見ていきましょう。

年齢

年間賞与額(平均)

~19歳

156,900円

20~24歳

396,800円

25~29歳

686,200円

30~34歳

830,700円

35~39歳

991,000円

40~44歳

1,110,000円

45~49歳

1,186,400円

50~54歳

1,237,100円

55~59歳

1,267,700円

60~64歳

787,200円

65~69歳

398,700円

70歳以上

249,900円

出典:e-Stat「令和6年賃金構造基本統計調査

年齢が上がるにつれて賞与額も増加し、50代でピークを迎えます。その後は定年退職により減少する傾向です。勤続年数の長さや役職、賃金水準の上昇が影響していると考えられます。

賞与計算に関する注意点

賞与の計算や支給にあたっては、法的なルールや社会保険・税務上の手続きが求められます。内容を誤るとトラブルにつながる可能性もあるため、注意点を事前に把握しておくことが大切です。ここでは、賞与に関する代表的な4つの注意点を紹介します。

賞与支給のルールは就業規則に記載する必要がある

賞与の支給には法的な義務はありませんが、支給する場合にはルールを就業規則や労働条件通知書に明記することが必要です。支給基準や支給日、在籍要件などを曖昧にすると、従業員との間で認識のズレが生じやすくなるため注意しましょう。

たとえばパート・アルバイトには「賞与を支給しない」と定め、支給対象から除外することも可能です。また「賞与支給日に在籍していること」を条件とすれば、退職予定者などへの対応も明確にできます。

トラブル防止のためにも、就業規則への明記と社内での共有は欠かせません。

賞与支給日から5日以内に賞与支払届を提出する必要がある

賞与を支給した場合は、支給日から5日以内に「賞与支払届」を年金事務所へ提出する義務があります。これは、健康保険や厚生年金の保険料計算に必要な届け出で、提出方法は窓口・郵送・電子申請のいずれでも可能です。

また、支給予定月に賞与を支給しなかった場合は「賞与不支給報告書」の提出が必要です。

報告書には、賞与を支給しなかった月や理由を記入しますが、加入している健康保険組合によっては、別の様式を使用する場合もあるため、提出先のルールを事前に確認しておきましょう。

賞与を年4回以上支給する場合は標準報酬月額の対象となる

通常、賞与は標準賞与額として保険料の計算対象です。しかし年4回以上賞与を支給する場合は、毎月の給与と合算して「標準報酬月額」とします。

年3回までの賞与は、標準賞与額として取り扱われますが、年4回以上支給している場合には、賞与ではなく「定期給与」とみなされます。報酬月額の算定に含める際は「被保険者報酬月額算定基礎届」の提出も忘れずに行いましょう。

退職予定者の社会保険料は支給日によって控除されない場合がある

退職予定の従業員に賞与を支給する際は、退職日と支給日の関係によって、社会保険料を控除しないケースがあります。ポイントは「資格喪失月」です。

退職日の翌日が資格喪失日となるため、たとえば退職日が月末なら資格喪失日は翌月1日となり、その前月に支給された賞与からは保険料を控除します。

一方で月の途中で退職する場合、その月が資格喪失月となり、同じ月に支給した賞与からは保険料を控除しません。雇用保険料は退職のタイミングに関係なく控除が必要なので、制度ごとの扱いの違いに注意しましょう。

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