契約書があれば請求書の発行は不要?インボイス制度への対応も紹介
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-01-28
- この記事の3つのポイント
- 取引内容について証明できる契約書があれば、請求書は発行しなくても支払いできる
- インボイス発行事業者が仕入税額控除を利用するには適格請求書の発行が必要である
- 適格請求書の発行ができない取引先でも、経過措置期間中は一定割合の仕入税額控除が認められる
インボイス制度が導入され「契約書があれば請求書の発行は必要ない?」「仕入税額控除を受けたいけど、どうすればよいの?」と戸惑っている方も多いでしょう。
取引先への支払いは請求書ではなく、取引内容について証明できる契約書で代替することは可能です。しかし、仕入税額控除を受けるには適格請求書が必須なので注意しなくてはなりません。
本記事では、請求書がなくても支払可能かどうか、インボイス制度で請求書が都度発行されない場合はどうすればいいかを詳しく解説します。
契約書があれば請求書の発行は不要?インボイス制度への対応も紹介
契約書があれば請求書はいらない?
一般的に、取引先から請求書をもらってから支払いを行います。しかし、何らかの事情で請求書が発行されない場合もあるでしょう。そのような場合は、支払いできないのでしょうか。
結論から言えば、契約書があれば請求書は発行しなくても構いません。
契約書、見積書、メール、業務完了報告書などで取引内容を証明できれば、請求書がなくても支払いが可能です。
取引内容の証明に必要なのは、以下の項目です。
- 取引日
- 取引先の会社名
- 取引した内容
- 金額
- 取引した相手の氏名
これらが明記されたものなら、請求書の代わりになります。
また口頭での約束でも一応は取引が成立しますが、何かあった際に証明が難しくなるので注意しましょう。取引先が振込先を把握できていないなどのトラブルが起きる可能性もあるため、請求書を発行するのが一般的です。
インボイス制度では適格請求書の発行が必要
インボイス制度を導入している場合、仕入税額控除の利用が可能です。ただし控除を利用するためには、適格請求書の発行が必要なので注意しましょう。
適格請求書とは、売り手が買い手に対して正確な適用税率や消費税額などを伝える書類です。従来の請求書と異なり、適格請求書発行事業者の登録番号の記載が必要です。
適格請求書を発行できるのは適格請求書発行事業者のみです。適格請求書発行事業者になるためには、税務署に登録申請書を提出し、審査を受ける必要があります。
適格請求書発行事業者の登録ができるのは、消費税の課税事業者に限られます。消費税の免税事業者は適格請求書を発行することができず、仕入税額控除が利用できません。
インボイス制度で請求書が都度発行されない場合の対処法
インボイス制度で請求書が都度発行されない場合は、どのように対処すればよいでしょうか。本章では、想定されるパターンに分けた対処法を3つ紹介します。
請求書が発行されない継続取引の場合
家賃、リース料といった継続取引では、取引ごとに請求書は発行されず、そのまま毎月口座振替されるようなケースが多いです。このような継続取引の場合でも、契約書などで適格請求書の内容を満たした記載があれば仕入税額控除が受けられます。
具体的には、契約書、通帳などの複数の書類を組み合わせれば適格請求書の要件を満たすことができます。たとえば家賃の場合、契約書と通帳の組み合わせが可能です。それぞれの書類には以下のような項目が書かれているためです。
契約書:貸主名、登録番号、建物賃貸内容、賃料、消費税額、借主名など
通帳:支払日(取引年月日)
また、一定期間分をまとめて発行することも問題ありません。半年分や1年分など、一定期間の取引をまとめて適格請求書を発行することが可能です。
そのほか契約書に適格請求書に必要な項目を記載することでも対応できます。新規契約の場合は契約書に必要事項を記載し、既存の契約の場合は追加で必要事項を記載した書面を交付します。
請求書がなくても仕入税額控除の対象となる場合
適格請求書がなくても、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる場合があります。具体的には、以下のようなケースが対象になります。
- 出荷者や出荷者から委託を受けた受託者が、卸売市場で行う生鮮食料品などの販売
- 古物営業者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入
- 質屋の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得
- 宅地建物取引業者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入
- 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源または再生部品の購入
- 3万円未満の自動販売機や自動サービス機からの商品の購入
- 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出された場合のみ)
- 従業員などに支給する、一般的に必要な出張旅費など
- 3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
上記の取引について仕入税額控除を受けるためには、通常の記載事項に加えて以下の事項を帳簿に記載する必要があります。
- 相手方の氏名(名称)と住所(所在地)
- 課税仕入れを行った年月日
- 課税仕入れと関係する資産や役務の内容
- 課税仕入れと関係する支払対価の金額
- 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる取引であることの記載
ただし、一部の取引(郵便・貨物サービス、一般的に必要な出張旅費、3万円未満の旅客の運送)については住所または所在地の記載が不要なケースもあります。
参考:国税庁「適格請求書の交付義務が免除される取引」
取引先が適格請求書を発行できない場合
取引先がインボイス発行事業者ではない場合、適格請求書は発行できず控除は受けられません。ただし、経過措置期間中は以下のような一定割合の仕入税額控除が認められます。
2023年10月1日から2026年9月30日まで:80%控除可能
2026年10月1日から2029年9月30日まで:50%控除可能
2029年10月1日から:控除不可
取引先がインボイス発行事業者にも関わらず適格請求書を発行してくれない場合は、記載要件を満たした適格請求書の再発行を求めてもよいでしょう。
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取引先に支払いをする場合、取引内容について証明できる契約書があれば請求書は発行しなくても問題ありません。ただし、仕入税額控除を利用するためには、適格請求書が必要です。取引先がインボイス制度を導入しているかどうか(適格請求書を発行してくれるかどうか)について確認してみましょう。取引先が免税事業者であった場合でも、経過措置期間中に限り一定割合の仕入税額控除が認められます。
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