【経理担当必読】電子帳簿保存法のタイムスタンプとは? 仕組み・役割・注意点を解説

電子帳簿保存法が1998年に制定されてから、紙保管だった文書を電子データで保存できるようになりました。しかし、電子文書を不正なく安全に保存するためには、データの信頼性の担保が必要になります。その役割を担うのが「タイムスタンプ」です。

年々、電子帳簿保存法が緩和され、企業の書類管理業務は徐々に電子帳簿保存法への対応を求められています。2022年から電子帳簿保存法の改正により、電子取引における電子データ保存が義務化されたため、電子文書保管にともなう知識は取得しておくべきでしょう。特に「タイムスタンプ」はしっかりと理解しておきたい項目です。

今回はタイムスタンプの仕組み・役割・費用面などを解説します。

【経理担当必読】電子帳簿保存法のタイムスタンプとは? 仕組み・役割・注意点を解説

タイムスタンプとは

タイムスタンプ刻印時刻に電子文書が存在していたことと、刻印時刻以降に、当該電子文書が改ざんされていないことを証明する技術です。タイムスタンプ刻印時の情報と、刻印時以降の情報を比較し、相違がなければ改ざんされていないと判定できます。

タイムスタンプの役割

タイムスタンプには電子データの現存事実を証明する役割があります。そのためには、「いつ作成したか」という発生起点と、データ作成以降に改ざんがなかったことを明示することが必要です。

存在証明

タイムスタンプが付与された日時に、その時実際にデータが存在していたことの証明のことです。付与された時刻が発生起点となり、「いつ作成したか」が明確になります。

完全性証明

タイムスタンプが付与された日時(発生起点)以降、そのデータが改ざんされていないことの証明のことです。電子データ作成から期間を経て検証した場合に、付与刻印時情報と対象電子データの情報が相違なければ、人の手が加わっていないと言えます。

電子署名だけでもOKなのでは?

電子署名だけでは不十分です。電子署名では「いつ作成したか」という発生地点を特定できません。さらに署名する本人が改ざんできる可能性があり、不正行為の検知も困難です。

また一般的なログでは、対象コンピューターにもとづいて時刻が形成されるため、実際の発生時刻の証明としては不足があります。

電子署名や一般的なログだけでなく、タイムスタンプも導入し「いつ作成したか」の証拠を担保しましょう。

タイムスタンプには存在証明と完全性証明の2つの役割が必要です。また、電子署名だけでは作成起点における証拠性に欠けるため、きちんと証拠を確保するにはタイムスタンプも導入してください。

タイムスタンプの仕組み 

要求

最初のステップは、利用者が第三者の位置づけとなる時刻認証局に、タイムスタンプの作成を依頼します。利用者が時刻認証局に依頼する行為が「要求」です。対象となる電子書類より得られるハッシュ値を、時刻認証局に提出してください。

ハッシュ値とは、ハッシュと呼ばれるアルゴリズムを用いて生成される固定長データのことで、電子文書の情報のようなものです。電子データからハッシュ値の作成ができますが、ハッシュ値から元のデータを再現することはできないことが特徴です。

また、同じハッシュ値となる2つ以上の異なるデータを作成することはほぼ不可能とされているため、信頼性が担保できるデータです。 

発行

次に時刻認証局が、利用者から送られてきたハッシュ値に時刻情報を付与して、タイムスタンプを合成します。そして利用者へ送り返します。この行為が「発行」です。発行されたタイムスタンプが「刻印時間に電子データが存在していた証拠」になるのです。

その後、利用者はタイムスタンプを手元で保管しておきます。

検証

しばらくの時間が経過してから、改ざんをしていない証明を求められることがあります。その際、対象電子文書のハッシュ値と発行にて刻印されたタイムスタンプのハッシュ値に違いがあるか、照合しなければなりません。この作業が「検証」です。

相互のハッシュ値が同じであれば不正はなく、異なっていれば改ざんされていると判定できます。このようにタイムスタンプは、要求・発行・検証の過程で形成されています。発行時のタイムスタンプと、確認時の電子書類のハッシュ値を照らし合わせ、改ざんの有無が確認できる仕組みです。

タイムスタンプの発行方法

発行手順を具体的にお伝えします。

  1. タイムスタンプ対象書類を用意する
  2. 書類をスキャン(もしくは撮影)して画像を保存する
  3. 上記画像をタイムスタンプの付与が可能なシステムにアップロードする
  4. 時刻認証局からタイムスタンプが付与される

時刻認証局は信頼ある第三者として国に認定されている事業者です。その認定事業者が発行することで、タイムスタンプの信頼性が担保されています。

また合わせて、スキャナの保存要件も把握しておくと良いでしょう。

タイムスタンプ付与の流れ

付与における詳細手順を続けて紹介します。

  1. 時刻認証局にタイムスタンプの発行を依頼する
  2. 保存したい電子データのハッシュ値を時刻認証局へ送信する
  3. 時刻認証局がハッシュ値に時刻情報を付与し、証明書を発行する

時刻認証局から発行された証明書は「タイムスタンプトークン」と呼びます。利用者側で不正していないことを証明しなければならない場合は、まず時刻認証局から、タイムスタンプトークンを開けるための鍵を受け取りましょう。

そして、タイムスタンプトークンとハッシュ値を検証してください。

タイムスタンプの付与が必要な書類一覧

付与において必要な書類を一覧で紹介します。

・資金や物の動きに関連する書類のうち、とくに重要なもの
 契約書・領収書など

・資金や物の動きに関連する書類
 預かり証・借用証書・預金通帳・小切手・約束手形・有価証券受渡計算書・社債申込書・契約申込書・
 請求書・納品書・送り状など

・資金や物の動きに関連しない書類
 検収書・入庫報告書・貨物受領書・見積書・注文書・契約の申込書など

主に取引関係における書類が対象と言えるでしょう。

タイムスタンプ付与時の注意点

付与する際に気をつけるべき点があるのはご存じでしょうか。ここでは注意すべきポイントについて解説します。
※電子帳簿保存法の改正によってルールが変更になっているため、改正後の注意点を紹介します。

タイムスタンプ発行は最長2ヶ月と概ね7営業日以内に実施する

領収書や請求書等の対象書類を電子化する場合、最長2ヶ月と概ね7営業日以内に発行しないといけません。しかし、訂正・削除した事実や内容を確認できるシステム(クラウドなど)に、スキャンしたデータを上記期間内に保存した場合は、タイムスタンプの付与がいらなくなりました。

ちなみに、これらは2022年1月より改正された内容になります。タイムスタンプ発行期間に制限があることに注意しましょう。

<補足>

【旧】書類スキャン担当者と担当の監督者を設定する

領収書などの電子書類をスキャンする人と、それらの行為を監督する人を、各々決めておく必要があります。

【旧】1年に1回以上、担当者以外が検査を実施する

対象書類の受け取り、タイムスタンプの付与、承認までの過程では、必ず2人以上で行わなければなりません。複数人の作業により、相互けん制が働きます。加えて1年に1回以上は、担当以外が定期的に検査を実施してください。

タイムスタンプの費用

実際、タイムスタンプを導入する場合には費用面も気になるのではないでしょうか。ここでは気にかけるべきポイントについてお伝えします。費用は大きく初期費用、月々の利用料に分けられます。初期費用は、主にアカウント発行やシステム構築にかかる費用になります。

アカウント発行には1アカウント数千円から1万円前後、システム導入費用は数10万円から30万円程度かかる場合があります。もちろん、自社のシステム構築内容や依頼する業者によって、導入費用は変わってきます。

月々の利用料については従量制と定額制があります。

従量制はタイムスタンプの上限発行回数に応じて月々の基本料金が定められており、選択したプランの費用が月々発生します。1ヶ月ごとの利用数を考慮した料金設定ができるため、利用数が少ない場合は従量制がおすすめです。

定額制については、基本料金は一定で初期のみかかります。利用数に依存しない料金設定となっているため、利用数が多い場合は、定額制の方が合っているかもしれません。

月々の利用料はオープン価格が多く、提供する業者によってサービス内容や料金体系は異なります。不明確な点があれば提案業者にきちんと確認しましょう。また、タイムスタンプ機能が付属された外部サービスを導入すれば、タイムスタンプを効率よく利用できます。

外部サービスは、電子署名/電子契約サービス・保管文書・会計ソフト/経費精算システムなど様々です。業務改善を目的にシステムを導入するとともに、タイムスタンプ機能も活用できれば、非常に効率が良いでしょう。

業務効率化も図れ、サービスによっては電子帳簿保存法にも対応でき、手軽にタイムスタンプを利用できる方法です。発生する費用については、業者によって提供サービスや料金が変わってきます。提案内容をきちんと把握し、自社に適する料金形態を選ぶことが大切です。

まとめ

タイムスタンプについての役割・仕組み・注意点など、押さえるべきポイントがご理解いただけたのではないでしょうか。タイムスタンプには存在証明と完全性証明の2つの役割があり、要求・発行・検証の3つの過程で構成されています。

またタイムスタンプ付与時には、注意すべき項目があることも忘れてはなりません。タイムスタンプを利用する際は自社の性質を考慮して、サービス・料金体系を選択しましょう。

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畠山謙人税理士

監修 畠山謙人

2010年に公認会計士試験合格後、約10年間大手監査法人や事業会社で主に上場企業での財務経理業務に従事。現在は畠山謙人公認会計士事務所の代表及び税理士法人赤坂共同事務所のパートナーとして、税務顧問、スタートアップ支援、財務アドバイザリー等を行う。