不渡手形とは?「不渡り(回収不能)」が起きた場合の仕訳例や対策をわかりやすく解説

不渡手形とは、金融機関によって支払が拒否された手形のことです。この記事では、不渡手形の種類や、不渡手形を出した場合の対処法について解説します。不渡手形の仕訳や、不渡手形を出さないための注意点なども解説するので、参考にしてください。

経理の担当経験が浅い方向けの「虎の巻」

経理担当に役立つエクセルの関数・ショートカット集と、多用される勘定科目の一覧を収録しています。ChatGPTで活用できるプロンプト集も付録。

不渡手形とは?「不渡り(回収不能)」が起きた場合の仕訳例や対策をわかりやすく解説

不渡手形とは?

不渡手形とは、金融機関が支払を拒否した手形を指します。手形交換所を経由して支払呈示された手形は、本来、振出人の当座預金から手形金額が引き落とされます。しかし、当座預金の残高不足など、何らかの理由で金融機関が支払を行わない場合も珍しくありません。これは手形の不渡りと呼ばれる状況であり、支払が行われなかった手形は不渡手形となります。

不渡手形の種類

不渡手形にはいくつか種類があります。以下は、3つの不渡手形の種類と、それぞれの詳細です。

0号不渡り

振出人の信用とは関係のない理由で発生する不渡りを「0号不渡り」と呼びます。「0号不渡り」に該当する原因は以下の通りです。

  • 形式上の不備がある場合 
  • 呈示期間を過ぎている場合 
  • 決済日前に換金しようとする場合  

名称に「不渡り」と含まれているものの、実際には銀行取引において不渡りとして扱われることはありません。また、金融機関による不渡届の作成や銀行取引の停止処分などの問題も発生しません。

1号不渡り

一般的に「不渡り」と呼ばれるものは、「1号不渡り」のことを指します。「1号不渡り」に該当する原因として挙げられるのは、以下の通りです。

  • 口座残高が不足している場合 
  • 手形上の支払銀行と会社間で取引がない場合  

なお、6か月以内に2回「1号不渡り」を起こすと、銀行取引停止処分となり、当座預金を開設できなくなります。

2号不渡り

「不渡り」のなかでも、「0号不渡り」や「1号不渡り」に該当しないものを指します。以下は、「2号不渡り」に該当する原因として挙げられるケースです。

  • 手形が盗まれたもの
  • 手形が詐欺により振り出されたもの
  • 手形が偽造または変造されたもの
  • 納品物に不備があり、契約不履行とされたもの

不渡届は銀行によって作成されますが、信用状況が原因ではないため、異議申し立てが可能です。また、場合によっては処分の猶予や免除を申請することができます。

不渡手形の仕訳

不渡手形の仕訳は、状況によって適切な対応が異なります。代表的な状況と、それぞれの詳細は以下の通りです。

不渡りが発生した場合

保有している約束手形が不渡りとなった場合、その手続きにかかった費用も含めて、全額を振出人に請求することが可能です。以下は、A社が振り出し、自社が保有している約束手形5万円が不渡りとなった場合の仕訳を記載します。

借方金額貸方金額
不渡手形55,000受取手形50,000
現金5,000

上記は、約束手形のみならず、支払拒絶証明作成の費用も含めて仕訳している表です。

不渡手形を回収できない場合

不渡手形を回収できない状況は、いわゆる貸し倒れになります。A社が破産宣告を受けたため、不渡手形に関する債権を放棄した場合の仕訳は以下の通りです。

借方金額貸方金額
貸倒損失55,000不渡手形55,000

不渡手形を回収できない場合の勘定科目は、貸倒損を用います。

不渡手形を回収できた場合

不渡手形が発生したものの、不渡手形の代金を回収できた場合の仕訳もあります。自社が保有するA社振り出しの約束手形5万円と、延滞利息500円も合わせて現金で受け取った場合の仕訳は以下の通りです。

借方金額貸方金額
現金55,500不渡手形55,000
受取利息500

不渡手形の代金を回収したため勘定科目の現金が増え、勘定科目の不渡手形は減少します。延滞利息も受け取っているため、別途で勘定科目の受取利息を使って仕訳をします。

不渡りによる影響

不渡りによる影響は多岐にわたるため、注意が必要です。ここからは、不渡りによる具体的な影響と、それぞれの詳細について解説します。

銀行取引が停止させられる

6か月以内に2回の不渡りを出すと、振出人は銀行取引停止処分を受けます。銀行取引停止処分を受けた日から2年間にわたり、同一の手形交換所に加盟している金融機関との取引ができません。また、当座勘定取引と貸出取引が停止されるため、事業運営に必要な取引も実質的に不可能となります。

融資金の一括返済義務が生じる

銀行取引停止処分となると、融資金の一括返済義務が生じる可能性があります。該当するのは、金融機関から初めて融資を受けた際に交わした銀行取引約定書に、取引停止処分が期限の利益の喪失事由として記載されている場合です。

金融機関からの融資が難しくなる

不渡りを起こすと、金融機関から新規の融資や追加の融資を受けることがほとんど不可能となります。これは、銀行が不渡届を作成し、全国の金融機関に不渡りに関する情報を共有するためです。この処置は、返済能力がない状態で他行から融資を受けることを防ぐために行われます。そのため、すでに取引のある金融機関だけでなく、新たな金融機関との取引も望めません。

取引先からの信用が低下する

不渡りが発生すると、取引先に資金を渡せなくなります。そのため、取引先からの信用が低下します。また、不渡りが発生したことが外部に伝わると、他の取引先から警戒される可能性も少なくありません。取引が停止されたり、約束手形での取引が難しくなったりします。

不渡手形を出した場合の対処法

不渡手形を出した場合は、適切に対処することが大切です。以下は、具体的な対処法とそれぞれの詳細です。

手形の更改を実施する

約束手形の支払期日に決済できず、手形の支払を延ばしてもらうことを「手形の更改」と呼びます。発行済み手形の支払期日を変更し、新しい手形として再度振り出します。手形保有者の同意を得ることで、手形の更改を実施することが可能です。

金融機関に過振りを依頼する

過振りとは、約束手形の不渡りを回避するための手段の1つです。金融機関が当座預金の残高以上の支払を認め、その超過分の金額を立て替えます。定期預金や小切手があるほか、金融機関からの信用がないと実現することは難しくなります。

売掛金を資金化する

売掛金を売却すれば、資金繰りが改善され、不渡りを回避できる可能性があります。支払期日までに速やかに当座預金残高の不足分を確保したい場合、ファクタリングの利用が推奨されます。ファクタリングとは、売掛金をファクタリング会社へ譲渡し、売掛金から手数料を差し引いた資金を調達する手法です。

不渡手形を出さないための注意点

不渡手形を出さないためには、いくつか注意するべき点があります。具体的な注意点とそれぞれの詳細は、以下の通りです。

取引先の与信管理を行う

不渡手形を出さないためには、取引先の信頼性評価とリスク評価を強化することが推奨されます。これは、円滑な資金繰りや安定した資金決済を実現できるからです。信頼性の低い取引先を減らすことで、不渡りが発生するリスクを抑えられます。

資金繰りに余裕を持たせる

会社のキャッシュフローが赤字だと、不渡りが発生する可能性があります。そのため、資金繰りに余裕を持たせることが重要です。将来の支払や収入を見積もり、運転資金が尽きないように管理することが推奨されます。

約束手形が廃止に向かっている理由

中小企業庁や全国銀行協会が主導となって、約束手形の廃止に向けた取り組みが進んでいます。以下は、約束手形が廃止に向かっている理由とそれぞれの詳細です。

参考:一般社団法人 全国銀行協会「手形・小切手の廃止/電子化について」

参考:中小企業庁「第5回 約束手形に関する論点について」

受取側の資金繰りが悪化しやすいため

約束手形は、現金決済よりも支払までの期間を延ばすことが可能です。しかし、受取人側は現金化するまでに平均して100日かかるため、現金が入らない状態が続きます。また、利息や割引料などを受取人が負担するケースも多く、不渡りになるリスクも発生します。受取人にとって約束手形でのやり取りが望ましくないことが、約束手形が廃止される理由です。

決済手段を電子化するため

約束手形は紙の有価証券ですが、デジタル化やDXが進む昨今では、利便性の悪い決済手段となっています。そのため、約束手形を廃止して現金振込や電子記録債権といった、決済手段の電子化を促しています。

まとめ

現在でも、ビジネスシーンで手形のやり取りを行う機会は少なくありません。しかし、受取側の資金繰りが悪化しやすい点や、決済手段の電子化を進める背景から、約束手形の廃止に向けた取り組みが進んでいます。

バクラク請求書発行は支払業務を自動化し、迅速かつ正確に業務を行うことが可能です。また、インボイス制度や電子帳簿保存法にも簡単に対応できることも利点です。会社の経理担当者および情報システム管理者で経理業務の効率化を目指している場合は、ぜひバクラク請求書発行の導入をご検討ください。

請求書・見積書・納品書を簡単作成「バクラク請求書発行」

請求書・見積書・納品書等あらゆる帳票の作成、稟議、送付、保存の一連の業務をデジタル化。基幹システムから出力するCSVファイルを瞬時に変換し、様々な帳票のレイアウトを柔軟に作成・編集可能です。もちろんインボイス制度と電子帳簿保存法にも完全対応しているため、負担の大きなバックオフィスの業務を一律で効率化する機能を提供します。