インボイスをやらないとどうなる?登録する場合と未対応の場合のデメリット
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-07-05
2023年10月から開始されたインボイス制度は、免税事業者に税負担の増加をもたらす上に、登録手続きにも手間がかかる仕組みです。しかしながら、インボイス制度への対応は取引先との関係維持には重要であり、対応しないと取引先から関係が見直される可能性があります。
この記事では、インボイス制度をやらないとどうなるかについて、対応しない場合のデメリット、対応した場合のメリット、対応手順などのポイントも含め、詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
インボイスをやらないとどうなる?登録する場合と未対応の場合のデメリット
インボイス制度へ登録しないと起きるデメリット
インボイス制度に対応するかしないかは、事業者側に委ねられています。インボイス制度へ登録しない場合に起きるデメリットについて、課税事業者と免税事業者、それぞれの立場から解説します。
課税事業者の場合
インボイス制度に対応しない場合は、取引先が仕入税額控除を受けられないため、取引関係が見直される可能性があります。取引先での消費税負担が増えることで、以後の取引の規模が縮小するなど、取引継続や収益に影響が出かねません。
ただし、「簡易課税制度」を利用する場合、みなし仕入率で消費税を算出するため、取引先の負担は増えません。売上に関連する消費税に「みなし仕入率」を適用した分を、自社が支払った消費税として控除が受けられるからです。
免税事業者の場合
個人あるいは法人であっても、免税事業者であり、かつインボイス登録事業者でない場合は、消費税の納付が免除されます。しかしながら、取引先にはインボイスを発行できないので、取引先は仕入税額控除が受けられず、税負担が増加します。
その結果として、取引の減少や契約終了、報酬カットなどのリスクが想定されます。
免税事業者がインボイスを発行するには、納税地を所轄する税務署長に対して課税事業者の届出と、適格請求書発行事業者への登録が必要です。
インボイス対応が必要ないケースもある
あえてインボイス対応が必要ないケースもあります。
適格請求書発行事業者になる必要がないのは、取引相手あるいは顧客が以下に該当する場合です。
- 仕入税額控除をしない事業者
- 簡易課税事業者
- 一般消費者
これらの取引先にはインボイスの発行は不要であるものの、仕入税額控除を受ける取引先がある場合、インボイス発行が求められる可能性があります。
また、自社が簡易課税事業者あるいは免税事業者で、インボイス対応が不要になるケースもあります。
自社が簡易課税事業者の場合はみなし仕入率で仕入税額控除を計算するため、インボイスの有無は関係ありません。
自社が免税事業者の場合、そもそも消費税の申告・納税義務がないため、仕入税額控除の計算をする必要がなく、インボイス対応は不要です。
インボイス発行事業者になるメリット
インボイス発行事業者になることで受けるデメリットばかりに目が行きがちですが、メリットもあります。
課税事業者の場合
適格請求書発行事業者に登録することで得られる大きなメリットは、仕入税額控除の適用を受けられる点です。
これにより、事業者が仕入れや経費にかかった消費税額を差し引いて納税額を計算できるため、実際に納付する消費税額を減らすことができます。
インボイス発行事業者になることで、所轄の税務署長への登録申請をしたり、インボイスの保存をしたり、請求書の様式を変更したりなどの手間はかかるものの、受けるメリットの方が多ければ、検討する価値はあるでしょう。
免税事業者の場合
一方、免税事業者がインボイス登録をすることで得られるメリットの1つは、取引先との関係を維持できることです。
インボイス制度では、適格請求書を受け取れない取引先は仕入税額控除を受けられず、すべての消費税を自社で支払う負担が増えます。結果として取引先は、自社が不利を被る免税事業者との取引を避ける可能性があります。
インボイス発行事業者として登録することで、適格請求書を発行できるようになれば、取引先が安心して取引を継続しやすくなり、良好な関係を維持できます。
インボイス発行の手順
インボイスを発行するにはどういう手順で準備を進めればよいのかを知るために、大まかな3つのステップで解説します。
1. インボイス発行事業者に登録申請する
まずは、インボイス発行事業者として登録するための手続きをスタートします。事業者登録の申請書を所轄の税務署に提出することで登録が可能です。
インボイス制度がスタートする2023年10月からの登録を受けるためには、2023年9月30日までに登録申請を済ませる必要がありました。現在は、特に登録申請をする上での期限は設けられておらず、いつでも申請が可能です。
事業者登録の提出方法は、インターネット(e-Tax)と書面(郵送)の2種類のどちらかから選択できます。登録申請書の様式は、国税庁のホームページで公開されています。
2. 取引先に通知する
次のステップとして、所轄の税務署にてインボイス発行事業者の登録が完了したら、取引先に以下の内容を連絡します。
- インボイス発行業者の登録が完了したこと
- 自社の登録番号
- インボイスの様式
なお、小売業や飲食店業など、不特定多数の一般消費者などを顧客とする事業者の場合、インボイスの代わりに、受領者の氏名または名称が不要な「適格簡易請求書(簡易インボイス)」を発行することで、仕入税額控除の適用を受けられます。
3. 請求書等の様式を変更する
最後のステップとして、現在使用している請求書発行システムで、請求書の様式に記載事項を追加し、インボイス対応可能な内容に変更する必要があります。
適格請求書には、事業者の氏名・名称や登録番号、取引内容など、いくつかの記載事項を含めることが必須です。特に気を付ける必要があるが、消費税額の端数処理です。「切り捨て」「四捨五入」などで端数処理するよう社内で統一ルールを定めた上で、システムの改修を行う必要があります。
インボイス制度により適格請求書発行事業者がやるべきこと
インボイス制度により、適格請求書発行事業者にやるべきことが発生します。主な2つのポイントで解説します。
取引先の状況を確認する
取引先から受け取る請求書や領収書が適格請求書であるかを確認するのが大事なポイントです。適格請求書でない場合、仕入税額控除が受けられません。
ただし、課税事業者の負担を減らすため、2023年10月1日から2029年9月30日までの経過措置期間中は、一定の割合で仕入税額控除が認められます。2023年10月1日から2026年9月30日までは仕入税相当額の80%、2026年10月1日から2029年9月30日までは、仕入税相当額の50%が控除されます。
適格請求書の保存準備を行う
取引先から適格請求書を受け取った場合や、自社で適格請求書を交付した場合、その写しを7年間にわたり保存する義務があります。
適格請求書の保存場所は納税地や事務所、事業所内に定められています。電子データの場合は、2024年以降電子帳簿保存法に則って保存します。
自社ではどのような保存方法が最も効率がよいか、社内で検討しましょう。
まとめ
インボイス制度未対応の場合、課税事業者であれば、取引先が仕入税額控除を受けられず取引関係が見直されるリスクがありますが、対応することで仕入税額控除の適用が受けられ、消費税の負担を減らすことが可能です。免税事業者が非対応の場合は取引先の税負担が増え、契約が減少あるいは終了するなどのリスクがあります。自社の置かれた状況や取引先との関係を考慮し、適格請求発行事業者となるかどうかを検討しましょう。
インボイス制度に対応する場合、「バクラク請求書発行」の導入がおすすめです。請求書・納品書などあらゆる種類の書類を電子発行して業務効率化とコスト削減を実現します。電子書類を採用していない取引先には郵送代行機能を利用できる点も魅力です。