保証料(信用保証料や賃貸保証料)の勘定科目は?仕訳例と借入時の経理処理
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-11-19
経理や会計の担当者、経営者が保証料と聞けば、信用保証料や賃貸保証料を思い浮かべるのではないでしょうか。信用保証料は、融資を受ける際に発生する保証料です。賃貸保証料は、事務所やテナントを借りる際に発生します。それぞれに勘定科目が複数あり、その勘定科目にも特徴があるため、仕訳で悩む人も少なくありません。
この記事では、それぞれの概要や勘定科目などを解説します。仕訳例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
保証料(信用保証料や賃貸保証料)の勘定科目は?仕訳例と借入時の経理処理
信用保証料の勘定科目
代表的な保証料の1つである信用保証料は、信用保証協会から信用保証を受けるために支払う手数料のことです。信用保証料を支払うことで、連帯保証人や担保の必要がなくなります。ここでは、その信用保証料の勘定科目について解説します。
支払手数料
支払手数料とは、商品やサービスそのものではなく、取引に付随して発生する経費を指します。銀行の振込手数料に見られるように、多くの場合、支払手数料は少額です。
信用保証料の場合は、当期期間内に保証期間が終了する場合の勘定科目として使います。支払手数料を勘定科目とする代表的な融資は、短期融資やつなぎ融資などです。支払手数料を勘定科目とする場合は、保証料を一括で計上します。
前払費用
信用保証料の勘定科目には、前払費用を使うケースも少なくありません。前払費用は、継続的にサービスを受ける際に、前払いした費用を計上する勘定科目です。信用保証料では、短期融資や運転資金の融資などが該当します。例えば、翌年1年分の信用保証料を前払いした場合は、前払費用で仕訳することが一般的です。
長期前払費用
長期前払費用は、1年を超えて前払いした場合に費用化する勘定科目です。信用保証料では、設備資金融資や運転資金融資などが該当します。これらの融資は据置期間を含めて、返済期間が7年を超えることがほとんどです。したがって、信用保証料も7年分以上を前払いします。この場合は、信用保証料長期前払費用として計上することが一般的です。
信用保証料の仕訳例
信用保証料の具体的な仕訳例は次のようになります。
支払手数料
当期間内に返済が終わる短期融資で、信用保証料が6万円だった場合。
借方 | 貸方 | ||
支払手数料 | 60,000円 | 普通預金 | 60,000円 |
前払費用
短期融資で返済期間が18か月、信用保証料が18万円だった場合(当期期間内は6か月)。
借方 | 貸方 | ||
支払手数料 | 60,000円 | 普通預金 | 180,000円 |
前払費用 | 120,000円 |
長期前払費用
運転資金融資で返済期間が60か月、信用保証料が60万円だった場合(当期期間内は6か月)。
借方 | 貸方 | ||
支払手数料 | 60,000円 | 普通預金 | 600,000円 |
前払費用 | 120,000円 | ||
長期前払費用 | 420,000円 |
賃貸保証料とは
賃貸保証料とは、物件を借りる際に賃貸保証会社へ支払う費用です。万が一、家賃が支払えない場合に備えて、賃貸保証会社と契約します。自主的に契約する場合と賃貸契約時の条件により契約する場合があるため、重複しないように注意しましょう。賃貸保証契約をすれば、賃貸保証会社が未払い家賃を立て替えてくれます。
ただし、故意に家賃を未払にすることは禁じられているため、賃貸契約の基本的なルールは守らなければなりません。家賃の支払が滞った場合でも、貸主とのトラブルがなく、物件利用を継続できることがメリットです。また、事業用の物件を借りた場合の賃貸保証料は、事業に関係する経費とみなされます。そのため、適切な会計処理が必要です。
賃貸保証料の勘定科目
賃貸保証料の勘定科目は、支払手数料と長期前払費用です。ここでは、それぞれについて解説します。
支払手数料
賃貸保証料は賃貸保証会社との契約のために要した手数料であるため、勘定科目に支払手数料を適用することが一般的です。勘定科目を支払手数料とする場合は、金額が20万円未満なら少額繰越資産を適用し、支払時に一括で経費に計上します。勘定科目を保証料として、会計処理をするケースも少なくありません。
支払手数料を勘定科目とするケースとしては、賃貸保証料のほか、商品やサービスに付随して発生した手数料があげられます。また、専門家への報酬を支払った場合などにも適用できる勘定科目です。
長期前払費用
長期前払費用は、次期以降にかかる費用の前払い分であり、決算日を基準に1年を超えて費用となる分の金額に用いる勘定科目です。賃貸保証料の勘定科目として、適用する機会も少なくありません。また、賃貸保証料が20万円以上の場合でも、繰延資産として勘定科目を長期前払費用とします。
賃貸保証料は、資産計上し契約期間で減価償却することが一般的です。なお、長期前払費用を決算時に減価償却する際の勘定科目は、長期前払費用償却となります。長期前払費用償却は、支出した費用の効果が将来に及ぶ場合に、償却期間の各年度に配分して経費計上するための勘定科目です。やや難解な部分があるため、事項の賃貸保証料の仕訳例と照らし合わせることで、わかりやすくなります。
賃貸保証料の仕訳例
賃貸保証料の具体的な仕訳例は次のようになります。
支払手数料
テナントを借りる際に、賃貸保証会社へ2年分で12万円を支払った場合
借方 | 貸方 | ||
支払手数料 | 120,000円 | 現金 | 120,000円 |
長期前払費用
事務所を借りる際に、賃貸保証会社へ2年分で48万円支払った場合
借方 | 貸方 | ||
長期前払費用 | 480,000円 | 現金 | 480,000円 |
決算時の仕訳(決算までの経過月数を6か月とした場合で1か月あたりは2万円)
借方 | 貸方 | ||
長期前払費用償却 | 120,000円 | 長期前払費用 | 120,000円 |
賃貸保証料を会計処理する際の注意点
賃貸保証料を会計処理する際には、いくつかの事項に注意が必要です。ここでは、自宅兼事務所と消費税に関する注意点を解説します。
自宅兼事務所の場合は「家事按分」の経費処理を行う
自宅の1部を事務所として使っている場合は、個人事業主や中小零細企業でよくみられるケースです。個人事業主などが自宅兼事務所の賃貸契約を結ぶために、賃貸保証料を支払うケースもあります。その場合は、居住用部分は経費から差し引かなければなりません。
このような事例を家事按分といいます。家事按分は居住部分と事業の支出が混在している場合に、居住使用分と事業使用分に振り分ける作業です。支払額を居住部分と事業部分に按分し、事業部分のみ経費として計上します。
家事按分の方法に明確な基準はありませんが、明確な根拠によって按分しなければなりません。事業で使用した面積を基準にしたり、事業の時間を基準に按分したりすることが一般的です。
賃貸保証料の消費税は種別によって課税/非課税が異なる
賃貸保証料に関する消費税の課税区分は、物件の用途や費用の性質によって異なります。
まず、事業用物件においては、保証金・権利金・敷金・更新料のうち、契約終了後に返還されない費用は「対価性がある取引」として扱われ、消費税が課税されます。一方で、返還される費用は単なる預かり金として非課税扱いとなります。
参考:国税庁 消費税の課税対象
また、信用保証料に関しては、消費税法上の非課税取引として分類されており、消費税は発生しません。これにより、事業用物件では返還の有無や費用の種類に応じて課税区分が変わる点が特徴です。
参考:国税庁 非課税となる取引
一方、住居用物件では、保証金・権利金・敷金・更新料が返還されない場合であっても、住宅の賃貸借契約に基づく費用として非課税扱いとなります。住宅関連費用は消費税法上で非課税とされているため、返還の有無にかかわらず課税されることはありません。
このように、物件の用途や返還の有無によって、賃貸保証料の課税可否が異なる点に留意する必要があります。本章で一般的な見解を述べましたが、事業用物件に関する課税・非課税の判断は非常に複雑なので、正確な情報は税理士などに相談して得ることを推奨します。
まとめ
保証料の主なものは信用保証料と賃貸保証料です。それぞれに勘定科目が複数あり、保証期間などによって使い分けます。同じ勘定科目であっても、適用する要因に違いがあるため、混同しないように注意が必要です。また、保証料の勘定科目によって仕訳方法も異なるため、仕訳例を参考にして間違えがないようにしましょう。
バクラク請求書発行なら経理の人に寄り添いデジタル化を促進できます。AIを使用して請求書を自動で読み取り、過去の仕訳データを学習するため自動入力補完も可能です。また、振込データも自動作成してくれます。業務負担軽減のために、ぜひご活用ください。