有形固定資産とは?定義や具体例と減価償却の方法をわかりやすく解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-10-17
有形固定資産とは、固定資産のなかでも有形のもので、会計上の処理が必要です。正確な会計処理には、有形固定資産に該当する内容を正確に把握しなければなりません。
この記事では、有形固定資産の基本情報から無形固定資産との違い、種類などを解説しています。有形固定資産についての知識を得たい人は、参考にしてください。
有形固定資産とは?定義や具体例と減価償却の方法をわかりやすく解説
有形固定資産とは?
有形固定資産とは、物理的な形態を持ち、営業活動において1年を超える長期間にわたって使用する資産のことです。形があり目に見える資産は、基本的に有形固定資産に該当します。
ただし、会計基準において有形固定資産の明確な定義はないため、国や地域などによって内容と範囲が異なる恐れもあるでしょう。基本的には以下で解説する無形固定資産との違いを念頭に置き、判断します。
有形固定資産は無形固定資産と何が違う?
有形固定資産と無形固定資産の違いは、表記のとおり、物理的な形の有無です。
いずれも固定資産であることは同じですが、有形固定資産は、形があり、目に見たり手に取ったり、触れたりできるものが該当します。
一方、無形固定資産は、形がなく、目に見たり手に取ったり、触れたりできない資産です。
どちらに分類されるか悩んだ場合は、まず、目に見えるものか、見えないものかで考えると良いでしょう。
具体的には、有形固定資産には土地・建物・機械や装置・車両や運搬具などが該当します。無形固定資産は、特許権・商標権・実用新案権・借地権・ソフトウェア・のれんなどです。
有形固定資産の主な種類
有形固定資産には、主に次のような種類があります。それぞれについて解説します。
1.土地
有形固定資産としての土地に該当するのは、住宅地や事務所・工場の土地をはじめ、駐車場・資材置き場・社宅の敷地・田畑・池沼・山林などです。
なお、販売する目的で所有する不動産は、事業に使用するものでないため、有形固定資産とはなりません。事業用でなく、当面現金化する予定がないものが有形固定資産に該当します。
2.建物・付属設備
有形固定資産としての建物に該当するのは、事務所や店舗・工場・倉庫などです。また、付属設備としては、電気設備や冷暖房設備、ガス設備などが該当します。
有形固定資産の会計処理については後述しますが、建物・付属設備は「定額法」で計上するようにしましょう。
3.構築物
有形固定資産としての構築物に該当するのは、道路や塀・トンネル・橋・岸壁・用水池・堤防・上下水道などです。建物・付属設備と同様に、構築物も「定額法」で計上します。
4.機械・装置
有形固定資産としての機械・装置に該当するのは、工場に配置される、様々な分野で使用される製造機械設備や、事務所のコンピューター・プリンターなどです。また機械式駐車場設備も含まれます。
5.車両・陸上運搬具
有形固定資産としての車両・陸上運搬具に該当するのは、一般的な自動車やバイク・鉄道車両・航空機などです。
一般的な自動車には、トラックやフォークリフト、営業車などが該当します。
6.船舶・水上運搬具
有形固定資産としての船舶・水上運搬具に該当するのは、漁船や貨物船・モーターボート・タンカーなどです。
船舶・水上運搬具は、一般的に用途で分類せず、「船舶」として会計処理を行います。
有形固定資産を減価償却する2つの方法
有形固定資産の減価償却には、「定額法」と「定率法」という2つの方法があります。
減価償却とは、長期間使用する固定資産の購入費用を、資産の使用期間にわたって分割して経費計上することです。これにより、資産が使用される期間にわたって、資産の購入費用を適切に配分し、利益計算を正確に行うことができます。
以下では、「定額法」と「定率法」の2つの方法について解説します。なお、固定資産の種類次第では、税務署への届け出により、「定額法」と「定率法」以外でも減価償却が可能です。
1.定額法
定額法とは、耐用年数の間、毎年同じ額を減価償却費として計上する方法です。計算が容易で、毎年一定の費用を計上できるため、予算が組みやすく、将来のキャッシュフローや利益の計算がしやすいというメリットがあります。
定額法の計算式は以下のとおりです。
減価償却費=取得価額×償却率
償却率は資産の耐用年数に応じて決まります。
例えば、法定耐用年数が5年の資産を100万円で購入した場合、毎年20万円を5年間にわたって経費計上することとなります。この場合、仕訳は借方に「減価償却費」、金額を「20万円」と記載しましょう。
一方、貸方は「直接法」と「間接法」で異なります。
「直接法」とは、減価償却費を固定資産から直接差し引く方法です。したがって貸方の勘定科目は「固定資産」、金額は「20万円」となります。
「間接法」では「減価償却累計額」という勘定科目を用います。金額は同じく「50万円」です。
2.定率法
定率法とは、未償却残高に一定の率を掛けて減価償却費を計算する方法です。減価償却費を算出する計算式は以下のようになります。
減価償却費=未償却残高×償却率
定率法による減価償却費は、年々減少していくのが特徴です。
例えば、取得価額100万円の資産で償却率が20%の場合、初年度は100万円に償却率0.200をかけた20万円を償却します。次年度以降は、残高に対して20%を計算するため、次年度の償却費は80万円の20%である16万円です。
20万円を減価償却する場合の仕訳は、借方に「減価償却費20万円」、貸方に「固定資産20万円」とします。次年度以降も金額が減りますが、仕訳は同様です。
減価償却費は徐々に小さくなり、償却保証額と呼ばれる一定の金額を下回ると、「改正償却率」を使用して計算されます。償却補償額を算出するための償却保証率や、改正償却率については、下記のウェブサイトに一覧表があるため参考にしてください。
※参考:減価償却資産の償却率等表|国税庁
有形固定資産の回転率とは?
有形固定資産の回転率とは、会社が有形固定資産を効果的に活用できているか否かを示す指標です。有形固定資産の回転率は、売上高と有形固定資産額から算出できます。
計算式は以下のとおりです。
有形固定資産回転率=売上高 ÷ 有形固定資産額
有形固定資産回転率の数値が高ければ、それだけ有形固定資産を活用できており、成果を生み出せていると解釈できます。
ただし有形固定資産回転率の高低は、業種や会社の規模、会社の方針などで変化します。例えば、有形固定資産を多く扱う不動産業や製造業では低くなり、無形固定資産を多く扱う情報通信業では高くなる傾向があるでしょう。
また、設備投資に積極的であるほど回転率は低くなります。しかしそれは資産が活用できていないということではありません。
そのため有形固定資産回転率に目安といえるものはなく、過去の数値や経営方針を見たり、同業他社と比較したりして判断することが大切です。
固定資産を管理する際のポイント
固定資産を管理する際は、以下のポイントに注意しましょう。
現場のルール周知を徹底する
固定資産を帳簿上で管理するのは経理ですが、使用するのは各現場です。そのため、現場ごとに担当者を置き、連絡や報告などのルール周知を徹底することが重要となります。
例えば、固定資産を購入する際や売却する際は申請書提出を必須とし、申請書には資産の名称や購入予定日、購入先、金額などを記載するといった方法がよいでしょう。
また、固定資産の新たな活用法を検討する際や、固定資産が故障した際は、早期に連絡するよう定めておくのも役立ちます。
システムの活用を検討する
固定資産については、システムを活用した管理を検討しましょう。
固定資産は大きな支出になりやすく、費用の負担は長期にわたります。手作業での管理では正確な仕訳や税務処理が難しく、手間を要するのが難点です。例えば、減価償却費の計算や固定資産台帳の作成などは特に手間が大きく、ミスが発生する可能性も高いといえます。
経理の処理を補助するシステムを導入すると、精度が上がるうえ手間を削減でき、生産性も向上するのがメリットです。
まとめ
有形固定資産とは、土地や建物、設備や機械などの物理的な資産を指します。帳簿上でこれらを管理する際は減価償却の処理が必要ですが、減価償却の方法によって計算方法や金額が変わるため、帳簿への記載時には注意しましょう。不慮のミスや記載漏れを防ぐためには、管理システムの導入・利用がおすすめです。
バクラク請求書受取は、請求書の受取と、これにともなう承認や支払い、仕訳といった一連の作業を自動化し、スムーズに行うことのできるシステムです。減価償却など帳簿への記載を補助し、ミスなく正確な経理業務を可能にします。詳しくは下記より、製品資料などをご覧ください。また導入のご検討は、お気軽にお問い合わせください。