貸倒引当金とは?仕訳方法や貸倒損失の違い、仕訳例、勘定科目など解説

貸倒引当金は、将来発生する可能性のある貸倒れに備えて、事前に計上する負債勘定です。ただし貸倒引当金に関連する勘定科目は複数あり、どのように仕訳を行うかを迷うことは多い部分でしょう。

この記事では、貸倒引当金の仕訳方法などについて詳しく解説します。貸倒引当金の計算方法や、具体的な仕訳例にも触れるので、参考にしてください。

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貸倒引当金とは?仕訳方法や貸倒損失の違い、仕訳例、勘定科目など解説

貸倒引当金とは

貸倒引当金とは負債勘定の一つで、将来的な貸し倒れリスクを予想してあらかじめ帳簿へ記載しておくマイナス資産を指します。債権の一部が回収不能になるリスクを見込んで設定されるのが一般的です。

貸倒引当金の計上により、回収の見込みが薄い資金を資産に含まず、実質的な資産評価を反映した財務諸表を作成できます。

貸倒引当金と貸倒損失の違い

貸倒引当金は、将来の貸倒れに備えるために設定される予備的な負債です。これに対して貸倒損失は、実際に貸倒れが発生した際に計上される費用となります。つまり、貸倒引当金は架空の損失ですが、貸倒損失は実際の損失として確定するものです。

貸倒引当金はあらかじめ損失額を想定したうえで計上されていますが、貸倒損失は、貸倒引当金でカバーされなかった分を補うために計上されます。

貸倒引当金の計算方法

貸倒引当金を計算するには、次のような2つの方法があります。

一括評価

一括評価は、債権全体に対して一定の割合で貸倒引当金を設定する方法です。一般的には、売掛金や未収入金など広範な債権に対して適用されます。

計算に用いる貸倒率をどう定めるかの定めはありません。例えば、過去の実績を基に貸倒率を算出し、債権に対して貸倒れがどの程度発生するかを予想する方法があるでしょう。

個別評価

個別評価は、特定の債権について個別に貸倒れの可能性を評価し、引当金を設定する方法です。例えば、財務状況が悪化している特定の取引先に対して、回収不能のリスクを考慮して評価を行う、といった方法がとられます。

個別評価を用いることによって、可能な限り正確な貸倒引当金の設定が可能です。

貸倒引当金の勘定科目

貸倒引当金に関連する勘定科目には、次の3種類があります。それぞれ状況により使い分ける必要があるため、違いを把握しておきましょう。

貸倒損失

貸倒損失は、予期せぬ債権の回収不能が確定したときに用いる勘定科目です。取引先の財政悪化や倒産により、売掛金や貸付金が回収不能になった場合、これを「貸倒損失」として処理します。

ただし、税法上の損金計上には、「金銭債権が法的に消滅している」や「担保物を処分しても全額回収できない」などの要件が必要です。正確な状況を確認し、条件を満たしている場合のみ、貸倒損失を用いて損失を計上しましょう。

貸倒引当金繰入

貸倒引当金繰入は、将来の貸倒れに備えて見積もった貸倒金を、実際に引当金として計上し、その一部を当期の費用として繰り入れる勘定科目です。貸倒引当金繰入は決算整理の際に使用されており、「貸倒引当金繰入額」とも呼ばれています。

このとき、売掛金など営業に関する債権は「販売費および一般管理費」、その他の債権は「営業外費用」、高額な債権は「特別損失」に計上されます。

貸倒引当金戻入

貸倒引当金戻入は、貸倒れのリスクが減少し、設定した貸倒引当金が不要になった場合に使用する勘定科目です。債務者の経営状況が改善したなどの理由で、債権が貸し倒れしなかったケースでは、残った引当金を戻す必要があります。

そこで、決算時に前期の引当金が残っている場合に用いる仕訳の方法が、「洗替法」または「差額補充法」です。具体的な仕訳方法については次項で解説します。

貸倒引当金の仕訳方法

貸倒引当金の仕訳方法には、前述のとおり2種類があります。それぞれについて解説します。

差額補充法

差額補充法は、期末ごとに貸倒引当金残高の差額を調整する方法です。

例えば、前期末に計上した引当金が8,000円で、今期末に計上すべき引当金が10,000円の場合、差額2,000円を追加で「貸倒引当金繰入」として計上することで、今期末の貸倒引当金を10,000円へと調整できます。

ただし差額補充法は、実務ではあまり採用されていません。差額補充法を使うと見た目上の営業利益を増やせるのが特徴ですが、その分、正確性が損なわれるという見方もできるためです。

洗替法

洗替法(あらいがえほう)は、前期末の引当金を一旦ゼロに戻し、今期の引当金を新たに計上する方法です。一般的には洗替法が用いられており、法人税申告書にも適しているといえます。差額補充法に比べて、正確性が高いといえるためです。

洗替法では、例えば前期末に計上した引当金が8,000円で、今期末に計上すべき引当金が10,000円の場合、まず8,000円を戻入し、10,000円を新たに計上する、という作業が行われます。

貸倒引当金の仕訳例

貸倒引当金を実際に仕訳する際のやり方を、具体的な仕訳例を交えて解説します。

1. 貸倒引当金繰入の仕訳例

ここでは例として、前期末での貸倒引当金の残高が5万円あり、当期では8万円を貸倒引当金として設定する必要がある場合を考えてみましょう。

「貸倒引当金繰入」のみで仕訳を行う場合、差額となる3万円を当期の費用として繰り入れる必要があります。仕訳の方法は次のとおりです。

仕訳:

借方:貸倒引当金繰入 30,000円

貸方:貸倒引当金 30,000円

この仕訳により、追加の貸倒引当金が設定され、損益計算書に費用として計上されることとなります。

また前期で計上しておいた5万円の貸倒引当金はそのまま計上されたままとなるため、合計で8万円が計上される計算です。

2. 貸倒引当金戻入の仕訳例

前項と同じく、前期末の貸倒引当金の残高が5万円、当期では8万円を設定する場合、「貸倒引当金戻入」の仕訳を使って一度全額を戻入してから、新たに「貸倒引当金繰入」の仕訳を使い、8万円の貸倒引当金を設定することとなります。

詳細な仕訳方法は以下のとおりです。

仕訳:

借方:貸倒引当金 50,000円

貸方:貸倒引当金戻入 50,000円

借方:貸倒引当金繰入 80,000円

貸方:貸倒引当金 80,000円

上記の流れで仕訳を行うことで、まず前期末の5万円を収益に戻し、その後、当期の8万円を新たに貸倒引当金として計上することができます。

3. 貸倒損失が発生した場合の仕訳例

実際に貸倒損失が発生した場合は、「貸倒損失」の仕訳で損失分を計上します。

ここでは例えば、取引先の倒産により、売掛金12万円が全額回収不能となった場合を考えてみましょう。当期に設定された貸倒引当金が8万円であった場合、貸倒引当金8万円と実際の損失12万円の差額である4万円を、「貸倒損失」として処理します。

仕訳:

借方:貸倒引当金 80,000円

貸方:売掛金 120,000円

借方:貸倒損失 40,000円

この仕訳により、貸倒引当金から回収不能な金額を充当し、残りの4万円を貸倒損失として計上することができます。

貸倒引当金の対象になる債権・対象にならない債権

債権のなかには、貸倒引当金の計算対象になるものと、ならないものとがあります。ここではそれぞれの内容を解説します。

貸倒引当金の対象になる債権

貸倒引当金の対象となる債権には、売掛金、受取手形、貸付金、未収入金などがあります。これらの債権に共通しているのは、将来回収不能になるリスクがあることです。「回収不能のリスクがある債権に関して、引当金を設定することでリスクに備える」と考えると良いでしょう。

企業はこれらの債権の回収見込みを評価し、適切な引当金を計上することで、財務状況の健全性を保つ必要があります。

貸倒引当金の対象にならない債権

貸倒引当金の対象とならない債権には、保証金、敷金、手付金、預金の未収入金、未収配当金や前渡金などがあります。

保証金、敷金、手付金、預金の未収入金といったものは、そもそも貸倒れリスクが低いため、引当金を設定する必要がありません。

また、未収配当金や前渡金も、やはり通常であれば回収が確実であり、リスク評価を行わなくても良いものです。したがって同様に、貸倒引当金の設定は行いません。

まとめ

貸倒引当金の仕訳では、貸倒引当金にするとき、貸倒引当金から資金へと戻すとき、また貸倒引当金以上に損失が出てしまったときで、それぞれ別の勘定科目を使います。どういった状況で仕訳を行うかで、的確な勘定科目を選択するよう留意しておきましょう。

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