敷金などの保証金の勘定科目は?仕訳例とともに解説

敷金や権利金などの保証金は、賃貸借契約や各種取引で頻繁に登場しますが、会計処理や仕訳方法は複雑です。保証金の返還や償却、消費税の扱いなど、正しい勘定科目の選択が求められる場面も多く、迷う実務担当者も少なくないでしょう。

本記事では、差入保証金・受入保証金の基本から、具体的な仕訳例や消費税の取り扱いまで、わかりやすく解説します。会計処理の正確性を高めたい方は、ぜひ参考にしてください。

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敷金などの保証金の勘定科目は?仕訳例とともに解説

保証金とは?

保証金とは、債権者に負う債務履行を担保するお金です。敷金や契約保証金などが該当します。保証金は、不要になると返還されることもある金額です。しかし一部または全額が返還されない契約の場合もあります。

保証金を、差入保証金と受入保証金(別名:預り保証金)で区別するケースもあります。
「差入保証金」は保証金を支払う側からの呼び方であるのに対し、「受入保証金」は保証金を受け取る側からの呼び方です。

本記事では、区別せず「保証金」に統一しています。

保証金の種類

保証金には、主に次のような種類があります。

敷金

敷金は、賃貸借契約時に貸主に債務の担保をするお金です。基本的には、賃貸費用の未払いや、退去時の原状回復費用として使われます。

未払い金がないなど、問題なく契約満了を迎えた場合は敷金が使われることはないため、ほとんどの場合返還されます。

権利金

権利金は、礼金と呼ばれる、差入保証金の1つです。本来は同じ意味ですが、礼金は家主に対するお礼、権利金は借地権の設定など借りる側に対する配慮への対価、と分類しているケースもあるでしょう。

権利金は敷金と同じく、賃貸借契約時に預け入れる費用です。契約満了後の返還はないため、最終的には長期前払費用として償却されます。

営業保証金

営業保証金とは、宅地建物取引業者が営業開始時に、供託所に預け入れるお金です。不動産取引でトラブルになった際、顧客の利益を保証するために使われます。

営業保証金として本店は1,000万円、そのほかの店舗は500万円が必要です。

ゴルフ会員権保証金等

預託金制のゴルフ場を利用する際に、預託金を支払う場合があります。「ゴルフ会員権保証金」「預り保証金」「相互施設利用保証金」など、さまざまな名称で呼ばれていますが、いずれも同じものです。

これらは契約が終了した場合、会員に返還される費用になるため、差入保証金とみなされています。

保証金の仕訳方法と勘定科目

保証金の仕訳方法と勘定科目について解説します。

差入保証金の場合

差入保証金は、事務所や店舗などの賃貸借契約時に担保となる金銭のことです。

会計上は「投資その他の資産」として仕訳されます。貸借対照表では「資産」の部、かつ固定資産に該当し、使用する勘定科目は「差入保証金」です。

原則として、契約終了時に全額返還されますが、契約によっては一部が返還されず、償却されるケースもあります。返還されない部分は「長期前払費用」として計上し、契約期間にわたって償却処理を行いましょう。

たとえば、契約期間が5年で返還されない保証金がある場合、その金額を長期前払費用として資産計上し、毎年均等に費用化します。ただし、長期前払費用に該当する金額が20万円未満の場合は「支払手数料」などの費用科目で一括して処理することも可能です。

また、契約締結後1年以内に償却されるものについては「前払費用」として流動資産に計上し、償却期間に応じて費用化してください。

前払費用の勘定科目や支払手数料になる経費については、以下の関連記事で詳しく説明しています。

関連記事:支払手数料になる経費と仕訳例5選|雑費や租税公課など迷いがちな勘定科目や注意点も解説

関連記事:前払費用の勘定科目は?仕訳例・計上タイミングと特例を解説

受入保証金の場合

受入保証金は、他者から一時的に預かった金銭のことで、会計上は負債に区分されます。

受入保証金は返還義務があるため、貸借対照表の負債の部に計上しましょう。仕訳の際に用いる勘定科目は「預り金」が一般的です。預かった時点で「預り金」として負債計上し、返還時には同じ勘定科目から減額処理を行います。

なお、返還までの間は負債として据え置かれ、流動負債または固定負債として分類されます。

預り金には、従業員の社会保険料や源泉徴収税などの控除金が含まれることが多いです。会計処理について詳しく知りたい方は、こちらの記事を確認しましょう。

関連記事:勘定科目「預り金」とは?仕訳(貸方・借方)の例と会計処理をわかりやすく解説

差入保証金を勘定科目に計上する具体例

ここでは、差入保証金を勘定科目に計上する際の具体例を、ケース別に3つ解説します。

返還される金額がわからない場合

契約締結時に敷金の償却額が事前に定められている場合と、そうでない場合とでは、会計処理の方法が異なります。もし償却額が未確定であれば、原状回復費用の見積もりができないため敷金全額を資産としての計上が必要です。

社宅用のマンションを契約し敷金30万円を普通預金から支払った場合の仕訳例は以下のとおりです。

【契約時】

借方

貸方

差入保証金

300,000円

普通預金

300,000円

社宅用のマンションを解約する際に、敷金全額30万円が現金で返還された場合は以下のように仕訳します。

【解約時(全額返還された場合)】

借方

貸方

現金

300,000円

差入保証金

300,000円

敷金60万円のうち償却額30万円で30万円が返還され、3年契約のところ2年で解約したため償却期間の残りが1年分ある場合の仕訳例は以下のとおりです。

まずは、返還分の30万円を処理します。

【解約時(一部償却されて返還された場合)】

借方

貸方

現金

300,000円

差入保証金

300,000円

次に、残っている1年分の償却をします。

借方

貸方

支払手数料

100,000円

長期前払費用

100,000円

返還される金額があらかじめ決まっている場合

差入保証金を減価償却費として償却する場合、契約期間は5年です。期間が5年未満の場合、契約期間で償却することが認められています。

差入保証金を減価償却する際、計上には「長期前払費用」を用います。具体例は以下に挙げますので、併せてご参照ください。

償却額が20万円未満

敷金の中で、契約によって事前に償却が決められている部分については「支払手数料」を使って処理します。そして、実際に支払った敷金から「支払手数料」として計上した金額を差し引いた残りの金額を「差入保証金」または「敷金」として仕訳します。

償却額が20万円未満である場合の、契約時と解約時の仕訳をそれぞれ見ていきましょう。

以下は、社宅用のマンションを契約し敷金30万円を普通預金から支払い、償却額は5万円とした場合の例です。

【契約時】

借方

貸方

差入保証金

200,000円

普通預金

250,000円

支払手数料

50,000円

  

敷金15万円が全額返還された場合の仕訳例は以下のとおりです。

【解約時】

借方

貸方

普通預金

200,000円

差入保証金

200,000円

※返還されない分については、すでに「支払手数料」や「長期前払費用」として処理済みのため、返金された敷金の部分だけを会計上で処理しています。

償却額が20万円以上かつ契約期間が5年未満

敷金のうち、事前に償却が決められている金額は「長期前払費用」として繰延資産に計上します。期末には契約期間に応じて均等に分割し、「支払手数料」として費用化しましょう。

契約した事務所の敷金60万円を現金で支払った場合の仕訳例は以下になります。なお、契約期間は3年、償却額は30万円とします。

【契約時】

借方

貸方

差入保証金

300,000円

現金

600,000円

長期前払費用

300,000円

  

【期末】

借方

貸方

支払手数料

100,000円

長期前払費用

100,000円

敷金60万円が全額返還された際の仕訳例は以下のとおりです。

【解約時】

借方

貸方

普通預金

500,000円

差入保証金

500,000円

※返還されない分については、すでに「支払手数料」や「長期前払費用」として処理済みのため、返金された敷金の部分だけを会計上で処理しています。

償却額が20万円以上かつ契約期間が5年以上

敷金の中で事前に償却が決められている部分は「長期前払費用」として処理します。期末に5年で均等に分割し「支払手数料」として費用計上しましょう。

契約した事務所の敷金60万円を現金で支払った場合は以下のように仕訳します。契約期間は6年、償却額は30万円です。

【契約時】

借方

貸方

差入保証金

300,000円

現金

600,000円

長期前払費用

300,000円

  

【期末】

借方

貸方

支払手数料

60,000円

長期前払費用

60,000円

※償却額30万円÷償却期間5年=期末の償却金額6万円として計算しています。

敷金60万円が全額返還された場合の仕訳例を以下に示します。

【解約時】

借方

貸方

普通預金

500,000円

差入保証金

500,000円

※返還されない分については、すでに「支払手数料」や「長期前払費用」として処理済みのため、返金された敷金の部分だけを会計上で処理しています。

差入保証金の償却期間

差入保証金を減価償却費として償却する場合、期間は5年です。契約期間が5年未満の場合、契約期間で償却を決めることができます。

差入保証金を減価償却する際、計上には「長期前払費用」を用います。具体例は次項にて後述するのであわせて参照してください。

差入保証金を勘定科目に計上する具体例

ここでは、差入保証金を勘定科目に計上する際の具体例を、ケース別に4つ解説します。

全額返金するケース

解約時、保証金が全額返金される場合では、差入保証金のみを計上します。

事務所の賃貸契約を行うタイミングを想定し、差入保証金の金額が5,000,000円だった場合の仕訳の方法は以下のとおりです。

借方貸方
差入保証金5,000,000円現金5,000,000円

現金で返金されるケース

賃貸契約の解約に際し、差入保証金が現金で返金となるケースもよくあります。

事務所の賃貸借契約を解約し、5,000,000円の差入保証金が現金で返還されるケースを想定した場合、仕訳の方法は以下のとおりです。

借方貸方
差入保証金5,000,000円現金5,000,000円

長期前払費用を支払うケース

差入保証金の全額もしくは一部を長期前払費用として支払うケースもあります。

ここでは5,000,000円の差入保証金を、普通預金で振り込むケースを想定してみましょう。

差入保証金のうち20%に該当する1,000,000円が償却されるため、返金がなく、契約が5年であれば以下のように記載します。

借方貸方
差入保証金4,000,000円普通預金5,000,000円
長期前払費用1,000,000円  

また1,000,000円を5年間で償却する際に、次のように記載しましょう。

借方貸方
長期前払費用償却200,000円長期前払費用200,000円

1,000,000円の長期前払費用に対して、200,000円の長期前払費用償却を5年繰り返すことで、返金のない分を余すことなく帳簿へ記載できます。

差入保証金を解約するケース

例えば賃貸を退去するなどで、差入保証金が解約となるケースがあります。この場合、原状回復費用などで差入保証金が減額されたうえで、返金になることも多いでしょう。

ここでは、賃貸を退去する際に、原状回復費用が発生するケースを想定します。保証金1,000,000円に対して、修繕費100,000円がかかった場合には以下のように記載しましょう。

借方貸方
現金900,000円差入保証金1,000,000円
修繕費100,000円  

なお修繕の金額が決まっていないケースでは、保証金のみを計上します。これは支払手数料や長期前払費用で処理が終わっているためです。記入の方法は以下のとおりとなります。

借方貸方
現金900,000円差入保証金1,000,000円

受入保証金を勘定科目に計上する具体例

不動産賃貸業で物件を貸し出す際の会計処理について、具体例を見ていきましょう。

一般的には、敷金を受け取った時点で「預り金」として計上し、契約終了時(退去時)には、原状回復費用を差し引いた後に残額を返金する形で処理します。

返還する金額がわからない場合

契約時点では具体的な費用が未確定なため、受け取った金額は全額「預り金」として処理しましょう。

【契約時】

事務所を貸し出し、敷金6万円を受け取った例を挙げます。

借方貸方
現金60,000円預り金60,000円

敷金6万円を全額返金した場合は、以下のように仕訳します。

【解約時】

借方貸方
預り金60,000円現金60,000円

次に、敷金6万円から原状回復費用4万円を差し引いた金額を返還した場合を見ていきましょう。

【原状回復費用の支払時】

借方貸方
立替金40,000円現金40,000円

【敷金の返還時】

借方貸方
預り金60,000円立替金40,000円
  現金20,000円

返還しない金額があらかじめ決まっている場合

敷金の中で、契約時に返還しないことが確定している金額については、その分を売上として契約時に処理してください。また、返還しない分の敷金は契約時にすでに収益として計上しているため、返金する部分だけを解約時に処理しましょう。

事務所を貸し出し、敷金6万円を受け取った場合は以下のように仕訳します。敷金のうち4万円は返還しないことになっているとします。

【契約時】

借方貸方
現金60,000円預り金20,000円
  売上40,000円

【解約時】

借方貸方
預り金20,000円現金20,000円

保証金の消費税の取り扱い

差入保証金は課税対象外取引となるため、消費税は課税されません。敷金、権利金、営業保証金、ゴルフ会員権保証金などはすべて課税対象外です。

ただし事業用の場合、保証金は非課税でも、礼金に消費税がかかるため注意しましょう。なお、差入保証金ではありませんが、仲介料にも消費税が加算されます。

受入保証金についても、返還が前提であれば消費税は課税されません。しかし、一部でも返還しない場合は、その金額に対し消費税が課されます。

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差入保証金は、会計上「投資その他の資産」として資産計上されます。受入保証金は負債として「預り金」で仕訳し、返還時に減額しましょう。消費税は返還が前提なら非課税ですが、一部でも返還しない場合は課税対象となるため注意が必要です。

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