フレックスタイム制とは?仕組みやメリット・デメリットを解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-04-04
- この記事の3つのポイント
- コアタイムは必ず業務する時間帯で、フレキシブルタイムは自由に出退勤を決められる時間帯のこと
- コアタイムは曜日関係なく平均4時間程度で、勤務しなかった場合は遅刻や早退扱いとなる
- フレックスタイムを導入するには、就業規則への記載と労使協定での締結が必要
働き方の多様化に伴って、フレックスタイム制を導入する企業も増加傾向です。フレックスタイムを採用すると、働き手のみならず雇用側にとってもさまざまなメリットがあります。
ただし、フレックスタイムを導入するにあたっては、コアタイムとフレキシブルタイムの2つを理解しておくことが必要です。
本記事では、コアタイムとフレキシブルタイムの違いやコアタイムを設定する際のポイント、平均時間などを解説します。制度の基本を押さえて、スムーズに業務を遂行できる環境を整えましょう。
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フレックスタイム制のコアタイムとは?目的や平均的な設定時間について解説
フレックスタイム制のコアタイムとは
フレックスタイム制は、就業規則などで定めた範囲であれば、従業員が自由に勤務時間を決めても良い制度です。
そしてコアタイムは、フレックスタイム時間中において必ず業務すべき時間帯を示します。たとえば10時から14時は必ず出社して、就業もしくはリモートワークをしなくてはならないと定めた時間帯がコアタイムです。
ただしコアタイムの設定は任意であり、必ず設けるものではありません。また労使協定で双方同意のもとであれば、コアタイムの時間帯も曜日ごとに自由に設定することが可能です。
コアタイムとフレキシブルタイムの違い
コアタイムは業務が義務化されている時間帯であり、この時間帯は対象となる従業員は必ず勤務しなくてはなりません。
一方でフレキシブルタイムとは、従業員の裁量で自由に決められる時間帯をいいます。8時から11時がフレキシブルタイムであれば、従業員はこの時間帯の好きなタイミングで出勤することが可能です。
たとえば、業務が多く忙しい日は早めに出勤できるのはもちろん、子どもの送迎をしてからゆっくり出勤したい場合は遅めに出勤しても構いません。ただし出退勤時間を決めるときは、後述する精算期間における合計労働時間を満たす必要があります。
コアタイムの目的
コアタイムの設定は任意ではあるものの、多くの企業が導入しています。その目的として「コミュニケーションや業務の円滑化」や「コスト削減」が挙げられるでしょう。
コアタイムがないと、従業員が全員揃うタイミングが減ってしまい、ミーティングや面談などを開催するのが難しくなります。また、各自の業務状況も把握しにくくなり、プロジェクト全体の進行にも影響を及ぼすかもしれません。
しかし、コアタイムを設けることでこれらの問題を解消でき、スムーズに業務を進行できます。加えて、各従業員の労働時間を管理するコストも、従業員の裁量に任せるスーパーフレックス制度より抑えられるため、コアタイムを設定する企業が多くなっている状況です。
コアタイムを設定する際のポイント
コアタイムを設定する際には、次に挙げる4つのポイントを押さえておくとよいでしょう。
コアタイムの平均は4時間程度
コアタイムの設定時間について法的な決まりはありませんが、平均は4時間程度とされています。設定時間が短すぎると従業員が集まる時間帯が減り、業務の進行に支障が生じるため、従業員と企業の双方にとって適切な時間を定めることが必要です。
またコアタイムを「11時から13時及び15時から17時」などと分割した際には、フレキシブルタイムも分割されて出退勤時間の自由度が下がってしまうため、注意しましょう。
出典:d’s JOURNAL「フレックスタイム制を簡単解説!調査に基づく84社の実態も紹介」
コアタイムが長すぎると柔軟な働き方ができない
コアタイムが所定労働時間とほぼ同じとなっている状態では、フレキシブルタイム部分が減り、従業員の柔軟な働き方を推進できなくなります。
たとえばコアタイムが10時から17時で、フレキシブルタイムが9時30分から10時及び17時から17時30分だったとします。その場合、出退勤時間がほぼ固定となりフレックスタイム制度とは呼べなくなるでしょう。
そのためコアタイムを長くしすぎたり、フレキシブルタイムを30分単位にしたりしないように設定しなくてはなりません。
コアタイムは曜日ごとに変更可能
コアタイムの時間設定は、曜日によって異なっていても問題はありません。また、コアタイムの有無についても曜日ごとに変更することが認められています。たとえば、火曜と金曜日のみコアタイムを4時間に設定し、残りの曜日はコアタイムを設けないとしても構いません。
業務状況や従業員からの要望に応じて、最適な配分を考えましょう。
遅刻や早退の扱いを共有しておく
フレックスタイム制度では、所定労働時間を満たしていれば遅刻や早退の扱いはなく、日によって始業や終業時間が変動しても特にペナルティはありません。
しかしコアタイム中に出勤が遅れたり、早退したりした場合には、通常通り遅刻・早退の扱いとなります。この際、遅刻や早退が発生した分について所定労働時間を満たしている場合は、給与控除(減給)できません。
そのため人事評価を下げるなど、就業規則でペナルティを設けておくことが必要です。一方、所定労働時間に満たない場合には、遅刻や早退分を減給する決まりをつくっても構いません。
清算期間延長によって柔軟な働き方が可能に
フレックスタイム制度において、従業員が働くべき所定労働時間を清算期間といいます。清算期間について、これまでは1カ月単位とされていましたが、2019年以降3カ月まで単位を延ばすことが認められました。
従来は、1カ月の労働時間を満たせなかった場合に遅刻・欠勤・早退扱いとされていましたが、月をまたいで相殺できるようになりました。そのため、忙しい時期には労働時間を長く、閑散期には労働時間を短くするといった対応も可能です。
ただし1カ月以上の清算期間を設ける場合には、労働基準監督署へ届け出を行う必要があり、これを怠ると罰金が課される可能性もあります。また、週の平均労働時間が50時間を超えた場合や、清算期間外の労働は時間外労働として見なされるため、注意しましょう。
フレックス制度のメリットやデメリット
フレックスタイム制は、通勤ラッシュの回避やプライベートとの両立など、従業員の働きやすさを高めます。また、生産性向上や優秀人材の採用・定着にも有利です。
一方、社内外でのコミュニケーションが難しく、勤怠管理が煩雑になるといった課題もあります。取引先の時間に合わせる調整力や周囲への遠慮も求められ、自由さを十分に活かしきれない場合もあり、導入時には細かな配慮と適切なシステムが不可欠です。
さらに自己管理やタイムマネジメント能力が身に付く一方、管理不足で業務効率が下がるリスクもあります。
フレックスタイムの残業の扱い
フレックスタイム制では、1日の所定労働時間を超過した分がそのまま残業になるわけではありません。
清算期間の総労働時間がベースとなっており、これを上回った場合に限り時間外労働に該当します。たとえば、清算期間1カ月(29日)、総労働時間が165.7時間で175.5時間働いた場合には、10時間分が残業となり企業は残業代を支払わなくてはなりません。
また、清算期間を超えて余分な勤務時間を次の期間に繰り越すことも認められません。企業は期間ごとに労働時間を正確に管理し、必要に応じて残業代を算出し支払う必要があります。
フレックスタイムを導入する方法
フレックスタイムを導入するには、就業規則への記載と労使協定の締結が必要です。各事項について詳しく説明します。
就業規則に明記する
就業規則に「始業・終業時間を従業員に委ねる」旨を記載することが必要です。どちらか一方だけではなく、始業と終業の両方について従業員の裁量に任せることを記載しなくてはなりません。
たとえば「フレックスタイム制において、始業及び終業の時刻を適用対象従業員の自主決定に委ねるものとする」などと記載すればよいでしょう。
労使協定の締結をする
労使協定では、以下5つの項目について定め締結をする必要があります。
1カ月の清算期間では労働基準監督署への届け出は不要ですが、1カ月以上の期間を設定する場合には事前の届け出が必須です。
対象労働者の範囲設定
フレックスタイム制度の対象となる従業員を設定します。
たとえば、全従業員とすることも可能ですし「営業部のみ」「◯さん及び◆さん」と部署や個人を設定しても構いません。
労使間で話し合いながら、フレックスタイム制度の対象者を決めましょう。
清算期間の設定
清算期間及び起算日の設定を行います。清算期間は原則1カ月で、届け出をすれば3カ月まで延長が可能です。
繁忙期・閑散期の勤務状況を照らし合わせ、月をまたいだ清算を認めるかを検討しましょう。1カ月以上の清算期間では、労働時間管理も煩雑化するため、管理業務にかかる手間やコストも踏まえて判断するのが懸命です。
総労働時間の設定
清算期間における総労働時間を設定します。1カ月〜3カ月単位で所定労働時間を定めますが、日数によって法定労働時間の総枠が変わってくるため注意しましょう。
たとえば、同じ1カ月であっても28日では月160時間、31日では177.1時間と差が発生します。この総労働時間を基に実際の勤務時間を計算するため、適切な時間設定が必要です。
標準となる1日の労働時間の設定
1日の標準労働時間は、通常の勤務では設定不要ではあるものの、有給休暇を取得した際の賃金を計算するために必要です。総労働時間を所定労働日数で割って求めます。
フレックスタイム制度の対象者が有給を取得した場合には、ここで設定した1日の標準労働時間分を就業時間とみなします。
コアタイムとフレキシブルタイムの設定
コアタイム・フレキシブルタイムの有無や時間帯を設定します。
コアタイムについては、具体的にどの曜日にするのか、何時から何時までにするのかを記載し、フレキシブルタイムについてもその時間帯を詳細に記載することが必要です。実際に働く時間帯を決める部分のため、従業員に不利益が出ないよう慎重に検討しましょう。
なお、コアタイムは必ずしも設定する必要はありません。ただし、所定の休日は決めておくようにしましょう。
コアタイム中の中抜けは可能?
フレックスタイム制度は、清算期間内の総労働時間を従業員が自由に配分できる制度です。ただしコアタイム中は就業義務があるため、遅刻・早退や中抜けは通常の勤怠規定どおり扱います。
また中抜けの時間帯に移動や業務が含まれる場合、その実態によって労働時間とみなされるケースもあります。
企業側は就業規則や労使協定を整備し、コアタイムの扱いを明確にするとともに、管理負担や賃金計算の混乱を防ぐためのルールを周知・徹底しなくてはなりません。
たとえば事前申請を必須にしたり、タイムカード制にしたりするなどの対策が有効でしょう。これらの管理が難しい場合は、中抜け時間中の業務連絡や指示を避けることも検討します。
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フレックスタイム制度においてコアタイムを設定することは、業務やコミュニケーションの円滑化につながるため、おすすめです。
しかし遅刻や早退、中抜けについて明確なルールを設けておかないと管理が煩雑になるだけでなく、規則を守らず働く従業員が出てきてしまう要因にもなります。事前にしっかりと定めておきましょう。
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