社会保険料の計算方法を解説!毎月の給与と賞与に分けて算出
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-05-19
- この記事の3つのポイント
- 社会保険料とは、健康保険や介護保険をはじめとする5つの制度を支えるための費用である
- 社会保険料の基準となるのは標準報酬月額と標準賞与額で、保険料ごとに計算方式が異なる
- 昇給や降給で標準報酬月額の見直しが必要な点や社会保険料率は定期的に見直される点に注意が必要
社会保険料とは、病気や老後、介護、失業、労災などに備える社会保険制度を支えるために納める保険料です。健康保険料や厚生年金保険料をはじめとする5つを含みます。
本記事では、社会保険料とは何か、計算方法、注意点について解説します。
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社会保険料の計算方法を解説!毎月の給与と賞与に分けて算出
社会保険料とは?
社会保険料とは、病気や老後、介護、失業、労災などに備える「社会保険制度」を支えるための保険料です。一般的に、以下の5つが該当します。
種類 | 概要 |
健康保険料 | 医療費の自己負担を軽減するための保険 |
厚生年金保険料 | 老後の年金や障害年金のための原資 |
介護保険料 | 40歳以上が対象の介護サービスの財源 |
雇用保険料 | 失業手当や育休給付の原資 |
労災保険料 | 業務中のケガ・病気に備える保険 |
このうち健康保険料と厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料は、企業と従業員が折半して負担するものです。その一方で、労災保険料は企業が全額負担します。これらの保険料は、原則として毎月の給与や賞与に応じて計算され、給与から天引きされます。
社会保険料の計算に使用する標準報酬月額・標準賞与額とは?
社会保険料の計算に使われるのが「標準報酬月額」と「標準賞与額」という基準です。これらは、健康保険や厚生年金保険の保険料や給付額を決めるために、給与や賞与を等級に区分したものです。
標準報酬月額は、基本給や通勤手当、残業手当、住宅手当などを含む月収を基に、厚生労働省の定めた表に当てはめて決定されます。たとえば健康保険の場合、5万8千〜139万円の50等級があり、4〜6月に支払われた報酬の平均額を基に決まります。
一方で標準賞与額は、年3回以下の賞与の総額から1,000円未満を切り捨てた額で、健康保険では年間573万円、厚生年金では1回150万円が上限です。なお、雇用保険料と労災保険料は標準報酬を使わず、実際の支給額に保険料率をかけて計算されます。
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毎月の給与から引かれる社会保険料の計算方法
毎月の給与から天引きされる社会保険料は、保険ごとに計算方法が異なります。この章では、健康保険と厚生年金、介護保険、雇用保険、労災保険のそれぞれについて、実際の計算例を交えながら見ていきましょう。
健康保険料
健康保険料は、「標準報酬月額×健康保険料率」で算出され、その金額を企業と従業員で半分ずつ負担します。たとえば、東京都で協会けんぽに加入している従業員の標準報酬月額が28万円だった場合、保険料率は令和7年度で9.91%です。
280,000円×9.91%÷2=13,874円
従業員が負担する健康保険料は13,874円です。なお、40歳〜64歳の方は介護保険料も含まれるため、保険料率は上乗せされ11.50%となります。この場合の保険料は、以下のとおりです。
280,000円×11.50%÷2=16,100円
また保険料率は地域や加入先によっても異なるため、実際の計算時は保険料額表を確認しましょう。
※掲載している情報は、2025年4月時点のものです。保険料率等、情報は変更される可能性があるためご注意ください。
参考:全国健康保険協会「令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
厚生年金保険料
厚生年金保険料も、標準報酬月額に保険料率をかけて求めます。令和6年度の保険料率は、全国一律で18.30%に固定されています。
たとえば、標準報酬月額が28万円の人の場合、厚生年金保険料の計算式は以下のとおりです。
280,000円×18.30%÷2=25,620円
この金額が、従業員が毎月負担する厚生年金保険料になります。健康保険料と同様、企業側も同額を負担する仕組みです。
厚生年金保険料は年金制度を支える重要な保険料であり、老後の年金受給額にも影響するため、長期的な目線でも理解しておくことが大切です。
※掲載している情報は、2025年4月時点のものです。保険料率等、情報は変更される可能性があるためご注意ください。
介護保険料
介護保険料は、40歳〜64歳までの被保険者(第2号被保険者)に対して発生する保険料で、計算式は以下のようになります。
介護保険料=標準報酬月額×介護保険料率
2025年4月現在、介護保険料率は全国一律で1.59%となっています。たとえば、標準報酬月額が28万円の40歳の従業員であれば、介護保険料の従業員負担分は以下のとおりです。
280,000円×1.59%÷2=2,226円
なお、実際の給与明細上では、健康保険料と合算されて天引きされるのが一般的です。つまり、先述の健康保険料11.50%には、この介護保険料がすでに含まれています。
※掲載している情報は、2025年4月時点のものです。保険料率等、情報は変更される可能性があるためご注意ください。
雇用保険料
雇用保険料は、標準報酬月額ではなく実際の総支給額に基づいて計算されます。計算式は以下のとおりです。
雇用保険料=総支給額×雇用保険料率(従業員負担分)
令和7年度の一般の事業における従業員負担分は0.55%です。たとえば、ある月の総支給額が26万円だった場合に従業員が負担する雇用保険料の計算式は、以下のようになります。
260,000円×0.55%=1,430円
なお、端数が出た場合は50銭以下切り捨て、50銭1厘以上は切り上げるのが原則ですが、事業所の取り決めにより処理が異なる場合もあります。賞与に対しても同じ料率で計算されるので、覚えておきましょう。
※掲載している情報は、2025年4月時点のものです。保険料率等、情報は変更される可能性があるためご注意ください。
参考:厚生労働省「令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内」
労災保険料
労災保険料は企業が全額を負担する保険料です。計算方法は次のとおりです。
労災保険料=全従業員の年間賃金総額×労災保険率
たとえば卸売業の企業で従業員20人、1人あたりの平均年収が460万円だった場合、年間の賃金総額は以下のように計算します。
460万円×20人=9,200万円
なお、労災保険料が3/1000であれば、保険料は以下のようになります。
9,200万円×3/1000=276,000円
労災保険率は業種により異なり、建設業などリスクの高い業種では料率も高く設定されています。労災保険料は雇用保険料と合わせて年度更新で、年1回申告・納付されるものです。
※掲載している情報は、2025年4月時点のものです。保険料率等、情報は変更される可能性があるためご注意ください。
参考:厚生労働省「労災保険率表」
賞与から引かれる社会保険料の計算方法
賞与(ボーナス)からも、給与と同様に社会保険料が差し引かれます。対象となるのは、健康保険料と厚生年金保険料、介護保険料(40歳以上65歳未満の人のみ)、雇用保険料の4種類です。
いずれも「標準賞与額」を基に計算されますが、雇用保険料は「賞与支給額」をそのまま使用する点に注意しましょう。以下に、それぞれの保険料の計算式を示します。
保険料の種類 | 計算式 |
賞与にかかる健康保険料 | 標準賞与額×健康保険料率×1/2 |
賞与にかかる介護保険料 | 標準賞与額×介護保険料率×1/2 |
賞与にかかる厚生年金保険料 | 標準賞与額×厚生年金保険料率×1/2 |
賞与にかかる雇用保険料 | 賞与支給額×雇用保険料率 |
賞与にかかる雇用保険料は、標準賞与額ではなく、実際の支給額を使用します。保険料率は毎年見直されるため、実際に計算する際は最新の保険料率を確認しましょう。
社会保険料を計算する際の注意点
社会保険料の計算は、数式に当てはめるだけではなく、さまざまな要素に応じた確認や見直しが必要です。ここでは、よくある見落としやすいポイントを2つ見ていきましょう。
昇給・降給したときに標準報酬月額の見直しが必要な場合もある
毎年の定時決定時に、4〜6月に支払われた給与の平均額を基に標準報酬月額を決めます。なお、年の途中で昇給や降給があった場合は「随時改定(月変)」という仕組みでの見直しが必要です。
具体的には、基本給や手当の変更により平均報酬額が2等級以上変動し、3カ月間継続した場合、4カ月目から新しい標準報酬月額が適用されます。月変を怠ると、従業員の保険料や将来の給付額にズレが生じるおそれがあります。
正確な対応には、勤怠データや給与情報と連携できる給与計算システムの導入も有効です。
社会保険料率は定期的に見直される
社会保険料を正しく計算するには、最新の保険料率を把握しておく必要があります。たとえば、健康保険料率や介護保険料率は毎年2月に見直され、3月分(4月納付分)から新しい料率が適用されます。
都道府県ごとに異なる健康保険料率は特に注意が必要です。一方、厚生年金保険料は全国一律で、2017年9月から18.3%に固定されています。
保険料率を手作業で更新している企業は、改定漏れによる過不足が発生するリスクもあるため、給与計算のミス防止にはシステムによる自動更新も検討しましょう。
社会保険料の計算に必要な勤怠管理を正確に行うなら「バクラク勤怠」
社会保険は、健康保険と介護保険、厚生年金、雇用保険、労災保険の5つの制度を支えるための費用です。社会保険料の計算では、昇給・降給や労働時間の管理など、給与に関わる変動を正確に把握することが欠かせません。
特に、随時改定や年次での定時決定に備えるには、日々の勤怠管理が土台となります。ミスのない保険料計算を実現するためにも、勤怠データの正確な蓄積と効率的な処理が重要です。
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