税務申告書とは?法人税申告書の書き方やダウンロードできるページについて解説

法人税申告書は、企業が決算後に納税を行うために作成する重要な書類で、多くの別表や添付資料が必要です。本記事では、法人税申告書の基礎知識、提出忘れによる罰則、申告ソフトの活用について解説します。

法人税申告書のダウンロードは以下から行えるので、ご利用ください。

参考:国税庁「令和6年4月から令和7年3月の間に提供した法人税等各種別表関係(令和6年4月1日以後終了事業年度等分)

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税務申告書とは?法人税申告書の書き方やダウンロードできるページについて解説

税務申告書とは

税務申告書とは、企業や個人が納める税金を正しく計算、報告するために作成する書類です。法人の場合は、主に以下の3種類を決算時に提出します。

  • 法人税申告書
  • 消費税申告書
  • 地方税申告書

上記は決算書を基に作成され、税額を確定させる役割があります。たとえば、消費税申告書は売上規模など一定の基準を超えた場合にのみ提出が必要で、個人事業主の場合は「所得税申告書」の作成が必要です。

税務申告書は納税の根拠となる重要な書類であり、適切な作成と提出が求められます。

法人税申告書とは

法人税申告書とは、企業が一年間の所得に基づいて法人税を正しく申告・納付するために作成する書類です。法人税申告書は法人税をはじめ、地方法人税や法人住民税、法人事業税などの申告の基礎となるもので、法人の税務処理において重要な役割を果たします。

具体的には、決算書で算出された「利益」ではなく、法人税法上の「所得」(=益金-損金)に基づき税額を計算します。交際費や寄付金のように、会計上は費用でも、税法上は損金に該当しないものがあり、整理・計算することが必要です。

法人税申告書は構成が複雑で作成にも専門知識が必要とされるため、多くの企業が税理士などの専門家に依頼して対応しています。

法人税についての税率や計算方法は、以下のページで詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

関連記事:法人税とは?税率や計算方法、申告・納付期限について解説

法人税申告書(別表)の種類

法人税申告書の「別表」は、法人税の正確な計算と根拠を示すために不可欠です。企業は決算内容に応じ、別表1〜20の中から必要な書類を選んで提出します。これに加え、明細書や付表を含めると、関連書類の数は100種類を超えることもあります。

ただし、すべての別表が必要なわけではありません。通常、全法人に共通して提出が必要なのは、以下の5つです。

別表番号

名称

内容

別表一

各事業年度の所得に係る申告書

納税額や法人情報を記載

別表二

同族会社等の判定に関する明細書

同族会社に該当するかを判断

別表四

所得の金額計算に関する明細書

課税所得を計算する基礎賃料

別表五(一)

利益積立金額及び資本金等の額の計算書

税務上の純資産を記載

別表五(二)

租税公課の納付状況等に関する明細書

税金の納付状況を記載

法人税の申告には、企業ごとの実情に応じた複数の別表が必要です。別表の最新様式は、国税庁の公式サイトからダウンロード可能です。以下のリンクからご確認ください。

参考:国税庁「令和6年4月から令和7年3月の間に提供した法人税等各種別表関係(令和6年4月1日以後終了事業年度等分)

法人税申告書の書き方

法人税申告書の作成は、財務諸表の準備から始まり、別表を順に作成していく手順が求められます。ここからは、法人税申告書の書き方を7つのステップに分けて解説します。

申告時に必要な財務諸表を用意する

まず、財務諸表を揃えましょう。必要書類は以下のとおりです。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュフロー計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 勘定科目内訳書
  • 法人事業概況説明書 など

これらの資料は、会計ソフトの活用により効率的に作成できます。書類の抜けや漏れがあると、申告内容の整合性が取れなくなるため、事前の準備が必要です。

別表六以降を基に別表四を記載する

財務諸表を用意した後は「別表六」以降の書類を作成し、記載されたデータを基に「別表四」を記入しましょう。別表六では、以下のような税務上の取り扱いが企業会計と異なる項目を整理し、会計上の損益と税務上の所得の差異を明確にします。

  • 減価償却費
  • 交際費
  • 繰延資産 など

その後、別表四「所得の金額の計算に関する明細書」に、損益計算書の当期純利益と、別表六に基づく加算・減算項目を反映し、税務上の正しい所得金額を計算します。

この金額に誤りがあると法人税額にも影響を及ぼすため、転記や計算ミスには十分注意が必要です。

別表七を記載する

次に、「別表七」を記載します。別表七は、欠損金の繰越控除などを行う法人が作成すべき明細書です。過去の赤字(欠損金)を当期の黒字(所得)と相殺することで、税負担を軽減する制度の根拠資料として活用されます。

青色申告法人で欠損金がある場合、その額を将来に繰り越すことができ、その情報を「別表七(一)」に記載します。作成時は、前期の別表七から「翌期繰越額」を確認し「控除未済欠損金額」欄への記入が必要です。

そのうえで当期の「控除前所得金額」を転記し、計算式に従って「当期控除額」を記入します。最終的に各年の「翌期繰越額」を求め、「合計欄」に記載すると完成です。

参考:国税庁「欠損金の損金算入等に関する明細書

別表五(一)を記載する

別表五(一)は「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」で、将来解消される加算・減算項目を記載します。これは、別表四で会計上と税務上のズレとして調整された項目のうち、留保性のあるものを管理するために使われます。

たとえば、税務上は費用として認められなかった経費などを「留保」として記録し、将来的に損金算入の可能性があることを明示するのが目的です。

参考:国税庁「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書

別表一で法人税の金額を確定する

別表一は、すべての別表で計算された情報をまとめ、法人税と地方法人税の確定額を導き出す最終書類です。「各事業年度の所得に係る申告書」として、法人の基本情報や課税所得、税額、税額控除後の納付額を記載します。

別表四で算出された所得金額を基に、法人税額と地方法人税額をそれぞれ計算し、正しく記載してください。

また別表一には「次葉(じよう)」と呼ばれる補足ページがあり、税額の内訳や特例適用の有無などを記載する欄が存在します。次葉を記入しなかったり、誤記したりすると、税額が適正でないと判断される可能性があるため、注意しましょう。

最終的に別表一に記載された金額は、法人が納めるべき税額として確定され、申告書として税務署に提出されます。

参考:国税庁「各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分

別表五(一)と別表五(二)に税額を転記する

別表一で確定した法人税額は、別表五(一)と別表五(二)に正確に転記します。別表五(一)では「繰越利益剰余金」や「納税充当金」など、貸借対照表と連動する項目に税額を反映させましょう。

別表五(二)は「租税公課の納付状況等に関する明細書」です。法人税や地方法人税、道府県民税・市町村民税などの発生額・納付状況を記入します。別表一で算出した「差引確定法人税額」と「差引確定地方法人税額」は、別表五(二)に転記します。

「納税充当金の計算」欄に、期首と期末の残高、損金経理された金額などを正確に記載し、形式どおりの計算で埋めていきましょう。これらの処理を通じて、貸借対照表と税額明細は整合性が確保されます。

別表二を記載する

別表二は「同族会社等の判定に関する明細書」で、会社が同族会社または特定同族会社に該当するかを判定するための書類です。この判定は法人税計算の前提となるため、正しく作成しなければなりません。

作成時にはまず、各株主の氏名と保有株式数、住所を記載し、出資の割合から同族性を確認します。資本金1億円以下の中小企業であっても、1人の株主やその親族が過半数の株式を保有していれば、同族会社とされる場合があります。

判定結果によっては役員報酬の損金算入制限など、税務上の特別ルールが適用されるため、慎重に確認しましょう。

参考:国税庁「同族会社等の判定に関する明細書

参考:国税庁「同族会社等の判定に関する明細書 申告作成上の注意点

法人税申告書作成時のポイント

法人税申告書を正しく作成するには、記載内容だけでなく、準備段階や提出時の手続きにも注意が必要です。ここからは、ミスや税務リスクを未然に防げるよう、法人税申告書作成時のポイントを解説します。

決算を正しく終わらせる

法人税申告書作成時のポイントとしてまず挙げられるのは、決算を正しく終わらせることです。法人税申告書は決算書に基づいて作成されるため、決算を正しく締めることが不可欠と言えます。

決算に誤りがあると、申告内容すべてに影響が及びます。したがって、日頃から正確な記帳を行い、残高試算表で帳簿との整合性を確認しておくことが重要です。

また勘定科目内訳明細書は、決算整理に矛盾がないかをチェックするうえで大切な資料です。正しく作成すれば、見落としや誤計算を防げます。

非上場企業では監査を受ける義務がないため、顧問税理士と連携し、決算書の不備がないか慎重に確認することも大切です。

転記ミスをしない

決算書からの転記ミスをしないことも、法人税申告書作成時の重要なポイントです。転記ミスがあると法人税額の計算に誤りが生じ、税務調査や追加納税のリスクにつながる可能性も否定できません。

特に手作業で転記している場合、ヒューマンエラーが懸念点といえるでしょう。会計ソフトと申告ソフトが連携できる環境を整えれば、手入力の手間を減らし、転記ミスを大幅に防げます。

また手作業の場合、担当者が転記した後は、別の担当者がダブルチェックするなど、チェック体制を設けることも大切です。

提出が必要な別表を把握する

法人税申告書には、企業の状況に応じて多くの別表を提出する必要があります。しかし、すべての別表が必要なわけではなく、自社の決算内容や税務上の特性に応じて、提出する書類が異なります。

たとえば、交際費や欠損金がある場合は、それぞれに対応した別表を添付しなければなりません。正しい別表の選定には専門知識が必要となるため、顧問税理士がいる場合は相談しながら進めるのが確実です。

税理士がいない場合は税務署への相談や、別表の自動選定機能がある会計ソフト・申告ソフトの利用を検討するとよいでしょう。

添付書類を漏れなく準備する

法人税申告書には、税額算出の根拠となる添付書類が必要です。主な書類には、以下のものが挙げられます。

  • 決算報告書
  • 勘定科目内訳明細書
  • 法人事業概況説明書

また、租税特別措置を適用する場合には「適用額明細書」、税理士が代理申告する場合は「税務代理権限証書」も必要です。上記の書類を準備する過程で、申告書や決算書の誤りに気づくことも多いため、余裕をもって作業を進めることも重要といえるでしょう。

申告書の部数に気をつける

法人税申告書は、企業の資本金額に応じて提出部数が異なる点にも注意しましょう。原則として、資本金が1億円以上の法人は3部、1億円未満の法人は2部提出が必要です。

ただし、税務署から送付される書類に記載されている部数は前期の情報に基づいているため、当期の資本金額を確認することも忘れないでください。誤った部数で提出すると、再提出や修正が必要になることもあります。

余計な手間を避けるためにも、提出前に案内文や最新の申告要件を確認する習慣をつけておきましょう。

法人税申告書の提出方法

法人税申告書の提出には、主に「税務署への持参」「e-Tax」「郵送」の3つの方法があります。どの方法でも提出可能ですが、それぞれ受付日時や注意点が異なります。

確実に申告を完了させるために、自社の状況に合った方法を選びましょう。

税務署に直接提出する

一つ目の提出方法は、税務署に直接提出する方法です。直接提出する場合、法人の本社や本店所在地を管轄する税務署へ持参します。

窓口で提出可能ですが、提出書類に不備があってもその場で指摘してもらえないため、注意が必要です。控えへの収受印が必要な場合は、控えも持参しましょう。

e-Taxで提出する

二つ目の方法は、e-Tax(国税電子申告・納税システム)です。e-Taxを使えば、法人税申告書を自宅やオフィスのパソコンからオンラインで提出できます。また、24時間利用できるため、税務署の開庁時間に縛られずに申告が可能です。

ただし、事前にマイナンバーカードの登録や電子証明書の取得が必要であることには、注意しなければなりません。e-Taxでの提出の場合、通常期は平日8:30〜24:00、確定申告時期は土日祝含め24時間受付可能です。

郵送で送付する

三つ目の方法は、郵送です。法人税申告書を郵送する場合は「郵便物(第一種郵便物)」または「信書便物」として送付する必要があります。

宅配便や小包といった荷物扱いは認められておらず、提出日は郵便局の通信日付印(消印)の日付が基準です。最終日にポスト投函した場合、回収時間によっては翌日消印となることがあり、期限後申告となる可能性があります。

郵送の場合は確実に期限内提出とするために余裕をもって送付するか、最終日になってしまう場合は、窓口提出にするなど事前に決めておきましょう。

法人税申告書を提出し忘れた場合の罰則

法人税申告書の提出期限は、決算日から原則2カ月以内です。たとえば、決算日が4月30日の法人であれば、申告期限は6月30日となります。期限日が土日祝の場合、次の開庁日が申告期限です。

期限を過ぎても申告しない、あるいは遅れて申告した場合は「期限後申告」となり「無申告加算税」「延滞税」「重加算税」などの罰則対象となる可能性があるため注意しましょう。

ここからは、期限後申告のパターンごとに具体的なペナルティや注意点を解説します。

参考:国税庁「確定申告書の提出期限

期限を過ぎて自ら申告した場合

法人税申告の期限を過ぎても自主的に申告と納税を行うことで、ペナルティは比較的軽くなり、税務署に指摘される前であれば、通常「延滞税」のみで済みます。

延滞税は納付の遅れに対して課される利息で、納税が遅れた日数分が加算されるものです。一方、税務署からの通知を受けた後に期限後申告はできず、加算税が上乗せされます。

もしも期限を過ぎてしまった場合でもできるだけ早く自主的に申告すれば、大きな税務リスクを回避できるでしょう。

税務署から指摘されるまで申告しなかった場合

税務署からの指摘を受けるまで申告を怠っていた場合、通常の延滞税に加えて「無申告加算税」が課されます。これは、税務調査によって所得や納税額が確定された後、申告をしなかったことに対する罰則です。

無申告加算税は原則15%、場合によっては20%が課され、さらに悪質と判断された場合には「重加算税」として最大で税額の40%が追徴されるケースもあります。

税務署の指示に従わない場合は督促状が届き、それでも納付されない場合には財産の差し押さえなどの法的措置が取られることもあります。たとえ税務調査がまだ入っていなくても、早めに自主申告を行うことが最も安全な対処法といえるでしょう。

スムーズに申告するには申告ソフトを活用するのがおすすめ

法人税申告をスムーズに進めたい方は、専用の申告ソフトの活用がおすすめです。申告書の作成には別表の整備や税率の設定、添付書類の準備など、多くの手間がかかります。


クラウド会計ソフトや申告ソフトを使うことで、基礎データの入力により自動計算が可能で、税制改正にも対応しているため、計算ミスや記入漏れのリスクも抑えられます。

手作業に比べ負担を大幅に減らせるため、早期着手と効率的な申告作業の両立が可能です。

まとめ

法人税申告書は、企業の年間所得に基づいて法人税額を確定するための書類で、決算日から2カ月以内の提出が必要です。

申告には複数の別表や添付書類の作成が求められ、記載ミスや提出忘れがあると、延滞税や無申告加算税、重加算税などの罰則が科される可能性があります。

法人税申告書の提出方法は税務署への持参またはe-Tax、郵送の3つから選べますが、それぞれ注意点があります。スムーズかつ正確に申告を行うためには、クラウド会計ソフトや申告ソフトを活用し、人的ミスを防ぎながら効率よく作成を進めることが重要です。