法定福利費とは?計算方法や仕訳例、福利厚生費との違いなど解説

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法定福利費とは?計算方法や仕訳例、福利厚生費との違いなど解説

法定福利費とは、企業が法律に基づいて従業員のために負担する社会保険料や労災保険料などの費用を指します。労災保険は、業務中の怪我や病気に対する休業補償など、従業員の生活を守るための重要な制度です。 法定福利費は企業にとって必須の経費ですが、会計処理を行う際、適切な勘定科目の選び方や仕訳方法が複雑に感じる方もいるでしょう。 本記事では、法定福利費の基本的な概要から、計算方法や仕訳の具体例、福利厚生費との違いまで、わかりやすく解説します。法定福利費に関する知識を身につけ、今後の実務にお役立てください。

1.法定福利費とは

法定福利費とは、企業が法律に基づいて負担する、従業員の社会保険料や労災保険料などの費用を指します。厚生年金保険、健康保険、雇用保険などが含まれており、企業は従業員のために保険料を一部負担する義務があります。

法定福利費は、従業員の生活保障や福祉の向上を目的としており、企業にとって大切な社会的責任の一環です。

2.法定福利費の対象例

法定福利費の対象例は主に6つあります。それぞれ詳しく解説しますので、理解を深めましょう。

2-1.厚生年金保険

厚生年金保険は、主に会社員や公務員が加入する年金制度であり、老後の生活を支えるための基礎年金に上乗せされます。保険料は、労働者と事業主が折半して負担し、一定の年齢に達すると、年金として受給できます。

また、厚生年金保険には障害年金や遺族年金の給付も含まれており、万が一の際には生活を支える役割を果たす重要な制度です。

2-2.健康保険

健康保険は、会社員や家族が病気や怪我をした際に、医療費の一部が負担される制度です。保険料は、労働者と事業主が折半して支払い、毎月の給与から控除される形で徴収されます。

具体的には、医療機関での診療費や薬剤費の一部が軽減されることで、自己負担額が減り、治療にかかる経済的負担の大幅な軽減が可能です。

さらに、健康保険には出産時に給付される出産育児一時金や、高額な医療費がかかった際に負担額を一定水準に抑える「高額療養費制度」なども含まれます。

2-3.介護保険

介護保険は、40歳以上の国民が加入する保険制度で、介護が必要になった際に介護サービス費用の補助が受けられる仕組みです。保険料は、給与から天引きされる場合や、自治体を通じて納付される場合があり、サービス利用時には自己負担割合が定められています。

介護保険制度により、家庭での介護負担を軽減し、必要な場合に専門的な介護サービスを利用できる環境が整えられています。

2-4.雇用保険

雇用保険は、労働者が失業した場合や出産・育児休業を取得した際に、給付金を受け取れる社会保険制度です。労働者と事業主が共同で負担し、毎月の給与から控除されます。

失業した際に求職者給付金を受け取れるため、再就職活動中の生活費を補えるでしょう。また、雇用保険には、雇用継続を支援する「再就職手当」や「職業訓練給付金」など、再就職を促進するための給付制度も含まれています。

さらに、育児休業を取得した際には「育児休業給付金」を受け取れ、出産後も一定期間安心して子育てに専念することが可能です。

2-5.労災保険

労災保険は、労働者が業務中に怪我をしたり、職業病にかかったりした場合に、治療費や休業補償を受けられる保険制度です。保険料は事業主が全額負担し、労働者が負傷や病気で働けない期間中の賃金を一定割合補償します。

また、労災による後遺障害や死亡時には、遺族に対して給付金が支給される制度もあり、労働者や家族を支える重要な役割を担っています。

2-6.子ども・子育て拠出金

子ども・子育て拠出金は、企業が負担する税金の一部で、子育て支援や保育サービスの向上を目的として徴収されるものです。

拠出金は、主に保育所、幼稚園、認定こども園、学童保育などの施設の運営資金として活用されています。働く親が安心して子育てと仕事を両立できる環境を整えるための重要な財源です。

また、子ども・子育て拠出金の目的は、子育てにかかる経済的負担を軽減することであり、地域によって特定の支援事業や保育施設の拡充に使われることもあります。

3.法定福利費の計算例

法定福利費の計算例を、6つの対象ごとに見ていきましょう。

3-1.厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料は、従業員の賃金に基づいて算出される「標準報酬月額」の18.3%を基準に計算され、従業員と事業主が9.15%ずつ負担します。

標準報酬月額は、賃金額に応じて1等級から32等級までの区分に分類され、各従業員に該当する等級が決められる仕組みです。

標準報酬月額は、毎年4月、5月、6月の3カ月間の賃金を平均して定められる「定時決定」によって確定します。なお、賃金に大きな変動があった場合は「随時改定」によって見直されるため注意しましょう。

3-2.健康保険料の計算方法

健康保険料は、従業員の標準報酬月額に、健康保険組合が定めた保険料率を掛けて算出します。保険料の負担は従業員と事業主で半額ずつです。

たとえば、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入する東京の企業では、介護保険第2号被保険者に該当しない場合の保険料率は9.81%、該当する場合は11.45%です。

介護保険第2号被保険者とは、40歳から64歳までの医療保険加入者を指し、該当者には介護保険料が加算されます。また、保険料率は地域や健康保険組合によって異なるため、実際に支払う保険料の金額も変動するでしょう。

3-3.介護保険料の計算方法

介護保険料は、従業員の標準報酬月額に介護保険料率を掛けて算出され、従業員と事業主が折半して負担します。たとえば、協会けんぽに加入している企業の場合、2025年度の介護保険料率は1.59%です。

介護保険料は「介護保険第2号被保険者」に該当する従業員に適用され、毎月の給与から控除されます。

標準報酬月額に基づいて算出されるため、賃金に応じて負担額が変動しますが、介護が必要な高齢者の生活を支えるための資金として重要な役割を果たしています。

3-4.雇用保険料の計算方法

雇用保険料は、事業の内容に応じて保険料率が異なり、従業員と事業主の双方が負担しますが、事業主の負担割合の方が大きくなる設定です。

保険料は毎月の給与から控除され、雇用保険の対象となる失業給付や育児休業給付などの給付金の財源として活用されます。

具体的には、一般事業での雇用保険料率は従業員と事業主で異なるため、各企業の業種に応じて異なる割合での負担が発生する仕組みです。

3-5.労災保険料の計算方法

労災保険料は、事業内容に応じて異なる料率に基づき、賃金総額の0.3%から8.8%の範囲で計算されます。保険料は、全額を事業主が負担し、従業員の負担はありません。

労災保険料は、年間の賃金に料率を掛けて一括で納付されます。月々の給与計算時に個別に算出する必要はなく、1年分をまとめて納付します。

3-6.子ども・子育て拠出金の計算方法

子ども・子育て拠出金は、企業が全額負担する法定福利費であり、従業員に対する負担はありません。拠出金は、各従業員の標準報酬月額または標準賞与額に0.36%の料率を掛けて算出されます。

4.法定福利費の仕訳例

法定福利費の仕訳例を以下で解説します。ぜひ参考にしてください。

4-1.給与支払い時の法定福利費の仕訳

従業員に給与を支払う際には、会社が負担する法定福利費の仕訳が必要です。

たとえば、6月の給与総額が100万円で、そのうち会社が法定福利費として50,000円を負担する場合の仕訳は次のとおりです。

まず、給与手当として1,000,000円を従業員に支払い、さらに会社が負担する社会保険料などの50,000円を法定福利費として計上します。

借方

貸方

給与手当

1,000,000円

現金預金

1,050,000円

法定福利費

50,000円

給与手当として100万円が計上され、会社が負担する50,000円が「法定福利費」として別途計上されます。

事業主負担分の法定福利費は会社の経費として処理されるため、従業員の給与支払いに加えて負担額が全体の支出として計上される仕組みです。

4-2.法定福利費の納付時の仕訳

毎月末に、従業員と事業主が負担する社会保険料などの法定福利費をまとめて納付する際には、事業主負担分と従業員負担分をそれぞれ区分して処理しましょう。

たとえば、事業主負担分の法定福利費が50,000円、従業員負担分が30,000円で、合計80,000円を納付する場合、次のように仕訳してください。

借方

貸方

未払費用

(法定福利費)

50,000円

現金預金

80,000円

預り金

(従業員負担分)

30,000円

上記の仕訳では、事業主が負担する50,000円が「未払費用」として計上され、従業員の給与から天引きされた30,000円が「預り金」として処理されます。最終的に、現金預金から一括で80,000円が支払われ、社会保険料の納付は完了です。

4-3.休業補償支払い時の仕訳

労働災害で従業員が休業した場合、会社は平均賃金の60%を補償する義務があります。

労災保険には、休業4日目から賃金の60%が国から支払われる「休業補償給付」があります。ただし、休業1日目を含む最初の3日目は労災保険から支給されないため、有給休暇を使わない限り、会社が平均賃金の60%を支払わなければなりません。

労働基準法上の休業補償は、法定福利費として損金に算入できます。一方、会社の都合による「休業手当」は賃金に該当し、所得税の課税対象になります。

たとえば、休業3日間の平均賃金が30,000円の場合、支払う補償は18,000円です。仕訳は以下のとおりです。

借方

貸方

法定福利費

18,000円

現金預金

18,000円

労働保険料の仕訳例を法人・個人事業主に分けて解説した記事は、以下をご確認ください。

関連記事:労働保険料の勘定科目と仕訳例を法人・個人事業主に分けて解説

5.福利厚生費との違い

法定福利費は、企業の負担が法律で義務付けられている費用であり、従業員の社会保険料や労災保険料などを指します。

一方、福利厚生費は企業が自主的に従業員の福利や生活向上を目的として提供するものであり、社内イベント、健康診断、社員旅行などが含まれます。

法定福利費は、法律に基づいて支払う義務があるのに対し、福利厚生費は企業が福利厚生を強化するために独自で設定する任意の費用です。

5-1.法定福利費を支払わないと「法律違反」になるので注意

企業が法定福利費を支払わないことは、法律違反に該当します。法定福利費を適切に支払わない場合、企業は行政機関からの指導や、罰金が科される可能性もあります。

また、法定福利費は従業員の生活や健康を保障する重要な制度であるため、企業が義務を果たすことは従業員の権利保護にもつながるでしょう。

6.法定福利費の経費計上を正確に行うなら「バクラク経費精算」

法定福利費は、企業が従業員の社会保険料や労災保険料を負担することが法律で義務付けられている経費です。適切に計算し、仕訳処理を行うことで、企業の法的義務を果たし、従業員の福利を守ることにつながります。

また、福利厚生費は企業が自主的に提供する費用であり、法定福利費とは異なる性質をもっています。企業運営において、両者の違いを正確に理解し、適切に管理することが不可欠です。

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