法人カードで個人の買い物はしてもいい?|利用時の問題点や仕訳について解説

法人カードで個人の買い物をする行為は、原則避けましょう。誤って法人カードで個人の買い物をした場合でも会計処理は必要となります。その場合は勘定科目や仕訳などが煩雑になるため、注意が必要です。

本記事では、法人カードの個人使用の勘定科目や仕訳例を紹介します。デメリットやその理由なども解説するので参考にしてください。

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法人カードで個人の買い物はしてもいい?|利用時の問題点や仕訳について解説

法人カードで個人の買い物をした場合の仕訳例

法人カードで個人利用の買い物をしてしまった場合の勘定項目は「役員貸付金」となり、これを用いて仕訳を行います。

法人カードの個人利用には、「すぐに返済できる場合」と「すぐに返済できない場合」で、それぞれ仕訳方法が異なるため確認しましょう。

例えば、従業員が法人カードで誤って1万円の個人の買い物をしてしまったが、すぐに返済できるのであれば以下のように処理します。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
仮払金10,000円未払金10,000円

返済が完了したら、以下のように変更を加えます。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
現金10,000円仮払金10,000円

一方で、金額が高額ですぐに返済できない場合は、「役員貸付金」として仕訳を行います。200万円を個人の支出として法人カードから支払った場合は以下のように処理します。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
役員貸付金2,000,000円未払金2,000,000円

法人の役員貸付金は問題が多いとされているため、あとで詳しく解説します。

個人事業主が法人(屋号)カードで個人の買い物をした場合の仕訳例

個人事業主が法人(屋号)カードで個人使用した場合の勘定科目は、「事業主貸」となります。個人事業主は給与がないため、個人的な出費と事業経費を区別するために事業主貸という科目を設けています。

個人事業主のカードの個人利用は法人の会計とは異なるため、事業主貸として処理すれば問題ありません。

個人事業主が法人カードで、私生活で使う個人的な買い物を5万円分した場合の仕訳は以下のとおりです。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
事業主貸50,000円未払金50,000円

役員貸付金の大きなデメリット

法人カードから、すぐには返済できない大きな金額を支払うことを「役員貸付金」といいます。先述したとおり、役員貸付金にはデメリットがあるため、できるだけ避けたい科目です。

なぜ避けたい科目となっているのか、役員貸付金のデメリットを解説します。

金融機関などからの信用を失うおそれがある

役員貸付金を行ってしまうと、金融機関などの対外的な機関から信用を失うおそれがあります。

法人カードの個人利用は、一従業員が会社のお金を仕事とプライベートの両面で使用しているとみなされる可能性があります。また、融資している資金を個人の支出として使い込まれてしまうと判断されかねません。

金融機関から融資を受けたい場合、役員貸付金をしていることが発覚すれば信用に値せず、不利になることもあるため注意が必要です。

利息を計上しなければならない可能性がある

企業に対して貸付を受けている従業員は、就業規則で定められている利息を支払う必要があります。会社側も貸付を行っている従業員から受け取った利息は、適正に経理処理も行わなければなりません。

自身が運営している会社だから利息を払っていないというケースも稀に見られますが、そうなると本来発生する予定だった利息が雑収入として計上されてしまい、法人税の支払いが発生します。

また、従業員が無利息や定められた金額よりも低い利息しか支払わないとき、相当する金額は従業員の給与として課税されます。

参照:国税庁 No.2606 金銭を貸し付けたとき

相続の対象となる可能性がある

役員貸付金は相続の対象となるおそれがあります。役員貸付金を返済せずに亡くなった従業員がいれば、その相続人は債務を引き継がなければいけません。

相続人は企業と無関係な配偶者や子ども、親であっても返済する必要があります。

法人カードには2つの決済パターンがある

法人カードの決済パターンには「個人決済型」と「法人決済型」の2つが存在しています。

1.個人決済型
個人の指定口座より利用金額が引き落とされ、個人利用をしても特に問題はありません。

2.法人決済型
利用した場合は、会社の法人口座より引き落とされます。法人カードのほとんどは法人決済型です。

会社で使用する物品や仕事での移動にかかる費用は、法人カードを利用して支払うことができます。会社から使用を認められている範囲内であれば、経費として利用可能です。

ただし、個人の買い物をした場合は、会社のお金を使って個人的な物品を購入したとみなされるため、問題となる可能性が高いです。何を購入したのか証明とするためにも、必ず領収書などは保管しておきましょう。

法人カードで個人の買い物を控えるべき理由

法人カードを使用して、個人的な買い物をするのは控えた方がよい理由を解説します。

会計処理が煩雑化する

法人カードを個人利用することで、経理業務の手間が増えてしまうことも理由の1つです。使用した金額が大きい場合は、「役員貸付金」として会計処理が必要で、使った分のお金を補填しなければいけません。

事業用とプライベート用の支払いを一緒の法人カードからすることで、明細書を1つずつ確認しながら、事業用かプライベート用かを判断しなければならず、会計処理も煩雑化してしまいます。

法人カードは会計処理を効率化するためのツールであるにも関わらず、公私混同することで複雑化するのは本末転倒といえるでしょう。致し方ない理由がなければ、法人カードの個人利用は控えましょう。

法人口座から引き落とされるケースが多い

法人カードは、法人口座からお金を引き落とされる仕組みになっていることが多いです。

前述したように法人決済型カードを個人利用することは、プライベートの支出を法人が立て替えるという状態になってしまいます。結果として会計処理が煩雑になり、間違えてしまうリスクが避けられません。

脱税を疑われる可能性がある

プライベートで利用した費用を誤って経費として会計処理してしまうことで、脱税を疑われてしまうこともあります。

法人カードで個人利用した分の費用を適切に処理していないと、「意図的に個人利用を続けている」と税務署から判断される可能性もあります。また、法人税額を意図的に減らそうとしていると捉えられるかもしれません。

個人利用が続けば、会社の社会的信用がなくなってしまうことに加え、罰金や刑事責任を問われる可能性もあります。個人利用を控えるか、会計処理を確実に行いましょう。

法人カードを利用する際の注意点

法人カードを利用する際はいくつかの注意点に配慮しなければなりません。注意点を意識して利用しましょう。

法人決済型カードの個人利用をしない

大きなデメリットがあるため、法人決済型の法人カードの個人利用はしないよう社内ルールを徹底しましょう。カードの利用者を限定したり、必要なときのみカードを渡したりするなどの対策を講じることで、個人利用や不正利用のリスクを減らせます。

また、個人的な買い物をする場合は個人のお金を使うことを原則として、法人カードを個人利用した際は罰則を設ければ個人利用されにくくなるでしょう。

法人カードのメリットを活かすためには、個人決済型の法人カードの利用も検討してみてください。その際も法人決済型カードと間違えないようにすることが大切です。

ポイントやマイルの個人利用をしない

法人契約している場合、カードを利用して貯めたポイントは支払いを行った会社のものになります。そのため、追加カードをもつ従業員はもちろん、会社の代表者であっても、ポイントを個人利用することはできません。誤って利用してしまうと大きなトラブルになりかねないので、ポイントの取り扱いについては社内でルール化・周知をしておくようにしましょう。

ただし、会社の代表者がカードを個人契約している場合や、個人事業主の場合は、本人がポイントの個人利用をすることは問題ありません。

キャッシング機能や使用上限額をチェックする

不用意な個人利用を避けるためにも、契約時にキャッシング機能の有無を選択すること検討してみてください。

また、キャッシング機能がある場合は、利用上限額をチェックしておくことで使い過ぎや不正利用のリスクを避けられます。カードを利用する従業員の役職に応じて、必要最低限の利用限度額を設定するのもおすすめです。

まとめ

法人カードを使って個人の買い物をすることは避けましょう。もし買い物をしてしまった場合は、その金額やすぐ返済できるかどうかを考慮して仕訳を行ってください。きちんと会計処理ができなければ、脱税を疑われてしまいかねません。トラブルを避けるためにも、きちんとした処理は必要です。

会計処理の効率化を図るなら、法人カードと会計システムが連携できるものを利用するのがおすすめです。バクラク経費精算は、過去のデータから仕訳情報を入力されるうえ、振り込みなどのデータも自動で作成可能です。会計業務の煩雑さから解放されるシステムの導入を、ぜひ検討してみてください。

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