年末調整とは?確定申告との違いや実施期間、必要書類の書き方
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-05-19
- この記事の3つのポイント
- 年末調整は支払うべき税金を調整する納税手続きの一つである
- 年末調整は事業者が行い、各種控除を申告できる
- 年末調整を怠ると還付や控除を受けられず、従業員が個人で確定申告を行わなければいけない
年末調整とは会社が行う納税手続きの一つで、毎年12月頃に行わなければいけません。年末調整の申告をしない場合は、従業員の税負担が増えてしまいます。
そこで本記事では、年末調整について紹介します。確定申告との違いや必要書類の書き方まで解説しますので、ぜひ参考にしてください。
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年末調整とは?確定申告との違いや実施期間、必要書類の書き方
年末調整とは?
年末調整とは、給与や賞与から差し引かれた税金を調整する納税手続きの一つです。
会社は源泉徴収によって、従業員の給与のうち毎月一定額を所得税として支払います。しかし、源泉徴収で差し引かれる所得税はあくまで見積額のため、年間の所得が確定する年末に「正確な所得税額」を算出し、納税額を調整する手続きを行わなければいけません。
正確な金額を計算し直した結果、所得税を納め過ぎていた場合は還付され、納税額に不足があった場合は追加で徴収されます。
年末調整の対象は原則「すべての従業員」ですが、年収2,000万円を超える場合は対象外となるため、年末調整ではなく確定申告が必要です。
以下の記事では、源泉徴収税について詳しく紹介しています。対象となる所得や計算方法も解説しているので、気になる方はぜひ読んでみてください。
年末調整と確定申告の違い
年末調整と混同しやすい言葉に「確定申告」があります。いずれも税金に関わる重要な手続きですが「誰が手続きを行うのか」という点が異なります。
項目 | 年末調整 | 確定申告 | ||
実施者 | 会社 | 個人 | ||
対象者 | 給与所得者 |
| ||
目的 | 源泉徴収した所得税の過不足を調整するため | 所得税額の確定と、徴収または還付を受けるため | ||
時期 | 毎年1月10日まで (昨年11月頃より作業) | 毎年2月16日~3月15日 | ||
受けられる控除 |
| 年末調整の控除に加えて
|
自営業やフリーランスなど、給与取得以外で収入を得ている人は確定申告の対象です。
確定申告の目的は、1年間の所得税額を確定することと、徴収または還付を受けることです。会社勤めであっても、年収2,000万円以上や副業収入が年20万円を超える場合は、確定申告をしなければいけません。
残業時間の概要や計算方法は、以下の記事でも詳しく解説しています。
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年末調整の対象者
年末調整の対象者は原則として、企業に所属し給与所得を得ている以下の人です。
- 該当年の1月1日~12月31日まで働いた人
- 途中入社で年末(12月31日)まで働いた人
また以下に該当する場合は、年の途中で退職後、再就職をしなくても年末調整の対象者となります。
- 海外支店に転勤するなどの理由から年途中で非居住者に該当した人
- 死亡によって退職した人
- 著しい心身の障害のために退職した人(退職後に再就職をし給与を受け取る見込みのある人は除く)
- 12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人
- パートタイマー勤務を退職した場合かつ本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下の人
※掲載している情報は、2025年4月時点のものです。情報は変更される可能性があるためご注意ください。
参考:国税庁「年末調整の対象となる人」
年末調整の対象者は雇用形態を問いません。正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員なども対象です。
一方、個人事業主や退職後に再就職をしない人、年収2,000万円を超える会社員や副業収入や年20万円以上の人は年末調整の対象外になるため確定申告が必要です。
年末調整の期間はいつからいつまで?
年末調整は、該当年11月から翌年1月下旬の期間に行われるのが一般的で、主に以下のスケジュールで進めます。
- 11月頃:従業員による申告書類の提出
- 12月頃:会社による年末調整の計算および源泉徴収票の作成
- 1月頃:各種書類(法定調書合計表・給与支払い報告書等)の作成および提出
毎年10月〜11月頃に従業員へ年末調整書類が配布されます。従業員は会社が提示する期日までに書類に必要事項を記入し、各種控除証明書等を添付して提出します。
12月頃には、従業員が提出した年末調整書類を基に正確な所得税額を計算し、源泉徴収税額との過不足額を算出しなければなりません。その後、会社が翌年1月末までに年末調整に関する書類を税務署または従業員が住む市区町村に提出します。
年末調整に必要な書類と書き方のポイント
年末調整には従業員が提出すべき書類が複数あります。聞きなれない書類もあるため、年末調整書類の書き方に悩む方へ、以下でそれぞれの概要と書き方をみていきましょう。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
年末調整を受けるためには「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要です。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」とは、給与所得のある者が扶養控除を申告するために必要な書類のことを指します。
配偶者控除や扶養控除、障害者控除などの申告をするほか、住民税に関わる扶養控除の手続きを行います。

出典:国税庁「各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)」
最上部の切り離された四角枠がベースとなる基本的な記入部分です。扶養者がいない場合は、この四角の枠内への記入のみで問題ありません。扶養者がいる場合は、下欄にそれぞれ記入します。
個人番号(マイナンバー)の記載については、2016年から義務化されているものの、勤務先によって扱い方が異なるため、不明な場合は担当者に確認しましょう。
給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書
「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」は、以下の控除を受ける際に必要な書類です。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 所得金額調整控除
基礎控除とは、納税者本人の合計所得金額に応じて、総所得金額から差し引くことができる控除です。基礎控除は合計所得金額が2,500万円以下の納税者が対象のため、ほとんどの人が提出しなければいけません。

出典:国税庁「各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)」
2020年度より「給与所得者の配偶者控除等申告書」「給与所得者の基礎控除申告書」「所得金額調整控除申告書」が統合され、1枚の様式に簡素化されました。
最上部の四角枠には、勤務先や給与取得者の情報を記載します。「給与所得」の欄には当年の給与所得額を記入しますが、従業員は10月〜11月頃に記載するため、金額は予想される金額で問題ありません。
当年の給与明細や前年の源泉徴収などを参考にして記載しましょう。なお、副業等で勤務先が複数ある場合には、それぞれの給与額を合計して記載する必要があります。
給与所得者の保険料控除申告書
「給与所得者の保険料控除申告書」は、健康保険料や厚生年金保険料を除く、保険料の控除を受けるための書類です。生命保険や地震保険、個人年金など、個人的に加入している保険が対象です。

出典:国税庁「各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)」
最上部の四角枠には申告者の情報を記載します。下欄は「生命保険料」「地震保険」「社会保険」「小規模企業共済等掛金」に分かれており、それぞれ必要事項を記入して申告します。
社会保険料控除と小規模企業共済等掛金控除は、支払額と控除額が同額のためそのままの金額を記載しましょう。ただし、生命保険料控除と地震保険料控除には上限額があるため、申告書に記載されている計算式に当てはめて計算する必要があります。
生命保険料控除の欄は「一般の生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3つの欄が設置されています。また、生命保険の控除額の計算方法は「新制度」か「旧制度」かで異なるため、間違えないよう注意しましょう。
契約内容や金額等は、毎年10月頃に保険会社から届く「保険料控除証明書」を参考に記載し、証明書を添付のうえ提出してください。
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書
「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書」は、住宅ローン控除を申告するための書類です。
住宅ローンを組み、新築・中古のマイホームを購入していたり、特定の増改築を行ったりして、所定の条件を満たす場合に控除を受けられます。住宅ローン控除を受けられるのは2年目以降であり、初年度は確定申告を行わなければいけません。

出典:国税庁「各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)」
「新築、購入及び増改築等に係る住宅借入金等の年末残高」の欄には、当年12月末日現在の住宅ローンの残高を記入します。2カ所以上から借入がある場合は、合算した金額を記入しましょう。
当年末の残高を記載する際は、金融機関から発行される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」の金額と差異がないよう注意してください。
初年度に確定申告を行うと、税務署から申告書と「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」が郵送されます。
年末調整時には、上記と年末残高等証明書の計3点を提出しましょう。
年末調整で受けられる控除
年末調整で受けられる控除は、以下のとおりです。
控除項目 | 対象者 |
基礎控除 | 原則すべての人 |
社会保険料控除 | 社会保険料の支払いがある人 |
配偶者控除 (配偶者特別控除) | 控除対象の配偶者がいる人 ※配偶者特別控除は配偶者の給与で控除額が変動する |
扶養控除 | 控除対象の扶養親族がいる人 |
障害者控除 | 納税者本人または同一生計配偶者、または扶養親族が所得税法上の障害者や特別障害者に該当する人 |
生命保険料控除 | 個人的に加入している生命保険、介護医療保険、個人年金がある人 |
地震保険料控除 | 地震保険料または旧長期損害保険料の支払いがある人 |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済の掛金等の支払いがある人 |
勤労学生控除 | 一定以下の給与所得がある学生 |
寡婦控除 | 寡婦かつ所得額が500万円以下の人 |
ひとり親控除 | ひとり親かつ所得額が500万円以下の人 |
住宅借入金等特別控除 (2年目以降) | 住宅ローンを組み、かつ一定条件を満たしている人 |
控除を受けることで課税所得を減らし、所得税の負担を軽減できます。
以下の記事では、所得税の計算方法を詳しく解説しています。税率や控除についても紹介しているので、気になる方はぜひ一読ください。
年末調整の申告書を提出しないとどうなる?
年末調整を行わないと、以下のデメリットが生じます。
- 所得税の過払い分が還付されない
- 各種控除が受けられない
- 翌年の住民税額が高くなる
- 従業員本人が確定申告をしなければいけない
年末調整の申告書を提出しない場合は、所得税が確定せず正しく納税できません。所得税を払いすぎていても還付されないだけでなく、控除を受けられないと課税所得額が減らないため、翌年の住民税も高くなります。
年末調整を行わないと、従業員が個人的に確定申告をしなくてはいけません。確定申告の期間も過ぎてしまった場合は、納めすぎた税金を還付してもらう「還付申告」ができますが、いずれにしても手間がかかります。
なお、確定申告や還付申請も行わない場合には、無申告加算税や延滞税がかかるケースもあるため注意が必要です。
年末調整に関わる申告書の作成は難しいものではありません。期限内に提出し、事業者も手続きを正しく行うことで、無駄な手間や時間を削減できます。
年末調整に必要な勤怠管理を正確に行うなら「バクラク勤怠」
年末調整は、従業員の納税に関わる重要な手続きです。毎年10月頃から準備し、期限内に完了させなければいけません。
年末調整は従業員の手間を最小限に抑えられる手続きです。一方で、会社側は申告書の配布準備や書類の作成、計算まで業務負担が大きくなります。税金に関わる手続きのため、入力・計算ミスも許されません。
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