「修繕費」って何?経費にできるかを定義するポイントとケース別の計上の例
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-09-20
修繕費とは、会社の経営上必要な有形固定資産などを修理や改修するための費用を指します。また、固定資産の維持管理や原状回復のための費用も修繕費に含まれ、経費に計上されることが特徴です。
この記事では、修繕費やその具体例などを解説します。消耗品費や資本的支出との違いについても解説するので、参考にしてください。
「修繕費」って何?経費にできるかを定義するポイントとケース別の計上の例
修繕費は経費に計上できる?
固定資産の維持管理や原状回復のために支払った費用は、修繕費として経費に計上できます。しかし、修理の仕方によっては修繕費として経費計上せず、資産として取り扱うことも可能です。
たとえば、原状回復の範囲を超えて改良によって新たな価値を付与した場合などが挙げられます。この場合は、修繕費ではなく資本的支出となります。
資本的支出は経費ではなく固定資産として計上されるため、その後、減価償却を通じて費用化される点に注意しましょう。
修繕費とは
修繕費は、固定資産のメンテナンスや修理などに使用される経費です。具体的には、建物の修理や設備の修理などが修繕費に含まれます。
法人税法上、これらの費用は当期の損金として全額を経費に計上することが可能です。なお、固定資産には、オフィス、社用車、専門機材などがあり、これらのメンテナンスコストが発生した場合は修繕費として計上します。
修繕費と消耗品費の違い
修繕費と消耗品費は混同されがちですが、それぞれに違いがあるため注意が必要です。まず、修繕費は固定資産の維持や修理にかかる費用で、既存の物品に対して適用されます。
一方、消耗品費は短期間で消耗する物品の購入費用で、通常の業務で頻繁に使用する低価値の物品に対して適用されます。
つまり、修繕費は以前購入したものを修理する際に用いられる勘定科目であり、消耗品費は新しく物を購入した場合に用いられる勘定科目です。
修繕費の具体例
修繕費に該当する具体例について解説します。以下は、具体例とそれぞれの詳細です。
建物の屋根や外壁の修理
建物の屋根や外壁は、時間の経過や天候の影響で劣化します。そして、これらの修理は基本的に建物の原状回復を目的としているため、修繕費として計上できます。しかし、工事の内容によっては資本的支出となるため、注意が必要です。
たとえば、水漏れ対策をするための一時的な補修ではなく、屋根の耐用年数を延長する工事であれば、修繕費ではなく資本的支出として扱われます。
また、外壁の塗装を上等なものに変えると、建物の価値が増大すると判断されて資本的支出になります。具体的には、光触媒やフッ素など、特別な材料を用いた塗装に変更した場合などです。
空調設備の修理
オフィスの空調設備が故障した場合、修理や部品交換に費用がかかります。具体的に含まれる作業は、エアコンのコンプレッサー交換や冷媒補充などです。原則として、空調設備の修理は正常な機能を回復するために行われるため、修繕費として計上されます。
しかし、エアコンの代金と取付工事費が30万円以上になる場合は、修繕費ではなく資本的支出として扱われます。そのため、耐用年数を参考に減価償却し、減価償却費を計上しなければなりません。
配管の修理
建物に備えられている給排水設備は、経年劣化や頻繁な使用によって故障することがあります。水漏れや詰まりといったトラブルが発生した場合、配管の修理や交換が必要です。
これらの修理作業は、水の正常な供給と排水機能を維持するために行われます。そのため、修繕費として計上することが可能です。
しかし、耐用年数を大幅に延長するような工事は、資産価値を付加するとして資本的支出に計上されます。具体的には、建物の配管を全て取り替える規模の工事が該当します。
修繕費と資本的支出の違い
修繕費と資本的支出は混同されがちですが、それぞれに違いがあるため注意が必要です。修繕費は固定資産の現状維持や原状回復を目的としています。
一方、資本的支出は固定資産の価値を高めるための費用です。支出金額は資産計上され、減価償却を通じて費用化されます。具体的な判断基準は、以下の通りです。
- 費用が20万円を超えるか
- 約3年以内の周期で実施されるか
- 維持管理や原状回復を目的としているか
- 資産価値の向上や使用可能期間の増加を伴うか
- 費用が60万円未満か前期末取得価格の10%以下か
修繕費が「資本的支出」と判定される条件
修繕費が資本的支出と判定される条件について解説します。具体的な状況や工事は、以下の通りです。
ケース1.オフィスのカーペット交換
オフィスのカーペットが劣化して交換する場合、通常の維持管理の範囲として費用が修繕費になります。
交換の仕方によっては資本的支出になるため注意が必要です。具体的には、カーペットの品質を大幅に向上させたり、高価な材料を使用したカーペットに変更したりした場合です。
しかし、減価償却資産の中でも、価値が10万円未満の資産や使用期間が1年未満の資産は、少額減価償却資産に該当します。少額減価償却資産は、資本的支出に該当する修繕内容でも、消耗品として経理処理できます。
ケース2.壁のペンキ塗り替え
建物の壁の塗装を定期的に行う場合、その費用は修繕費として処理することが可能です。しかし、修繕費として処理できるのは、あくまで通常のメンテナンスとみなされる範囲に限られます。
例えば、壁の塗装を新しいデザインにしたり、使用する塗料を高価なものに変更したりすると、価値が増加したと見なされます。そのため、修繕費ではなく資本的支出として扱われることに注意しましょう。
ケース3.エレベーターの修理
エレベーターの故障に対する修理は、修繕費に該当します。修繕費として認められるのは、正常な機能を回復することを目的としている場合だけです。
エレベーターの性能を大幅に向上させるアップグレードを行うと、資本的支出として見なされます。これは、原状回復や維持管理ではなく、資産価値を高める行為と見なされるためです。
修繕費の仕訳方法
修繕費を仕訳する際には、いくつか注意すべき点があります。ここからは、具体的なシチュエーションごとに修繕費の仕訳方法を解説します。修繕費が発生した際の参考にしてください。
建物の修理費用
建物の修理費用として100,000円を現金で支払った場合の仕訳は、以下の通りです。
借方科目:修繕費 100,000円
貸方科目:現金 100,000円
建物の修理費用は、建物の原状回復や維持管理に必要な費用であるため、修繕費としての仕訳が適切です。現金で支払われた金額が反映されています。
機械設備の修理費用
機械設備の修理に50,000円の費用がかかり、なおかつその費用を後払いとする場合の仕訳は、以下の通りです。
借方科目:修繕費 50,000円
貸方科目:未払金 50,000円
機械設備が故障した際には、正常な機能を回復させる必要があります。そして、機能の回復を目的とした修理にかかった費用は、修繕費として経費計上することが可能です。
エアコンの修理費用
エアコンの修理に30,000円かかり、その費用を普通預金から支払った場合の仕訳は、以下のようになります。
借方科目:修繕費 30,000円
貸方科目:普通預金 30,000円
エアコンの修理費用30,000円を修繕費として扱い、普通預金口座から支払われた金額が反映されています。
まとめ
保有している固有資産を維持するためには、定期的な修理が欠かせません。また、修理にかかった費用は適切な仕訳で処理することが大切です。
しかし、修繕費や資本的支出など、修理の内容次第で適切な勘定科目は変わり、記載の仕方も変わります。そのため、専用システムを活用して少しでも作業を効率化することが推奨されます。
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